酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2013年F1第7戦 カナダGP

 ヨーロッパラウンドが始まったばかりと言いながら、F1はいったん大西洋を渡り北米大陸へ。初夏の名物レースの一つとなったカナダGPがモントリオール市街地サーキットで行われました。荒れたレースになりやすいカナダGPですが、今回も予選がウェットコンディションとなり、ウィリアムズのボッタスが3番グリッドに滑り込むという波乱がありました。しかしそれ以外はきわめて順当なスターティング・グリッドになりました。
 今年はとかくタイヤの使い方がレースの肝となっていますが、さすがにピレリもこれまでの反省点を盛り込んで、ここカナダGPからは全く新しい構造のタイヤを持ち込んできました。そのため、タイヤの寿命は一気に伸び、今回スーパーソフトとソフトという組み合わせでも、ほとんどのチームが1ストップ作戦か2ストップ作戦に分かれるという、久々にきわめて真っ当なピット戦略がとられるレースとなりました。
 カナダのこのコースは壁に囲まれた狭いセクションが続いたかと思えば、ヘアピン後の長い長いストレート、そして最後の名物シケインを立ち上がるときはやはり壁をすれすれにかすめていくという、見どころの多いサーキットです。

 いつもは上位のドライバーばかり取り上げていますが、今回は目先を変えて「ペナルティを食らった」ドライバーに焦点を当ててみたいと思います。

「ペナルティは間違っている」 パストール・マルドナド/ウィリアムズ

 レース序盤、ヘアピンへの進入でフォースインディアのエイドリアン・スーティルに追突してしまったマルドナド。各車がまだ接近している状態で、しかもヘアピンの進入となればポジション争いも熾烈になります。スーティルのブレーキが早かったのか、あるいは単純にブレーキングミスだったのか。確かにテレビの画面で見ていても良くあるレーシング・アクシデントのように見えました。
 マルドナドがレース後にコメントしているように、追突の影響もそれほど大きくありませんでした。スーティルをコース外に押し出してもいないし、リアウィングに少しダメージは負ったようですが、リタイアせざるを得ないほどダメージを与えたわけでもありません。後続車を危険に陥れたような様子も特にありませんでした。
 コース上に残ったからこそペナルティが出たのかもしれませんが、確かにマルドナドに対して少し厳しすぎるんじゃないの?という気もしなくもありません。サッカーのイエローカードのように、累積ペナルティポイント制が取られているわけではありませんが、過去の行いに対する「心象」のようなものが作用してるとしたら、確かに場合によっては不公平かな?と思います。
 マルドナドのこれがペナルティ対象だとしたら、アレとかアレとかあの時のアレとか... ペナルティが出てもおかしくないのに何もなかった事例がたくさん思い浮かびます。

「ルイスの後退は僕のせいじゃない」 エイドリアン・スーティル/フォースインディア

 マルドナドの被害者となったスーティルも、レース終盤8位走行中にペナルティを受けてしまいました。彼にとっては散々なレースとなりましたが、それでも10位入賞したのだから、今年のフォースインディアは侮れません。
 さてそのスーティルのペナルティの理由は「ブルーフラッグ無視」です。1周先行し2位争いをしていたルイス・ハミルトンとフェルナンド・アロンソが追いついてきたときに、コースを譲らなかったことに対するものです。ハミルトンはスーティルに行く手を阻まれ、ペースを乱し、結局アロンソにオーバーテイクされてしまいます。その間接的な原因を作ったのがスーティルだと判断されたようです。
 スーティルの言い分は、ちゃんとレギュレーションで決められた範囲内で道を譲ったこと、そしてハミルトンは早晩アロンソに抜かれていたであろうということ。そしてバックマーカーの譲り方は、いつもどこでも問題になっていることなどを理由に、自分に下ったペナルティは不当だと主張しているようです。
 カナダのコースは、特に前半部分は抜きにくいこともあり、問題を難しくしているかもしれません。スーティルが行く手をふさがなくても、ハミルトンがどのみちアロンソに抜かれていたのも多分その通りでしょう。しかしハミルトンがペースを乱し、残されていたわずかなギャップと抵抗のチャンスが全て消え去ったのも事実かと思います。
 アロンソはともかくハミルトンはチャンピオン争いに加わることはできないでしょう。いずれにしてもまだ7戦目です。後で振り返れば重要なポイントになり得るかもしれませんが、現時点ではスーティルの行動がチャンピオン争いに与える影響度はまったく不透明です。そういう意味ではこれもまた厳しすぎるかな?と思います。
 むしろ今後チャンピオンシップに絡むトップの争いは、何をおいても邪魔しないように、という見せしめだったのかもしれません。

「ウェバーに謝りたい」 ギド・バン・デル・ガルデ/ケータハム

 今回のレースで出たペナルティで最も重い処分を受けたのがギド・バン・デル・ガルデです。レースをリタイアしてしまったこともあって、次回のレースで5グリッド降格処分を受けました。常に最下位を争っているケータハムのことですので、事実上最後尾スタートが確定したと言えますし、実のところそれほど実害のある処分ではないとも言えます。
 何が起きたかと言えば、ヘアピンでマーク・ウェバーに周回遅れにされようとしたときにイン側を閉めてしまい、接触してウェバーのフロントウィングを壊してしまったのです。ウェバーはそのままウィング交換せずにチェッカーまで走りきりましたが、当然ながら空力は大きく狂てしまったはず。アロンソに抜かれてしまったのはウィングが壊れたせいだけとは言えませんが、これもまたハミルトンの場合と同様に少なからず影響が出たと思われます。
 ペナルティを受けたドライバーの中では殊勝に自分のミスを認めるコメントを出しているわけですが、それもそのはず実際に誰が見ても悪いのはギド・バン・デル・ガルデなのです。直前からブルーフラッグがしきりに振られていて、速いマシンが来るのは分かっていたわけで、それもヘアピンの進入で追い越しに来るというのは十分に予想できたことです。彼自身はヘアピン後のストレートで生かせようとしていたのかもしれませんが、いずれにしてもあまりにも不注意でした。ケータハムに乗るからにはレース中にラップされることは、もはや目をつぶっていてもできるようにならなくてはなりません。

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 ということで、ドライレースでタイヤ戦略も比較的安定していた割には接触とそれに絡むペナルティの多いレースでした。それも含め十分に面白いレースだったのは確かです。ベッテルは完璧な先行逃げ切りを決め、アロンソはオーバーテイクショーを繰り広げ、メルセデスはレースペースがあともう一歩、ライコネンは全く振るわずに9位に沈み、ポイントランキングでもアロンソに抜かれてしまいました。
 予選で番狂わせを演じたボッタスは結局ポイント圏外へ。ドライではマシンの性能差は如何ともしがたいようで、ウィリアムズの低迷はまだまだ続いています。そしてここへ来て俄に面白くなってきているのが、中段勢の争い。なんとフォースインディアはマクラーレンを上回り、トロロッソも比較的好調でポイント常連になりつつあります。そして去年まで比較的好調だったザウバーはこれら3チームに大きく水をあけられています。


 次回のレースはまた少し間が空いて再来週、再びヨーロッパ大陸に戻り、伝統のイギリスGPです。