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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

新世代の暴れん坊現る:F1 2016 第13戦 ベルギーGP

F1

 F1は約1ヶ月の夏休みを終えて後半戦がスタートしました。休み明け最初のレースはベルギーGP。いわずと知れたスパ・フランコルシャンが舞台です。1周7kmオーバーのトラックはカレンダー中最長のコース。さらにただ長いだけでなく、高低差も100m近くあったり、かの有名なオールージュがあったり、それに続く長いケメルストレートがあったり... と見所の多いコースです。

 スパは山間にあるためか、天候が不安定なことでも有名ですが、今年の決勝は晴れて安定したコンディションの中でレースが行われました。そうなると、オーバーテイクが容易でマシンの性能差が素直に出やすいこのコースでは、真にマシンの限界まで使い切ったガチガチのバトルが展開するわけです。

 さて「暴れん坊」といわれたドライバーは過去たくさんいました。古くはアンドレア・チェザリスとか、最近で言えばパストール・マルドナドとか、ロマン・グロージャンとか、セルジオ・ペレスもそうかも。グロージャンは数年前にここスパで、アロンソを空中に跳ね飛ばす大クラッシュを引き起こしたことが思い出されます。

Daniel Ricciardo / Red Bull RB11 / 2015年 日本GPK3II2204.jpg
 今回は、そんなF1界の「暴れん坊」にもしかしたら新人が誕生したのかも?と思わせる荒れたレースとなりました。

「2台のフェラーリに押し出された」 マックス・フェルスタッペン

 マグヌッセンのクラッシュにより赤旗中断した際に、レッドブルのピットに張り付いていたカメラの映像と音声はとても興味深いものでした。クリスチャン・ホーナーらにスタート直後の出来事を一生懸命説明するフェルスタッペン。それに対し同情的というよりは何かを諭すように受け答えるチーム首脳たち。その後遅れて登場したヘルムート・マルコに睨まれて、さすがの若者もタジタジになってるように見えたのは気のせいでしょうか?

 せっかく予選で手に入れた2番グリッドを生かせず、スタートで失敗したフェルスタッペンは、1コーナーでライコネンのインに強引に突っ込みます。しかし、グリッドからの距離が非常に短く、鋭角でブラインドとなるスパの1コーナーは、誰にとってもスペースが足りず、1台でも無理をするマシンがあると、とたんに大混乱に陥ることは、経験のあるドライバーならみんな分かってることではないかと思います。

 確かにフェルスタッペン目線では、フェラーリにインを閉められて行き場を失ったように見えます。ですがあのシーンであそこまで深いブレーキングをしてインをこじ開けることは、上記のとおりそもそも高いリスクがあったといわざるを得ません。

 そんな1コーナーの出来事はまだしも、リスタート後のライコネンとのバトルはあまりにもラフでした。超高速の直線でわざと進路をふさいで減速するというのは、当たり屋のやり口です。いろいろあって熱くなるのは分かりますが、相手と自分の命を危険に晒すようなやり方はいかなる理由があっても絶対に許されません。ここはF3でもGP2でもなく4輪最高峰のF1なのですから。

 彼は十分すぎる実績を残していますので、クピアトほど簡単には首にはならないでしょうが... F1は何があるか分からない世界ですから、コメントは強気にしておくのは良いとして、裏では十分反省したほうが良さそうです。

「他のドライバーとはこんな状況になったことはない」 キミ・ライコネン

 1コーナーの出来事で最も罪がないながら一番割りを食ったこともそうですが、このコメントはその1コーナーの出来事ではなく、上にも書いたように、リスタート後にオールージュを抜けてケメルストレートへ向って加速中、オーバーテイクを仕掛けようとした瞬間にラインに割り込んできて急減速をしたフェルスタッペンの行動を指しています。

 この出来事にはペナルティを出すべきではないかと個人的には思いましたが、アロンソのピットアウトの件も含め、今回のスチュワードの判定は最近の傾向と比べると非常に緩いと感じます。もちろんペナルティの乱発は興醒めなので、さじ加減は難しいのですが、シーズンを通して一貫しないというのは良くないのではないかと思います。

 現役ドライバーの中でも過去4勝を誇り、スパ・マイスター筆頭のライコネンにとって、予選ではその強さを見せ、せっかく3番グリッドからスタートできたのに、レースでは予定外のことばかり起きてうまくいきませんでした。それでも終わってみればポイントを獲得できたのは不幸中の幸いです。

 結果は振るわないながらも、キレがありつつ冷静でクリーンなキミらしいバトルが見られて少しうれしかったです。

「僕がもう少しインサイドに余裕を残しておくべきだった」 セバスチャン・ベッテル

 ぶつかった相手がチームメイトだったからこのコメントになったのであって、相手が2台ともレッドブルならもう少し強気のコメントを残したのかもしれません。

 でも1コーナーのあのシーンを見ていた人は誰もが直感的に「ベッテルが一番悪い」と思ったはず。解説者もそう言っていました。確かにベッテルが必要以上にインに切り込みすぎているように見えます。

 しかしベッテルの言い訳にも一理あって、自分は半車身前にいて優先権があった、キミは死角だったがいるのは分かっていてラインは1本残した。死角のさらに死角にいたフェルスタッペンは見えなかった。彼が突っ込まなければフェラーリは2台とも1コーナーをクリアできたはず... と。

 しかしベッテルはあそこまで厳しくインを攻める必要があったのかどうか? やはり疑問は残ります。新人とは違ってここでは何度もレースをしているのだから、過剰なスペースの取り合いは即接触に繋がることはよく分かっていたはず。

 だからこそ今回の行動は、最近何かとやられているキミに対して、何かよからぬ感情が一瞬湧き上がったのではないかと邪推したくなります。

 けっこうメンタルが弱くて、ピンチになってくると焦りが出たりいじけたりしてしまうのは、4回もチャンピオンを取っても変わらないものなのでしょうか? その辺の素直さがベッテルの良いところでもあるのですが。

「これは進歩だ、本当の進歩だ」 フェルナンド・アロンソ

 このレースを前にパワーユニットの主要部品を一新し、35グリッド降格という無意味なペナルティを受け、最下位からスタートしたアロンソですが、1コーナーの混乱を上手く切り抜け、赤旗中断もうまく利用した結果、一時は4番手を走り、最終的に7位でフィニッシュすることが出来ました。

 運も作戦も良かったと言うだけでなく、このパワーユニット勝負のサーキットにおいて、しっかりとライバル達トレースが出来たと言うことが、アロンソをしてこれだけポジティブなコメントを残した理由となっています。確かに映像を見ていても、ケメルストレートでしっかりとトロロッソやウィリアムズと戦えていました。昨年は考えられなかったシーンです。

 オーバーテイクが容易で長い故にマシンがばらけやすく、自分のペースで走れることが多いこのコースの結果は、マシンの本当の実力を表していると言えるのかも。最下位からスタートしても、3強に続く位置に戻ってこられると言うことは、確かに非常にポジティブなことでしょう。

 あとは信頼性の問題がどれだけ改善できるのかにかかっていると思います。鈴鹿もこの調子で良い結果を期待したいと思います。

ヨーロッパラウンド最終戦

 アロンソ同様に序盤にパワーユニットを壊しまくったハミルトンも、ここで一気に新パーツを投入してきました。そしてアロンソ同様にほとんど最下位からスタートしたものの、結果は3位表彰台。ロズベルグはしっかりとトップを守りきり、ポイント差を少し取り返しましたが、頼みの綱だったハンディ戦の結果としては少し物足りなかったかもしれません。残りは泣いても笑っても一騎打ちとなります。

 次のレースは早くも今週末、ヨーロッパラウンド最終戦となるイタリアGPです。超高速のオールドコースで、ホンダはどこまで戦えるか?が大きな見所となりそうです。