酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

シーズン折り返しを目前にして振り出しに戻る:F1 2016 第10戦 イギリスGP

 モナコと並ぶF1にとっての伝統の一戦、イギリスGPが行われました。舞台はもちろんシルバーストーン・サーキットです。このオールドコース中のオールドコースは、中高速コーナーが続く比較的ハイスピードな特性でフラットなサーキット。イギリス人ドライバーだけでなく、イギリスを本拠地にするチームがいくつもあって、多くのF1関係者にとってのホームレースとなります。

 今シーズン全21戦のうち、このレースが10戦目。次のハンガリーで折り返し点を迎え、その後は後半戦へと突入していきます。10戦も戦ってくれば各チームのマシンも成熟し、タイヤの使い方も覚えて、概ねチャンピオンシップの大勢が見えてくる頃合ですが、今年はまだ、特にドライバーズ・チャンピオンシップについては混沌としています。

 そんな中、さらに混迷を深めるかのように、シルバーストーンには決勝の朝に大雨が降り、セーフティカー先導によるウェットスタートとなりました。
Lewis Hamilton / Mercedes F1 W06 / 2015年 日本GPK3II0123.jpg

「これほど大勢の観客が集まる国は他にない」 ルイス・ハミルトン

 いやありますよ。日本。

 と言ってもそれはハミルトンがデビューする前の昔の話だから、やっぱり彼の言うことのほうが正しいです。最近のシルバーストーンは決勝日で概ね15万人弱が集まるそうですが、10年前の2006年日本GPでは16万人を超えたことがあります。しかし最近は10万人にはるかに届かなくなってしまいましたので、やはり近年のイギリスGPは特別な雰囲気に包まれているのでしょう。

 ジェンソン・バトンが勝ったことのない母国GPで、ハミルトンはすでに3回も優勝した経験があり、今年が4回目。非常に相性の良いレースと言えそうです。

 ヘビーウェットからドライへと変化していく難しいコンディションにも足をすくわれる事なく、トップを一度も明け渡さないまま、完全な勝利となりました。母国ファンを前にしてこんなにうれしいことはないでしょう。

 だからいつもどおり、まるで練りに練られた台本を読んでるかのような、嫌味なほどの優等生コメントも、そのまま素直に受け取っておきましょう。今回は完全にハミルトンのためのレースでしたから。

 そしてドライバーズポイントの差は1ポイントとなりました。次戦がちょうどシーズンの中間点となりますが、それを目前にして前半戦はほとんどチャラになったも同然です。ここからいよいよ今シーズンの本戦の始まりとなります。勢いは明らかにハミルトンにあります。

「ルイスほど僕のことを好きではない人がいるようだ」 ニコ・ロズベルグ

 これは皮肉と言うかジョークの一種であり、表彰台で浴びたブーイングに対しての彼なりのユーモアなのだろうと思います。ハミルトン贔屓のイギリスのファンの心情としては、このブーイングは今回のレース内容に対するものではなく、前戦オーストリアでの出来事に対するものなのでしょう。だとしたらある程度は仕方のないことです。

 レース内容に関しては特に見るところはなく、終始フェルスタッペンと争うことになってしまったのが誤算だったのでしょう。最終的に何とか2位を確保したはずの終盤に、無情にもギアボックスにトラブルが発生してしまいました。

 しかし問題はトラブルそのものよりもその後の対応です。チームはすかさずロズベルグに対し、対処方法を指示します。モードを切り替え、7速ギアを使うなと矢継ぎ早に無線が飛んできます。リタイアを避けるためのモード変更指示までは、合法と認められたものの、7速ギアを使わないことに対する指示については、レギュレーションに違反と判定され、またもやペナルティを受けてしまいました。せっかくがんばって取り返した2位の座と数ポイントを失い、公式のリザルトでは3位となってしまいました。

 これはある意味確信犯というか、ペナルティを織り込み済みのとっさの対応だったのではないかと思います。対応にてこずり、もっとポジションを落としてしまったり、あるいはリタイアしてしまうより、10秒加算されるほうがマシ、だと。だとすれば帳尻は合ってるのかもしれません。

 さて、これでロズベルグにとっては、シーズン序盤に稼いだポイントのマージンをほぼ使い切ってしまいました。ただ考えようによっては、ここまでポイントリーダーを保ってることが、良い意味で予定外だったのではないかと思います。ここ最近の流れは非常に悪いのですが、シーズン全体を見据えて、じっくりとハミルトンと対峙して欲しいところです。ここでガラッと彼が崩れ落ちてしまって、ハミルトンが独走してはつまらないですから。

「僕への応援は信じられないほどだった」 マックス・フェルスタッペン

 このコメントには続きがあって、それは「もちろん彼らはルイスを応援していたが、僕のこともついでに応援してくれていたようだ...」というものです。勘違いだろ?と最初は思いましたが、よく考えると、なるほどそうかもしれません。ルイスを脅かすほどの存在ではないけど、元気で成長著しいこの若者を嫌いな人は、イギリスにはあまりいないようです。

 事実、レースを通じてロズベルグと対等に渡り合い、リカルドを完全に忘れさせるほどの活躍を見せ、最終的にハミルトンからわずか8秒遅れでフィニッシュし、ロズベルグのペナルティにより公式リザルトでは2位になりました。

 この強さはきっと今後どんどん本物になる可能性が高いと思われます。いつかそう遠くない将来に、ハミルトンを本気で苛立たせることになれば、シルバーストーンのファンは彼に盛大にブーイングを浴びせる日が来るかもしれません。それはそれで見てみたいものです。

「そう見えなかったかもしれないが、今週末は一歩前進したと思う」 フェルナンド・アロンソ

 ウェットコンディションはマシンの性能差を埋めることが多々あり得るので、日曜朝の大雨は、マクラーレン・ホンダにとっては恵みの雨になるかと思われましたが、残念ながらレースでは期待したようなことは何一つ起こらず、2台揃ってノーポイントという結果に終わってしまいました。雨が上がるのが少し早すぎたのでしょう。

 確かにこの散々なリザルトだけを見れば、どうしようもないグズグズのレースだったかのようですが、アロンソだけでなくバトンもそれほどネガティブなコメントはしていません。むしろ中段勢のライバルたちとしっかりと「レース」ができたことを前向きに捕らえているようです。特にここでは、メルセデスPUを搭載するウィリアムズと対等にバトルが出来たことは、今後のデータとしても有効だし、自信にも繋がったのかもしれません。

 実際アロンソは途中でコースアウトしてしまいましたし、バトンは予選が悪すぎました。依然としてパワーが足りないものの、この中高速コースで感触がよかったというのは良い傾向です。

 次はマクラーレン・ホンダ向きの低速コースですので、是非良い結果を期待したいと思います。

次はハンガリーGP

 レースラッシュの7月のなかで唯一のお休みが今週末。次のハンガリーGPは来週末に行われます。コース幅も狭く、超低速なハンガロリンクではマシンに求められるものがガラッと変わりますが、それでもやはりメルセデスは強いのでしょう。しかしレッドブルやマクラーレンの戦いぶりがキーとなりそうです。

 そしてフェラーリの不調がどうも心配です。一体どんなレースになるか楽しみです!