2009年F1第8戦 イギリスGP

投稿者: | 2009年6月24日

 モータースポーツ発祥の地と言われる伝統のシルバーストーン・サーキットで、今年もイギリスGPが開催されました。しかしその伝統あるコースでのF1GPも今年で一区切り。来年からイギリスGPはドニントン・パークで開催されることが決まっています。近いうちに鈴鹿のように復活するかもしれませんが、屈指の高速オールドコースを駆け抜けるF1マシンの姿は、とりあえず今年で見納めとなりました。

 さてそんなイギリスGPの感傷的なお別れムードも、今シーズン圧倒的な強さを見せている、ジェンソン・バトン/ブラウンGPの凱旋がを吹き飛ばすはずでした。しかしこの肝心なホームレースにきて、ブラウンGPは幾分失速してしまったようです。

「シルバーストーンにもありがとうと言いたい」:セバスチャン・ベッテル/レッドブル
 今回の優勝は彼にとっての3勝目であり、同時にドライレースにおける初優勝となりました。”雨なら速い”と言われていたベッテルとレッドブルのコンビは、実は”路面温度が低ければ強い”という解釈が正しいようです。予選のポールポジションは、また例によって軽タンクか?と思われたのですが、今回は意外にもブラウンGPを上回るほどたっぷりと燃料を積んでいました。それでもポール獲得したことで今回の彼の強さが分かります。そしてレースがスタートしてみれば、完全な独走態勢。もはや誰にも止められません。

 レースを通してミスも無く、ピット戦略もコンサバで、安定かつ圧倒的なペースで走りきり、完璧な優勝。ここへ来てレッドブルのマシンは目に見えてアップデートが加えられているのが分かりますし、低い路面温度に強いというだけでなく、基礎ポテンシャル的にもブラウンGPのアドバンテージは薄れてきたのかもしれません。もしかしたら、今シーズンも終盤には意外な混戦模様… なんてことになったら面白いのですけどね(^^;

「特に理由はない」:中嶋一貴/ウィリアムズ
 今回はフリー走行から常にチームメイトを上回るタイムを叩きだし、予選でも5番グリッドを見事に勝ち取った中嶋一貴。しかも、スタートでもジャンプアップを決めて、なんと4位でレースを開始。「これはもしかして…!」という期待を持った日本人F1ファンは少なくないはず。不安があるとすれば、彼は誰よりも軽タンクだったこと。つまり、誰よりも早く1回目のピットを迎えてしまいます。でも、4位は守りきれなくてもポイントは… と願っていました。

 しかし… なぜか1回目のピットを終えてみれば、いきなり9位へのスリップダウン。その後は第1スティントのようなペースは見られず。下位に沈んだまま2回目のピットを終えると、何と11位!まで下がってしまいます。マシンに何かあったのか?ピットで何かあったのか?どこかでスピンでもしたのか?と、普通なら考えたくなります。

 が、レース後の彼のコメントは上記の通り。特に何かがあった訳じゃないのに5位スタートしながら、11位でフィニッシュするというのは異常なことです。軽タンク作戦で、しかもハード側のタイヤを主に使った戦略上のミスという面もありますし、燃料を積んだ状態でのロングランが実はとても遅かった、ということなのでしょうか。

 チームメイトのニコ・ロズベルグは、予選8番手ながらも同じタイヤ戦略で3つポジションを上げました。これはいったいどう考えればいいのか…? がっかりと同時に色々心配になってしまいます。

「トゥルーリに引っかかってしまった」:ジェンソン・バトン/ブラウンGP
 それにしても今回のレースは、流れが非常にわかりにくく理解しづらいレースとなりました。TV中継をじっと見ていても「何でこうなってしまったの??」の連続。復習が必要です。

 具体的にわかりにくかったのは、特に事件はどこにも発生せず、レースは淡々と進んでいたのに、ピットごとに大幅な順位変動が起きたこと。中嶋と同様にライコネンもピットの度にずるずるとポジションを下げましたし、それに対してロズベルグやマッサがいつのまにか上位に食い込みました。一方でバトンは下位に沈んだままだったり。何がその勝ち組と負け組を分けたのか?

 フューエル・エフェクト? 多分、主な理由はそれなのでしょう。しかしそれに加え、どうやら(TV中継には写っていませんでしたが)久しぶりに強力なトゥルーリ・トレインが発生していたことも、各ドライバーの命運を分けた原因の一つになっていたようです。

 中嶋に次いで軽タンクだったライコネンはは、1回目のピットインでトゥルーリに前に出られてしまいました。これで長い第2スティントを無駄に過ごし下位に沈んでしまいます。スタートに失敗し第一スティントをトゥルーリの後ろで過ごしたバトンは上位へ上がるチャンスを完全に失いました。一方スタートでトゥルーリを抜いたロズベルグや、1回目のピットインでトゥルーリの前に出られたマッサなどは、その後ペースを上げることができ、予選順位に対し大幅にジャンプアップを果たしたことになります。

 これらは結局はレース中の運、不運と言うことに過ぎませんが、フューエルエフェクトの大きいトラックでは、より強烈にこの影響は効いたのではないかと思われます。


 ところで、現在F1では来年以降のレギュレーション等を巡って、壮大な”政治闘争”が行われています。このままだとF1は、FIA主催とFOTA主催の二つのシリーズに分離してしまうようです。この手のドロドロの権力争いは、F1の世界におなじみの裏舞台であるとはいえ、ちょっと今回ばかりは度が過ぎてるのではないかと思っています。

 この件について、思うことは色々あるのですが、特にこの件については決着がつくまではあまりここでは触れないつもりです。もちろん一F1ファンとしては、分裂せずに統一シリーズとして引き続きFaが開催されることを願っています。


 次のレースは2週間後、ドイツのニュルブルクリンクです。ここも気温が上がりにくいのではないかといわれています。レッドブルが本格的に独走を始めてしまうのでしょうか?

カテゴリー: F1