酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2010年F1第13戦 ベルギーGP

 ハンガリーGPから約一ヶ月の夏休みを経て、F1GPが再び始まりました。今年も残すところあと7戦。大詰めの後半戦開幕はベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットです。名物オールージュとそれに続くケメルストレート始め特徴的なコースレイアウトに加え、クルクルと変わりやすい天候=スパウェザーが有名です。ただでさえ抜きつ抜かれつ、先の読めない面白いレースが展開される今年のF1が、このスパを走るとすれば面白くないわけがありません。

 実際、今年のレースも予選から天候に左右されて荒れに荒れました。降ったりやんだりはもちろんですが、F1カレンダー中で最長となるコース長を持つこのサーキットでは、コースの場所によって天候と路面状況が時々刻々と変わっていくという、他ではあまり起きえない難しい要素が絡みます。そういった複雑なコンディション変化を読み取り、それにうまく適応し、いくらかの幸運に恵まれたドライバーが優勝し、そうでないドライバーはあっけなく足下をすくわれてしまいます。

「次のレースでは何ができるか考えなくてはならない」 セバスチャン・ヴェッテル/レッドブル

 ヴェッテルファンの私でもさすがに今回は失望しました。序盤の16周目、最終シケイン前で前を行くバトンに近づきすぎたのか、急にマシンコントロールを失いバトンに激突してしまいました。バトンがそのままリタイヤしたのに対し、ベッテルはノーズの交換をして何とか走り続けましたが、結局挽回はできないどころか、終盤にはリウィッツィとも絡んでパンクするなど、スパウェザー以上に大暴れ。結局ノーポイントでレースを終えました。
 雨のモンツァでパフォーマンスの劣るマシンを駆り、自らの腕で最年少優勝を遂げたあの冷静さと天才的な速さは何処へ行ってしまったのでしょうか。にチャンピオン獲得のプレッシャーに押しつぶされかけているとしか思えません。その結果がこれだとするならば、彼はまだチャンピオンの器ではないと言うことなのかも。
 とはいえまだ6戦も残っているわけで、開幕戦以来変わることのない予選での圧倒的な速さを生かし切れば、大逆転も可能なはずです。せめて最終戦まで五つ巴のチャンピオン争いに生き残って欲しいものです。

「シートから落ちそうになったよ!」 ルイス・ハミルトン/マクラーレン

 スタートに失敗したウェバーをほとんどスタート直後に抜いて以来、荒れた天候のレースでトップを守り続けて優勝。しかし順風満帆だったわけではなく、絶体絶命の危機は終盤の34周目にやってきました。急に降り出した雨の中、ちょうど良いタイミングで、十分に状況を判断できる余裕を持って、ピット入り口に帰ってきたにも関わらず、なぜかチームは彼をピットインさせず、もう一周ドライタイヤのまま周回させます。
 この判断は全てを台無しにするところでした。全長が7kmもあるスパのコース。1周の判断のずれは、簡単に数十秒のギャップを使い果たしてしまいます。実際、その周回でハミルトンはまともに走ることができず、大幅にペースダウンした上に、コースアウトまでしてしまいます。引用した上のコメントはそのコースアウト時の気持ちを語ったものです。もちろんF1のシートから落ちるなんてことはありませんし、幸いコースに復帰はできましたが、彼がどれだけ慌てたかが分かります。
 また重ねて幸運だったのは、2位と3位につけていたクピサとウェバーが作戦をハミルトンにあわせて、同じようにピットインを我慢したこと。もし彼らのうちどちらかでも、勝負に出てハミルトンと作戦を変えていたなら... もしかしたら彼は優勝を逃していたかも知れません。

「正しいタイミングで正しいタイヤを選んだ」 小林可夢偉/ザウバー

 コメントが相変わらずまじめすぎて面白くないのはさておき、17番グリッドから9個ポジションを上げて8位フィニッシュし、しっかり2ポイントを獲得。今回も予選グリッドから考えたら見事としか言いようのないレース結果を残しました。これで第7戦以降の8レースで5回目のポイント獲得、合計21ポイントです。いずれもチームが立てた戦略を着実に実行して、少ないチャンスを確実に生かして得た結果です。
 今回のレースにおいても、レーススタート直後にセーフティカーが入ったところですかさずタイヤ交換。雨がぱらつく中でいち早くウェットタイヤに変えるかと思えばスリックのまま。タイヤ交換義務を早々に消化するという作戦でした。これはかなり危険な賭でしたが、結果的には天候が味方をして、この作戦は大当たりしました。ちなみに逆にこのタイミングでウェットタイヤに交換して失敗したのが、チャンピオン争いをしていたアロンソでした。
 いずれにしろ、こういう荒れたレースを着実にものにして結果を出せるドライバーというのは、非常に重要で魅力的です。それに超ベテランなチームメイトにも常に勝っています。このあたりの結果を出す能力は今までの日本人ドライバーに一番欠けていた部分だと思います。今後のドライバー市場で必ずや良いポジションを得られるはずです。あと足りないのは... やっぱり予選ですかね。

 チャンピオンを激しく争う5人のうち、ウェバーとハミルトンが1位、2位になった一方で、ヴェッテル、バトン、アロンソはノーポイントに終わり、明暗が分かれてきました。それでも残りレースから考えて、まだまだどうなるかは分かりません。
 次のレースはヨーロッパラウンドの最終戦、イタリアGPです。その後F1は再びアジアへ飛んで、シンガポールGPのあといよいよ鈴鹿の日本GPです。今後1戦ごとにチャンピオンの行方は絞られてくるはずです。