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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

ニセコ2016(前編):バックボウルにニセコの神髄を見る

スキー 旅行

 今年もニセコに行ってきました。毎年訪れるようになってもう何年目なのかよく覚えていません。それでも飽きるどころか、毎回新しい発見があるので止められません。ニセコはスキー場の中でも特別な場所で、世界的にもトップレベルの雪質と積雪量、そしてなんと言っても、比較的アプローチが手軽でありながら、本格的なディープパウダーに出会える可能性が高い希有なスキーエリアです。
 自然相手の遊びですから、毎年必ず完璧なディープパウダーに巡り会えるわけではありません。過去には嵐でほとんど滑れなかったり、降雪がなくてどこもカチカチだったりしたこともありましたが、そういった「ハズレ」も含めて楽しむしかありません。

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 そうは言ってもやはり良い雪に巡り会いたいわけで、昨年現地で聞いた「ニセコのベストシーズンは1月末。その時期なら毎晩たっぷり降雪があって毎日ディープパウダーに出会えるよ」という言葉を信じ、その時期に合わせて行ってきました。

 はたして今回は新しいルートを体験し、多くの初体験と発見がありました。そのハイライトはなんと言ってもバックボウルに初挑戦したことです。ここはニセコのディープパウダーの神髄が詰まった最強にして最高の斜面なのです。

HANAZONOパウダーガイド

 ニセコでは「ニセコルール」を遵守することを前提に、スキー場コース外の滑走が認められています(というか、禁止されていない、と言った方が正しいかも)。スキー場の普通のコースとは別に、コース外に出るゲートが計11個あります。それぞれ天候やコンディションに応じて、オープンまたはクローズが管理されていますが、ひとたびゲート外に出たらコースとして整備されたものではなく、自然のままの冬山そのものとなっています。

 比較的簡単で安全なところから、難易度が高いところまで色々あるのですが、いずれも一歩間違えると命に関わる事故に繋がりかねません。ゲート外に出るにはしっかりした装備と情報、あるいは経験が必要です。

 ということで、私たちは1年に1回しか来られないこともあり、経験も知識も不足しているので、毎年ガイドサービスを利用しています。ゲート外へ連れて行ってくれるガイドサービスはニセコエリアに沢山ありますが、私たちは花園リゾート直営のHANAZONOパウダーガイドを利用しています。

 付いてくれるガイドさんも指名可能なので毎年同じ人にお願いしています。我々のスキル、希望や昨年までの実績、その日のコンディション等々を考えて一番良いコースを提案してくれます。

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 ホテルまで迎車付きで早朝にスキー場へ。注意事項等一通り確認後、装備をチェックします。バックカントリー用のバックパックは自前で用意しましたが、ビーコン、スコップ、ゾンテはすべて貸してもらえます。もちろん100mmオーバーのファットスキーは必須。これはもちろん自前で持っていますが、ニセコにはファットスキーのレンタルも山ほどあります。

 準備が出来たらいざ出発!

ファーストトラック

 HANAZONOパウダーガイドの一番分かりやすい利点は、リフト運行前のファーストトラックを滑れることです。バックカントリーに出る前にまずは準備運動として、普通のコース内で足慣らしです。

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 こうしてまだ運行準備中のリフトに乗せてもらいます。

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 人っ子一人いない山頂付近! 心配していましたが前夜にはそこそこ降雪があったようです。しかも雲が取れ、風も穏やかでコンディションは抜群。

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 圧雪せずにわざと降りっぱなしで残してあった斜面を滑り降ります。リフト運行前なのでここもフレッシュトラック! でもまだ"ディープ"というほどではない、そこそこパウダー。これはこれで超気持ち良いです(^^;

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 ストロベリーゲートも出てみました。こちらもまぁまぁでした。ストロベリーゲートは、ニセコの奥深さに初めて触れた思い出のコースであり、しばらくはここだけで十分満足していましたが、今となってはこれだけでは物足りません。なのに1本ここを滑るだけでかなり汗をかきます。気温は優にマイナス10°を下回ってるというのに。

アンヌプリ山頂へ

 準備運動が済んだところでいよいよ山頂へ向かいます。ニセコのスキー場が広がるアンヌプリ山のピークへはリフトだけではたどり着けません。最後の数百メートルは自力で山登りが必要です。

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 相変わらず青空。適度な風で水分をほとんど含まない軽い雪が舞い上がっています。ニセコで最も標高が高いところまで上れるキング第4リフト(通称"K4")はシングルです。ここは花園ではなくグラン・ヒラフが運営するリフトなので、普通に運転開始されるまで待たなくてはなりません。でもちょうどタイミング良く運行開始直後に乗れました。

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 K4リフトを降りたところで山登りの準備。バックパックにスキー板をくくりつけます。なお、私が今シーズンのために新しく買ったバックパックはドイターの「フリーライダー24 SL」というもの。バックカントリー用に色々工夫が凝らされたバックパックです。

 Amazonで買ったのですが、届いてみてこれが女性用であることに初めて気がつきました。少し背丈が短く、腰回りの形状が女性向きに作られているようですが、特に背負うことに問題はなかったのでそのまま使ってみました。腰のバックルがやや高い位置に感じられますが、実使用上に特に不都合ありません(身長169cm、BMI約25、男性の個人的な意見です)。

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 山頂へ向かうG3ゲートを出て山登り開始です。同じように山頂を目指すスキーヤー&ボーダーが列を成しています。ちなみに半分以上はオーストラリアを中心とした海外からやってきた人々です。

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 下を見下ろすとこんな感じ。人の列はK4リフトまでずっと続いています。意外に急斜面で振り返るのは怖いです。重いスキーを背負ってることもあってクラッときます。

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 30分ほどかけてようやくアンヌプリ山頂へ到着しました。我々はかなりゆっくり登ってきたのですが、早い人だと15分くらいで登れるそうです。山頂には測候所跡の記念碑と、避難小屋があります。昨年あたりよりもやや雪は少ないように感じました。時期のせいか暖冬の影響かは分かりません。

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 その後も続々と登ってきます。このアンヌプリ山頂からの斜面こそが、ニセコを世界的に有名にしたディープパウダーの素晴らしい斜面なので、雪が降った翌朝はこうして多くのパウダーフリークがやってきます。この日は日曜日でしたし、特に多かった方かも。

バックボウル

 山頂で一休みしたらいよいよ滑ります。昨年は山頂から北斜面を滑り降り、東尾根方面に連れて行ってもらっていましたが、今年は北斜面とは反対側のバックボウルへ行ってみましょう、ということになりました。ニセコでもっとも斜度があるとも言われ、しかもその斜面は深い雪に覆われ、400m近い高低差を一気に駆け下りることになります。

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 山頂から尾根をしばらく進んでいきます。右側が昨年まで行っていた北斜面。左側がバックボウルです。北斜面もたいがいな斜度ですが、左側はもっと急で斜面が見えていません。

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 尾根からバックボウルをのぞき込んでみるとゾワゾワしてきます。ここ本当に滑れるのでしょうか。なんだかほとんど断崖絶壁のようなのですが...

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 この日は視界がクリアで遠くまでよく見えます。それがかえって恐怖心を掻き立てているような気もしますが、遠くを指さしながら、ガイドさんが行くべきコースや、行っては行けないエリアなどを丁寧に説明してくれます。怖くても後傾にならないこと、足をしっかり曲げてターンを切ること、雪崩に巻き込まれる危険を避けるために谷底で止まらないこと... など注意を受けているところです。

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 さあ、意を決して飛び込んでみましょう! なるようになる!


 これが山頂からバックボールを滑り降りたときの動画です。私が先頭で行けと指示されました。そんな!初めての斜面なのに!

 動画は前半部が導入で、後半部分がハイライトです。斜度にビビってスキーを下に向けられず、とにかく横を向いて一生懸命スピードを殺しつつ滑っているのですが、普通の斜面とは違ってそのまま相当な距離を滑落していく様子がわかります。もうギリギリ限界で相当なスピードが出ていると本人は感じていたのですが、動画を見るとかなりもっさりしていますね。いずれにしろ、必死で滑りました。うん、がんばった!

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 バックボウルを見上げたところ。真ん中の滑走痕は私が付けたやつ。斜面の中程に一人友人が滑り降りてきてる真っ最中。さらにずっと上の方に二人待機しているあたりがスタート地点です。いや、この距離と高低差を一気に滑ってきたのか!と自分でも驚きました。良くやった!!

 なおこの日の雪の状態は、バックボウル的には最高のコンディションではなく、ガイドさん曰く「むしろ非常に難しい状態だった」とのことでした。でもこんな急斜面にこれだけ雪が付くんだからすごいです。最高の状態のバックボウルにはまた来年以降期待しましょう。いつかはきっと出会えるはず。

見返りボウルからアンヌプリスキー場ベースへ

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 その後は谷に沿って進み見返りボウル方面へ抜けていきます。この辺は雪が吹きだまっていて積雪が一段とすごいことになっていました。ディープパウダーという意味ではこちらのほうで十分以上に堪能できました。

 しかしさらにガイドさんが言うには「今日の雪は軽すぎてイマイチ。もうすこし水分があれば良いのに。」とのこと。全国の、いや全世界のスキーヤー&スノーボーダーがうらやむような贅沢な悩みです。確かに滑っていても音も抵抗もなくサラサラとしていてスキーがどんどん流れていく感触は独特のものでした。

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 深い谷間から見上げると改めてこのエリアの斜面の厳しさを思い出します。そしてノートラックの雪面の美しいことと言ったらありません。こういった自然の中に入り込めるのは、スキー場のコース内では絶対に体験できない、バックカントリーの醍醐味だと思います。

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 最後はほとんど斜度はなくなり、白樺の森の中を抜けていくツリーランをたっぷり楽しめます。斜度はなくなっても今度は速度とラインの微調節に神経を取られ、初心者にはこれもまたなかなか難しいところです。


 この様子もまた動画に収めておきました。動画の最後にこういったツリーランでありがちな事件が起こります。私の前を行っていた友人が、雪の中に埋もれていた木の枝にスキーを引っかけて前転してしまいました。積雪はたっぷりあるのでそういった意味では安心ですが、木にぶつかったり、今回のように引っかかったりすると、足や腕を骨折する心配があるので危険です。

まとめ

 ということで、最後はニセコアンヌプリスキー場のほとんどベース付近のコースに復帰してバックボールツアーは終了です。花園リゾートを出発して、アンヌプリ山のピークを経由し、完全に反対側のアンヌプリスキー場まで、ほぼアンヌプリ山を真っ直ぐ横断したことになります。

ニセコルール マップ
 その行程をニセコルールマップに描いてみるとこんな感じです。GPSログ等ではなくマップ上に手書きでルートを描き加えたものです。右端の花園リゾートからスタートし、青線はリフトで移動しK4リフトの終点まで。そこからG3ゲートを出て緑線の部分はハイクアップしたルート。アンヌプリ山頂からはスキーを履いて赤線が滑走したルートで、アンヌプリスキー場のベースが終点です。記憶で引いたものなので正確ではないかもしれませんが、大体こんなルートだったと思います。

 ちなみに山頂から反対側の斜面に下って再び花園リゾートのベースに戻るのが、去年までの北斜面から東尾根ルートです。トラバースやツリーランを含めて滑走距離自体はそちらの方が長いかもしれません。

 ということで、今冬最大のイベントを無事に終了しました。わずか半日のバックカントリーツアーなのですが、これでもう十分過ぎるほど楽しみました。体力的にも脚力的にもこれが限界です。この思い出と次回への期待で、長い夏を乗り切れると思います(A^^;

 ニセコの神髄中の神髄と言われるバックボウルに踏み込むことが出来て満足です。最高のコンディションではなかったし、何しろスキーの足前がへっぽこなので、ディープパウダーの急斜面を思い切り滑ったと言うよりは、ただズリズリと斜めに下ってきただけですが、それでもバックボウルの片鱗を味わえたと思います。

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 なお、ニセコの滞在日程は例年通り4泊5日だったのですが、そのほとんどは天候調整のための予備日と言ってもいいくらい。今回はさすがにベスとシーズンと会って、到着日翌日の2日目に早くもバックカントリーに出かけることが出来たので、残りは余韻を楽しむための消化日程となりました。それはそれでまた新しい発見があり、思う存分楽しめたので「後編」にまとめたいと思います。

後編は↓こちらです。

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