酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

レッドブル・エアレース千葉2017で東京湾の空に舞い戻ってきた零戦の姿を撮る

 前回エントリーの最後に書いたとおり、レッドブル・エアレースではメインのレース以外に、サイドアクトとしてたくさんのイベントが会場では行われていました。その中の目玉の一つが「零戦」のデモフライトです。昨年も計画されていましたが、残念ながら色々トラブルが重なって実現しませんでした。

 この零戦は「零戦里帰りプロジェクト」という団体が管理するもので、海外でリストアされた後、2014年末に日本に船で戻り、その後2016年初頭に鹿児島で国内初フライトを実現し、その後何度か飛んでいますが、昨年後半は再び分解されアメリカに戻っていたものだそうです。

 そして今年、零戦は再び日本に上陸し、レッドブル・エアレース千葉2017において国内フライト再挑戦となったわけですが、3万人を超える観客を前に、土曜日は予選終了後の夕刻、日曜日には決勝前のお昼に東京湾上空に現れ、幕張海浜公園付近をゆっくりとデモフライトすることに成功しました。

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 ある意味レース自体よりもこの零戦が飛んでいる姿を見られるということが、今年もエアレースのチケットを購入した大きな理由の一つでした。室谷選手の勝利に終わったエアレース本戦も良かったですが、零戦を見られたことは同じくらいインパクトがありました。

 さらに零戦だけでなく、往年の名旅客機ダグラス DC-3や陸上自衛隊のヘリコプターなどのデモフライトもありましたので、その辺一切合切をまとめておきます。

三菱 零式艦上戦闘機 二二型 が東京湾に舞う


 6月3日土曜日の午後5時過ぎ、レッドブル・エアレースの予選は終わりましたが、観客のほとんどは帰らずにそのまま空を見上げています。日の長いこの季節のことですから、日没まではまだ1時間以上あります。それまで晴れ渡っていた空は、なぜか西の方から急に雲がわいてきて太陽が隠れてしまいました。

 そんな中、遠く浦安沖の上空あたりを旋回している小型機の機影が見えます。きっとあれがそうに違いない!

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 会場にかかる音楽が、それまでのノリノリのダンスミュージックから、ジブリ映画「紅の豚」で使われたしんみりした音楽に切り替わります。会場アナウンスはもはや耳に入ってきません。遠くで旋回していた機影は、いつの間にか沖合を西から東に通過し、大きくバンクを取りながらこちらに向かって旋回してきました。黒いエンジンカウルのあの機体はまさに!!

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 100%レプリカではない飛行可能な零戦は現在のところ世界に4機だけ存在すると言われています。今回デモフライトした零戦は日本人が所有する唯一の機体(ただし米国登録)で、パプアニューギニアで1970年代に発見された残骸をベースに、ロシアでリストアしたものだそうです。オリジナルの部品は15%ほど使われているとか。

 それにしても、自分で撮った写真を見ていると「なんだかプラモデルみたい」と思ってしまいました。脚が出てるせいでしょうかね? なお日曜日は脚をしまった状態で飛んでいました。もしかしたら何かトラブルだったのかも?

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 おぉぉぉぉ! まさに目の前を超低空で飛んでいきます。濃い深緑に赤い日の丸が描かれた機体は全長9m、全幅12mあり、室屋選手などが乗るエアレース用のEDGE 540よりも一回り大きいです。ちなみに重量は約3倍、馬力も3倍です。

 今回の里帰り飛行ではゆっくりと翼を振りながら飛んだだけですが、本来非常に高い運動性能を持つ戦闘機だったわけで、現代のエアレース機に最適化した超低空の細かいパイロンスラロームは難しいかも知れませんが、ハイGターンなどアクロバット飛行だって本当は楽々こなせるはず。そういう姿を想像してしまいます。

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 会場上空を2周してくれたので、2回目の最接近時は思い切って機首部分を思い切りドアップにしてみました。パイロットの方は米国在住の日本人の方だそうです。今見るとウソみたいにパイロットは肩まで丸見えなんですね。その分視界は良かった、ということなのでしょうか。

 零戦のエンジンと言えば中島飛行機製の「栄」ですが、この機体のエンジンは再生不可能な状態だったと言うことで、同時代のアメリカ製P&W R-1830というエンジンに載せ替えられています。奇しくもこのエンジンは零戦と戦ったアメリカ軍のF4Fワイルドキャットなどが搭載していたエンジンでもあります。

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 そして観客の人達に挨拶するように翼を振りながらゆっくりとローパスして、再び西の方へと去って行きました。夕日に染まる雲の中に向かって飛んでいく零戦の後ろ姿には、ファインダーを覗きながらもなんだかじんわり感じるものがあります。それは周りの人達も皆同じだったと思います。

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 零戦は当時の戦闘機の設計思想を大きく覆した革新的な機体で、第二次世界大戦初期において大変な実績を挙げた飛行機です。しかしその優れたエンジニアリングの結果が、最終的に悲劇しか生まなかったことは紛れもない事実であり、今回のデモフライトで「零戦が東京の空に70数年ぶりに舞った」と言ったときに、そこに何やらロマンのようなものを感じる一方で、零戦が日本の空を飛んでいた時代がどういうものだったのか?を考えずにはいられません。

 それは「戦争を美化しているわけではない」という言い訳をしているつもりはなくて、要するに「零戦というのは技術遺産であると同時に戦争遺産でもある」ということなのだろうと思っています。

 そういった負の面を含めた一切合切を飲み込んだ上で、一言で感想を言い表すなら「良いものを見た」と、まとめておきたいと思います。(※ 個人の意見です)

ダグラスDC-3


 さて零戦の飛来と並んで、今回のエアレースで行われたサイドアクトの中で大きな目玉となっていたのが、ダグラスDC-3のデモフライトです。これもあらかじめとても楽しみにしていました。土曜日は予選開始前の午後3時半過ぎに、日曜日はRound of 8開始前の午後2時半過ぎにやってきました。

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 DC-3は1940年代の超ベストセラー機で、民間商用航空を確立させた、まさに歴史的な飛行機です。

 今回デモフライトを行ったDC-3は、スイスの時計メーカー、ブライトリングがスポンサーについて、世界一周ツアーを行っているものです。日本には1ヶ月以上前に到着し、熊本や福島などで各地で遊覧飛行を行っていました。

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 現在でも100機以上のDC-3がほぼオリジナルのまま飛行可能な状態で保存されているそうですが、今回飛来した機体は1940年にアメリカン航空向けに製造されたもので、機齢は実に77年。第二次世界大戦中は米軍に徴用されたりしつつ、総飛行時間は7万時間を超えているとのこと。でもこの時代の飛行機は頑丈でメンテナンス性も非常に良いのでしょう。

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 両翼に搭載されたレシプロエンジンは、奇しくもリストアされた零戦が積んでいたのと同じP&W R-1830だそうです。

 零戦やレース機と比べるとかなり巨大な飛行機ですが、コクピットの窓からパイロットがこちらに手を振ってるのが見えるくらいの低空をローパスして行く姿は迫力がありました。ちなみに客室には誰も乗っていなかったのでしょうかね?

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 幕張海浜公園でデモフライトを行うに当たっては、2日間とも仙台空港から往復したそうです。なかなか長距離飛行してきたんですね。とは言え、旅客&輸送機としてオリジナルでも2,400km程度の航続距離があったようですから、仙台-東京間を無着陸で往復するくらいは朝飯前と言ったところでしょうか。

 なお、この機体は世界一周をするにあたり、客席部分を潰して増設燃料タンクが搭載され、さらに航続距離が延ばすべく改造されている機体だそうです。

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 DC-3も幕張海浜公園上空を2周して雲間に去っていきました。

 1ヶ月以上にわたった日本滞在はこの展示飛行が最後だったらしく、今週には帯広を経由してアリューシャン列島沿いにアラスカ方面へと飛び去っていったそうです。世界一周ツアーが無事成功することを、陰ながら応援したいと思います。

陸上自衛隊 AH-64D アパッチ・ロングボウ


 さて、ここまで紹介した零戦とDC-3の展示飛行が目玉中の目玉イベントでしたが、それ以外にもいろいろと楽しめるデモフライトがありました。その中の一つが、陸上自衛隊のAH-64D アパッチ・ロングボウです。

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 土曜日に朝10時のゲートオープンとともに会場入りし、場所取りしてホッと一息ついたところでいきなり上空に現れました。実は完全にノーマークだったのですが、慌ててカメラを準備してなんとか撮影は間に合いました。

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 市原方面から海沿いに飛んできたように見えたのですが、霞ヶ浦駐屯地あたりに配備されているものでしょうか?

 陸上自衛隊におけるこの機体の調達にはいざこざがあって、予定を大幅に下回る13機で配備が打ち切られてしまいました。総合火力演習などでもお馴染みではありますが、実はかなりの希少機です。

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 レーストラックまわりをぐるっと回って行きます。この写真では一見パイロン間を通過してるように見えますが、実際はパイロンよりもずっと沖合を飛んでいるところです。パイロンの間隔は15mしかないので、アパッチが通り抜けるのは至難の業でしょう(ローター直径は13.4m)。

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 さすが攻撃ヘリとあって、これもまたヘリとしては機動性がかなり高い機体です。ローターからの風圧を感じそうなくらい相当に低空を飛んでいきました。なお、写真は割愛しますが同時にUH-1J ヒューイも飛んできました。そちらは低空飛行が苦手なのか(そんなはずないか?)、かなり高度を保って飛んでいました。

 なお、陸上自衛隊のこの2機は、単にデモフライトをして帰って行くのではなく、そのまま会場内の片隅に着陸し、夕方まで会場に滞在し展示されていたようです。着陸地点は私のいるエリアとは正反対側の方だったので、見ることはできませんでした。

その他のデモフライト


 さらにこれら以外にも、まだまだレース合間のデモフライトがいろいろありました。この観客を飽きさせまいとする努力はすごいです。鈴鹿のF1日本GPでも、サポートレース等々様々なイベントが同時に開催されますが、ここまでスケジュールは高密度ではありません。まさにトイレに行く暇もないほどでした。

エアロバティック飛行

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 チャレンジャークラスの機体、エクストラ 330LXを用いたアクロバット飛行です。エアレース自体もかなりアクロバティックですが、このデモンストレーションはそれ以上でやりたい放題。スモークも多めで見応え十分でド派手なアクロバットショーが、幕張海浜公園上空で繰り広げられます。

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 飛行機とは思えないような動きで、ループを描いたり、真上に向かって上昇しつつストールターンして、きりもみ落下してみたりと、あんなことして大丈夫なのか?と思えるほど見事なフライトでした。

千葉市消防局

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 さらにもっと私たちの生活に身近なところで、千葉市消防局の消火&レスキューデモンストレーションも行われました。「おおとり1号」と「おおとり2号」という赤いヘリが2機編隊で現れ、900リットルの放水とか救助のデモンストレーションを行ってくれました。

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 なお、この機体はエアバス製(旧ユーロコプター製)のAS365N3だそうです。自衛隊では採用されることのないヨーロッパ製のヘリも、消防や民間では導入されているんですね。

 他にもモーターパラグライダーとか、海上でのサイドアクトなど色々あって、いろいろ楽しめたのですが、写真が撮れなかったのでそれらは割愛します。

会場のホスピタリティは大幅に改善していた

 さて、昨年書いたレッドブル・エアレースの観戦記には「ホスピタリティも悪く会場内は居心地が悪かった」と書きました。今年も覚悟していったのですが、細かいところがずいぶんと修正され、むしろ居心地は非常に良くなっていました。それは昨年の体験からくる期待値の低さを補って余りあるものだと思います。

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 何が決定的に違っていたのかはよく分かりません。入場ゲートの位置も変更され、荷物チェックもスムーズになっていましたし、トイレの設置位置や、食べ物を売る屋台の数、各エリアの観客数なども調整されていたのかも。そういう細かい部分の微調整によるもので、これは結局開催3年目という「経験値」の積み重ねによるものなのだろうと思います。

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 会場内で販売される水やお茶などが相変わらず300円もしますが、これは同時に販売されているレッドブルの値段に合わせてある、という事に今年初めて気づきました。やはりレッドブルを売りたいんですよね。レッドブルだけは売り子さんが巡回していて、販売テントまで行かなくても買えるようになっているのですが、やはり大量に飲めるものではありません。1日2本が限界です。

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 食べ物のブースもお昼前後の時間帯でも比較的スムーズに買えたし、レッドブルグッズのブースにもフラッと吸い寄せられてしまいました。なお飲み物が高いのに対して、食べ物はそれほど高額と言うことはなく、1000円あればお腹いっぱいになる程度でリーズナブルでした。

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 またサイドアクト等のスケジュールもうまく組み立てられていて、むしろトイレに行ったりする休憩時間が取れなくて困ったくらい。場内放送も良く聞こえるし、実況の内容も改善されていたと思います。

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 カメラマンエリアは去年同様に砂浜に設けられていました。昨年の印象では最前列じゃないと意味がなさそうな感じでしたが、今年は陸側の段差の上なども利用できるようになっており、必ずしも朝早く行って場所取りしなくても、見通しの利く場所はいくらでもあって、スペースは十分あったと思います。念のため土曜日は早くに行きましたが、日曜日は11時くらいに到着するようにゆっくり出かけました。それでも観戦場所の確保には困りません。

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 ということで、天候にも恵まれ、レース内容も完璧で、写真もたっぷり撮れましたし、様々なデモフライトも大いに楽しめたと言うことで、それなりに高いチケット代を払っただけの価値は十分にあると思います。暑さ対策さえしっかりしていけば現地でも快適に過ごせたし、これはまた来年も行かなくては!と今から楽しみにしているところです。

使ったカメラ

 前回記事に書いた通り、今回はK-1ではなくてK-3IIを使いました。望遠にも連写にも有利なので撮影は快適でした。ただRAWファイルを現像していて感じたのは、やはりK-1の方が圧倒的にクリーンで情報量が多い写真が撮れると言うことです。これだけたっぷり光があって低感度で撮ったカットでも、K-1とK-3IIの現像耐性の違いを感じました。ちなみにKPはどうなんだろう?ってちょっと興味が出てきてしまいます。

RICOH PENTAX 望遠ズームレンズ HD PENTAX-D FA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW 21340

RICOH PENTAX 望遠ズームレンズ HD PENTAX-D FA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW 21340

 また前回のエントリーにも書いた通り、日曜日はNikon 1 J5だけ持って行って本気の写真撮影はしませんでした。望遠ズーム付けて一応飛行機も撮ってみたのですが、ライブビューではなかなか難しいです。もっぱら動画を撮ってみたのですが、慣れないのでそれはそれで難しくて失敗ばかりでした。

 なお、カメラマンエリアですから周囲の面々はF1並に動体撮影スペシャルな高級機材であふれていました。ざっと感覚的に言うと6割がキヤノン、3.5割がニコンで、もちろん全て一眼レフです。レンズは600mmF4級の大砲から便利ズームまでいろいろですが、キヤノンの100-400mm率の高さは尋常ではありません。ニコンの200-500mmは意外に多くなかった印象です。

 残る0.5割がその他で、その中には我らがペンタックスも含まれています。数台のK-1/K-3を見かけましたし、中には5656の姿もありました。それ以外はオリンパスとソニーですが、残念ながらフジとパナソニックは私が気付いた限りは見かけませんでした。

 この世界にミラーレスが浸透してくるのはまだもう少し時間がかかりそうです。

レッドブル・エアレース関連エントリー