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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

満足の笑顔に溢れる表彰台を見るのは何年ぶりだろう?:F1 2017 第2戦 中国GP

F1

 2017年F1の第2戦中国GPが上海インターナショナル・サーキットで行われました。昨年からマレーシアGPも秋のアジア連戦に移動されたものの、日本から一番近い上海の中国GPだけは、開幕直後の春に残されたままとなっています。秋はアメリカ大陸連戦もあって、日程に隙間がないから仕方ないのでしょう。

 その代わり開幕後のフライアウェイ戦は、オーストラリアに始まり中国、バーレーンを経由してロシアへ... と次第にヨーロッパに近づいていくと言う意味で、分かりやすい並びになっています。

 さて、お花見のこの時期に日本でも天候が荒れたのと同じように、上海もこの週末は雨模様だったようです。金曜日は視界が悪くてドクターヘリの運行に支障があるため、フリー走行がキャンセルされると言う事態になりました。土曜日は何とか晴れたものの、決勝の日曜日は再び雨。ドクターヘリは諦めて地上輸送路を確保することで、安全性は確保したとのことです。

Max Verstappen / Red Bull RB12 / 2016年 日本GPKONE0420.jpg
 まだ開幕直後だしウェットレースは荒れると決まっていますが、最終的に表彰台に上がった3人は全員が全員、満足げな表情を浮かべお互いをたたえあっていました。どす黒い嫉妬と意地と、怨念が常に渦巻くF1界にあってはとても珍しいことです。

「これこそレーシングだ。」 ルイス・ハミルトン

 メルセデスの持つ予選モードを使って何とかポールを押さえたハミルトンでしたが、レースペースという面ではフェラーリとは僅差か、もしかしたら負けていたのかもしれません。難しい路面コンディションのスタートを決め、序盤に相次いで出されたバーチャル・セーフティカーとセーフティカーにも落ち着いて対応しました。

 トップを押さえてしまえば後は悠々一人旅かと思えば、そうは行かず、サイド・バイ・サイドのバトルこそありませんでしたが、実際のところ彼は最後までベッテルの影と戦い続けることとなりました。

 その結果勝ったのだからもちろん喜ぶのは当たり前ですが、それだけとは思えない上機嫌さはどこから来るのでしょうか? それは前戦、負けてしまったながらも「レースを楽しめた」とコメントしたことにつながってるようです。

 つまり、ハミルトンにとってはこの数年間、チームメイトと争っていたことに大きなストレスを感じていたが、今年になって初めてベッテルのような真のライバルと、正々堂々と戦えることにレーシング・ドライバーとして、本能的な喜びを感じているようです。

 もしかしたら、昨年ハミルトンを打ち負かしたロズベルグだって、チームメイトとの長いチャンピオン争いのストレスに耐え切れずに、辞めてしまったという面がありそうです。チームを移るという選択肢があったなら、ロズベルグもまだまだレースを続けていたかったのではないかと思います。

 チームメイトバトルと言うのは何十年も前から、常に大きな諍いの元となってきました。ハミルトンはF1ドライバーになって、初めてその呪縛から開放されたのかもしれません。

「レースは楽しいことがたくさんあり、とても面白かった」 セバスチャン・ベッテル

 予選でもスタートでも負けてしまったベッテルは、逆転の可能性にかけるために少しアグレッシブな作戦に出ました。

 というのはは、最初にバーチャル・セーフティーカーが導入された時点で、すぐにスリックタイヤに交換するというものでした。バーチャル・セーフティカー中は相対的なロスタイムも少なくなるし、アンダーカット的な効果も期待できるはずでした。

 が、運が悪いことにその後またすぐに本物のセーフティカーが導入され、そのタイミングでハミルトンら上位4台がタイヤ交換を行い、ベッテルのアドバンテージは消えうせたどころか、逆に不利に働くことになってしまいました。

 しかしそれは仕方のないこと。一時は6番手まで落ちてしまったベッテルの猛追がそこから始まり、チームメイトのライコネンに始まり、レッドブルの2台を次々に仕留めていきます。そして最後までハミルトンに追いすがりましたが、追い付くところまでは行かずに最終的に2位でチェッカーを受けます。

 今回はレース状況やコンディションの変化が不利に働きましたが、やることはやりきりました。特にレッドブルとのバトルは見事でしたし、本人も納得がいってるのだと思います。

 しかしフェラーリにはまだ課題があります。ベッテルにはアグレッシブな作戦を取ったのに対し、ライコネンに対してはまたもやありえない失策をしました。明らかにタイヤを換えるべき状況で、なぜかライコネンにはピットインの指示が出ません。ライコネン自身が強く訴えても動かないチーム。いったい何を考えていたのか? 何も考えていなかったのか?

 同一のチームで全く正反対のレースマネージメントが行われたのは不思議です。判断できる人がライコネン担当レースエンジニア側にいないということなのか? 結局チーム内でまたもや政治闘争が起きているなどの深刻な、しかし下らない問題が隠れている感じがします。

 ドライバーは超一流、マシンもメルセデスとそん色ないところまで来ました。あとは開発ペースとレースマネージメントだけが鍵となります。ライコネンに何が起きたのか?一番心配しているのはベッテル自身なのかもしれません。

「今朝起きた時は、表彰台に立つことなど思いもしなかった」 マックス・フェルスタッペン

 マシントラブルによって予選で思うように走れず、まさかのQ1落ちを喫し16番グリッドからスタートしたフェルスタッペンは、スタートから1周する間に9台抜きという離れ業を演じて見せました。彼は本当にウェットコンディションが得意で、それは昨年のブラジルGPで見せつけられた通りなのですが、あれが単なる運とかまぐれではなかったことが、今回のレースで証明されたと思います。

 2度にわたるセーフティカー導入(一度はバーチャル)の後、レースが10周を過ぎたあたりでは、とうとうチームメイトのリカルドを捕らえてオーバテイク。その結果2位まで上がっていました。このスピードを持っていたとすると、もし予選がいつも通りで5番グリッドあたりからスタートしていたら、いったいどうなっていたのか? ハミルトンやベッテルが、あとで録画を見てじっくり研究すると言ったのは、決して冗談でもリップサービスでもなく、本心なのだろうと思います。

 しかし、彼にとっては残念なことに、コースコンディションはどんどんと改善し、中盤以降はほぼドライとなりました。そうなると今のレッドブルには、メルセデスやフェラーリと互角に戦えるだけのスピードはありません。それでも、ボッタスが自爆し、ライコネンが謎のピット戦略をとったこともあって、見事表彰台に上ることが出来ました。

 こういうやや荒れたレースで、この位置にいるのがリカルドではなくフェルスタッペンであると言うところが、とても重要です。ハミルトンやベッテルはもちろん脅威に感じているでしょうが、一番焦っているのはリカルドに違いありません。

次のレースは中東バーレーンGP

 次のレースはバーレーンGPです。この時期には珍しく間をおかずに連戦となり、早くも今週末に開催されます。

 中東の裁くの中のコースは、雨の確率はほぼゼロ。気温が高くストップ・アンド・ゴーのサーキットと言うことで、タイヤ戦略が重要になりそう。今年はややタイヤに手こずっているメルセデスとハミルトンにとっては不安があるかも知れません。一方、フェラーリは本当にメルセデスと戦えるのか? を占う意味で、早くも前半戦の正念場となりそうです。