酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

異例ずくめ摩天楼ナイトレース:F1 2015 第13戦 シンガポールGP

 シンガポールの大都会のど真ん中で開催されるナイトレースは、開催8年目にしてF1を代表する風景の一つとなりました。市街地コースとは言え、伝統のあるモナコとは違い、煌々と照らされたレーストラックと、それを見下ろす巨大なビル街は、まるでゲームCGの世界に迷い込んだかのような幻想的な風景です。
 純粋にレーストラックとしてみたシンガポールGPは、90度コーナーが続く超低速サーキット。モンツァとは対照的に23ものコーナがあり、全開区間の少ないコースです。そのため平均速度が遅く、路面は劣悪で、しかもエスケープがなくてウォールに囲まれてるので、ちょっとした事故ですぐにセーフティカーが導入され、それらの複合要因によって、レース時間が最長規定の2時間すれすれかかることも恒例となっています。
 何もかもが他のレースとは異なるシンガポールGPでは、これまでのような戦略がなかなか通用しません。その結果波乱が起きやすいレースでもあります。

「メルセデスが今週末ペースがなかったことは意外だ。その理由はわからないが、正直なところどうでもよい」 セバスチャン・ベッテル

 要するに、勝てたんだから細けえことはいいんだよ!と言うことでしょう。メルセデスの分析はチームエンジニアがやってくれるはず。

 フェラーリは今シーズンに入って着実に進化を続け、メルセデスに続く2番手の地位は確実に固めてきました。それでもスパやモンツァのような高速コースでは、トップをうかがうチャンスはありませんでしたが、このシンガポールの低速コースなら、あるいはチャンスがあるかも?と思われていました。

 それがふたを開けてみれば、メルセデスなど寄せ付けない圧巻の独走。予選でも今年始めてメルセデスからポールポジションを奪い取ることに成功。フリー走行からレースまで、圧倒的な速さを見せたフェラーリとベッテルの組み合わせは、まるで2シーズン前のレッドブル時代を見てるかのようです。

 とはいえ実際には余裕の勝利だったわけではなく、レースでは眼中になかったはずのレッドブルに追い回されるという展開に。しかもセーフティカーが2回も入りましたが、それらはどちらかと言えばベッテルには味方したことになるタイミングでした。タイヤ交換のタイミングもチームは的確に冷静に判断し、トップを一度も譲ることなく優勝のチェッカーを受けます。

 ベッテルは元々このシンガポールを得意としていることもありますし、非常に使いこなしの難しいスーパーソフトをうまく機能させることもできました。久々にベッテルらしいレースを見ることができて満足です。

 これでベッテルは今季3勝目。気がつけばチャンピオンシップで2位の座が見えてきました。ロズベルグには悪いですが、このままの勢いで逆転すると面白いな、と思います。

「今回は僕らが優勝できる最大のチャンスだった」 ダニエル・リカルド

 フェラーリと並んで絶好調でメルセデスを寄せ付けなかったもう一つのチームがレッドブルです。2年目になっても鳴かず飛ばずのルノーパワーユニットに鳴かされ、常勝時代の面影はすっかりなくなりましたが、ニューウェイの流れをくむレッドブルは、やはりコーナリングマシンなのでしょうか? この入り組んだコーナーの連続するコースでは、抜群の速さを見せます。

 予選で2番手に付け、ベッテルを一人追いかけ続けたリカルド。それでもまともに戦ってはベッテルに対して勝ち目はないと見て、積極的なアンダーカットを狙っていたようです。しかし、それらの戦略はセーフティカーによってタイミングを失ってしまいました。

 タイヤのデグラデーションがフェラーリに対して少なく、スティントの後半の速さはレッドブルに利があり、それだけにアンダーカットが絶妙なタイミングで決まっていれば、リカルドの狙っていた作戦は大成功を収めていたかもしれません。

 そういう意味ではリカルドはがっかりしているのでしょう。今シーズン、彼が優勝できる唯一のチャンスだったのですから。でも、表彰台にも手が届かなくなったこのシーズンで最高の成績を出せたことは事実。とはいえ、レッドブルとリカルドにとっては、今回の結果から先に希望が見いだせる状態ではありません。まずはルノーと手を切った後のパワーユニット問題がどうなるのか、そこが気になるところです。

「優勝できるペースがあると思った」 ルイス・ハミルトン

 これが彼流の優等生コメントなのか、あるいは本心から来ているものなのか、判断が付きません。今回メルセデスはフェラーリとレッドブルにもまったく刃が立たないように見えました。ただ単に低速サーキットだから、と言うことではなさそうです。モナコでもハンガリーでもメルセデスは圧勝したのですから。このコースでは何がそんなに影響したのか、不思議なところです。

 もしハミルトンのコメントを素直に受け取れば、ドライバーから見ればマシンの挙動は悪くなかった、と言うことなのでしょう。それならそれで、フェラーリとレッドブルが遙かに前に行ってしまったことを、ますます説明できないような気がしますけど。F1は奥が深くて面白いです。

 ただし、メルセデスはただ単に3列目に沈んでしまったばかりではなく、ハミルトンにとっては今シーズン初と言っても良い、マシントラブルに見舞われてしまいました。おそらく回生エネルギーを失ったのでしょうか。昨シーズンの最終戦にロズベルグに起きたような感じで、急激にスピードを失ってしまいました。

 こうなると急激にやる気を失うハミルトンらしさも、チーム無線から聞こえてきました。エンジンをセーブしよう、という彼の意見にはもちろん一理あります。それもこれも、チャンピオンシップでたっぷりマージンがあり、しかもロズベルグのポイントをベッテルが奪ってくれていることから来る、余裕なのでしょうか。

「日本での次戦に集中する。ホンダの地元サーキットだがまた厳しい週末になるだろう」ジェンソン・バトン

 レッドブルにとって優勝できるかもしれない唯一のチャンスだとすれば、ホンダにとってもここはモナコ以来のポイント獲得、しかも大量獲得の最後のチャンスだったかもしれません。

 実際にフリー走行まではとても順調で、もしやメルセデスと戦えるのでは?というくらい。パワーユニットへの依存度が低ければ、腐ってもマクラーレンのマシンはレッドブルと同じように、その力を発揮する... かと夢見たのですが、現実はそれほど甘くありません。

 それでもなんとか予選ではQ2に進出し、レースでもポイント圏内は十分に狙えるはずだったのに... 結局は信頼性の問題で2台ともリタイアをとなってしまいます。ギアボックスはマクラーレンとホンダのどちらの担当なんでしたっけ?

 これまでと違って、ドライバーの二人からはややポジティブなコメントが得られています。やはり相対的に戦闘力がそれなりにあれば、モチベーションは沸いてくるのでしょう。そういう意味では鈴鹿以降はちょっと心配なところです。

 そしてちらほらと来季の噂も聞こえてくるようになりました。バトンは今年で見納めかもしれません。

いよいよ日本GP

 ということで、シンガポールからの連戦で、今週末は鈴鹿の日本GPです。イベントは明日から始まり、明後日にはフリー走行が開始されます。残念ながら今年も台風が接近していたりして、あまりお天気は良くないようですが、昨年ほどの荒天にはならないでしょう。

 ということで、今年はシルバーウィークのどさくさに紛れて、木曜日のあしたから鈴鹿入りして観戦してこようと思います!