三菱電機エアコン霧ヶ峰の最新モデルFZシリーズの解体ショーを見てきた

投稿者: | 2016年3月9日

 「解体ショー」と言えば一般的には「マグロ」を思い出しますが、世にも珍しい「エアコンの解体ショー」なるものが行われると聞いて、三菱電機のイベントに参加してきました。解体されるのはタイトルのとおり、DSC_3573.jpg
 実際のところ「解体ショー」だけが行われたわけではなく、イベントの本来のタイトルは「三菱電機・霧ヶ峰ブランド体験会 ?老舗ブランド大革命! 新時代のエアコン・霧ヶ峰の秘密?」と題したもので、最新世代FZシリーズに関するプレゼンテーションを聞きつつ、実際に霧ヶ峰シリーズがどのようなエアコンなのか体験してきました。

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お弁当!

 エアコンの話の前に、いきなりですがお弁当のお話です。会場に到着するとちょうど夕飯の時間だったこともあって、お弁当を出して頂きました。

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 事前情報では「軽食」となっていたので、サンドイッチとかおにぎりみたいなものかと思っていたら、とても立派な箱が。しかも三菱電機と霧ヶ峰のロゴとお品書き付き。「左右独立駆動のパーソナルツインフローをかたどった」とか「気流をイメージした」… っていったい何のことでしょう?

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 開けてみるとこんな光景が広がっていました。野菜から揚げ物、お肉までふんだんに使った盛りだくさんの中身は相当なボリュームです。こんな豪華なお弁当は初めてかもしれません。もちろんとても美味しかったです。

製品プレゼンテーション

 さて、豪華なお弁当を頂いた後、いよいよプレゼンテーションの開始です。プレゼンターは三菱電機 静岡製作所ルームエアコン技術第一課 課長 吉川浩司さんです。

 以下は私が理解した範囲でかなり大胆に要約したものです。

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 霧ヶ峰FZシリーズの開発コンセプトというか、解決すべき課題として取り上げたのは「暑がりさんと寒がりさんの共存」と「既存技術の限界」です。

 人によって快適な温度が異なるという点は、エアコンにとっての永遠の課題のように思います。それを既存技術の限界を打ち破ることで解決しようということで、ある意味エアコンの開発アプローチとしては王道なのではないかと思います。

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 それを実現するための一番のキーポイントが「パーソナルツインフロー」という2台のプロペラファンを搭載したこと… ですが、これだけ聞くと「それって何がすごいの?」と思ってしまいます。が、そこのところは続きを聞いているとだんだんわかってきます。

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 ちなみに従来のエアコンはこのようにラインフローファンと呼ばれる円筒状のファンで送風していたそうです。熱交換器はこの円筒状のファンを取り囲むようにコの字型に配置されています。

 これがスペース効率に優れ、約50年にわたって改良を重ねることでノウハウも蓄積していた基本形であったわけですが、そこにメスを入れてプロペラファンに変更したことはエアコンの世界では非常に大きな変革とのこと。

 エアコンの内部構造なんて考えたことのない私を含む一般人にしてみれば、初めて聞くお話です。

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 新しい「パーソナルツインフロー」は、左右のファンを独立に制御することで、「暑がりさん」がいる場所と「寒がりさん」がいる場所を独立に温度調整することが出来るそうです。なるほど! 一台のエアコン、一つの部屋の中で強冷房(or強暖房)コーナーと、弱冷房(or弱暖房)コーナーが作れるってことですね。

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 それを実現するもうひとつの重要な要素技術がセンサーです。「ムーブアイ」は文字通りセンサー部が回転し、部屋中をスキャンし人のいる場所、その体温等を監視しています。これは従来から霧ヶ峰シリーズには付いていたものです。が、「極」となった新型ではセンサーの解像度が4倍になり、「人がいる」だけではなく「手先とその温度」まで認識できるそうです。

 この「ムーブアイ・極」の情報を利用して、ファンをきめ細かく制御して「暑がりさん」と「寒がりさん」の両方に快適な空間を作る、ということを実現しています。

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 しかも、プロペラファンにしたことによる効果は、左右独立制御の実現だけではなく、消費電力の大きな改善に寄与しています。ファンとしてはプロペラファンのほうが圧倒的に効率が良いとか。後ほど解体ショーで詳しい説明を聞くことになるのですが、この新しいプロペラファンのために、小さなボスに入る高効率なモーターから新規開発したそうです。

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 それともう一つ、プロペラファンにしたことにより、肝心の熱交換器をW字型に配置することができ、その分熱交換器の容量も20%以上改善し、それはすなわち効率のアップ→消費電力の低減に繋がります。

 既存技術と基本構造を一から見直し、実績のあるラインフローファンを捨て、二つのプロペラファンを採用し、熱交換器の容量がアップしたことで、左右独立温度コントロールが出来るようになった上に、大幅な省エネ化を達成した!とのこと。どのくらい省エネになったかというと…

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 このグラフは縦軸の数字がないイメージにすぎませんが、過去6年分のエアコン消費電力低減のトレンドです。2010年から2015年の5年かけて改善してきたのと同じ分を、2016年モデルで一気に低減したぞ!ということだそうです。それはすごい!

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 プレゼンテーションの後はクロストーク形式でさらにお話を伺うことが出来ました。さらに販売企画グループの中洲次郎さんも加わってのフリートークです。

 確かここでお話が出ていたと思うのですが、プロペラファンにしたことのデメリットはもちろんあって、それは振動とサイズだそうです。振動は音にも繋がりますので「仕方ないね」では済まされず苦労してクリアしたそうですが、サイズのほうはどうにもならなくて、ラインフロー方式の従来機に比べると奥行きは増加しているとのことです。

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 左端の中洲さんからは、主にデザイン性を重視したFLシリーズに付いてのお話をされていました。色や質感、外装デザインにこだわったエアコンで、コンセプトモデルから起こしたそうです。エアコンは基本的には機能に縛られた形をしていて、あまりデザインの自由度があるように見えませんが、それでもまだまだ「やるべきこと」があるというお話だと理解しました。

 以前、別の家電メーカーに勤めていた元デザイナーの方の書いたコラムを読んだことがあります。家電デザインの中ではある意味一番難しいのがエアコンとのことでした。エアコンのデザインにはある時期に革命が起きて、それは空気を取り入れるスリットが前面から消えたときだそうです。それはエアコンのことなんか知らないある意味外部の意見から出来たことだそうで、それまでは変えようがないと思われていたことが覆された典型例だそうです。今後もそういうことが起こるのかもしれません。

エアコン解体ショー

 ということで、いよいよ解体ショーです。解体するのはやはり静岡製作所の松本さんと加藤さんです。

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 まずは解体前の姿。すでに「パーソナル・ツインフロー」が見えています。こちらがエアコンの上面にあたります。マグロ解体ショーは見たことありませんが、大きさ的にはちょうど同じくらいなのかな?。

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 まずはサイドのパネルをはずして、メイン基盤とムーブアイのユニットを取り外します。メイン基盤は金属製のボックスに収められています。電磁波対策でしょうか。

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 ケーブル類がわさわさ出てきました。

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 次にフィルターを取り外すと…

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 FZシリーズの肝である二つのプロペラファン本体がいよいよお目見えします。

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 「獲ったどー!」の図。この二つのファンはあわせて一つの大きなユニットに組みつけられていて、こんな風に取り外せます。メンテナンスのためか、製造のためか、あるいはその両方でしょうか。

 ファンを取り外した本体には銀色のフィンの塊が見えています。これが熱交換器。さきほどのプレゼン資料にあったとおり、確かにW字型をしています。

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 さらにファン部分を解体し、プロペラを取り外してみたところ。中心部には当然モーターが組みつけられています。思ったよりもかなり小さいです。もちろん限られたサイズの中で風量を稼ぐにはモーターとボス部は小さく、羽根の面積を広く取りたいところですが、モーターを小さくし過ぎると色々弊害が出るだろうことは容易に想像が付きます。

 なおファンとモーターが取り付けられている濃いグレーの整流板ユニット(ベルマウス)は空気流の効率を高める上で非常に重要な部品だそうです。これらとファンのギャップはギリギリまで狭くなるように設計されているそうです。

 防振・防音のために緩衝材を挟むひつようがあるとのことですが、モーターの取り付け部で振動吸収をしようとすると、ファンがブレてベルマウスと接触し、破損するなどいろいろ問題があるため、ベルマウスとモーターおよびファンは剛結し、ベルマウスを含んだユニットとシャシーの間に緩衝ゴムを挟むことで、効率、耐久性、静粛性をすべて両立させているそうです。

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 モーターのカットモデル。右の大きいほうは従来のラインフローファンを回していたもので、φ90mmです。左がプロペラファンのボスに収めるために小型化された新しいモーター。ステーター側に巻線が見えていますので、ブラシレスDCモーターと思われます。

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 これはモーターの背面側。旧型の大きなモーターにはモーターの制御用の半導体がドーナツ状の基板に搭載されていますが、小型のモーターのほうにはありません。もちろん不要になった訳ではありません。

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 それらはすべてメイン基盤側に移設したそうです。モーター制御のデバイスは発熱するので黒いヒートシンクが被さっている部分に置かれているようです。ヒートシンクって意外に馬鹿にならないコストがかかるんですよね。その辺は総合電気ならではの技術の幅広さで、冷蔵庫用のものを流用してコスト削減しているそうです。

 というか、旧型のラインフローファン用モーターについてる場合はなぜヒートシンクがいらないのか聞きそびれました。

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 これがプロペラファン本体。7枚羽根のこのデザインに落ち着くまでは多くの試作品を作り、何度も実験したそうです。ポイントは薄型化と効率と騒音のバランスを取ること。こういった製作現場でも三次元プリンターが大活躍しているそうです。

 ところで羽根の翼端に溝が彫ってあるのも意味があるんでしょうね。もしかしてボルテックス・ジェネレータだったりして? だとしたらまさに「空力」の世界ですね。

【3月10日 追記】羽根の溝は風切音対策だそうです (参考:DSC_3700.jpg
 熱交換器本体。銀ピカで格好いいです。ここに冷媒が通っていて、無数のフィンの間をファンによって送り込まれた空気が通り、熱のやり取りを行うと。いわばエアコンの心臓部と言えるでしょう。

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 対してこちらが従来型のラインフローファン式エアコンの熱交換器とファン本体。写真では分かりにくいですが、確かにパーソナルツインフローのW字型の熱交換器と比べると、サイズの違いがよく分かりました。

 ということで、一番楽しみにしていた「エアコン解体ショー」の模様は以上です。

体験コーナー

 最後に会場内には、霧ヶ峰シリーズに関する様々な展示物がありましたので、少しだけ紹介しておきます。
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 まずはパーソナルツインフローを生かすためのセンサー、ムーブアイのデモを見てみました。左が解像度が4倍になった新型「ムーブアイ・極」、右は従来型です。サーモグラフィに同様に紅い部分が温度の高いところ。この写真はちょうど私がセンシングされているところで、顔の部分が真っ赤で何となく方から腕の形と、その周囲に3人ほど人がいるのがが分かるかと思います。他方従来型の解像度が粗いセンサーでは、温度の高い部分はあるものの、人の形はよく分かりません。

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 デザインに拘ったFLシリーズのデザインコンセプト。アルミで作ってあるそうです。製品化されたものも、出来るだけ忠実にこのコンセプトモデルを再現したとか。

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 こちらは製品版の表面を拡大したところ。確かにアルミのヘアライン加工風味が良く出ています。実際にはアクリル樹脂で作られているそうですが、質感を出すための加工や塗装は、表側ではなく裏側に施すなどかなり工夫されているようです。

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 ただ、赤いエアコンを部屋に取り付けるって、想像が付きにくいですね。デモルーム風なセットがありましたが、我が自宅をこんな風にするなんてちょっと無理かも。ちなみにFLシリーズには赤だけでなく白モデルもあります。

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 こちらはFZシリーズの取り付けイメージ。たしかに結構奥行きはありそうですが、こっちの方が普通で馴染みますね(という無難なことを考えるこだわりのない凡人です)。それにデザインよりも性能を重視したいですし(^^;

 カメラのイベントには何度か参加したことがありますが、家電系のイベントは初めてでした。非常に内容も展示も凝っていて少し驚きました。もちろん本物のプレスの方も沢山いらっしゃったので、私のような弱小ブロガーのために開かれたものではありません。

 エアコンはだいたい壊れたり引っ越しをしないかぎり買い換えないので、興味を持って調べたことがほとんど無いのですが、なかなか面白かったです。霧ヶ峰シリーズにはかなり理解が深まりましたが、他社のエアコンもじっくり調べてみようかな?と思いました。そういえば、今使ってるエアコンもそろそろ10年くらい経っていそうだし、快適さの向上とランニングコストの低減を目当てに買い換えを考えてみるのもアリかも(^^;

三菱電機エアコン霧ヶ峰の最新モデルFZシリーズの解体ショーを見てきた」への2件のフィードバック

  1. これはつまり室内機本体上部には相応のスペースが必須ですね?
    てことはですよ、天井高にかなりの余裕が必要ですね。
    だって奥行以外にも明らかに高さも大きいですから。
    部屋の中歩いててエアコンに頭ぶつけるとか、イヤなんだからねっっっ(爆)

  2. hisway306

    ふさん、
    吸気のための隙間は必要だから天井にぴったりくっつけるわけにはいかないですね。確かに取り付ける部屋と場所を選びそうです。

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