酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

新たな取り組みは大失敗に終わる:F1 2016 開幕戦 オーストラリアGP

 今年もF1シーズンが始まりました。過去最大の21戦が予定されている今シーズン、最初の一戦は例年通りオーストラリアGPです。日本からは時差がなくてテレビ観戦しやすいレースです。しかし、テレビ観戦について言えば、今年からとうとう無料放送でのF1中継がなくなり、フジテレビNEXT(有料CS放送)のみとなってしまいました。これは日本でのF1人気凋落のせいなか、FOMのテレビ放映権契約方針の変化なのかはわかりません。

 F1人気に関して言えば、ホンダは復帰しましたが、昨年の成績が惨憺たるものだったことと、日本人ドライバーがいないことが決定的に影響しているのか、凋落の一途を辿っているようで、さすがにこの状況は寂しいものがあります。

 その一方で、先日からチケット発売になったばかりの鈴鹿の日本GPですが、発売開始直後はチケット販売サイトになかなかつながらず、ここ5年以上にわたって毎年難なく入手していた種類のチケットが、発売即売り切れになるという状況に遭遇し、本当にF1人気は衰えたのか?と疑いたくなりました。まぁ、なんとか第二希望のチケットは手に入れることができました。

 さて閑話休題。久々のF1観戦を楽しみましたので、いつもどおり感想文を書いておきたいと思います。ほぼ自分のために書いているようなもので、本ブログではもっとも不人気カテゴリーのひとつですが、今年も全戦観戦記を書く予定ですので、お暇なときにおつきあいください。

「今回に限り満場一致だった」クリスチャン・ホーナー

 オフシーズン中はF1ニュースのチェックを怠っていたので、予選の中継を見て驚いたのですが、今シーズンは予選のルールが大きく変更されていました。

 三つのセッションに分けられ、数台ずつノックアウトされていくという点では同じなのですが、各セッション中にも決められた制限時間が来たときに最下位にいるドライバーからどんどんとノックアウトされていく方式となっており、非常にあわただしい予選となっていました。

 この新方式の目的は、セッションの最初から全員を走らせ、Q3の最後には1位と2位のドライバーだけがコース上に残ることで、最後のアタックで、トラフィックなどの影響もなく一騎打ち勝負が見られる、という点にあったようです。

 ですが、その目論見は大きく崩れさり、一騎打ちどころかQ3の最後は誰もコース上におらず、無人のトラックに向けてチェッカーが振られるという、なんとも締りのない予選となってしまいました。

 それは最初のアタックでハミルトンが圧倒的なタイムをたたき出したところまでは良かったものの、ロズベルグがタイムをうまく出せず、一方でベッテルが2位を取ったところで、ここでベッテルはいくらアタックしても勝ち目がないことが明らかなので、そこでアタックをあきらめタイヤ温存作戦を取ったことで引き起こされました。

 ベッテルは当たり前の戦略をとっただけで悪くないし、ましてや圧倒的に速いハミルトンが悪いわけでもなく、当然予想されたことです。

 見ているわれわれも「なんだこりゃ?」と思ったわけですが、それはF1関係者も即座にそう思ったのか、翌日にはすでにこの新予選方式は今回限りで廃止されることになったそうです。

 F1のような権威あるトップカテゴリーでさえ現状に満足することなく、新しいことを試すのは良いことだと思います。そして「だめだこりゃ」となったら、満場一致ですぐに廃止するという決断の早さも、ある意味F1がまだ健全に運営されている証拠でしょう。

 でも、もっと良く考えて慎重にことを運んで欲しいものです。とりあえず、次戦からは昨年までと同様の予選方式に戻されるということで一安心です。

「僕らにとって勝利のようなものだ」 ロマン・グロージャン

 ここ数年はいくつかのチームがF1を去り、エントリー台数が減る傾向にあった中、今年は久しぶりに新チームが加入しました。それはアメリカ資本のハースです。ワークスではない完全なるプレイベーターで、その実力は未知数... というより、やはり初年は苦労するだろうと思われていました。

 ベテランの域に入ってきたグロージャンが加入することとなりましたが、彼としても「今年の目標は1ポイント」と言っていたくらいです。謙遜が含まれてるとしても、十分に妥当な目標でした。

 それがデビュー戦でいきなりの6位入賞。フェラーリの1台がリタイアした以外に、特に上位が総崩れした棚ボタだったわけでもなく、ウィリアムズやトロロッソと互角に渡り合っての堂々の8ポイントです。

 ラッキーだったといえば、途中赤旗中断があったことはグロージャンに非常に有利に働きました。それにより彼はタイムロスすることなくタイヤ交換をして事実上ピットインすることなく走りきったのですから。

 もちろんレースペースがそれなりにあったからこそこのポジションを維持できたわけですし、定評あるメルセデスPU最新型のフェラーリPUを搭載しているアドバンテージもあったことでしょう。

 この結果はグロージャンが言うように「勝利に等しい」というのは決して大げさなコメントではないと思います。ハースは今シーズン、中段勢をかき回す台風の目になりそうです。

「僕がまだ生きている理由はおそらく、FIAが素晴らしい仕事をして過去10年か15年間に安全性を高め続けているおかげだ」 フェルナンド・アロンソ

 バラバラになり、逆さまになった小さなモノコックだけが突如としてテレビに映ったときはぞっとしたものです。ですが、アロンソはその残骸の中からすぐに這い出してきました。彼曰く「テレビで観戦してる母親に無事を知らせなきゃ」と思ったそうです。

 コンクリートウォールに囲まれたメルボルンのコースで、ちょうどうまいことグラベルとタイヤバリアがあるエスケープゾーンに向かって飛んでいったのは、不幸中の幸いだったのでしょう。

 オープンホイール、オープンコクピットのマシン同士の接触は大クラッシュを引き起こしやすいわけですが、今回はF1マシンのカーボンモノコックの頑丈さと、シートやシートベルトやヘルメット、首を固定するHANSシステムがしっかりとドライバーを守っていることを証明しました。それにもちろんガソリンが漏れて出火するようなことも、漏電して感電するようなこともありませんでした。

 それでも完璧ということはなく、2年前の鈴鹿で起きたジュール・ビアンキの事故を忘れることは出来ません。あの場合はF1の安全システムは機能しなかったのですから。

 クローズドまでは行かないものの、いずれはコクピットを保護するシステムが導入されるといわれ、いくつかテストもされています。今回の事故で「F1は十分安全だ」と安心するのではなく、こういった更なる安全策が必要だとファンも含めてみんなが納得するきっかけとなるのだろうと思います。

次はバーレーンGP

 第2戦は2週間後、バーレーンGPです。暑い砂漠のレースはフェラーリに有利になるのでは?と言われています。今回もベッテルは赤旗が不利に働き、しかもメルセデスの奇襲作戦にまんまとやられてしまいました。でもレースペースはあることを証明したので、十分にチャンスはあると思います。白熱したレースを期待したいと思います。