酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

夏休み明けのハイスピードバトル2連戦とホンダの行方:F1 2017 第13戦 イタリアGP

 約1ヶ月の夏休みが明けて、8月最終の週末からF1は終盤戦がスタートしました。休み明け最初のレースはスパ・フランコルシャンのベルギーGP、それに続いて翌週に行われたのは、開催回数過去最多を誇る伝統のクラシックレース、イタリアGPです。舞台は言わずと知れたフェラーリの本拠地、ミラノ郊外のモンツァ・サーキットです。

 この2レースを持って今年のヨーロッパ連戦は終了し、F1は大詰めに向けてまた長いフライアウェイ戦へと向かいます。そのヨーロッパラウンドの最後を飾るこのベルギーとイタリアの2連戦の特徴はなんと言ってもハイスピードコースであること。しかしスパとモンツァは全く正確の異なるトラックですが、いずれも長いストレートを持ち、とにかくエンジンパワーと最高速が要求されるコースという点では同じ。

 そうなると今年もメルセデスのパワーユニットを搭載するチームが圧倒的に有利で、フェラーリやルノー勢は旗色が悪く、ホンダは... もうどうにもならない厳しい2戦となりました

Lewis Hamilton / Mercedes F1 W07 Hybrid / 2016年 日本GPKONE0574.jpg
 さて、ベルギーGPの週末は色々忙しくしていて感想文を書くタイミングを逸しましたがちゃんと録画観戦はしました。ということで、ベルギーGPのことも少し織り交ぜながらイタリアGPの感想を書き留めておきます。

「過去2戦、僕らはチームとして本当に強かった」 ルイス・ハミルトン

 パワーユニットの完成度、特にパワーと燃費などのバランスに優れるメルセデス勢にとっては、この2戦はほとんどボーナストラックのようなものではないかと思います。

 長いストレートではもちろんパワーとそれによる最高速がモノを言いますが、一方でスリップストリームとDRSの効きが非常に大きく、ポジション争いでは後ろにいる方が有利という見方も出来ます。

 特にベルギーではセーフティーカーが入り、フェラーリよりもコンサバなタイヤを選んでしまったハミルトンは、それまでに築いたギャップが消え失せたため、不利な形勢に陥った瞬間もありました。しかし再スタート直後のベッテルの猛攻をエンジンパワーだけで逃げ切ってしまい、あとは余裕のクルージングとなりました。

 イタリアGPではスタートからチェッカーまで単独でひたすら周回を重ねただけで、なにもドラマは起きなかった退屈なレースだった、と言うのが事実なのでしょう。それは実は4番グリッドからスタートし、一時は順位を下げてしまったものの、その後持ち前のパワーで次々にオーバーテイクを決め、あっという間にワンツー体勢に持ち込んだボッタスにとっても同じだったのではないかと思います。

 なのでハミルトンにとってイタリアGPのハイライトと言えば、雨で荒れ気味となった予選で、きっちりとポールを抑えた点にのみあったと言えると思います。

 この2連勝でハミルトンは一気にポイントランキングでベッテルを逆転し、リーダーに躍り出ました。それもほぼ予想されていたことではあります。むしろこの段階でベッテルと3ポイント差しかないことのほうが意外と考えた方が良いのかも。

 メルセデスの強さは結局今年も手が付けられないところまで来ているようです。次のシンガポールは過去メルセデスが苦戦することが多い超低速サーキットですが、それ以外のトラックは問題がなさそう。このまま残りのレースもぶっちぎってしまうのか? そこが見所になりそうです。

「チャンピオンシップ首位は、チャンピオンシップ優勝ほど重要ではない」 セバスチャン・ベッテル

 一方のポイントで逆転されてしまったベッテル。ベルギーではハミルトンを惜しいところまで追い込みましたが結局不発に終わり、イタリアGPも含め全体的にこの2レースでは勝ちを持って行かれることは覚悟していて、想定通りの結果だったのではないかと思います。表彰台を逃さなかっただけ良かったと前向きに考えるしかありません。

 しかし今回フェラーリにはなんとも不安な問題がいくつか起こりました。まず一番不可解だったのは予選Q3での失速です。雨が強くなりインターミディエイトからフルウェットに変えたところで、突然フェラーリの2台は失速しタイムが出なくなります。その結果予選順位は7番手にライコネン、8番手にベッテルという番狂わせとなりました。一体この原因は何だったのでしょう?

 レッドブルなどがペナルティを受けたおかげでなんとか3列目スタートが出来ましたが、結局レースでも16番グリッドからスタートしたリカルドに追い上げられるというのは、予定していなかったことだと思います。

 チームメイトのライコネンに至っては、スタート直後のボッタスとの接触で何かが壊れたのかも知れませんが、レース中ずっとリアが不安定でコーナーの進入でふらつく様子は、中継映像でも分かるくらいでした。ウィリアムズやフォースインディアはなんとかかわすことが出来ましたが、変則的な作戦で猛追してきたリカルドにはあっさりと前に行かれてしまいます。

 メルセデス勢への劣勢はともかく、ルノー勢に食い込まれてしまったのは予定外だったはずです。チャンピオンシップはハミルトン/メルセデスにどこまで追いすがれるのか? もはやハミルトンに何か予定外のことが起きないと、ベッテルがチャンピオンを獲得するのは難しそうな情勢ですが、最後まで粘りを見せて欲しいと思います。

「今後数週間の状況を見極める必要がある」 フェルナンド・アロンソ

 これはレース後のコメントと言うよりは、ベルギーGP後に来季の去就について示唆した彼のコメントです。慎重で回りくどい言い方をしていますが、要するに、彼がもうホンダには完全に愛想を尽かし、マクラーレンに対し来季はホンダ以外のパワーユニットを使うように圧力をかけている、と言われています。

 スパとモンツァでマクラーレン・ホンダが苦戦することは分かっていたことではありますが、実際にストレートでルノー勢にさえDRSを使わずに悠々と抜かれていく状態に置かれ、アロンソは完全にモチベーションを失ってしまいました。チームから前後のギャップを知らせる無線が入っても「そんなインフォメーションはこのマシンには無意味だ」と投げやりで辛辣な返事をするばかり。

 こういう経験はもう3シーズン目であり、少し改善の兆しが見えた昨年と比べても、今年のホンダのパワーユニットは「進歩が遅い」ではなく「後退している」と見られても仕方のない正席鹿残せていません。それでも予選ではQ1は突破するし、Q3に残れることもしばしばあるのですが、信頼性が決定的に欠けていて、終盤戦はひたすらグリッド降格ペナルティを受けるばかりで、こうなると予選を走ってる意味すら疑わしくなってきます。

 そんなゴタゴタもシーズン初めだけならともかく、後半戦に突入するこの段階においても相変わらずとあっては、アロンソが見限りたくなる気持ちも分からなくはありません。彼は現役ドライバー中最高額の報酬を得ていると言われていますが、その実力があるのにマシンに恵まれず無冠のまま過ごしてきて早10年。そろそろF1ドライバーとしてのキャリアの終焉も見えてる年齢ですから、そろそろ焦ってきているのだろうと思います。

 ということで、既にマクラーレンはホンダとのパートナー契約を解消し、ルノーパワーユニットに切り替える決心をした話が進行しています。とは言えルノーの都合や、FIAの介入などもあり交渉は難航しているものの、恐らくここ数日中に決まると言われています。その場合、トロロッソがホンダを使うことになるようですが、ドライバーとの契約やギアボックスの調達先などでいろいろ悶着があるようで、どのような形に落ち着くのか現時点では見えていません。

 もうこうなったらトロロッソのシートごとホンダが引き受けて日本人ドライバーを乗せ、ホンダ・パワーユニットはまさかの4期目の正直で大成功を収め、再来年にはレッドブル・ホンダが誕生して、マクラーレン・ルノーは低迷を続ける、というストリーで進んでくれたら... と思います。

いよいよ秋のアジア連戦!

 次のレースは2週間後、F1はヨーロッパを出ていよいよアジア連戦へやってきます。ますはシンガポールGPから。90°コーナーだらけの低速コースは、これまでの流れがガラリと変わってしまうことも珍しくありません。もしかしたらフェラーリと言うよりも、レッドブルが強かったりするかも知れません。

 シンガポールのあとはマレーシアに飛んで、その後はいよいよF1は今年も日本にやってきます。その頃にはホンダの来季の計画も見えてると良いのですが...。