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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

「標準レンズ」に返り咲いた老兵 FA50mmF1.4はPENTAX K-1に良く似合う

 「標準レンズ」と言えば50mm、というのはフィルム時代からの定説ですが(もちろん35mm版フィルムの場合)、最近はズームレンズが主流ですし、デジタルの時代になって以降、撮像センサーのサイズもまちまちになったりして、「標準レンズ」という言葉自体が死語になっているように思います。

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 K-1でフルサイズ化を果たしたKマウントにあって、標準の中の標準であるFA50mmF1.4は今でもひっそりとラインナップされています。

不遇にして奇跡の長寿レンズ

 それはフィルム時代の残滓とも言うべきクラッシックレンズであり、歴史をたどれば1991年秋にZ-1の発売とともにF50mmF1.4からリニューアルされたもの。

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 フィルムの時代が終焉し、APS-Cデジタルの時代には「望遠レンズ」に分類されるという屈辱を耐えながら、約25年も現役製品として生き残ってきた、ほとんど奇跡というか伝説というか、遺産のようなレンズです。

 そうは言ってもAF時代のレンズですから、AFもAEも手ブレ補正も問題なく動作するし、収差補正も使えます。マニュアルフォーカスレンズのような、真の意味でのクラシックさはなく、かといって最新のレンズと比べて描写性能にはさまざまな点で見劣りがする、中途半端さから、非常に不遇な扱いを受けているといっても過言ではないでしょう。

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 私がこのレンズを手に入れたのは、まだK-7を使っていた時代。何が撮りたいとかではなく"50mmF1.4"という数字と記号の並びだけに物欲を感じ、中古カメラ店の店先で衝動買いしたレンズです。

 当時はAPS-Cでしたから当然画角は中望遠だったし、写りの面でも「古さ」を感じずにいられない描写性能に「これはひどい」と思ったこともあります。

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 銀塩最期の*ist以来13年ぶりに35mmフルサイズの撮像フォーマットを持つK-1が登場したことで、再び「標準レンズ」に返り咲いたわけですが、36.4Mピクセルという超高画素には耐えられず、実用性はより失われるのでは?と思っていました。

 試しに使ってみるまでは。

FA50mmF1.4は格好いい? 格好悪い?

 何でこんなエントリーを書き始めたかというと、1ヶ月くらい前に以下の記事を読んだからです。

 この記事に↓こんな一文が出てきます。

ただし、残念なのはFAレンズはどういうわけか、カッコ悪いデザインのものが多いことだ。コストダウンによるものだろうが、まったく色気がなく、プラスチックを多用している。FA50mmF1.4とか、見てるだけで腹が立ってくるほどである。

 好き嫌いは個人の意見ですし、実際25年も前に発売製品であり、デザインも当時のものですから、今の時代には合わないの事実。なのでこの記事を書いた赤城氏に反論しようというのではありません。

 ただ言いたいことは「オレは好きだよ!格好イイと思うよ!(※個人の意見です)」というだけのことです。

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 そもそもガウス型を基本にした50mmの単焦点レンズというのは、前玉から後玉までズドンと真っ直ぐにガラス玉が突き抜けていて、そんな見るからに光をたっぷり通しそうなレンズは絶対的な正義です。

K-1で蘇る「標準レンズ」を使ってみる

 さて、K-7以降のAPS-Cデジタル一眼レフで使ってきた印象では「写りに関しても見た目同様にとても古くさいレンズ」という印象でした。開放ではボケボケでフリンジ出まくり、コントラストも低く、ボケも汚い。絞るとキリッとして締まってくるけど、絞り形状はカクカク。

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 25年前のレンズですし、そもそも光学系の基本設計はもっと前と言われてます。優秀なsmcが施されてるとは言え、デジタルで使うことなど夢にも思ってない時代のこと。最新の技術でデジタル用に設計されたレンズと差があるのは当たり前です。


 ですが、ダメ元でK-1で使ってみたら... ん? これってこんなにしっかり写るレンズだったっけ? と再発見したのです。「K-1すごい」というプラセボなのか、実際にK-1がすごいのか、今までちゃんと使えてなかっただけなのか、50mmの画角で使って始めて良さが出る絶妙なバランスなのか、とにかく理由は分かりません。

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 水辺に佇むカルガモさん。目にピントはきてません。この時、鴨とか鳩を撮っていて、こんなにビシッとピントが出て、しかも毛並みの質感が綺麗に写って、そして背景はザワザワし過ぎずにボケて、開放から2段も絞ってるとは言え、こんなに普通に映るレンズだったっけ?と思ったのが最初です。

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 F4まで絞ればキリッとします。中心付近は特に葉っぱのエッジは細い枝がギザギザするくらいに、36.4Mピクセルにも負けていません。コントラストもあってスッキリ。

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 岩に登ろうとするカメさん。F2.8まで絞ってますが、目にピント合わせたら鼻先がボケてしまいました。近接撮影もそこそこ行けます。

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 なので、テーブルフォトなんかでも使えるのではないかと思います。

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 ちょっと距離がある被写体を、わざと絞り開けてフワッと浮かび上がらせる... みたいなのやってみたくなります。50mmの明るい単焦点はそういうの得意なはず。思う通りになりませんが。

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 これとかもファインダーで見てた限りはイケる!と思ったんですけどね。

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 肝心のボケ味ですが、開放付近でこんな感じ。玉ボケは縁取りが出来るし、大口径だから仕方ないですが周辺はラグビーボールになります。そうじゃなくても何となくグルグルボケの傾向があったりして、どっちかというと非常に癖があって難しいです。それ以前にこれではピント面が極薄すぎだし、ピントが合ってるところもかなりフワッと滲んできます。

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 ですが、こうして2段絞るとかなり普通になります。それでもボケ量もたっぷりあるし、この辺がベストバランスなところかも。

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 いやいや、超綺麗じゃない? ふんわりしていて、妙な縁取りも出ないし。これはもしかして開放付近もイケるかも?と思いつつ、ビビって絞ってしまいます。

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 だからといってこういう場合に絞ってしまうと... 円形絞りなんてものがない時代。綺麗に八角形になってしまいます。こういうところが古くささを感じますが、かえって面白いです。

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 AFはもちろんボディ内モーター駆動。全群繰り出し式ですが、かなりスピードは速いです。ただ、やはり最新のレンズと比べると、どうもAFの精度とか粘りとかに差がありそう。このレンズを使ってると結構迷うような動作をしたり、ピント合ってないのに合焦マークが出たりすることがあります。ファインダーでしっかり監視しておく必要はありますが、K-7とかの時代からすると、やはりK-1は優秀だと思います。

いつまで現役でいられるのか?

 ということで、FA50mmF1.4はK-1と組み合わせて使うと、往年の標準レンズとして生き返るよ、というお話でした。

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 K-1でフルサイズ化されたKマウントですが、フルサイズ対応のレンズラインナップは十分に揃っておらず、特に今後は単焦点レンズが順次出てくるという計画になっています。その中には「Large Aperture Standard Single Focus Lens」という新標準レンズが予定されています。

 このレンズがどんな仕様なのか分かりませんが、これが噂と期待通り新しい50mmF1.4であるならば、その時点でようやくこのFA50mmF1.4も現役を退くときが来るのかも。