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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

どんどん先へ進んでしまう佐伯泰英シリーズもの:鎌倉河岸捕物控

読書 佐伯泰英

仲秋八月一日は、吉原でも「八朔」と称して大紋日であった。またその日は、白無垢を着た花魁道中が行われるのが仕来りだ。政次は宗五郎の名代で亮吉と彦四郎を連れて祝儀を届けることになった。美貌・人柄・見識・教養と抜きんでた、吉原では伝説の遊女と言われている高尾太夫が、花魁道中の途中で政次に笑みを送った。政次はどこかで会った気がするが、どうしても思い出せない。そんななか吉原の帰りに寄った豊島屋で飲み逃げ事件が起きて・・・・・。金座裏の面々は江戸の平和を守るため、今日も奔る! 大ベストセラーシリーズ待望の二十四弾。

橘花の仇―鎌倉河岸捕物控〈1の巻〉 (ハルキ文庫 時代小説文庫)

橘花の仇―鎌倉河岸捕物控〈1の巻〉 (ハルキ文庫 時代小説文庫)

定廻り同心・寺坂の町廻りに同行した政次らは、呉服店松坂屋で不審な男女ふたり組に遭遇した。ふたりは京下りの春物の友禅を次々とひろげさせていた。八百亀は尾行をつけさせる・・・・・。そんな折、淀藩の納戸方が行方知れずになった。金座裏の面々は事件を追うが――。政次・八百亀・弥一が、空っ風とかかあ天下で有名な上州にも出向き、大活躍する。粋で豪奢な友禅に秘められた男と女の熱い想いを描く、大ベストセラーシリーズ切望の第二十五弾。


 時代小説の売れっ子作家の一人、佐伯泰英さんの作品と言えば、同時並行で多くのシリーズものがあって、しかも文庫書き下ろしでその発行ペースが非常に速いという特徴があります。それだけに読者も飽きたり忘れたりすることなく、次から次へと新作が出るのを楽しんでる... はずなのですが、私はまったくついて行けていません。

 現在でも追いかけ続けている佐伯作品のシリーズは二つ。そのうちの一つがこの「鎌倉河岸捕物控」です。主人公にはまったく共感も感情移入できないというのに、脇役達が面白いことと、岡っ引き一家を中心に据えた、正当派な捕り物であるところが良いのでしょうか、途絶えることなくずっと読み続けているシリーズものです。

 前回読んだのはもう一年前で、第二十三巻まで既読です。しかしサボっていたこの一年の間に、さらに四巻も進んで第二十七巻まですでに発売されてしまいました。このままでは遅れが取り戻せなくなってしまう... ということで、今回読んだのは第二十四巻と二十五巻の二冊を一気に読んでみました。

 というか、新たに「佐伯作品はほぼ全て持っている」という知人に巡り会えたのが大きいです。現状を伝えたら、すぐに私が未読の分を持ってきてくれました。やっぱり持つべきものは読書友達!

 久々に準娯楽時代小説を読みましたが、やはり気楽で楽しくて良いものです。佐伯作品はまとまった時間がなくても、ほんのちょっとした空き時間を利用して細切れに読み進められるので助かります。もちろん、まとまった時間があれば、一冊読み切るのもそれほど時間がかからないでしょう。こういった読みやすさこそが人気の秘密なんだろうと思います。もちろん、中身が面白いことが前提ですけど。

 さて肝心の内容についてですが、この二巻においては、これまでと比べると金座裏界隈はとても落ち着いていて、特に九代目宗五郎を始め、登場人物達にはこれと言って大きな事件は起こらず、ただ悪党が江戸の街で謎の事件を引き起こし、それを政次達が見事な手腕とガッツで解決していくという、わかりやすい勧善懲悪の捕り物となっています。

 第二十四巻「後見の月」は、いきなり吉原を舞台に物語が始まったので、思わず「吉原裏同心」シリーズと間違えたかと思ってしまいました。吉原は金座裏の縄張りではありませんが、政次と吉原の間にいろいろな関係があることが次第に判明し、そこで起こる謎に金座裏が巻き込まれていきます。もしや、幹どのが脇役で登場しないかな?と期待したのですが、そういうことはあまり佐伯さんはしないようです。時代設定が違うのでしょうか。

 第二十五巻「新友禅の謎」は表題の通り高級着物である「友禅」にまつわる事件の物語です。このシリーズの読者なら当然ご存じの通り、政次と呉服屋は切っても切れない関係にあるわけで、当時の江戸の呉服屋の事情やら友禅の歴史、絹産業の仕組みなどなど、珍しく時代考証と蘊蓄を織り交ぜながら物語は進んでいきます。また、「絹」が関わるとあって、今年のNHK大河ドラマあたりを見ているとなお、いろいろ想像が膨らんで楽しめるお話です。

 そして相変わらず金座裏の威光はすさまじく、政次のスーパーマンぶりも磨きがかかってきました。でも、私が一番関心があるのは亮吉なのです。政次や彦四郎の引き立て役として、徹底的にダメ人間として描かれる亮吉の行く末だけが心配なのです。それはアンチヒーローを好むというか、判官贔屓というか、そういう心情なのでしょう。それもこれも佐伯さんの仕掛けた沢山の仕掛けの一つなのだとは思います。

 さて、この勢いであと二巻も読み進めてしまいたいと思います。でも、その前にもう一つ読み続けている佐伯さんによるシリーズものがあるので、そっちを片付けてからかな?