自分の生まれ育った地元、江戸は17世紀以降の町であり、それ以前の中世の歴史はあまり残っていませんが、関西はその時代に関しては歴史ドラマと遺跡、遺構の宝庫です。ということで、自分でもいささかミーハーだな、と思いつつ、NHKの大河ドラマに便乗して姫路周辺を探索してきました。
持ち物はiPhoneとカメラだけ。カメラはK-3 + SIGMA 18-35mm F1.8のみです。iPhoneにはJR西日本が配布するアプリ「マイフェバ」をインストールし、その中で開催されている「黒田官兵衛スタンプラリー」をモデルコースとして巡ってみます。
コースは長浜、姫路、岡山、博多の4コースがあります。もちろん今回は姫路コースを巡ります。チェックインポイントは9カ所ありますが、5カ所以上行けば一応合格となります。目指せ全制覇!
姫路
姫路駅前に降り立ちました。駅前からまっすぐ正面にお城が見える風景は有名です。天気の良い土曜日の昼間、もしかしたら駅前からして大混雑だったりして?と心配していましたが、全くそんなことはありません。
駅からまっすぐ歩いて姫路城にやってきました。三の丸広場から眺める姫路城本丸。国宝であり、世界遺産でもあります。日本国内に城として現役だった時代からその姿を残しているのはわずか12城のみ。姫路城はその中でも規模も最大級のお城です。築城から約400年にわたり、戦にまみえることなく、近代の戦災に遭うこともなく、風雪にも耐えてきた、不戦、不焼の城です。
数年前から平成の大修理修復の工事はまだ続いており、巨大な足場やクレーンがまだまだ残っています。工事は来年春まで続くため、今もまだ天守の中まで入ることは出来ませんが、外観を拝むことは出来ます。外装の修理はほとんど終わっており、真新しくなった姿を見てきました。まるで新築のお城みたい。
なお、現存するこの姫路城は、関ヶ原の後に姫路城主となった池田輝政が建てたもので、黒田官兵衛の時代のものではありません。しかし黒田時代の石垣などの遺構も残っています。
菱の門をくぐりまずは西の丸方面へ。ここは桜の木がたくさんありました。春には凄い景色になっていることでしょう。桜と姫路城なんて出来すぎの組み合わせですが、撮ってみたいですね。
見学できるところは限られていますが、それでも見応えは十分あります。長い長い迷路のような百間廊下をずいっと進んでいくわけですが、この廊下自体がレプリカではない、当時のままの建物かと思うと不思議な気がしてきます。
百間廊下の奥には江戸時代に入り、千姫のために造られたという化粧櫓にたどり着きます。他の部屋がすべて板の間だったのに対し、ここは畳敷き。この部屋もほぼオリジナルのままだそうで、中に入れるのが不思議なくらい。千姫が本当に見ていた景色です。
百間廊下を出て城郭を進み天守へと近づいていきます。その道中、あちこちにある壁には狭間(弓や鉄砲をいるための穴)がやたらにたくさん開いてるのが姫路城の特徴でもあります。籠城戦の鉄壁の防御が考えられていたのでしょう。しかしそれが生かされることは遂にありませんでした。
石垣も高くて複雑な形状をしていて見応えがあります。場所によってそれぞれ積まれた時代が異なります。
「はの門」をくぐり二の丸へたどり着きました。現在見学できるのはここまで。ここから先は未だ工事中で入れません。大天守と小天守が折り重なり、超格好いいです。クレーンもここからなら視界に入りません。今度は是非中まで入ってみたいです。
城内の「リの一渡櫓」では「官兵衛の歴史館」と題して、官兵衛の時代のものを始めその後江戸後期にかけての黒田家にまつわる品々が展示されていました。これらの兜や鎧、馬具もそうです。展示品も興味深いですが、そもそもこの会場となっている「リの一渡櫓」自体が、姫路城の遺構の一部なわけで、なんとも贅沢な展示でした。
天守は東西二本の大柱で支えられているそうですが、そのうち西大柱は昭和の大修理の際に交換されています。これが創建時からのオリジナルの大柱。根元の腐りは早い段階から進行していたらしく、江戸時代に根本付近を修復した跡があります。こんな木を切り出して運び、立ち上げてこんな大きな木造建築物を建てた技術力は凄いですね。それが300年以上の風雪に耐え、今でも残っているのですから。ちなみに東大柱は今でも天守を支えています。
昭和の大修復は今回の修復よりも大がかりだったようで、この柱以外にも天守の傾きの原因となっていた基礎が交換されたそうで、オリジナルの基礎石の遺構が移設されていたり、本当にこのお城の歴史を直接感じさせる、素晴らしいものがたくさんあります。姫路城は半日くらいかけてじっくり見学したい場所でした。
お城を出たところで「ひめじの黒田官兵衛大河ドラマ館」という催しが行われていました。ここにも城内の「官兵衛の歴史館」同様に縁の品々が展示されているか… と思えばそうではなく、これはNHKの大河ドラマに関する展示館です。名前からしてそうですからね。でもこのドラマを見ている人であれば、それなりに楽しめる内容でした。
姫路城の南東に播磨国総社があります。古くからこの地にある神社で、この地を治めていた黒田家もこの神社を崇敬し保護してきたそうです。境内には黒田家の軍旗、中白の旗幟がたてられていました。古くから土地に根付いた神社の例に漏れず、たくさんの神様がまつられ、それぞれのお社が並んでいました。
明治天皇が姫路城へ訪れる際に造られたという御幸通りを通って駅に戻ります。ここから今度は新快速ではなく、各駅停車にのって神戸方面へ向かいます。
御着
古い家が建ち並ぶ小さな裏通りを進んで目的地を目指します。この道は実は旧西国街道(山陽道)です。
この道を進んでいくと、黒田官兵衛が秀吉の前に仕えていた、小寺氏の居城、御着城址があります。大河ドラマの影響でしょうか、こんなわかりやすい看板が要所要所に立っていました。何気なく渡ったこの天川橋にも、後々謂われがあることが判明します。
はい、到着しました、御着城址。現在はここに城があったことを感じさせるような、石垣などのわかりやすい遺構はほとんど残っていません。そもそも城郭があった場所は、国道2号線が突っ切っています。
国道沿いの城跡には現在姫路市の出張所が建ち、ちょっとした公園になっています。そこには黒田官兵衛の顕彰碑が建ち、黒田家に縁の深い「目薬の木」が植えられていました。そして予想していなかったことに、御着城址には子供達を含むボランティアの方々がいて、私のようにふらっと現れた観光客に、丁寧に御着城と残されている遺構、ちょっとした歴史などを説明をしてくれました。料金が必要となるような施設はいっさいありません。
御着城址のすぐ横には黒田家廟所があります。門には藤をかたどった家紋がありました。真ん中ののっぺらぼうのお餅みたいなのは、官兵衛の師匠とも言える竹中半兵衛の家紋だそうです。
ここには官兵衛の祖父重隆と生母・明石氏のお墓があります。写真はお母さんのほうです。お祖母さんはどこへ行ってしまったんでしょうかね?
国道2号線を挟んだ反対側、本丸があった場所には小寺大明神という、名前の割には小さな祠があります。御着城主であり、この一帯を治めていた小寺家の人びとが祀られているそうで、現在でも子孫の方々が毎年法要を営んでいるとか。
さらに国道を渡って市役所出張所側に戻り、その裏に回ってみると、立派な石橋がありました。これは先ほど渡ってきた天川にかかっていた旧橋を移設したものだそうです。この橋自体は御着城があった時代からずっと後、江戸時代末期に架けられたものですが、なんと昭和47年まで現役で使われていたものだそうです。台風で流されてしまったそうで、橋の半分くらいは失われているそうです。
ということで、15分くらいで全部見られるかと思っていたのですが、気がついたら1時間くらい滞在していました。完全に観光地化した姫路城に対し、規模は圧倒的に小さく、見るものもそれほどないながらも地元に根付いた遺構というのも、なかなか良いものです。
真実はどうであったかは別にして、ここにそういう歴史があった、ということを知るきっかけとなった大河ドラマは、やはり見ていて良かったと思えます。
ということで、黒田官兵衛スタンプラリーの姫路コースは無事に制覇しました。とっいっても9スポット中8スポットということで、ひとつだけ取りこぼしましたけど。他のコースも行ってみたいです。長浜も良いし、岡山も行ってみたいです。あ、もちろんあと博多も。
より大きな地図で 黒田官兵衛の足跡を追って播磨を巡る日帰りの旅 を表示
明石海峡大橋
それがここ、明石海峡大橋です。舞子駅で降りるとすぐ目の前。この日は天気が良かったので景色が良さそう。ということで、ぶらり途中下車の旅を気取ってみました。
初めて見ましたが、レインボーブリッジやゲートブリッジとは規模が違いますね。圧倒されました。
橋の下は公園になっています。一番海沿いにおじさん達が群がっています。どうやら将棋をやっているようです。なぜこんなところで? 自由で良いですね。
瀬戸内海も真っ青で綺麗でした。いつか淡路島にも渡ってみたいです。
ということで、播磨を巡る日帰りの旅は終了です。そもそも根性がない方なので、途中で疲れて「もういいや」ってなってしまうかな?と、自分自身を危惧していたのですが、思ったよりも密度濃くあちこちを見て回れました。本当はスタンプラリーの9箇所目も行きたかったし、それ以外にも行ってみたいところがたくさんあって目移りしてしまいました。
となると小さいカメラでも良いのですが… そこはやはり一眼レフにこだわりたいですよね(A^^; SIGMA 18-35mm F1.8はこういうスナップ用途には本当に向いています。上に書いたように記録が主な目的だったので、F5.6程度に絞ることが多かったです。でもいざというときF1.8まで開けられるという余裕はとても心強いです。ただ、こうして歩き回る散歩目的だと、やっぱりちょっと重たくてしんどいですが。