酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2010年F1第17戦 韓国GP

 今年がF1初開催となる韓国GPが「何とか」予定通り行われました。と言うのも、F1ファンならご存じの通り、F1のために新しく作られた霊岩サーキットの工事は遅れに遅れ、開催1ヶ月前には満足に舗装もされておらず、一時はキャンセルされるとの見通しが大勢を占めたほどでした。しかし、突貫工事を続けたらしく、鈴鹿の日本GP翌日ようやくFIAからF1開催の承認がおり、ギリギリ滑り込み。
 それでも工事は完了したわけでなく、全体的に見て未完成なのは明らか。F1はもちろん、他のカテゴリーのレースも行われないまま、ぶっつけ本番です。特に懸念されたのは路面。新しすぎるアスファルトは滑りやすく、またF1マシンのタイヤのグリップに耐えられないのではないかと言われていました。実際、フリー走行から細かいコースのトラブルはあったようです。
 しかし、いざ迎えた日曜日の決勝は、そんな路面問題を吹き飛ばす大問題に翻弄されることとなります。その大問題とは「雨」。過去何度も使ってきた「荒れたレース」と言う言葉は、本当はこの韓国GPのようなレースを指すのだと思います。

「表彰台を獲得するだけで十分だと思った」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 「表彰台で十分」の意味は実際には「2位で十分」と言うことかと思いますが、これはウェバーが早々にリタイアした場面を指してのコメントです。ヴェッテルの前に出るのはかなり難しそうながらも、ウェバーがノーポイントに終わったことで、先頭を行く3人にとってはとても楽なレースになったと思われます。特にアロンソは勝利数と獲得ポイント、残りのレースでの戦闘力を考えれば、ここでリスクを冒してまで優勝を狙う必要はない、というのは確かにその通りです。
 ピットインに失敗してドキッとした場面もありましたが、それすらもハミルトンのミスに助けられて運良くポジションを取り返します。そしてさらに運がいいことに、前をゆくヴェッテルがホームストレートで突然失速し願ってもない優勝が転がり込んできました。諦めずに冷静にしぶとくレースをしていればこういうこともあるわけです。
 これでアロンソは一躍ポイントリーダーに。勝利数でもウェバーを抜いて今季5勝目。イタリアGPからの4戦で90ポイントも稼ぎ出しました。この勢いはどこまで続くのでしょうか? 残る心配はエンジンだけですが、ライバル達も状況はそう変わらなくなってきました。でも、ヴェッテルのリタイアを見て、アロンソもちょっといやな気分になってるかも知れません。

「やれるだけのことは全てやった」 セバスチャン・ヴェッテル/レッドブル

 ドライバーの立場ではそうとしか言えないでしょう。実際、彼のレースはもう少しのところで最善のシナリオ通りに完璧な結末を迎えるはずでした。雨によるレース中断、1時間以上遅れての再スタート、あちこちでコースアウトするマシンが続出し、2度のセーフティーカー導入に加え、日没を迎えて次第に闇が迫ってくる状況のなか、彼はトップを一度も譲ることなく、上手くレースをコントロールしていました。それもあと残り9周となったところで、突然全てが終わってしまいました。
 その原因はエンジンブロー。エンジンにとっては優しいはずのウェットコンディションなのに。チームのコメントによればスペック上、あと500kmほど寿命が残っていたそうです。シーズン終盤、信頼性は何よりも重要な問題です。ミスや失敗があったとしても、少しでもポイントを取ることが必要です。これで、ヴェッテルのチャンピオン獲得はかなり難しくなりました。
 ところで不思議なのは、エンジンが壊れた後のヴェッテルのマシンのフロアから火花散らしてたように見えたのですが、あれは何でしょう? 地上波のTV中継ではよく分かりませんでした。エンジン壊れると、車高が落ちる... ってことはまさかないですよねぇ?
 さて、残りはあと2戦。ヴェッテルはウェバーのサポートに回るのでしょうか? 残念ですがレッドブルチームがチャンピオンを取るためには、そろそろウェバーに注力しなくてはいけないところまでやってきたようです。

「全体的にとても残念な1日だった」 ジェンソン・バトン/マクラーレン

 この1日だけでなく、今シーズン全体が残念な結果に終わりそうです。カーナンバー1をつけて、ディフェンディング・チャンピオンとして望んだこのシーズンですが、タイトルはもはや防衛できそうにありません。いえ、完全にその目が潰えたわけではありませんが、可能性は限りなく低くなりました。本人としても、いよいよ諦めているのではないかと思います。
 今回のレースは特にバトンにとっては悲惨な内容となりました。一つ一つの事件を振り返るのも意味はなさそうです。とにかくペースがなく、普通に走っていてもポイント圏内がギリギリと思えるような状態でした。わずかでもポイントが手に入ったならまだしも、小林可夢偉と11位争いをしていたときに後ろから来たエイドリアン・スーティル(韓国GPで一番の暴れん坊!)に押し出され、万事休す。
 今回バトンは、ハミルトンは使用しないと決めた新パーツを使ったそうです。それも効果が実証されていないままの賭で。ランキング浮上を狙うために賭に出るしかないというのは、日本GPでの裏をかいたタイヤ戦略も同様。残念なことにその賭の結果も日本GPと同様に吉とは出ませんでした。
 バトンもヴェッテルと同様に、残り2戦の戦い方に注目されます。チームメイトのハミルトンは2位に入り、チャンピオン争いに踏みとどまりました。マクラーレンとしても決断の時がやってきています。

 小林可夢偉はタイヤ戦略が当たらずに苦難のレースとなりました。あまり走りに切れもなくイマイチに見えたのですが、最後まで生き残ったことが、今回のレースの最大の成果と言えるのでしょう。終わってみればしっかりとポイントを稼いでいます。しかも今回もチームメイトの前でチェッカーを受けました。日本GPのように、ひたすらアグレッシブなだけでなく、ダメな時はダメな時なりの堅実なレース運びというのも重要です。獲得ポイントの面でも印象的な面でも、今シーズンのルーキーオブザイヤーは間違いなさそうです。

 F1は本当に面白いです。私にとっては全てが面白いです。そこに理屈はありません。ただ好きなだけ。だから純真に心の底から楽しめるのです。相撲の方が面白いって? そう、それも真実でしょう。人の好みは人それぞれですから。でも、そんな比較に意味はありません。

 さて、次回は2週間後。F1は一気に地球の裏へ飛んで、ブラジルGPです!