PENTAX K-1 Mark IIの高感度時画質がK-1より悪化してるというDPReviewのレポートは本当か?

投稿者: | 2018年5月15日

 連休明けの先週月曜日にペンタックスファン界隈を騒然とさせる記事が、海外の有名カメラレビューサイトDPReviewに掲載されました。そのタイトルは「A worthy upgrade?」ということなので、直訳すれば「アップグレードの価値はあるのか?」とでもなるのかもしれませんが、最後につけられた「?」マークがちょっと意味深です。

 そして内容を読んでいくと… なんと「画質」の項目における評価が「RAWに強制的にかかるノイズリダクションのせいで、高感度時における解像度がK-1よりも悪化している」と結論づけられているではないですか!

 K-1 Mark IIではCMOSセンサーの読み出し直後、画像処理エンジンPRIME IVの手前にアクセラレータなるチップが追加されており、つまりRAWデータの段階で何らかの処理が加えられることで「高感度画質が向上する」というのが売りになっていました。主にノイズ量に注目が集まっていたのですが、ノイズリダクションの結果、画像のディテールが塗りつぶされてしまうのではあまり意味がありません。

P1020323.jpg
 せっかくK-1とK-1 Mark IIの両機を持っているのだから、これは自分でやってみるしかない!ということで、同じシーンを色々な感度で撮影しつつ試してみることにしました。

 非常に長いので目次つけておきます。

目次

DPReviewの記事

 まずは問題の記事内容を再確認しておきましょう。

 こちらは要約を日本語でまとめたデジカメinfoの記事です。

 こちらがその元記事。英語で書かれたかなり詳細なテストレポートです。画質に関するテスト結果は5ページ目にあります。

 念のためにこの元記事からRAWファイルに関する評価の部分を引用してみます。

Raw files show excellent detail capture at base ISO, on par with its predecessor, the a7R III and even D850 despite the Pentax’s lower resolution. You can see this particularly in the text and in the Siemens stars. Note mirror and/or shutter-induced shock can still be an issue at certain shutter speeds, so we shot shutter speeds below 1/320s in Live View with electronic shutter mode.

As the ISO climbs, the K-1 II’s detail capture begins to slip as a result of progressively stronger noise reduction being applied to Raw files by the pre-processor. To make matters worse, this forced noise reduction cannot be turned off. The higher the ISO, the greater the difference in detail capture compared to its predecessor and the competition. It is noticeable at ISO 12,800 throughout various areas of our test scene. Our friend Bill Claff performed Fast Fourier Transform analyses to confirm noise reduction in Raw at ISOs 640 and above.

Pentax K-1 II Review: A worthy upgrade?: Digital Photography Review

 以下に素人翻訳してみました。一部意訳しています(間違いがあったら教えてください!)

  • K-1 Mark IIとその旧機種であるK-1は、ライバル機であるSONY α7R IIIやNikon D850と比べて搭載センサーが低画素であるにもかかわらず、ベース感度時の画像は素晴らしい解像を見せる。それは特にテキストとシーメンススターの部分に顕著に表れている。なお特定のシャッター速度で発生するシャッターショックによる影響を避けるため、このテストでは電子シャッターを用い、1/320sec以下のシャッター速度を使用した。

    ISO感度を上げていくと、K-1 Mark IIの画質は、プリプロセッサ(注:アクセラレータのこと)によるノイズリダクションがかかり始めることで次第に悪化していく。しかも悪いことに(プリプロセッサによる)強制的なノイズリダクションはオフにすることが出来ない。そのためISO感度が高くなればなるほど、ライバル機および旧機種であるK-1との差が開いていく。これはISO12800あたりから、テストチャート上のあらゆる部分で顕著になってくる。我々の友人であるBill Claff氏がFFTによる周波数解析を行った結果、この強制的なノイズリダクションはISO640からかかり始めることが分かった。

 ついでにJPEGファイルに関する評価の部分もみてみましょう。

Image Quality > JPEG Capture
Base ISO JPEGs appear to be using a lower radius sharpening than the original K-1, but despite this potential for fine detail the K-1 II’s JPEGs look considerably under-sharpened. This comparable lack of detail is visible throughout the test scene even at base ISO, and only gets worse as the ISO increases, thanks to noise reduction applied to both the Raw data and in JPEG processing. At high ISOs K-1 II files lose both detail and contrast compared to the K-1 and pretty much all competitors. Even Canon JPEGs, which we commonly call out as having a poor balance of noise reduction and detail retention at higher ISOs, look better.

Pentax K-1 II Review: A worthy upgrade?: Digital Photography Review

 同様に以下に翻訳です

  • ベース感度でJPEG記録した画像の場合、K-1 Mark IIはK-1よりも半径の小さなシャープネスフィルタがかかっているように見受けられる。そのためより線の細い描写が期待されるところだが、実際のK-1 IIのJPEG画像は期待されるよりも大幅にシャープネスが欠如している。このテストシーンを通して顕著に見られるベース感度でのシャープネスの欠如と、高感度時の解像感の喪失は、RAWデータにかかる強制的なノイズリダクションに加え、JPEGプロセシング時にかかるノイズリダクションの両方によってもたらされている。K-1 Mark IIの高感度時における解像とコントラストの欠如は、旧機種であるK-1と比較しても明確であり、特にライバル機との差はかなり大きい。ノイズリダクションと精細感保持のバランスが悪いと我々の中で悪評高いキヤノン機のJPEG画像のほうがまだマシである。

 とまぁ、流れ弾のようにキヤノン機がこき下ろされていますが、それはさておき、このようにK-1 Mark IIはその存在を全否定されるかのような散々な言われようです。本当にそうなのでしょうか?

 上記評価の根拠となっているテスト撮影結果はダウンロード可能であるとともに”Image Comparison Tool”なるもので、以下のようにブラウザ上でも逐次他機種の撮影結果と比較出来るようになっています。

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 例えばこんな感じです。これはスクリーンショットなので、実際のツールに触れるにはDPReviewのサイトへ飛んでください。デフォルトではK-1 Mark IIとK-1とNikon D850、SONY α7R IIIの4機種が比較できる状態になっていますが、比較対象機種は変更することも出来ます。

 で、早速RAWのISO12800前後をいくつか見てみたのですが… 普通にK-1 Mark IIは綺麗だしディテールもちゃんと出てると思いますが、私の目が節穴なのでしょうか? ただK-1と比べるとちょっと薄いというかコントラストは低い気がします。また偽色も少ないようなので、それはイコール解像が落ちていることの表れなのかも。ただそんなにこき下ろされるほどの差ではないようにも思えます。

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 さらにISO12800のまま、等倍拡大ウィンドウをテストチャートの右上の方に動かしてみると… なんじゃこりゃ? これは明らかにK-1 Mark IIだけぼやけています。K-1はそこそこ良い感じですが、それよりもD850のクリーンさとくっきり感がすごいですね。

 こういう感じで大きな差が見られる部分(チャート)は他に何カ所もあるのですが、いずれもノイズリダクションのせいではないだろこれ?と言うレベルの荒れ方に見えます。むしろK-1 Mark IIに付けたレンズがおかしいんじゃない?と言いたくなる感じ。ただ、何となくですがモノトーンのパターンや線画で描かれた部分は大丈夫な一方で、濃い色が付いてるエリアではおかしくなことになっているという傾向が見えるような気もします。

 いずれにしろ天下のDPReviewがいい加減なことはしないだろと、これはこれでひとつの結果として受け止めることにしましょう。その上で自分でK-1 Mark IIとK-1を比較するとどうなるのか、やってみることにしました。

やっぱりこのレビューは何かの間違いか?

 と、思っていたら… 昨夜中にレビューに以下のような一文が追加されていました。

To improve the degree of comparability between our results from the K-1 Mark II and the original K-1, we plan to re-shoot the scene using a FA 77mm F1.8 Limited lens. This reshoot will use the same JPEG color mode as used on the original K-1.

We will, of course, re-visit the image quality commentary in our review as soon as we’ve been able to do this.

Pentax K-1 II Review: A worthy upgrade?: Digital Photography Review

  • K-1 Mark IIおよびK-1のテスト条件をより一致させるために、私たちはFA 77mm F1.8 Limitedを使用して再撮影する予定です。そのときはK-1と同じJPEGカラーモードを使用します。

    もちろん、再撮影ができ次第、画質に関する評価コメントについても見直しを行う予定です。

 どうやらこのレビューではK-1 Mark IIにはDFA50mmマクロ、K-1にはFA77mmリミテッドが使われているなど、K-1 Mark IIとK-1で条件がちゃんと統一されていないようです。K-1と同時撮影したわけではないと言うことなのかも知れませんが、同一マウント機なのだから使用レンズくらいは統一して欲しいです。

 というか、他社と比べることも考えると、フィルム時代に設計されたFA77mmで解像を語るのもどうかと思うのですが、Kマウントには設計の新しいDFA単焦点レンズがないのもまた事実ではあります。だったらいっそのことSIGMAの50mmあたりで統一すれば良いのにと思います。

 ということで、このレビューはそのうち訂正されるかもしれませんが… まさに「乗りかかった船」ですので、このレポートもそのまま公開しておきます。

 ここまでが前置きで、以下本文です。かなり長いです。

【2018年6月1日】再撮影が行われレビュー内容が更新されました。もともとのレビューで指摘されていた「大幅な解像感の低下」は、再テストの結果「わずかな解像感の低下」に修正されました。一方で「奇妙なハッチングパターンが見える」言う指摘が追加されています。これに対し、以下本文は特に書き換えたり追加はしていません。

K-1 Mark II vs K-1 ガチンコ対決!

 デジタルカメラの画質比較方法としては、ごく一面的であることは承知の上で、同じシーンをISO感度を変えながらノイズの具合やシャープネスの具合を比較するという作業をやってみました。。ただDPReviewのような完璧なテストチャートもその撮影環境も用意できないので、近所のいくつかの場所で実写してみることにしました。

 またレンズと三脚は同じものを使い、カメラボディだけをを入れ替えて撮影しました。絞りやホワイトバランスなどなど設定は揃えていますが、完全に同時撮影ではなく、カメラを入れ替える際にちょっとフレーミングがずれたりしていますので、全体的に簡易的なテストではあります。

 また私は普段RAWしか使わないし、RAWの差が最終的にJPEGにも影響するはずと言う考え方の元、以下は基本的にRAWで比較しています。DNG記録したファイルをLightroomで現像していますが、カメラプロファイルもレンズプロファイルも当てず、基本的にストレートに出力しただけで何も弄っていません。

 では早速見ていきましょう。

日陰の石壁と木

 高感度撮影の比較ですが敢えて日中の光がたっぷりあるところでどうなるのか試してみようと言うことで、ますは近所の公園に繰り出してみます。ただしあまり明るいとシャッター速度が追い付かなくなるので、なるべく日陰を選びました。解像度を見るのに良さそうな石の壁があったので、そこで撮ってみました。

K1M21243.jpg
 こんな感じのところです。下半分は石の壁で上半分は木です。ピントは石壁にの中央上辺に合わせてあり、正確に言うならば木は石の壁よりも奥に生えています。レンズはDFA28-105mmを使いワイド端に設定しホワイトバランスはAWBに任せました。露出に関しては絞り優先に設定し、シャッター速度は両機で一致してることを確認しました。

 絞りはF8を基本としましたがISO25600以上ではシャッター速度が追い付かないので、最終的にF16まで絞っています。その領域では回折の影響が出ているはずですが、両機の比較という意味ではイコール条件であることと、超高感度域ではおそらく回折ぼけはほぼ実映像に与える影響はないだろうと言うことで、ご了解ください。

 ISO感度はベースのISO100から、上限はISO51200まで撮影しました。それ以上は明るすぎて撮れなかったのですが、そもそも実用的な意味があるのもこの辺までだと思います。

ISO800,3200,25600の比較画像

 以下代表的な感度として、ISO800、ISO3200、ISO25600で撮ったフルサイズの画像へのリンクを貼っておきます。このブログ上では小さなサムネイルですが、クリックするとFlickrの等倍拡大の画像へ飛びます。

K1M21239.jpg KONE2247.jpg
ISO800 左:K-1 II 右:K-1
K1M21241.jpg KONE2249.jpg
ISO3200 左:K-1 II 右:K-1
K1M21244.jpg KONE2253.jpg
ISO25600 左:K-1 II 右:K-1

等倍拡大の全感度比較画像

 次に、中央付近を400×534ピクセルで切り出し、比較しやすいように左右に並べてコラージュした画像を以下に貼っておきます。リストボックスから感度を選択すると表示が切り替わるようになっています。

 パソコンでブラウザ画面を大きくして表示した場合、ほぼ等倍表示になるはずです。こちらはクリックしても何も起きません。


K1M21236-Edit.jpg

感想と判定

 さてどうでしょうか?石の壁は解像感と質感が分かりやすいかと思ったのですが、そうでもなかったです。むしろ石のテクスチャはノイズにまみれやすくてよく分からなくなってしまいました。

 解像感という点では石の部分よりも緑色の葉っぱの部分の方が差が感じられるかも知れません。しかもどちらかというとK-1の方が良いように思えます…。ただそれは他のちょっとした条件でどうにでもなりそうな程度のごく僅かな差でしかありません。

 また、ノイズに関しても思ったほど違いは見えず、感覚的には0.5段分くらいK-1 Mark IIのほうが良いか?という感じです。

 難しいところですが、私の個人的好き嫌いを含めて判断するとK-1の画像の方が全体的にバランス取れていて良いかな?と思います。

青天の風景

 さてもう一つ、光がたっぷりあるほぼ無限遠の景色を撮ってみました。今回のテストでは一番明るい条件です。まぁ普通こういうところでは高感度使わないと思いますが念のためと言うことで。

K1M21253.jpg
 こんな感じでやや逆光気味です。先ほどと同様にレンズはDFA28-105mmですがズーム位置は73mmです。ただボディを取り替えるときにほんのちょっとズームを動かしてしまったらしく、ほんの少し画角が変わっていまいましたので、以下は参考までにと言うことでよろしくお願いします。

 また、先ほどよりも明るくなっているので、ISO6400以上ではF16以上に絞っており、最終的にF32まで絞ってしまいました。なのでやはり回折ぼけの影響はある程度出ていると思います。

 あと、K-1とK-1 Mark IIでは少しホワイトバランスが違っているようです。気にしてたつもりでしたがちょっと合わせきれませんでした。スミマセン。K-1とK-1 Mark IIでは、必ずではないのですが時折こうしてホワイトバランスが微妙にずれることがあります。個体差なのか機種差なのかは分かりません。

ISO800,3200,25600の比較画像

 続いて代表的な3つの感度のフルサイズ画像です。クリックすると別ウィンドウでFlickrの等倍画像が開きます。<

K1M21249.jpg KONE2258.jpg
ISO800 左:K-1 II 右:K-1
K1M21251.jpg KONE2260.jpg
ISO3200 左:K-1 II 右:K-1
K1M21254.jpg KONE2263.jpg
ISO25600 左:K-1 II 右:K-1

等倍拡大の全感度比較画像

 そして等倍比較コラージュ画像です。中心ではなくて画面少し上の方、左の柱上部を切り出してみました。


K1M21246-Edit.jpg

感想&判定

 この比較では解像度(感)というよりはノイズの差がよく分かります。ISO800くらいから差が見え始めますが、コンクリートのつなぎ目エッジや質感を見る限り、特にK-1 Mark IIの解像感が落ちてるようには思えません。

 あと、元々低感度の状態からホワイトバランスがちょっとだけ両機種でずれているのですが、どちらが良い悪いはさておくとして、K-1の方は高感度になるにつれて色味がどんどんとずれていく(変化していく)ように見えます。ホワイトバランスが変わってると言うよりは、色ノイズが増えてその成分によって見た目の印象が変わってるだけかも知れません。

 ノイズの穏やかさ、色味の安定感など含めてこのシーンではやはりK-1 Mark IIのほうが良いのではないかと思います。

木陰の看板

 次は近景のひとつとして、公園内にあった看板をどアップで撮ってみました。撮影距離は1mくらいの比較的近距離です

K1M21263.jpg
 こんな感じです。あまりパターンとして細かいものではないですが、看板表面の細かい汚れとかキズとか、そういう部分では解像感が質感に与える影響は大きいのではないかと思います。

 レンズは引き続きDFA28-105mmでズーム位置は50mmくらいです。今までの2カ所よりはくらいので絞りはISO25600まではF8ですが、それ以上はやはり絞っています。

 あまり面白い画像ではないので、ここではフルサイズ画像の代表的感度比較は割愛しておきます。Flickrには加工済み画像をアップロードしてあるので、ご興味があれば最後に紹介するアルバムへのリンクからご覧下さい。、

等倍拡大の全感度比較画像

 ということで、いきなりですが等倍切り出し比較コラージュ画像です。このテスト以降はK-1の最高感度ISO204800まで撮って比較しています。


K1M21256-Edit.jpg

感想&判定

 低感度から文字のエッジは何となくK-1のほうが鋭いような気もします。ISO100で差があるとしたらそれはもしかしたらわずかなピントズレかもしれません。

 それは割り引くとしても、このシーンもまたノイズの差がよく見えてると思います。やはりISO800あたりからK-1 Mark IIのほうが下地の白い部分のS/Nが良いです。一方でISO12800になってもK-1 Mark IIは下地の薄いキズなども残っていて、それなりに解像してるように思います。K-1は細かい傷はノイズに埋もれてしまっています。

 そしてK-1 Mark IIは高感度になってノイズが増えてきても色味を保ってるのに対し、K-1はISO6400あたりからマゼンタ被りをしたと思ったら、ISO25600からは黄色に転んできてしまいました。これもたまたまかも知れませんが。

 一方でK-1 Mark IIはカラーバランスが一貫して保たれる一方で、赤い文字の彩度が高感度になるに従って下がってきています。色が抜けていくというか何というか、そんな感じです。高感度時にK-1 Mark IIの色エッジの先鋭感というかコントラスト感が落ちてくるとしたら、この辺の特性と関係しているのかも?と、よく分からないながらにちょっと思いました。

 ただし、色味の安定度など含め全体的にはK-1 Mark IIのほうが良いのではないかと思います。

一万円札のマクロ撮影

 次は室内でマクロ撮影しました。被写体は細かいパターンが印刷された紙切れを使いました。解像度を見るにはうってつけかと思います。

K1M21276.jpg
 その紙切れとはこれです。一万円札です。テストチャートをしっかり撮るのと同じくらい、小さな紙の複写というのは本来は非常にむずかしいものですが、かなり簡易的に撮ったものですので、その辺はご容赦ください。

 レンズはDFA100mmF2.8マクロを使っています。絞りはF8で等倍ではなく撮影倍率は0.4程度だと思われます。また、DFA100mmマクロはコントラストAFとの相性が悪いのか、ピントがまったく合わないこともありますし、合ったとしても実はピントずれしてる場合が多々あり、ライブビューではAFはほぼ使い物になりません。むしろ位相差AFの方がずっと精度が出ます。ですから今回は位相差AFでピントを合わせた上に、ライブビューMFにし拡大表示でピントを追い込みました。

ISO800,3200,25600の比較画像

 紙幣全体の画像はそもそもPhotoshopが編集を受け付けませんし、その利用は色々と問題があるので、以下は福沢諭吉の肖像が部分だけをトリミングした画像です。クリックすると別ウィンドウで全体の等倍画像が開きます。

K1M21271.jpg KONE2280.jpg
ISO800 左:K-1 II 右:K-1
K1M21273.jpg KONE2282.jpg
ISO3200 左:K-1 II 右:K-1
K1M21277.jpg KONE2286.jpg
ISO25600 左:K-1 II 右:K-1

等倍拡大の全感度比較画像

 さらにトリミングして等倍比較画像です。画面右上の模様部分を切り出しました。これもISO204800まで撮っています。


K1M21268-Edit.jpg

感想&判定

 マクロ撮影なので、これこそピント合わせのちょっとした違いや微妙なブレの影響がすごく大きいので、すべてのカットがベスト条件で撮れてるか自信はないのですが… 低感度を見る限りインクの立体感も出ているし、撮影上の大きな問題はなさそうと判断しています。

 この場合、フラットな部分がほとんどないせいか、ノイズ量からしてもあまり差がありません。それでもISO6400以上になると全体的に僅かながらK-1 Mark IIのほうが滑らかに感じられます。

 一方で先鋭感に差があるかと言えばそれもほとんど感じられず、正直言って私の目にはどっちが良いとか悪いとか含め、ほぼ違いが分からないという結果になりました。

 敢えて言うなら引き分けかと思います。

浅草寺の夜景

 続いて、実使用上高感度をよく使うシーンと言えばやはり夜景ではないかと思います。ということで夜景を撮ってみました。

K1M21304.jpg
 コントラスト差が非常に大きく、ちょっと色が偏り気味ではあるのですが、近場で代表的な夜景の例として浅草寺で撮ってきました。本堂ではなく宝蔵門です。おまけで遠景に東京スカイツリーも入れておきました。

 斜めの構図で画面内に映ってるものの距離差が大きいですが、DFA24-70mmF2.8のワイド端でF5.6まで絞っていますので、概ね深度内に入ってるのではないかと思います。

ISO800,3200,25600の比較画像

 代表的な3つの感度のフルサイズ画像です。クリックすると別ウィンドウで全体の等倍画像が開きます。

K1M21300.jpg KONE2308.jpg
ISO800 左:K-1 II 右:K-1
K1M21302.jpg KONE2310.jpg
ISO3200 左:K-1 II 右:K-1
K1M21305.jpg KONE2313.jpg
ISO25600 左:K-1 II 右:K-1

等倍拡大の全感度比較画像

 そして等倍比較画像です。なおここではRAWだけでなくJPEGから切り出した画像も同じようにして比較してみることにしましょう。まず最初はRAWです。


K1M21297-Edit.jpg

 次にJPEGで記録した画像から切り出しました。JPEGは歪曲補正、倍率色収差補正、周辺光量補正などレンズ補正派すべてONとし、ノイズリダクションの設定はAUTO、カスタムイメージは「鮮やか」で撮りました。


K1M21297-Edit.jpg

感想&判定

 さて、このシーンではノイズの差が明確にわかります。特に真っ赤に塗装された部分ではISO800から明確に差が現れ、ISO12800以上では差が顕著です。このシーンで見る限りノイズ量の差はK-1とK-1 Mark IIで1段以上あるように思います。

  注目ポイントは以下の画像例に示すように「瓦の模様」と「赤い梁に通る細い横線」そして「右下に少し見えている赤い網」辺りではないかと思います。

f:id:hisway306:20180514135924p:plainf:id:hisway306:20180514135919p:plainf:id:hisway306:20180514135916p:plain
左:瓦の模様 中:赤い梁と横線 右:軒にかかった網

 これらの解像度合いを見ていると、瓦と網はどの感度でもほとんど同等だと思うのですが、赤い梁に通る横線はかなり低い感度からK-1 Mark IIのほうが曖昧に感じられます。高感度になるにしたがってK-1 Mark IIのほうは横線がほとんど消えかかっていますが、K-1はノイズだらけながらクッキリ線が残っています。

 どうもK-1 Mark IIは色純度の高い部分ではRAWの段階からノイズをかなりガッツリ取るように働き、結果的にこういう色のトーン変化だけで絵が出来てる部分などで解像感を落としているのではないか?という気がします。

 うーん、DPReviewが言ってるのはこの辺のことなのでしょうか? 低ノイズと引き換えに単色で描かれたエッジの解像を取るかどうか?が、K-1 Mark IIをどう考えるかの分かれ目ではないかと思います。

 ついでにJPEGの場合を見てみると、PRIME IVでもしっかりとノイズリダクションがかかっており、ISO3200を越えた辺りからは明確にディテールは崩れていくのですが、それはK-1も同等です。しかしRAWで感じられたのと同じでK-1 Mark IIは赤い単色部分が塗り絵されすぎており、特にISO25600を越えるとやり過ぎ感が出てきますが、このくらいは味付けの範囲内と言われるとそんなものかな?と思います。K-1 /K-1 Mark IIは(JPEG記録時の)ノイズリダクションの設定がOFFを含めて、各感度毎にかなり細かく設定できるので、ユーザー側でもある程度調整幅があります。

 個人差があるとは思いますが、私だったらノイズの少なさを重視してK-1 Mark IIを取ると思います。

六角堂の夜景

 夜景の写真をもう一枚撮ってきたのでこの際見ておきましょう。

K1M21320.jpg
 宝蔵門は真っ赤な鮮やかな建物でしたが、こちらはシンプルな無塗装の木造です。余談ですが浅草寺の中では私が一番好きな建物で、東京(江戸)では珍しく、幾多の火災や戦災を乗り越えて17世紀初頭から現存している都内最古の木造建築物です。

 さて、この照明は白色のLEDだと思いますが、ホワイトバランスは太陽光に固定して取ったのでちょっと黄緑色に被っていますが、特にいじらずそのままLightroomでJPEGに書き出しました。

【2018年5月16日追記】:私のうっかりミスにより、K-1 Mark IIとK-1で絞りの設定が一致していないことに今更気がつきました。レンズはDFA24-70mmF2.8で同じものですが、K-1 Mark IIはF4.0で、K-1はF5.6で撮影してしまったようです。この絞り設定の違いがどのくらい影響しているか分かりませんが、以下のサンプル画像はその前提でご覧下さい。

ISO800,3200,25600の比較画像

 まずは代表的な3つの感度のフルサイズ画像を貼っておきます。クリックすると別ウィンドウで全体の等倍画像が開きます。

K1M21316.jpg KONE2320.jpg
ISO800 左:K-1 II(F4.0) 右:K-1(F5.6)
K1M21318.jpg KONE2322.jpg
ISO3200 左:K-1 II(F4.0) 右:K-1(F5.6)
K1M21321.jpg KONE2325.jpg
ISO25600 左:K-1 II(F4.0) 右:K-1(F5.6)

等倍拡大の全感度比較画像

 そして等倍比較画像です。照明が強く当たってる部分を切り抜いたので、ちょっとオーバー目に見えるかと思います。


K1M21313-Edit.jpg

感想&判定

 このシーンでも、ノイズは相変わらずK-1 Mark IIの方が少なくて、K-1と比べてやはり1段以上の差があるように思います。一方で、全体に黄色いとは言え木目の微妙なテクスチャがあるためか、先ほどの宝蔵門ほど明確な塗り絵傾向はなくて、解像感にあまり差は感じられません。ですからノイズが少ない分だけK-1 Mark IIのほうが良いと思われます。

 ただし追記したとおり、絞りが違うためこのシーンはご参考までと言うことで…。

元画像はアルバムにまとめてあります

 今回の比較のためにかなりたくさんの写真を撮りましたが、記事中ではダイジェストと言うことで切り出し画像だったり、代表画像しか貼れませんでしたが、元画像は全てFlickrのアルバムにまとめてあります。詳細に検討したい方はそちらをじっくりご覧ください。

 元のRAWファイルではなくLightroomからアップロードしてJPEG化したものですけど。お札の画像もオリジナルではありませんが一部トリミングしたものを置いてあります。

ついでに「手持ちリアル・レゾリューション」に再トライ

 さて、K-1 Mark IIを手に入れた直後は積極的に試してみた「手持ちRRS」ですが、どうもこれまでのところイマイチな結果しか確認できていませんでした。

 今回は改めて手持ちRRSの効果を確かめてみました。以下に普通に撮った画像、手持ちRRSで撮った画像、そして三脚に載せて普通のRRSで撮った画像、の3枚を貼っておきます。いずれもクリックすると別ウィンドウが開いてFlickrの等倍画像に飛びます。

 レンズはDFA28-105mmを使い、ほぼテレ端の105mmで撮りました。絞りはF8でISO100です。カメラ内現像結果を見るために、これは手持ちRRS以外の2枚は三脚に載せて撮っていますが、手持ちRRSはその名の通り手持ちしているので、僅かにフレーミングがずれているかもしれません。

RRS:OFFK1M21224.jpg
RRS:ON(MCあり)K1M21234.jpg
RRS:ON(手持ち)K1M21224-Edit-2.jpg

 こんな感じです。今回は明確に効果が見られました。手持ちRRSは通常撮影よりも明確に解像度が上がり、窓枠やベランダの手すりなどが明確になり、壁面の細かいレンガ状のパターンも浮き上がってきています。しかし三脚を使用した通常RRSはさらにそれを上回る解像度を見せて、別次元になっているようです。

 ということで、通常RRSほどではないものの、これくらい効果が出るなら手持ちRRSの恩恵は十分ではないかと思います。変に低速シャッターを切ったりするより、普通に撮るほうが良いのかもしれません。

総評:結局K-1 Mark IIはどうなのよ?

 ということで、慣れないことをやってみてかなり疲れました。ピントやブレには気をつけたつもりですが、一部影響が残ってる可能性は捨てきれません。その上でこれらの結果をどう判断するか?というところをまとめておきたいと思います。

P1020322.jpg

 いろいろと細かいことを延々と書いてきましたが、誤解を恐れずにすごくぶっちゃけてシンプルにまとめてしまうと、K-1 Mark IIはK-1に対して…

  • ノイズ量は概ね1~2段程度の改善が見られる場合が多い
  • 解像感は違うと言われると違うような気はするけど、たいていの場合はほとんど変わらない
  • 手持ちRRSは嵌まるとわりと効果がある
  • 電池の持ちの悪化は実感するほどではない

 と結論づけてしまおうと思います。最後の項目は今回のテスト結果と関係ありませんが、これまで約3週間使ってきて感じていた感想です。

 もしかしたら、DPReviewが言うようにちゃんとテストチャートを撮影し、見る人が見れば解像感の悪化は明らかなのかも知れませんが、実用上私の目にはどうでも良いレベルだということが分かりました。それよりもレンズやピントやブレのほうがよほど実用上大きな影響を与えるので、このくらいはどうでも良いと言える範囲だと思います。

 一方で、K-1 Mark IIの特徴である低ノイズはその効果が明らかに得られる場面が多いし、これまで感じていたよりもシーンによっては効果が大きいことがわかりました。そして手持ちRRSも場合によって明確に効果が得られることもわかりました。なので、K-1 Mark IIは新型機と言うよりはやはり単なるK-1のマイナーチェンジ機として、微妙な内容なりに存在価値はあるのだろうと思います。少なくとも今、値段理由以外で旧型となったK-1を慌てて確保する必要は特にないと思います。

アップグレードはやるべきか?

 さて、基板交換によるK-1のアップデートがいよいよ来週月曜日、5月21日からいよいよ始まります。最初期に受け付けたカメラが基板交換されて戻ってくるのは月末辺りからになるのでしょうか。

 開始当初は混雑が予想されるため、予約受付サービスも同時に開始されるそうです。

 現在K-1を持っているユーザーがK-1 Mark IIにアップグレードするべきかどうかは微妙なところだと思います。少なくとも私の印象としては「是非すべき!」とまでは言えないかなと思います。5万4千円という費用も考えると、K-1はK-1のまま使っていくのもアリではないか?と思います。それこそDPReviewの記事にあるとおり、K-1はα7R IIIやD850に匹敵する画質を持っているわけですから。

K3II3001.jpg
 なお私は自分のK-1をどうするかはまだ決めていません。少なくとも今月中すぐにやることは無いと思いますが、サービスが終了するまでにいずれはやることになるのかな?と想像しています。

 それは、本音を言えば高感度時のノイズや手持ちRRSのためと言うより、今後継続してファームウェアアップデートを受けるためであり、あるいはわずかにずれることがある色味や高感度性能など、同時使用時の時に完全に同じカメラとして使うため、という理由が大きいです。

 ということで、最後に再度まとめておくと「K-1 Mark IIの画質はDPReviewが言うほど悪くないと思うよ」という「※個人の見解」で、この長いレポートの〆としておきたいと思います。あとはみなさん、ご自分の目で確かめてみてください!!

PENTAX 一眼レフ K-1 Mark II ボディ  15996

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