PENTAX K-1 Mark IIのAF動体追従性能はK-1と比べて進化しているのか?

投稿者: | 2018年5月24日

 K-1 Marik IIを手に入れてから1ヶ月。当初はそこまでやるつもりはなかったのですが、DPReviewの衝撃的な悪評記事をきっかけにして、これは追試してみなくてはならぬと言う(勝手な)義務感に駆られ、K-1 Mark IIとK-1の高感度性能の比較記事を先週に公開しました。

 その流れでもう一つやってみなくてはならないと思っていたのが、オートフォーカスの比較です。K-1 Mark IIのアップデート点として、アクセラレータの追加による高感度性能の向上や、手持ちリアルレゾリューション機能のサポートなど、わかりやすい項目の他に、オートフォーカスの改善というものがあります。

 とはいえAFセンサーはK-1と同じSAFOX12のままだし、プロセッサもPRIME IVで変わりはありません。とすればAFに関する改善はすべてソフトウェアによって行われたのでしょう。これは言うなれば新型機が出ると必ず言われているお約束事項でもあり、実際にはほとんど体感することはない… などと醒めた見方をしてしまいがちです。

 でもそこで、同じようにほとんどハードウェアに変更がないのに、明らかにオートフォーカスが改善したK-3 IIのことを思い出しました。もう手放してしまいましたがK-3 IIはK-3と比べて明らかにオートフォーカス性能、特に動体への追従性能が別物になっていました。

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 K-1 Mark IIもK-1も、そもそも動体を連写するような用途に向けたカメラではないことは(2年前から)承知の上ですが、もしかしたらK-1 Mark IIもK-3 IIのように大きな改善があるかも知れない… と一縷の望みを持ってテストしてみることにしました。

K-3 IIの夢を再び

 最初に昔話としてK-3とK-3 IIのことを簡単に振り返っておきます。今から約3年前のこと、K-3からK-3 IIに買い換えたときに両機のAF動体追従性能を比較したことがありました。以下の記事です。

 K-3とK-3 IIは基本的に駆動系やプロセッサ、AFセンサーなど同じものを使っており、名前の通りK-3のマイナーチェンジ機と思われていましたが、手ぶれ補正の性能向上とともに、AF性能の向上を改善点として大きく謳っていました。そして実際にK-3に対しK-3 IIのAF動体追従性能は大きく改善していました。まるで別のカメラのように。

 その後、2015年のF1日本GPでK-3 IIを使ってみてこんな記事も書きました。他社と比べるとAFの動体追従性能に関しては周回遅れと言われていましたが、それでもK-3 IIはKマウントのカメラとしてはこの時点でひとつの完成形だったと思います。

 新しいデバイス、メカを一気に取り入れたK-3ではうまく使いこなしができていなかったのが、マイナーチェンジとなる「II」になってようやく本来の性能を出すところまで最適化が進んだのだろうと思っています。

 ならばK-1とK-1 Mark IIにも同じことが起きてないだろうか?と、当然思いませんか? 思いますよね? 思いたいですよね??

K-1 Mark IIのAF改善とはどのようなものか?

 多機能化した現代のカメラにおいて「AF性能」と一口に言っても、非常に多岐にわたっています。K-1/K-1 Mark IIのような伝統的スタイルの一眼レフカメラでも例外ではありません。K-1 Mark IIでは一体どの辺がどう改善されたのか、メーカーのインタビュー記事や、海外レビューサイトなどを少し発掘して確認してみましょう。

 まずは公式サイト。今週から受付が開始された(そしてすでに予約枠は満杯になった)K-1アップグレードに関する情報ページにはAFの改善について以下のように書かれています。

最新のアルゴリズムを搭載することにより、AFスタートから合焦までを高速化。さらに、被写体と背景の色が同じようなシーンでも、的確に被写体の動きをキャッチ。画面内を上下左右に動くような被写体に対しても追従性をアップしました。

 「高速化」とか「アップしました」の比較対象が書かれていませんが、流れからしてK-1無印なはずです。これが実感できるくらいの差だったら素晴らしいです。

 さて、もう一つAFに関しては気になる記事があります。それはImaging Resourcesという海外サイトが掲載した以下のページです。

 3月に行われたCP+ 2018でリコーイメージングの荒井氏にインタビューしたもので、要約ではなく一問一答式で掲載されているので、文脈とかニュアンスがわかりやすくなっています。

 と言っておきながら、一部抜粋して引用してしまいます。ちょっと長いです。

Regarding the autofocus performance, it’s upgraded mainly for the tracking performance of moving subjects. What we have done is there are two things.

One is optimization of the mathematical function to evaluate the subject, which is acquired from the AE sensor. Our AE sensor can evaluate some of the color differences of the subject, and the autofocus focus sensor can measure the distance between the camera and the object, and more intelligently utilize the information to track the subject.

That is one thing, and another is we have the AF hold function. AF hold function [determines] how long does the camera try to keep tracking, or how easy they abandon and try to restart the autofocusing.

Previously we wouldn’t include that focal length information into the stickiness of the autofocusing, but now that information is also utilized in the AF Hold and this eventually reduces unwanted focusing on the background when you shoot moving subjects. So those two are the main changes. There will be also fine-tuning of small things, but those two are the main things to improve the autofocus performance.

 私なりに翻訳すると以下のような感じではないかと思います。

  • AF性能については、動体追従特性を向上するために主に二つの改良を施しました。
    まず一つ目は、被写体認識のための数学的モデルを最適化したこと。そのためにAEセンサーを利用しています。このAEセンサーは色を認識することができるので、それとAFセンサーによる距離情報を合わせることで、追従すべき被写体の認識を高精度化することができます。
    もう一つはホールド機能に関するものです。これはAFがどの程度直前までの動体追従状態を維持するか、あるいは改めてピント合わせをやり直すかを決めるものです。
  • これまではAFホールド特性を決めるためにレンズ情報は利用していませんでした。しかし今回はレンズ情報を加味してどの程度トラッキング状態を保持するかを決めるようにしました。それにより背景へのピント抜けなどの発生頻度を下げることができます。これ以外にも細かいチューニングも行っていますが、この二点が影響が最も大きい主な改善点となっています。


 なるほど! プレスリリースやカタログのような能書きではなく、非常に具体的な変更点についての情報が書かれた素晴らしいインタビューです。これによりK-1 Mark IIにおけるAFの改善のポイントが分かったような気がします。

 なおDPReviewによる例のK-1 Mark IIレビュー記事でもAFの評価は行われています。単純な動体追従性能と、AFポイントオートにおける被写体認識性能をテストしています。あまり評価は良くないですが、まぁこれはこれで多分実力を表しているのでしょう。ご参考まで。

基本的なAF動体追従テストをやってみよう

 さて、AF動体追従性能と言っても多機能な最新のカメラにとっては色々な特性があるかと思いますが、頑固に一眼レフを使い続ける私のようなユーザーが一番気にするのは、単純にピントが時々刻々動く場面でどれだけ動体予測機能が正確に、安定的に働くか?ということになります。

 また、上記引用したインタビューの通り、K-1 Mark IIにおける主な改善点からすると、AFポイントの自動選択の特性や外乱が多い場面での安定性に主に改善があると期待されますが、その点を詳しく見るのはまた機会があればということにして、まずは基本的な確認と言うことで、以前K-3とK-3 IIで行ったようなテストを行ってみることにしました。

 つまり、単純に高速で近づいてくる被写体を連写したときにどの程度AFが追従するのか? そしてK-1 Mark IIとK-1で差があるのか?ないのか? です。

AF.C関連設定の確認

 K-1 Mark IIおよびK-1には、それなりにコンティニュアスAFに関する細かい特性設定があります。それをまずは確認しテスト条件を明示しておきます。

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 AFモードはAF.C(コンティニュアス)は大前提として、AFポイントは中央を中心とした9点セレクトエリア拡大にしました。K-3 IIまではセレクトエリア拡大またはAFポイントオートにすると、AFポイントの選択自体に時間がかかるような感じで、動体追従性能が落ちてしまうと感じていましたが、K-1からはあまりそのようなペナルティは感じなくなり、多用するようになりました。

 ですので、AF.Cを使うときは9点セレクトエリア拡大を組み合わせるというのが、私なりの標準的な設定なのでこれでこのテストも行います。

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 さらにAF.Cかつ連写モードの場合に、シャッターが切れるタイミングを設定することができます。しかも最初の一枚目とそれ以降続く連写時に設定は分かれており、それぞれ「ピント優先」「コマ速優先」「オート」の3つから選べます。

 K-3時代は「ピント優先」以外役に立たなかったのですが、K-1は連写速度がそもそも遅いせいか、状況に応じて必ずしも「ピント優先」にしなくてもAFはそれなりに追従してくれます。「オート」と言うのが何を見て決めているのかよく分かりませんが、実使用感としては「オート」もアリかな?と思っています。

 しかし今回は両方とも「ピント優先」に設定しました。

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 そしてもう一つ、改善が加えられたというAFホールド設定。K-1ではデフォルト設定が「低」でしたが、私は「OFF」に設定変更したまま一度もこの設定を変えたことがありません。

 そしてK-1 Mark IIはそもそもデフォルトでこの設定は「OFF」になっています。ホールド特性に改善を加えたけど、やはり通常は「OFF」が推奨と言うことなのでしょうか? せっかくの新機能だから使ってみるという手もあったのですが、これまでの経験を優先してこれは「OFF」のままとします。

 以上の内容はだいたい以下の記事にも書いてありますので、ご参考まで。

AF関連以外の設定

 AF以外の設定については以下の通りです。
 

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 レンズはDFA150-450mmを使用し、ズーム位置は300mmに設定しました。そしてAPS-Cにクロップし高速連写モードでシャッターボタンを押しきって撮影しています。

RICOH PENTAX 望遠ズームレンズ HD PENTAX-D FA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW 21340

RICOH PENTAX 望遠ズームレンズ HD PENTAX-D FA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW 21340

 APS-Cクロップにしたのは、連写速度が速い方がAF速度のちょっとした差が出やすいかも?ということ、さらにAFするのは中心部だけで周辺は基本的に不要であること、そしてデータが軽くバッファサイズに余裕が出て、SDカードの書き込み負荷も低いはず、という理由からです。また、連写速度に影響が出るかもしれないレンズ補正は全てOFFとしました。

 なお、使用したSDXCカードは定番中の定番、SanDiskのExtreme Proです。UHS-1対応のスピードクラスU3仕様を使いました。両機ともフォーマットし空の状態から撮影を初めています。

撮り鉄でAF追従性能チェック!

 さて、またもや前置きが長くなってしまいましたが、いよいよテスト結果です。被写体は手近な動体ということで最寄り駅で電車を撮ってみることにしました。

 ただし、完全に同時に同じ電車で試したものではないので、各電車の速度が一定かどうかは分かりません。多分規程があって、ほぼ一定速度で入ってくるのではないか?と思っていますが、実際のところは分かりません。

 またシャッターの切り始めと終わりも、目印を決めて目測でタイミングを計っただけですので、微妙なズレはあると思います。

 いろいろとあらかじめ言い訳をしましたが、その上で以下結果です。

成田エクスプレス

 まず最初は成田エクスプレスです。この駅を通過する列車ですが、わりと減速して進入してきます。

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 無限遠ではないけれども、目測で100m以上遠くからシャッターを切り始めます。このくらい距離があれば像面でのピント変化もまだ穏やかなのですが、逆に「動いてる」と認識するのが遅れる場合もあるような気がします。

 なお、このカットを拡大してもらうと分かるのですが、この日は撮影条件は非常に悪く線路上はかなり空気が揺らいでいました。なのでAF動作自体にも影響があったかもしれないですし、一方でピントが合ってるかどうかを判定もかなり難しいです…。

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 車両が画面一杯になる頃は、かなりAFは忙しくなってきますし、撮影者としてはフレーミングを維持するのがやっと。なのでピントのことを気にしている余裕はなく、カメラを信じるしかありません。スクリーンを見ている限りちゃんとピントは追いかけて来てるように見えます。

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 もう車両はフレームをはみ出しており、鉄道写真として成り立っていませんが、20mくらいの距離ならまだ何とか追いかけています。右端に現れたポールがちょっと気になりますね。

 上記3枚は連写中の代表的なコマを抜き取ったものですが、以下にシャッターを切った全コマ分のサムネイル一覧を貼っておきます。シャッターを切り始める目標ポイントを通過してから、追いかけられなくなるまでの全コマを並べてあります。

▽ K-1 Mark II ▽ f:id:hisway306:20180522211544j:plain
▽ K-1 ▽ f:id:hisway306:20180521222533j:plain
 赤はピントがちゃんと来てるコマ、黄色はちょっと怪しいけど私基準ではOKとするコマ、そして紫はピンボケです。上記の通り、空気の揺らぎやあるいは手ブレっぽいカットもあって、ピントが合ってるかどうか、判断に困るカットもあるのですが、エイやっと分類した結果です。

 K-1 Mark IIのほうは全部で47コマ、K-1は42コマとなっていますが、多少スタート位置のズレがあるか、あるいは電車の速度が違っていたかもしれず、この差が実効連写速度の差と断じることは出来ません。体感的にはほとんど同じでした。

 参考指標として完全合焦率(赤いマークをつけたコマ数÷全コマ数)を計算してみると、K-1 Mark IIは68%、K-1は55%となります。全体的にOK率はK-1 Mark IIの方が高いのですが、それほど近くない時点(ピント移動速度が速くない時点)で外すこともあって、安定感がイマイチです。

 なお両機とも近距離でNGカットが連続するのは、黄黒のポールが画面を横切った時にAFがそちらに引っ張られてしまうためと思われます。それについてはまた後述します。

 この1回だけでは何とも言えないので、もう1回同じテストをやってみることにしましょう。

総武快速

 ということで次は同じ場所から総武快速を撮ってみました。停車に向けて進入してくるわけですが、むしろ通過してしまう成田エクスプレスよりも進入の速度は高いかもしれません。

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 細かい経過はざっくりと割愛しますが、こんな感じの電車です。正面の姿はクッキリメリハリがありますし、AFしやすい被写体だと思います。

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 失敗というかピントを外した例としてはこんなカットがあります。成田エクスプレスのテスト例でもそうだったのですが、十分近づいてきてAF追従が苦しくなってきたところで、黒黄のポールが前を横切ります。

 この時、必ずというわけではないのですがAFがこのポールに引っ張られがちになります。そして、なぜかポールにも電車にもどちらにもピントが合ってない、このカットのような写真が撮れることがあります。ピント優先に設定したのに不思議ですね…

 ちなみにK-1 Mark IIのAF改善点のひとつでもあり、今回OFFに設定してしまったAFホールドはこういう条件で効いてくるものと思いますが、どう設定したら上手くいくのか、まだ私にはそのノウハウがありません。過去K-3やK-3 IIのAFホールド機能は、こういう外乱物に強くなる代わりに弊害も非常に大きかった(動体認識が遅れて動体予測に入りづらくなる)ので、使わなくなってしまったという経緯があります。

 図らずもAFホールドをテストするには絶好の条件だったわけですが、今回はOFFのまま押し通してしまったので、またその気になったら次回AFホールドONでテストしてみたいと思います。

 さて、成田エクスプレスの例と同じように全コマ並べたサムネイル一覧を貼っておきます。

▽ K-1 Mark II ▽ f:id:hisway306:20180521222531j:plain
▽ K-1 ▽ f:id:hisway306:20180521222535j:plain

 今回はK-1 Mark IIとK-1で撮影コマ数はほとんど同じとなりました。やはり実効連写速度にはそれほど違いはないように思います。そしてピント精度の傾向もだいたい似たような感じになったと思ういます。

 完全合焦率はK-1 Mark IIが54%、K-1は51%です。あまり良い成績ではありませんが、両機とも終盤にNGカットが連発するのはAFが追い付かなくなったのではなく、上記の通りポールが横切ることでピントが引っ張られてしまうためです。AF追従が厳しくなってきた終盤で乱されたわりに、ポールが過ぎ去った後に一度何とか電車を捕まえ直してるところが健気でがんばってるな!と思わせますが、残念ながら時既に遅しという感じで、立ち直り切りません。

 さて、終盤に画面を横切るポールがないとどうなるのか、もう1回条件を変えて試してみましょう。

総武各駅停車

 今度はホームを移動して各駅停車の電車を狙ってみます。こちらも停車駅に向けてのアプローチ段階ではほとんど減速しておらず、進入速度はやはりかなり速いです。

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 線路とホームの位置関係から、各駅停車の電車はほぼ真っ直ぐこちらに突っ込んできます。正面はガラスの面積が広くて、もしかしたらAFセンサーにとってはちょっと苦手な被写体かもしれません。撮影者がうまくコントラストのあるところにAFポイントを置いてやった方が良いと思いますが、超望遠域で動く被写体相手に、なかなかそれだけの余裕はありません。

K1M21748.jpg
 さらに近づいてきて、もうすぐフレームからはみ出しそうですが、まだ真っ直ぐこちらに向かってきます。

K1M21767.jpg
 そして最後は右の方へ流れていきます… このくらいまで追従できれば十分なんですけどね。

 さて、全体の経過を全コマ並べたサムネイル一覧で見てみましょう。

▽ K-1 Mark II ▽ f:id:hisway306:20180521222532j:plain
▽ K-1 ▽ f:id:hisway306:20180521222536j:plain

 こちらには目の前を横切る障害物はありません。なのでわりと最後のほうまでしっかりとピントは食いついていますが、K-1 Mark IIはやはりところどころ不意に外すことがありました。というか、これはK-1の方が見事な追従っぷりを見せたと言えると思います。

 完全合焦率はK-1 Mark IIが67%、K-1は実に78%を記録しました。ただしK-1 Mark IIはピント移動があまりない遠距離時にどうも動きが曖昧な一方、近距離になってくると俄然がんばります。K-1はその逆、となぜか動きがまったく異なりました。どっちが良いと言えるのか何とも言えない結果です。

 良く見ると撮影した車両がちょっと違うようですし、フレーミングの安定度とかちょっとした細かいことで、このくらいの差はすぐに生じてしまうのではないか?というのが実際テスト撮影してみての感想です。

 しつこいですようですが、ちょっと思いついたので条件を変えてもう一セットだけテストしてみましょう。

遠ざかる被写体

 これまでの3回は、近づいてくる電車でテストしました。実際動体を撮影する場面で多いのは、近づいてくる被写体の方なのですが、AFの動体追従としては遠ざかる方向はどうなのか?ということに純粋に興味が沸きます。そして飛行機でもF1マシンでも、実際に遠ざかる被写体を撮ることはそんなに珍しいことではありません。

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 駅を離れ加速していく列車を追いかけ始めます。先ほどとは逆に最初の方がピント移動が速いので、最初のうちはこうしたピンボケカットが混ざります。

K1M21510.jpg
 しかし、そのすぐ次のカットでこうしてガチッとピントが追い付くこともあります。

K1M21535.jpg
 そして遠ざかっていく列車を追いかけ続けます。

 さて全コマ並べたサムネイル一覧は以下の通りです。

▽ K-1 Mark II ▽ f:id:hisway306:20180521222530j:plain
▽ K-1 ▽ f:id:hisway306:20180521222534j:plain

 一見してあまり成績が良くないことが分かりますが、完全合焦率はK-1 Mark IIが50%、K-1は45%となってしまいました。

 全体の流れ的に、ピントが追い付いてもそのまま食いつくことがなく、数カットの内にピンボケとなり、またその後追い付く… というサイクルをこの短い撮影時間の間に繰り返しているように思います。近づいてくる場合と違って、出発していく電車は加速していくため速度も一定ではないと言うこともあるのですが、どうもK-1もK-1 Mark IIも遠ざかる方向の動体追従が苦手なのではないかと思います。

 それでも、敢えて差を探すとすれば、ピントズレに気付くサイクルがK-1 Mark IIのほうがほんの少しだけ早いような気がします。

参考データ:FUJIFILM X-H1の場合

 さて、ここで参考までに最新鋭のミラーレス機FUJIFILM X-H1だと同じ条件でどうなるのかやってみました。レンズはXF100-400mmを使い、動体追従特性はデフォルト、AFエリアはゾーンモードを使いました。

 以下に全コマサムネイルだけ貼っておきます。
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 いやーすごいですね。全撮影コマ数は71コマでK-1 Mark IIの1.5倍ほどになりました。完全合焦率も73%あります。

 X-H1がほぼ公称通りの連写速度(秒間8コマ)出ているとすると、K-1 Mark IIは実効速度秒間5コマ程度となりますが、実際に実感としてもピント優先に設定した場合はそんなものかと思います。

 さてX-H1の結果をザッと眺めてみると、ある程度の距離まではしっかり追従するのに、近距離でだんだん怪しくなってくる辺りは、むしろ分かりやすい特性です。像面位相差AFを搭載したミラーレス機として、動体追従性能はここまで来たことに驚きます。

 とは言え、ミラーレス機のAF性能という点では恐らくこのX-H1はトップクラスではありますがトップランナーではありません。全体的には一眼レフとミラーレス機でAFの動体追従性能にはほぼ差が無くなってきたと言えるのでしょう。ただしEVFの問題があるので、全体として撮影体験が優れているか(≒撮影しやすいか)どうかはまた別の問題です。

K-1 Mark IIで動体は撮れるけど、もう撮らない

 ということで、空気の揺らぎの影響もあり少し厳しめに判定したこともあって、なかなか厳しい結果となりましたが、体感的にK-1というかペンタックス機の動体追従性能としてはこんなところではないかと思います。これまでK-3やK-3 II、そしてK-1で飛行機やF1を撮ってきた私の体感とそう大きな乖離はありません。なので、私的にはそんなにガッカリしていません。

 かなりいい加減なテストなので、これだけでK-1 Mark IIとK-1の差を有意に引き出せた気はしないのですが、それでも敢えて違いを無理矢理探すなら、若干ではあるものの合焦率はK-1 Mark IIの方が良くなってる一方で、簡単な条件でも外すことがあるという、安定感にやや欠ける動きが増えたような気がします。この辺りは明確にアルゴリズムに手が入ったとされる「AFホールド」をしっかり設定すれば、良くなるのかもしれません。

 いずれにしても私が好きでよく撮りに行く旅客機相手であれば、K-1でもK-1 Mark IIでもAFについてはなんの不自由もありません。

K1M21959-Edit.jpg
K1M21991.jpg
 こういうヤツです。これはK-1 Mark IIでちょっと超望遠の試し撮りと思って羽田空港で撮ったものです。これまた空気の揺らぎでメラメラであまりの悪条件に30分ほどで撮影をやめたのでエントリーも没にしたものです。夏は空港写真的にはオフシーズンですかね。

 さて、問題は年に数回撮りに行く戦闘機系の動きが超早くて距離も近い飛行機や、年に1回の恒例行事となっているF1日本GPかと思います。F1に関して言えば、過去2年間はK-1で撮ってきました。それなりに結果には満足しています。

 これらのエントリーは昨年のもの。すべてK-1とDFA150-450mmで撮りました。

 でも、やっぱりこの用途にK-1 Mark II /K-1は向かないのは事実です。AF性能がどうこうよりも連写速度とカードの書き込みが遅すぎるし、バッファサイズもイマイチですから。撮影はそれなりに楽しめますが「もっと動体に強いカメラを使えばオレはもっといい写真が撮れるんじゃないか?」という思いは消えません。

 ですから、このカメラが不得意とする分野で無理して使うのではなく、もっと別の得意なところでじっくりと使ってやるに限ると、当たり前のことを今さら思ってるところです。

 例えばこういう感じで使うときは、極めて快適だし撮影から現像作業まで大いに楽しめます。まだまだK-1 /K-1 Mark IIのポテンシャルを引き出せてるとは到底思えません。

 ですから、今後はちゃんと適材適所で使っていこうと、3年目にしてようやく踏ん切りが付きました(^^;

 じゃぁ動体撮影はどうするかと言えば、そのためにK-3 IIの後継機としてX-H1を手に入れたわけですが、ちょっとこの選択には再考の余地がありそうなので、今後今年のF1日本GPまでにどうするかは決めたいと思います(だって秋口までに K-3 III は無理ですよね?)

PENTAX 一眼レフ K-1 Mark II ボディ  15996

PENTAX 一眼レフ K-1 Mark II ボディ 15996