酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

梟与力吟味帳と居眠り磐音江戸双紙

 以前から愛読している時代小説シリーズもの最新刊二冊の読書記録です。

鬼雨 梟与力吟味帳:井川香四郎
 今作の「鬼雨」は梟与力吟味帳シリーズの第六巻目になります。基本的に捕り物小説に分類されると思うのですが、主人公の梟与力こと藤堂逸馬は、現場の最前線で犯罪を追いかける、岡っ引きや同心ではなく、奉行所の幹部役職である吟味方与力です。なので、捕り物と言うよりは裁判ものと言った方が当たっているのでしょう。

 時代は江戸後期にさしかかる頃。実質上の幕府権力者である筆頭老中は水野忠邦、南町奉行が鳥居耀蔵、北町奉行が金さんこと遠山影元の時代。小説の題材としてはうってつけの面白い時代です。藤堂逸馬は架空の人物ですが、ある意味遠山の金さんの分身みたいなものです。

 主人公の藤堂逸馬をはじめ、その他主要な登場人物達も当時のセレブ(死語)というかエリート階級の人たちばかりなためか、何となく物語から感じられる空気というか、雰囲気が綺麗で余裕がある感じがします。それがこのシリーズの一つの特徴ではないかと思います。かといって、庶民達の生活感というものも忘れていないところがポイントです。上手くできすぎているようですが。

 今作も、非常に入り組んだ深い事件の連続。庶民の間で起きた殺人事件から、政治に絡むある詐欺事件などなど。ある意味ミステリーでもあります。登場人物が面白くて魅力的な上に、ストーリーも緻密で手が込んでいて、笑いあり涙ありの盛りだくさんな展開。過去五作同様に読んでいてとても楽しい小説でした。

 お勧め度:★★★★☆(ちょっと事件の中身が複雑すぎてわかりにくかったかも)

鬼雨 梟与力吟味帳 (講談社文庫)

鬼雨 梟与力吟味帳 (講談社文庫)

 

 
侘助ノ白 居眠り磐音江戸双紙:佐伯泰英
 とうとう第三十巻まできた居眠り磐音シリーズ。つい最近二十九巻目を読んだばかりなのに、もう新作が発売されていました。およそ三ヶ月に一巻ずつのペースで発行されているようです。ぐずぐずしているとあっという間に周回遅れになりまねません。

 で、今作の内容ですが...。まぁ特にコレと言って何もありません(A^^; 完全無欠のウルトラスーパーヒーローは健在です。年の瀬を迎えた佐々木道場は、相変わらずあれこれ慌ただしいながらも、基本的には至って平和。むしろ今作では、初めての国元入りをした、でぶ軍鶏こと重富利二郎の高知城下での奮闘が主要なお話になっています。

 その他磐音の周囲には新しい人物が登場したりして、いろいろな部分で今後への布石が打たれているような気がしました。このシリーズ、このまま落ちを迎えずにエンドレス気味に続いていくのでしょう。いや、もしかしたら大事件がそろそろ起こるのかも?なんて勝手に妄想してしまいました。

 ということで、もうすでにこの一冊だけ取り上げて面白かった、面白くなかった、という次元の世界ではありません。磐音の人生を共に歩んできた我々読者は、二十九巻を費やした過去を想い、そしてただひたすら、未来を想うより他にはこのシリーズの楽しみ方はありません。

 お勧め度:測定不能 (スーパーヒーローだらけになるのか?

侘助ノ白 ─ 居眠り磐音江戸双紙 30 (双葉文庫)

侘助ノ白 ─ 居眠り磐音江戸双紙 30 (双葉文庫)