酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

それでもティフォシ達はモンツァを赤く染める:F1 2016 第14戦 イタリアGP

 早くもヨーロッパラウンドの最終戦を迎えました。その舞台は例年通りイタリアGP、ミラノ郊外にあるモンツァサーキットです。コーナーが少ない超高速レイアウトは、オールドコースの色合いを最も強く今に残しているのではないかと思います。

 そしてここはいわずと知れたフェラーリのホームグランプリです。スタンドを埋め尽くす真っ赤なイタリア人(だけとは限りませんが)観客のほとんどは、もちろんティフォシと呼ばれる熱狂的フェラーリファン。F1ドライバーの誰もがフェラーリのシートにあこがれる理由のひとつが、このモンツァのイタリアGPにおけるティフォシ達の熱狂とロイヤリティの高さにあるのだろうと思います。

 過去F1の歴史の中で、フェラーリは良いシーズンも悪いシーズンもいろいろありました。今年はどちらかと言うと悪いシーズンと言えるでしょう。いまだ1勝も上げられず、ここ数戦はレッドブルにも完敗し、コンストラクターズ・ランキングも3位に転落してしまいました。

Kimi Raikkonen / Ferrari SF15-T / 2015年 日本GPK3II3322.jpg
 こんな状況でティフォシたちは今年のフェラーリの地元凱旋をどう迎えるのか心配していましたが、テレビで見る限りは何事もなく例年通り盛り上がっていたようでした。

 今よりももっともっと悪い時代はいくらでもあったわけで、成績如何に関わらず常に自国チームをサポートし続ける姿勢は、モータースポーツ先進国ならではなのかもしれません。

「スタートで起きたことを解明する必要がある」 ルイス・ハミルトン

 中盤戦を過ぎて、ようやくロズベルグをポイント・ランキングで追い越し、唯一の心配点だったパワーユニット交換によるペナルティも最低限で乗り切り、3年連続チャンピオン獲得に邁進中のハミルトンは、このモンツァを過去得意としています。今回も予選からロズベルグに圧倒的な差を見せつけ、もはや敵なしの状態。このままレースでもぶっちぎるのかと誰もが思っていたはずです。

 ...ですが、そんな彼の目論見はスタート後10秒のうちにすべて潰えてしまいました。今年は散々スタートで苦しんできたメルセデスですが、中でも今回のスタートが過去最悪だったと思います。クラッチミートした直後、ホイールスピンするでもなく、ストールでもなく、クラッチが滑ってるかのような謎の加速鈍化。気がついてみれば1コーナーを抜けたときは6位まで落ちてしまいます。

 メルセデスが圧倒的に速く、比較的抜きどころのあるコースとはいえ、こうなってしまうと優勝はほぼ失ったも同然。なんとか1回目のピットストップまでに2位まで戻ってきたのはさすがですが、すでに10秒以上開いてしまったロズベルグとの差を埋めることはもはや絶望的です。

 結局ロズベルグはそのまま逃げ切り、ハミルトンは2位。表彰台などではひどく不機嫌と言うわけではないですが、明らかにがっかりしている様子でした。

 問題点がはっきりしているだけに、手の打ちようはあるわけですし、まだ残りのレースを考えると勝つ自信は持っているのだと思います。ですが、本当にそのとおりに進むでしょうか? もう少し焦ってイライラして不機嫌なハミルトンを見てみたい気がします。

「状況が変わりつつあると感じている」 セバスチャン・ベッテル

 何とかここ数戦のレッドブルに対する劣勢を跳ね返して、恐らく現実的に期待できる中では最高の結果を手に入れる事ができました。「メルセデスを除けばトップ」という3位です。

 メルセデスの速さは別格だから直接は戦わない、という戦略は致し方ないものではありますが、寂しいものがあります。どうしてそんなことになってしまったのか? 昨年の方がまだ状況は良くて、今シーズンはより状況が悪化してしまった原因はどこにあるのか、フェラーリチーム的には分析できているのでしょうか?

 フェラーリについて、バーニー・エクレストンが面白いことを言っています。それは「フェラーリは再び極めてイタリア的なチームになってしまった」というもの。それは2014年暮れに部外者であったマウリツィオ・アリバベーネがチーム代表に就任し、アロンソを放出してベッテルを引き抜くなどの豪腕を振るった改革をしているところに、フィアットグループトップのセルジオ・マルキオーネが最近口出しをするようになって、チーム内がガタガタしてきた事を指していると思われます。

 二人とも豪腕な改革者であれども、立場も違い、恐らく方向性も違うのでしょう。その一番の影響はエンジニアリング部門が受けてしまい、シーズン途中にテクニカル・ディレクターのジェームス・アリソンが離脱するなど、明らかにフェラーリはチームとして異常な方向に向っています。

 そんな中でベッテルはどう思っているのか? レッドブルの黄金時代は過ぎ去り、第2のキャリアをかけたフェラーリ移籍でしたが、チーム内の政治闘争に翻弄され、アロンソのように無冠のまま終わってしまうのか?

 マルキオーネから「失敗作」と言われてしまったSF16-H駆り、真っ赤に染まったスタンドのティフォシたちに大歓声を受けつつも、なんとなく浮かない顔に見えたのは気のせいでしょうか? レース後の無線でも表彰台でもイタリア語でサービスをしたのに、後だしのロズベルグにすべて持っていかれたせいで怒っていたわけではないと思います。

「ここは今年一番厳しいサーキット」 ジェンソン・バトン

 フェラーリとは対照的に上り調子のマクラーレン・ホンダは2台ともポイント圏外に終わりました。さすがに超高速のこのコースでは、まだホンダのパワーユニットには厳しいものがあるようです。バトン自身はレース内容はポジティブに捉えているようですが、結果にはつながりませんでした。

 チームメイトのアロンソは、ポイント獲得が絶望的となった段階で、わざわざタイヤを交換して一人でタイムアタックを敢行しました。その結果今回はファーステストラップを記録。まさかアロンソがその記録だけが欲しかったわけではなく、ささやかな遊びでもあり、実験でもあったのかもしれません。昨年もレースを使ってテストのようなことをしていた事がありましたから。

 ただ、こういった行動は、アロンソのモチベーションが失われかけていることの表れなのではないか?と心配になります。

 そしてモチベーションと言えばバトンです。彼は今回のレース前に来年1年休暇をとると宣言をしました。キャリアの壁にぶつかって一度F1を降り、再度復帰したドライバーはライコネンはじめ何人か記憶にありますが、あらかじめ1年休養してまた戻ってくると宣言するのはあまり例がありません。

 バトンはもういい歳ですし、年俸も高く、アロンソと比べて著しく良い成績を残しているわけでもありません。一度休みたいというバトンの希望は良くわかります。ですが、マクラーレンが2018年のシートを保証する狙いはどこにあるのか、ちょっと不思議な気がします。それだけ彼はチームに買われていると言うことなのでしょう。

 でももし来年のマクラーレン・ホンダが大躍進したら? 満を持して2年後に良いところだけ持っていくというのか? あるいはロン・デニスの気持ちは変わってしまったりしないのでしょうか?

 アロンソの動向含めて今から2年後のマクラーレン・ホンダはシート争いの台風の目になりそうです。

鈴鹿まであと1ヶ月

 これから終盤戦に向けてF1は再びフライアウェイ戦へと移ります。9月からはいよいよアジアラウンド。まずは来週末に摩天楼のナイトレースで有名なシンガポールへ。その後春から秋へと移ってきたマレーシアGPが行われて、いよいよ1ヵ月後の10月6日からは日本GPが開幕します。

 いよいよクライマックスへ! 私個人的にはいろいろと準備が忙しくなってきました(A^^;