酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

老舗チームそれぞれの没落と復活と繁栄:F1 2016 第18戦 アメリカGP

 日本GPを終えてF1は太平洋を渡りアメリカへ。F1シーズンもアメリカ大陸3連戦と最終戦アブダビGPの4レースを残すのみとなりました。先週末に行われたアメリカGPの舞台はテキサス州の州都オースティンです。モータースポーツ大国でありながら、ヨーロッパ発祥のF1とは微妙にその文化が相容れず、アメリカGPの歴史は中止と再開を繰り返した苦難の歴史でもあります。

 そこで既存のサーキットを使わず、5年前にF1のために新造されたのがサーキット・オブ・ジ・アメリカズ。もちろんティルケがデザインしたトラックでまさにF1規格。今年は純アメリカ資本のチーム、ハースが参戦するなど、少しずつアメリカとF1の和解は進んでいるのかもしれません。テレビの画面にはたくさんのファンが映り、巨大なテキサスビーフの肉塊を焼いてる様子が見られるなど、盛り上がってることが良くわかります。

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 さて、昨年はこのアメリカGPでチャンピオンが決したわけですが、今年は予想に反してここまで混戦が続いています。しかし残りはたったの4戦。ここからは今まで以上に1ポイントが重要になってくるはず。

 ランキング争いは何もトップだけで行われているわけではなく、中段から下位まであらゆる階層で行われています。チームにとっては分配金の取り合いになりますし、ドライバーにとっても記録と来年のシートと契約金に影響するのでしょう。

 だからチャンピオン争いをする二人のドライバーを抱えるメルセデスはもちろん、あらゆるチームが緊張感を持ってレースをしているはずなのですが... どうもそうではない集団がまぎれていたようです。

「何が起きたか理解しなくてはならない」 キミ・ライコネン

 没落しつつある老舗チーム、フェラーリは鈴鹿で久しぶりに純粋な速さでレッドブルをしのいだはずなのに、ギアボックスのトラブルからその予選結果を台無しにした上、レース戦略も理解しがたいもので、せっかくのコースとマシンの相性の良さを結果につなげることはできませんでした。

 一方今回は予選からレッドブルに完敗。もはやどうあがいても表彰台は取れないから、5位と6位を目指そう... という消極的な戦略がチームの士気を下げたのか、ライコネンのピットイン時に右リアのボルトを締めないまま、グリーンシグナルを出してしまうというミスを犯してしまいます。

 しかし、こういったミスは過去にも他のチームでも時々あったことです。今回は誰と争ってるわけでもなく、慌てる理由がまったくありません。国際映像に映ったその作業の様子は、とても緩慢で問題が起きた後の反応も非常に鈍いように見えます。まるで一人ひとりが何をどうしたらいいのか分からない、素人の集団みたい。

 そして極めつけはその後の処理。ピット出口で止まったライコネンに対し、チームの指示は後手後手に回り、とうとうライコネンはマシンをピットエリアの端まで戻した後、諦めて自らマシンを降りてしまいました。そこに駆けつけるチームスタッフの姿はありません。

 チームメイトのベッテルにしても、リアウィングのトラブルはスタート時に追突されたことに起因するものであり、チーム責ではないと思われますが、リアのダウンフォース不足について注意を促してきたチーム無線に対するベッテルの返答は実に冷ややかな、揶揄を含んだものでした。そんなこと分かってるし、他に言うことないの? みたいな感じです。

 フェラーリのチーム体制に関する問題はいろいろいわれています。マルキオンネが悪いのか、アリバベーネが悪いのか...。とにかく雰囲気は最悪で疑心暗鬼が渦巻いているとか。

 フェラーリはアロンソに続いてベッテルにもまともなマシンを用意できず、また見限られてしまうのでしょうか? 冬の時代はいまどん底を迎えたと思いたい所です。

「フィニッシュラインを越えた時は大きく安堵した」 ルイス・ハミルトン

 鈴鹿で3年連続のコンストラクターズ・チャンピオンを決め、繁栄を極めるメルセデスは、現チーム体勢となってからは7年目の若いチームですが、メルセデスというブランドは、モータースポーツにおいては長い歴史を持つ老舗チームです。

 さて、ハミルトンは昨年はここでチャンピオン獲得を決定したわけですが、今年は絶体絶命でロズベルグを追う立場にいます。それでもこのコースとハミルトンの相性の良さは完璧で、久しぶりに見事なポールtoウィンを飾り、これで通産50勝を挙げることができました。アメリカGPに限っても3連勝で計4勝目。

 「勝ててホッとした」というコメントは、ここ数戦彼が見舞われたトラブルと失敗の数々を思い出せば、さもありなんと思いますし、それ以上に、残りのレースはすべて勝つことが事実上必須と思われる状況ですから、嬉しいというよりは義務を果たしたという思いが強いのでしょう。

 しかもライバルのロズベルグは、フェルスタッペンのトラブルによるバーチャルセーフティーカーのタイミングに助けられ、ちゃっかりと2位に戻ってきていました。これでは事態が好転したとはいえません。

 残りはあと3戦。ハミルトンは勝ち続けるしかなく、あとは神頼みです。ロズベルグが何かミスをするとか、クラッシュに巻き込まれるとか、マシントラブルに見舞われてノーポイントに終わるとか、そうやって一気にポイント差を取り返す事を願って。

 一方のロズベルグにしてみれば、状況は圧倒的に優位ながら2位に入り続けると言うのもなかなか難題です。なのでやはりハミルトンにもう一度何か起きてくれれば、と願っているはず。

 実は二人にとっての精神的なプレッシャーは同じレベルにあるのではないかと思います。

「何人かのドライバーがリタイアして順位がいくつか上がっただけ」 フェルナンド・アロンソ

 プライベーターの雄であり、チーム創立から50年を迎えたマクラーレンは、ホンダとともにいまだ復活の道筋を探しているところです。

 鈴鹿で悲惨な結果に終わった一方で、なぜかこのアメリカGPでは予選からそこそこ好調さを見せていました。コーナーやストレートの要素構成は鈴鹿と似ていると言われるこのコースですが、マクラーレン・ホンダのマシンにとっては、まったく別物のようです。

 ポイント圏内でずっとレースを進めてきたアロンソですが、レース終盤のサインツやマッサとのバトルはかなり白熱しました。いずれも競り勝ったアロンソは大喜びしているように見えましたが、レース後のコメントは意外なくらいに冷静です。実際のところ、ライコネンとフェルスタッペンが消えたが故の5位であるのは確かですし、もしかしたらボッタスとヒュルケンベルグがスタートで消えたのも幸運だったのかも。

 でもそれもこれも含めてレースですから、この混戦の中をうまく生き残って5位に入ったことには十分大きな意味があります。それに、トロロッソとウィリアムズとは言え、コース上でまともに戦う事ができることが証明されたのですから。

 もちろんアロンソの腕もあるでしょう。このギリギリの戦いをレッドブルやフェラーリ、さらにはメルセデス相手に展開できるようになるまで、アロンソは満足しないはず。ホンダもそうであると信じたいと思います。

次戦はメキシコGP

 次のレースは中米へ移ってメキシコ。実はもう今日からフリー走行が行われ、決勝は明後日に迎えます。

 メキシコPGはF1復帰の2年目となります。昨年はチャンピオン決定後だったにもかかわらず、大変盛り上がった事を覚えています。特にスタジアム形状の観客席に向かって行われた表彰台の風景が印象的でした。今年はその中央に誰が上るのでしょうか?