K-xの○と△と×

投稿者: | 2011年11月28日

 先日K-5の長期使用インプレ記事(→ K-5の○と△と×)を書きましたが、そこでふと「そういえばK-xについては書いてないなぁ」と気づきました。と言ってもK-xを買ったのは1年以上前、しかもとっくにディスコンになっている機種なのですが、一応せっかくの愛機なのでK-xについても長期使用インプレをまとめておきます。

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 調べて見たところK-xのシャッターカウントはわずか2,000カットちょっとでした。感覚的にはしょっちゅう使ってるつもりでいるのですが、「ちょい使い」が多く、1回あたりの撮影カット数が少ないのです。なのでまぁ、こんなもんかと。

 このカメラ、そもそもなぜ買ったかというと「安かった」から。後継機のK-rが発売された直後、レンズキットがサンキュッパで売られているのを見て、思わず買ってしまいました。用途は特になくて、いわゆる「サブカメラ」です。良いですよねぇ、サブの一眼レフ。一眼レフの2台持ちにはずっと憧れていました。(次はデュアルマウントに憧れています ^^;)

 ボディカラーはレギュラーの白。グリップ色は元々黒だったのですが、グリップ交換サービスが始まってすぐに、黄色グリップに交換しました。キットレンズの18-55mmも白い外装の専用品ですが、その後K-rと同時発表されたDA35mmF2.4ALの白を買って、今ではほぼこのレンズをつけっぱなしにしています。

 以下、K-5の時と同様に○△×でまとめてみました。作例写真はもちろんK-xで撮影したものですが、内容的に特に本文と関係ありません。

大きさ重さ:○

 K-5もかなりコンパクトなカメラですが、K-xはK-5と比べても断然小さいです。他社でもエントリー機もかなり小さくなってきましたが、K-xとその先代となるK-mの小ささは現在でも一眼レフではトップクラスだと思います。この”小さいこと”はK-xの一つの大きな特徴です。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F2.8 Auto(1/1250sec, ISO200, -0.7EV, AWB)

 ですが一方、重量は実はそれほど軽くありません。いえ、ボディ単体ではそこそこ軽いのですが、電源に単3電池を4本使用するため、この電池の重量が実働状態では結構効いてきます。標準添付のリチウム電池は軽いのですが常用するのはコスト的に無理。現実的にはエネループなどを使うわけですが、これは4本になるとそれなりの重量になります。
 でも「単三電池で動く」というのはこのカメラの一つの特徴なわけで根強い支持があるわけですが、私としては軽くて長持ちするなら専用Li-Ion電池の方が良いかなと思います。どちらを望む意見も多かったのでしょう。後継のK-rでは両対応となりました。

 しかし実際に写真を撮るシーンにおいては、この「少し重たい」状態というのは悪くありません。安定しますし、シャッター切った後の振動収束も含め意外に節度感があります。

デザイン:○

 大きさとも関係しますが、独特のなで肩デザインは一時期ペンタックスが好んで使っていたデザイン傾向です。K-xはK-mと外観はほとんど変わっていません。全体に寸詰まりなこともあって、曲面を多く利用した外観デザインは柔らかさがあって悪くないと思います。特にカラバリ展開との相性はなかなかイイのではないでしょうか。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F2.8 Auto(1/200sec, ISO100, +0.3EV, AWB)

 私のK-xは白ボディ+黄色グリップなわけですが、小さいボディに緩いデザインと相まって、一眼レフにありがちな仰々しさがありません。これにDA35mmF2.4ALみたいな小さなレンズを使えば、撮る側も撮られる側も肩肘張らずに自然に構えられます。このことは、K-xの一つの大きな「性能」ではないかと思います。

ファインダー:△

 さて、一眼レフが一眼レフである由縁のファインダー… って、同じこと何度か書いてる気がしますが、K-xのファインダーはK-5と比べて大きく劣っている点です。プリズムではなくミラーを使用しており、視野率は96%、倍率は0.85倍です。やはり見えやすさは歴然とした差があります。また、時と場合によってはやや黄色く色づきが感じられる場合もあります。

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PENTAX K-x, DA70mmF2.4, F2.4 Auto(1/500sec, ISO400, AWB)

 それでも光学一眼レフファインダーであることが重要なわけで、この大きさと重さ、値段を考えればこのカメラにとってはこのファインダーで良いのだろうと思います。視度補正もあり、しっかり覗けばピントもボケも見えますし、撮影データ表示も必要十分で抜かりありません。ただ、私にとってK-xが決してメインカメラになり得ない理由は、このファインダーにあるといっても過言ではありません。

画質:◎

 撮れる絵については何の不満もありません。というか、むしろ素晴らしいです。12MピクセルのCMOSセンサーは、画素数こそ最新の機種と比べるとやや少ないですが、十分に使いこなされているためかとても安定しています。センサーが1世代違うとは言えK-5とも傾向はほとんど同じ。露出はやや明るめですがばらつきはより少なく、失敗しにくい絵が撮れると感じます。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F2.4 Auto(1/6000sec, ISO100, -0.7EV, AWB)

 高感度性能の高さもK-xの特徴。K-5/K-rに続く高感度路線のルーツはこのK-xにあると言えます。ISO800はもちろんISO1600は十分に常用可能、場合によってはISO3200でも何とかなる低ノイズ性は素晴らしいです。最高感度はISO12800までですが、実感としてはK-5との差は1段くらいのような気がします。今でも通用する十分な高感度性能と言えます。

 低感度側についてはISO200が基準感度でISO100が拡張感度となっています。「拡張」と言うからには、ハイライト側のレンジが狭いとか、何かペナルティがあるのかも知れませんが、つい通常はISO100を使ってしまいます。ISO200でハイライト補正を入れておくのが本当は良いのかも知れません。

 ホワイトバランスもほぼK-5と同じく安定しています。カスタムイメージはK-7世代相当。シャープネスもファインシャープネスまではしっかりサポートされています。もちろんRAWもRAW+JPEG撮影もできますが、JPEGは4つ星マークのプレミアムはサポートされておらず、3つ星のファインまで。また、やはり12Mピクセルという解像度のせいか、ローパスが弱いのか、細かい模様の被写体を撮るとモアレが出る場合があります。

オートフォーカス:△

 オートフォーカスは、SAFOX-VIII(K-5はSAFOX-IX+)ということで世代がやや古いのですが、9点クロスの11点測距という基本的なセンサーの構成は同じです。この小さなボディにAF駆動モーターも内蔵されている一方、もちろんSDM内蔵レンズにも対応しています。普通に使ってる範囲ではAFスピードや精度という点では特に気になることはありません。動体への追従性については、ほとんど試したことがないので分かりません。

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PENTAX K-x, DA★60-250mm F4ED, F5.6 Auto(1/1250sec, ISO200, -0.7EV, AWB)

 マウント脇のスイッチはAFとMFの切り替えのみで、サーボモードはINFOパネルまたはメニューで設定します。コンティニュアスとシングルがあるのに加えて、オートというモードがあるのですが、このモードではたまにフォーカスロックをしてフレーミングを変えようとすると、被写体が動いたと判定してピントが動いてしまう場合がありますので、通常はやはりシングルにしています。またコマ速優先モードはなくて常にピント優先です。

 オートフォーカス関係で一番困るのは、ファインダー内にAFエリアのスーパーインポーズがないこと。散々K-xの欠点としてやり玉に挙げられ、K-rではサイズを犠牲にして追加された機能です。最初は「なくても良いんじゃない?」と思っていたのですが、これ想像していた以上に不便です。特にスーパーインポーズがないとマルチエリアではまず使えません。ファインダーをしっかり見てない証拠なのですが。結局現在はセンター固定か、必要ならセレクトモードにしています。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F2.8 Auto(1/800sec, ISO100, +0.7EV, AWB)

 でもAFエリアのスーパーインポーズと大きさがトレードオフだというなら… どちらを選ぶかは難しいところです。MZ-Sのようにファインダー表示に擬似的に表示するのでも良いとは思うのですが… いや、やっぱりK-rが一番正しい解なのでしょう。

機能:◎

 撮影モードはじめ、デジタルフィルターに至るまで機能面では上級機に負けないくらいの超多機能です。シーンモードも含めると使い切れないし覚えきれないくらい。ハイライト補正やシャドー補正もレンズ収差補正もあるし、露出ブラケットできます。
 さらにライブビューもできるし動画も撮れますが、それはまぁ、個人的にはおまけのようなもの。実際、動画はともかくライブビューのAFは非常に遅くて、三脚にでも据え付けて動かないものをじっくりと撮るときにしか使えません。それでもないよりはマシかも。また、連写速度は最高4.7コマ/秒となかなか高速です。使ったことありませんが。
 

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PENTAX K-x, DA FISH-EYE 10-17mmF3.5-5.6ED, F7.1 Auto(1/60sec, ISO100, AWB)

 唯一、絞り込みプレビューをするには、グリーンボタンに機能割り当てをしないといけませんが、その他”機能”という点では恐らく多すぎることはあっても不足はほぼないと言えるでしょう。最終的に私が使う撮影機能において、K-5にあってK-xに無いものと言えば、電子水準器と水平補正機能くらいです。でも、写真を撮る上でそれほど決定的なものではありません。

操作性:△

 PENTAX機に慣れている身にとっては説明書を読むまでもなく使うことができるのですが、あまりにも似てるのに細かいボタン配置がK-5と違うために、あれ?と戸惑うことがしばしば。しかしこれは仕方がありません。シングルダイヤルなのはまだ何とでもなるのですが、特に間違えやすいのはISO感度設定。K-5はシャッターボタン後ろの右側のボタンに割り当てられていますが、K-xでは十字キーの右側にあります。K-5ではそこはカスタムイメージのボタンです。

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PENTAX K-x, DA70mmF2.4, F2.4 Auto(1/80sec, ISO100, +1.3EV, AWB)

 しかも私は個人的にカスタムイメージも時々いじるので、ダイレクトボタンが欲しくなりシャッターボタン後ろ右側のグリーンボタンをカスタムイメージ選択に割り当ててしまいました。つまりK-5とはカスタムイメージとISO設定のボタンが入れ替わった形になってしまし、いつも間違えてごちゃごちゃになってしまいます。

 また、時々撮影結果をじっくり確認しようとしてフラッシュをポップアップしてしまうことがあります。いかに体がK-7/K-5系の操作を無意識に覚えてしまってるかを実感します。

 いずれにしてもこれは慣れの問題でもあり、K-5も同時使用するユーザーのわがままなのでしょう。全体には、ボタン類も美味く整理されていて、PENTAXらしくINFOパネルにほとんどの撮影機能が集中しており、操作性は良い方だと思います。

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PENTAX K-x, SIGMA 50-500mm F4.5-6.3, F6.3 Auto(1/125sec, ISO400, AWB)

 また、操作性とはやや異なるかも知れませんが、操作中に感じるK-xの大きな欠点といえるのが、液晶パネルの解像度です。サイズは充分ですがやはり23万画素のというのは、メニューを見るにも再生画像を見るにもライブビューするにもちょっと悲しいものがあります。もちろんこの点もK-rでは改善済みです。

電子ダイヤルとモードダイヤル:×

 しかし残念な点もあります。というのは電子ダイヤルの感触。位置が悪いとかではなく、回し心地がK-5と明らかに違っていて、何となく頼りない感じがするのです。しかも信頼性が低く、時々動作をサボります。実は最初に購入した個体は、このダイヤルの動作が明らかにおかしく、反応しなかったり、勝手に2個進んだり、果ては回した方向と逆に反応したりとめちゃくちゃでした。すぐに交換してもらった個体は問題なかったのですが、最近ときどき最初の1クリックが無視されたりします。露出補正などは1クリック単位で操作するので、これがリニアに動かないとかなりイライラしてしまいます。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F4.0 Auto(1/500sec, ISO100, +0.3EV, AWB)

 それともう一つ気になるのは、右上にあるモードダイヤル。大きなダイヤルで回し易いのですがロック機構がありません。これが意外なくらいに勝手に回ってしまうのです。いつもは私は絞り優先しか使わないので、変なモードになっていても大抵の場合気づくのですが、できれば絞り優先モードのポジションのまま固定してしまいたいところです。

手ぶれ補正:◎

 PENTAXオリジナルのセンサーシフト式の手ぶれ補正がこの小さな筐体の中に収められています。自動水平補正などの機能はなく、ユニット自体はK-5のものとは違うのかも知れませんが、使用感や効果はほとんど変わりません。このボディにどんなレンズでも使える強力な手ぶれ補正が内蔵されてることは、素直に◎だと思います。

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PENTAX K-x, DA70mmF2.4, F2.4 Auto(1/125sec, ISO400, AWB, ハイコントラストフィルター使用)

 K-5で△をつけた、流し撮り対応についてはこのカメラには求めません(^^;

ダストリダクション:×

 で、その手ぶれ補正機能を利用したダストリダクションが搭載されているのですが、これ、要はセンサーを高速で振動させ衝撃を与えてゴミを振るい落とす、というかなり力業なもの。K-5の超音波振動式のダストリダクションがほぼ無音で動作するのに対し、このK-xのダストリダクションは”ゴトゴトゴトッ”と、派手な音と振動がします。
 ですが残念ながら効果は非常に弱いと言わざるを得ません。電源ON時に常に作動するようにしていますが、やはりある程度使っているうちに、ダストリダクションでは落ちないゴミが必ず付着してきます。なので定期的にブロアで掃除する必要があります。今のところそれでも落ちないようなゴミがついたことはありません。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F5.6 Auto(1/1600sec, ISO100, -1.0EV, AWB)

DA35mmF2.4AL:◎

 キットレンズとしてついてきたDA L18-55mm F3.5-5.6は、小型で便利な標準ズームで写りもそこそこ。もちろんそれ以外に買い集めた他のKAFマウントレンズももちろん使えるわけですが、何となくK-x用にと思って”安DA35mm”と呼ばれているDA35mmF2.4ALを買ってしまいました。もちろんボディカラーに合わせたホワイト仕様です。
 F2.4という中途半端な明るさで、マウントまでオールプラスチックのチープなレンズ。クイックシフトフォーカスにも対応していません。パンケーキと言うほど小さくもないですが、重量は頼りないほどに軽いです。ただしお値段は2万円そこそことかなり安いのです。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F2.8 Auto(1/640sec, ISO100, AWB)

 そしてこれ、写りが非常に良いのです。「期待してなかったから」とか「値段が安いわりには」という意味もありますが、シャープでボケも綺麗ですし、コントラスト感もあり発色も綺麗。そしてデジタル世代のレンズらしく、色収差も少なくてやフリンジも出にくく、逆光でも安心してどんなシーンでも使えます。ある意味写りに対する信頼性という点ではFA31mmF1.8ALよりも安定しています。K-5にもつけて使いたいくらい。はい、もちろん問題なく付くのですが筐体の色が…。できればこのまま金属外装にしてDA Limitedに仕立てて欲しいくらいです。

総合評価:○

 ということで、何かにつけてK-5と比較してしまったところもあって、少し△が多くなってしまいましたが、モデル末期とは言えこのカメラがレンズ付きで4万円しないで買えたというのは、驚異的なことだと思いますし「一眼レフは安くなりすぎた」の典型例のような気がします。

 「このサイズ」と「この値段」という前提を外さなければ、K-xは素晴らしいデジタル一眼レフカメラなのは確かです。高画質なセンサーにどんなレンズでも効く手ブレ補正、必要にして十分な性能のAF。どんなシーンでも綺麗に撮れて、撮影結果に信頼がおけます。ファインダーだけは残念ですが、誰にでもこれ一台で何でも撮れるという点で、簡単でもあり奥が深いカメラだと思います。

IMGP2894

 しかしK-5のサブカメラに最適かと言うと、期待したほどでもありません。撮影結果が似た傾向になるのは何かと助かるのですが、操作系の細かい違いがかえって気になります。

 いずれにしてもK-xはもはや流通在庫もほとんど無いので、今このクラスを選ぶとすればK-rとなります。AFポイントのスーパーインポーズ、電池、背面液晶など、K-xの弱点を丁寧に潰した完成度の高いカメラ。デザインさえ気に入ればこれ以上の製品はないかも。とはいえ、そのK-rも発売から1年以上が経過し、既に生産は終了したとの噂が流れています。

 後継機がいまだ発表されないまま、売れ筋のこのクラスの機種がなくなるというのはどういうことなのでしょう? Kマウントの新製品はレンズもカメラも1年以上発表されておらず、先行きが心配になってきました。エントリークラスはミラーレスへと流れて、一眼レフの立ち位置は難しくなってるのかも知れませんが、ぜひK-xのサイズにK-r以上の機能を詰め込んだような、意欲的な新機種を期待したいと思います。