酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

歴史は繰り返す:F1 2016 第4戦 ロシアGP

 今年で開催3回目となるロシアGPが行われました。昨年は鈴鹿の後に行われたのでわずか半年前のこと。中高速コーナーが連続し、燃料に厳しく、一方でタイヤには優しいサーキットです。今年複雑化したタイヤレギュレーションにより、3つのタイヤが選べるという状態になりましたが、結局決勝では1回ストップで行けてしまうことに変わりはありませんでした。

 1回ストップということはそれだけ作戦の幅が狭まり、純粋にコース上のスピードというか、レースペースの善し悪しで結果が決まります。半公道サーキットと言うこともあって、新しいコースにしては抜きどころが少ないのも特徴ですが、だからと言って退屈になるかと言えばそんなことありません。

 スターティンググリッドがやや荒れ気味だったことも含め、序盤から目が離せいない展開になりました。特にハイライトはスタート直後。事実上のブレーキング競争が行われる2コーナーまではかなり距離があり、8速まで加速した状態の各マシンがだんご状態でフルブレーキングによるポジション争いが見られるのはここだけではないかと思います。

 それが無事に何事もなく終わるわけがありません。

「今日は僕に落ち度はない」 セバスチャン・ベッテル

 この翻訳が意訳なのか直訳なのかがわかりませんが、本当にこういう意味のことを言ったとしたら、前回はベッテル自身にもやや非があったことを認めたことになります。イン側を不要に空けたことを指すのかもしれませんし、最終的にクピアトを避け、チームメイトのライコネンにあたってしまったことを指しているのでしょう。

 しかし今回は彼の言う通りベッテルには非はありません。2コーナーの突っ込み競争で追突された上、何とか体勢を立て直してコース上に残ったと言うのに、すぐ次の3コーナーで再び追突され、とうとうコース外へはじき飛ばされます。まるでマリオカートのように。

 直後の無線には激しい罵りの言葉をまくし立てていましたが、それも無理ないと言えます。まったくベッテルにとっては散々な、というか、怒り心頭も良いところでしょう。

 今回は2回も追突したクピアトに非があるのは明らかですが、若手のドライバーがその若さ故か、ラフなバトルをしてベテランにぶつかって怒られる、というシーンはF1で過去に何度も何度も繰り返されてきました。それぞれの出来事は一つ一つ事情が異なりますが、ベッテル自身も突っ込んだ側に立ったことは何度もあったはずです。

 いえ、だから黙ってろとか、仕方ないじゃないかという意味ではなく、時代はこうして巡ってるんだなぁ、と今回のバトル&クラッシュを見てしみじみと思ってしまいました。

「これほど混乱したオープニングラップを経験したのは初めてだ」 ダニール・クビアト

 前戦のバトルに関しては、大先輩のベッテルの非難に対ししっかりと反論し、自分の正当性を明確に主張したクピアトでしたが、今回ばかりはさすがに失敗したと自覚しているようです。フロントタイヤの熱の入り具合をちゃんと掴んでいなかったのか、2コーナーではタイヤをロックさせてしまい、結果ベッテルに激しく追突することになりました。

 しかし続く3コーナーでは何があったのでしょうか? 恐らくベッテルのマシンとタイヤには2コーナーでの追突の結果生じた問題を抱えていたのでしょう。それで通常のレーシングスピードでコーナリングすることが出来なかったところへ、それをまた見誤ったクピアトは再び追突してしまったように思います。

 「そんなに減速するとは思わなかった」は追突時の後方ドライバーの常套句ですが、今回はクピアトはそれを予想しておくべきだったと思います。なにしろ直前に自分が激しくぶつけた相手なのですから、依然として前を走っていることが不思議なことだったはずです。

 いずれにしろ、クピアトは言い訳に終始しているわけではなく明確に謝罪の意を表明しています。ベッテルに対しても、巻き添えを食ったチームメイトのリカルドとチーム全体に対しても。

 それに何よりここは彼の母国GPでした。ロシアのファンはかなりがっかりしたはずです。そして彼自身、出来ればレース後にカメラの前でプーチン大統領と握手をし、直接お祝いの言葉をもらいたかったことと思います。

 いや、そんな一時の晴れ舞台よりも、チームの評価のほうを真剣に心配したほうが良いかもしれません。1つのレースの1つの出来事で、チーム首脳がドライバーのクビを決めるというのは、F1の世界では過去にも何度もあったことです。

「今日は接触せずに済んでよかった」 ルイス・ハミルトン

 今回のレースも順調には運びませんでした。予選中にマシンのトラブルが起きQ3に出走することが出来ず、10番グリッドからのスタート。ただし今回のレースで幸運があったとすれば、クピアトによって引き起こされた2コーナーの混乱を無傷ですり抜けることが出来、しかもその結果何人かのライバルが消えたことにありました。

 レース中はハミルトンらしい走りでどんどんと追い上げ、ロズベルグに続く2位まで順位を回復することが出来ました。結果だけ見ればいいレースだったはずですが、終盤にまたもや信頼性の問題が起きたことと、ロズベルグが開幕4連勝を果たし、ポイント差はますます開いたとあっては、表彰台でもニコリともせずに不機嫌な様子でいたのも致し方ありません。

 まだわずか4戦ですが、この状況は予定していなかったはず。過去のシーズンでもロズベルグにここまで大差を付けられたことはなかったわけで、そろそろイラッときているところかと思います。それにエンジンが壊れまくり、予定外にパーツを消費しているのも終盤にじわじわと効いてくることも意識しているのでしょう。そのイライラが良いほうに転べば良いのですが、悪い方に出てとっちらかると、ますます自分の首を絞めかねません。

「今年は違う。僕らには速さがある」 フェルナンド・アロンソ

 ようやく得心のいくレースが出来たようです。文字通りスピードがまったく出なかった昨年は、良いスタートを切ってもひたすら順位を落としていくばかりでしたが、今年はちゃんとレースをして、バトルをして、いくつかの幸運を得て、6位入賞を果たしています。

 このロシアのコースでこれだけ戦えたと言うことは、明らかに戦闘力は増しているのでしょう。でも、表彰台争いをするにはまだ大きな壁を幾つも超えないといけないようです。アロンソはレース中に1回だけ限界までプッシュしたらしく、その結果レース中のラップタイムで5位となっていますが、燃費かあるいは信頼性の面で他のチーム(パワーユニット)より我慢を強いられてるとしたら、その改善がレースペースを上げる鍵になってくると思われます。

 もちろん、シャーシの素性も重要ですけど、昨年来ホンダの側に問題が多すぎてその辺がよく分かりません。今後はグリップやセットアップに関するコメントが出てくるようになるのを期待したいと思います。

早くもヨーロッパへ

 開幕フライアウェイ戦を終えて、つぎからはいよいよヨーロッパラウンドの始まりです。例年だとここに3週間ほどのお休みが入るのですが、今年は過去最大の21戦がスケジュールされているせいか、いつも通り2週間後には早くもスペインGPが行われます。ロズベルグの連勝記録はどこまで伸びるでしょうか? ホンダにとっても昨年は散々な結果だったコースですが、どうなるでしょうか?