酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

X-Pro1との1ヶ月

 X-Pro1をお借りして早1ヶ月が過ぎ、返却期限を迎えてしまいました。1ヶ月は十分長いようでいて、しかし週末が4回しかないと考えればあっという間でもあります。この1ヶ月間で心ゆくまで味わい尽くしたとは言いがたいのですが、FUJIFILM X-Pro1について現時点での私なりの結論をまとめておきたいと思います。

IMGP3021.jpg

 なお、また例によってX-Pro1で撮った写真をベタベタと貼ってありますが、基本的に本文とは直接関係ありません。


このレビューで使用されている商品はWillVii株式会社が運営するレビューサイト「みんぽす」 が無償で貸与しています。本レビュー掲載は無報酬です。また、WillViiは掲載内容に一切関与していません。(本情報開示と事実誤認時の修正を除く)レビュー商品無償貸し出しサービス 「モノフェローズ」に関する詳細はこちら
(WillVii株式会社みんぽす運営事務局)

デザイン

 まずは外観。写真で見るよりも実物は大きく感じます。特にハイブリッドマルチビューファインダーが組み込まれていると思われる部分は、分厚さというか見た目に"重さ"を感じます。実際には見た目ほどの重量は感じず、金属製の外装も意外に素っ気ないのですが、細部まで気を遣ってしっかりと作り込まれていることが分かります。

DSCF6381.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF35mmF1.4 R, F1.4 AUTO (1/2900sec, ISO100, AWB, PROVIA)

 一番最初のエントリーでも書きましたが、ともするとレトロ路線と言われるXシリーズのデザインですが、このX-Pro1はちょっとそう言うのとは違うよな、と思います。ダイヤルオペレーションにブライトフレーム式の光学ファインダーを搭載したレンズ交換式カメラ、というだけで古くささをいくらか感じるわけですが、そのわりにわざと作り込まれたレトロ感ではありません。

操作性

 多機能なカメラはとかく操作性が問題になりがちですが、手にしてから一通りメニューを眺めているうちに大体つかめてきました。コンパクト機とは言え富士フイルム製のカメラを過去に使ってきた経験のおかげかも知れません。また、Qボタンの存在は結構大きなキーとなります。これはPENTAXの一眼レフで言うところのINFOボタンに相当するもので、現在の基本設定状況を一覧で表示しつつ変更も可能なクイックメニューが表示されます。ほとんどの操作はここで済んでしまいます。

DSCF6422.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF60mmF2.4 Macro R, F2.4 AUTO (1/13sec, ISO200, AWB, PROVIA)

 操作性で一番謎なのはレンズ交換式カメラにして「マクロボタン」があること。どうやら各レンズの最近接撮影距離付近を使うにはこのマクロモードをONしなくてはいけないようです。このモードを入れることによって、ファインダーモードはパララックスのないEVFに固定されるのは分かるとしても、近接物に対してのAFの動作からして変わってしまうので、知らないと大いに戸惑います。どの辺からマクロ領域なのか分からないし、ピントが合わない理由をカメラも何も言ってくれません。

 この辺の動作はファームウェアがV2.00になって少し変わりましたが、基本的にマクロレンズじゃなくても近いものを撮るときはマクロモードにする必要はあります。最近はコンパクト機でもマクロモードはシームレスになって意識しなくなってきた時代にあって、どうも釈然としない部分です。

 そしてもう一つよく言われるのが電子ダイヤルの謎。これ、本当に使いどころが分かりません。MF時に拡大するためのボタンとして使うことは分かりましたが...。確かにもう少し活用の余地があるように思います。ダイヤルとして決して使いやすい位置、サイズではないのですが。

ファインダー

 さて、X-Pro1の大きな特徴の一つがハイブリッドマルチビューファインダーです。2段階に倍率変更が可能な光学式ファインダーに、液晶を使ったブライトフレームと撮影情報がオーバレイされる仕組み。そしてEVFに切り替えてしまうことも可能。OVFとEVFのいいとこ取りをした贅沢なファインダーです。これに背面液晶によるライブビューを合わせると、合計で3通りのファインダーを使い分けることが出来ます。

DSCF6394.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF35mmF1.4 R, F1.4 AUTO (1/1250sec, -1EV, ISO100, モノクロ)

 デジタルカメラにとって光学ファインダーであることの必然性はあるのか? ただ趣味性を満足させるためだけのおもちゃではないのか?という考え方もあるかと思いますが、光学ファインダー大好きな私としては、ブライトフレーム式の光学ファインダーにはそれはそれでちゃんと意味があると思います。
 レンズとセンサーが捕らえた最終的な映像が見えるEVFはデジタルカメラならではのもので、その恩恵は山ほどあるわけですが、それ以前に被写体の真の姿を見るということも、ファインダーにとっては重要な役割です。OVFの目的は偏にそこにあると思います。

 この両者はその特性の差は、知らないうちに撮影のプロセスを変えていると私は思います。とりあえず提示された案(このままシャッター切るとこう映るよという結果予測)から調整を加えていくのか、あるいはこの被写体の生の姿をみることからからスタートして、最終的にどう撮りたいか、そのためにはどうするのか?を考えていくのか。
 良い悪いではなく好みの問題かも知れませんし、しかし結果は実は大きく異なる可能性があるようにも思えます。

DSCF6828.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF18mmF2 R, F4.0 AUTO (1/18sec, ISO1000, AWB, PROVIA)

 今回X-Pro1を使ってみて、光学ファインダーの良さを改めて感じましたし、その一方でその弱点を補完することが出来るEVFの良さも実感しました。状況に応じてこの両方を使い分けることが出来るこのハイブリッド式のファインダーは、やはりカメラのファインダーとしても一つの理想型だと思います。

解像度

 ファインダーと並ぶ、X-Pro1のもう一つの大きな特徴がX-Trans CMOSセンサー。フィルムから考え出された独自のRGB画素配置にローパスフィルターを使わない約16Mピクセル、APS-Cサイズのセンサーです。このセンサーから得られる映像は、高解像で偽色もモアレも押さえ、色分解も良いとされています。

 で、実際のところどうかと言えば、残念ながら私にはよく分かりませんでした。もともとあまり等倍付近で詳細な解像度をチェックするような見方をしてないせいもあります。あるいは手ぶれ補正がないので、微妙に手ぶれしてせっかくの解像度を生かせていない場合も多かったかと思います。

DSCF6611.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF60mmF2.4 Macro R, F2.4 AUTO (1/220sec, ISO200, AWB, PROVIA)

 私が常用しているPENTAX K-5は約16MピクセルでAPS-Cサイズなので、センサーの基本スペックはこのX-Pro1と同等ですが、方や普通のベイヤー配列で、わりとローパスフィルターが強めにかかっていると言われています。ただし、それと見比べてX-Pro1の映像に一目で差が分かるほどの何かすごい違いが感じられたわけではありません。

 ただピント確認のために拡大したときに、びっくりするほど細部まできっちり解像していて、まるで拡大してるんだかしてないんだか分からなくなるようなことが確かにありました。でもこのX-Trans CMOSにはきっと私が1ヶ月使ったくらいでは分からない奥の深さ、限界の高さがあるのでしょう。

高感度

 画質という点では、解像度よりも実感したのが高感度性能の高さ。PENTAX K-5もAPS-C機の中では高感度にかなり強い方ですが、実感としてはK-5よりもX-Pro1はさらに1段くらい強いような気がします。私基準ではISO1600まではほぼノイズもコントラストも色味も気にすることなしで使えます。
 ただ、K-5並に超高感度域まで設定可能というわけではなく、常用域はISO6400まで。ISO12800とISO25600は特殊な増感モード的な扱いとなっていて、JPEG記録しかできません。しかし常用域に強いと言うことは実用上では非常に大きなポイントです。

DSCF6748.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF60mmF2.4 Macro R, F2.4 AUTO (1/30sec, -2EV, ISO1600, RAW)

 一方で低感度側もISO200までが常用範囲で、ISO100はJPEGのみの減感モードとして扱われています。積極的に絞りを開けようとしても明るい環境下では、シャッタースピードが追いつきません。高感度は良いのですが、実際使っていて感じたのは低感度側のレンジの狭さです。JPEGのみでも良いのでISO50まで下げられたら... と思いました。

フィルムシミュレーション

 さらに面白いのがフィルムシミュレーション。これはFinePixシリーズでも搭載している機種が昔からありました。富士フイルムらしく既存のフィルムににた発色、コントラスト、シャープネスなど総合的な画質調整を施すモード。もちろんJPEGに対して機能します。
 この手の機能はもちろん各社の一眼レフカメラなどには搭載されています。PENTAX機ではカスタムイメージと呼ばれている機能が相当すると思われます。

DSCF6401.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF35mmF1.4 R, F4 AUTO (1/60sec, ISO100, AWB, Velvia)

 しかしこれがやはり実に富士フイルムらしい色合いに仕上がるのです。そしてモノクロのモードがやたらに豊富だったり。さらにはフィルムシミュレーションブラケットという特徴的な機能は非常に面白くて、JPEGで撮るなら積極的に使いたくなります。

オートフォーカス

 当初苦労したのがオートフォーカス。これはマクロモードとの関係もあって、特に近接撮影には苦労しました。OVFを積極的に使おうとすると、オートフォーカスの信頼性は非常に重要です。何しろOVFではピントは全く見えませんし、パララックスがあるとどこにピントを合わせているのかも、実はよく分からなくなってきます。AF時も距離表示が常に出ると良いのに、と思いました。

DSCF6307.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF60mmF2.4 Macro R, F4 AUTO (1/420sec, -0.33EV, ISO100, RAW)

 ではと言うことで、EVFにしてピントもしっかり確認してやろうとすると、今度はAF中にファインダー像がフリーズしてしまうことに戸惑います。しかしそれもファームウェアがV2.00にバージョンアップされるとともに問題解消。AF自体が速くなるとともに、ピント合わせ中のフリーズもなくなり、これでようやく普通に使えるようになったと思います。

 ですので、使い方に慣れて、しかもV2.00にアップデートした後は全くオートフォーカスに関する不満は感じなくなりました。

レンズ

 お借りしたレンズは現時点で発売中の3本。いずれも単焦点で特徴的なレンズ。最新のマウントらしくAF駆動も絞り駆動もレンズ内モーターによるものですが、絞りリングがレンズに装備され、さらに幅広のMF用のピントリングが鏡胴表面のほとんどを占めるというデザインは共通しています。金属鏡胴ですがこれまた素っ気ない仕上げでかなり小型で軽量。レンズ単体で見ればそれほど高級感はありません。

DSCF6579.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF18mmF2 R, F2.0 AUTO (1/20sec, -1EV, ISO1600, AWB, PROVIA)

 で、私は基本的に絞り優先AUTOをデフォルトとして使うのですが、絞りリングのありがたみを今更実感しました。これは慣れとか懐古趣味とかではなく、絶対的に理にかなった操作系なのだと思います。残念ながら一眼レフ機ではほとんど絶滅しかかっていますが。

 さて、当初スペックを見ていた範囲では、きっと35mmF1.4が一番気に入るだろうと思っていたのですが、実際に使ってみて一番気に入ったのは18mmF2でした。その次が60mmF2.4 Macroで、一番使うだろうと思っていた35mmは正反対に一番使いづらく感じてしまいました。
 これは細かい部分での描写性能がどうこうというわけではなく、OVFとの相性、あるいはカメラ全体が醸し出す雰囲気との相性、という気がしなくもありません。そう言う意味ではカメラに撮らされてしまっているのかとは思いますが。

 X-E1とともに発表された光学手ぶれ補正付きの標準ズームも確かに魅力的ですが、このカメラ、特にX-Pro1はやはり単焦点レンズを使ってこそ、という気がします。そう言う意味では現在のレンズラインアップはこれでも結構十分と言えるのかな?と思います。欲を言えば24mmくらいの標準レンズがもう1本、70mm程度の明るい中望遠があれば良いなぁ、と思います。

まとめ

 あと実用上で気になっていたのは電池ですが、専用のLi-Ion電池でカタログ上の撮影可能枚数は300枚となっています。しかし実感としてはもう少し撮れるような気がしました。山ほどシャッターを切ったわけではないですが、一日出先で使い続けても電池警告が出るようなことは全くなく、容量的には十分実用的だと思います。

DSCF6534.jpg
FUJIFILM X-Pro1, XF18mmF2 R, F5.6 AUTO (1/420sec, ISO200, AWB, PROVIA)

 ということで、このカメラには現時点で直接のライバルがいないわけで、評価のとても難しいカメラです。唯一無二の世界を持っており、X-Pro1でしか体験できない世界があることは確かです。そこに価値をどれだけ感じるか?に尽きるわけですが、その答えはよく分かりません。実は予想していたよりはずっと惹かれてしまったというのが本音だったりします。
 しかしそうなると、やはりボディの大きさとお値段が気になるところではあります。OVFを省くことによってその点を改良したX-E1が良いかとなると、やはりそこは微妙で、なぜならばやはりこのX-Pro1の一番いいところはブライトフレームのOVFがあることだから、と思うのです。

IMGP3019.jpg

 なので是非このハイブリッドマルチビューファインダーを諦めずに、発展させてX-Pro2を作り出して欲しいと思います。あるいはレンズが増えた暁には、倍率の違う特定の焦点距離に合わせこんだようなボディもあると良いのに、とか。それは、私的には今回今ひとつだった35mmF1.4がどうしても気になるのです。このレンズがもう少し大きな倍率のOVFで使えたら良いのに、と思っています。

 以上でX-Pro1のレビューを終了したいと思います。

ファーストインプレ:FUJIFILM X-Pro1 (2012年9月10日)
実写レビュー1: 207SW初入庫 (2012年9月15日)
実写レビュー2:コスモス (2012年9月17日)
中間インプレ: X-Pro1 Version 2.0 (2012年9月18日)
実写レビュー3: 浅草散歩 (2012年9月23日)
実写レビュー4: 鎌倉散歩 (2012年9月29日)
実写レビュー5: 新小岩 福島 (2012年9月30日)