一進一退:F1 2015 第5戦 スペインGP

投稿者: | 2015年5月12日

 3週間の休みを経ていよいよF1のヨーロッパラウンドが始まりました。その最初のレースは例年通り、スペインはバルセロナのカタロニアサーキットが舞台です。1991年に作られた、ヨーロッパでは比較的新しいコースですが、最近の新興国に作られたコースとは違い、どことなくオールドコースの雰囲気を持っています。エスケープゾーンはそこそこあるものの、コース幅もそれほど広くはなく、低速から中高速まで各種コーナーが織り交ぜられたテクニカルレイアウトで、現代F1マシンでは抜きどころがほとんどないのもそう感じさせる要因でしょう。

 メルセデスに対するフェラーリの挑戦、ハミルトンの連勝を阻止したいロズベルグ、10代ルーキードライバーたちの奮闘、ホンダの復活劇などなど、今シーズンもいくつもの興味深いチャレンジが見られるF1ですが、それらはいずれも一筋縄ではいかず、一進一退の様相を呈しています。

「スペインで完璧な週末を過ごした」 ニコ・ロズベルグ/メルセデス

 序盤戦にして既にライバルに4敗を喫し、進退窮まっていたロズベルグは、ここで何とか持ちこたえることが出来ました。昨年の前半戦同様にポールポジションを取り、完璧なスタートを決めてレースをコントロールしてしまえば、危なげなく勝つことが出来ます。それでも今回は、ハミルトンがスタートに失敗し、そのレースのほとんどをベッテル追撃に費やしてくれたことが幸いしたと言えるでしょう。ハミルトンもスタートを決めて一騎打ちになっていたら、もしかして華麗な3回ストップ作戦の餌食になっていたのはロズベルグかも?という気もします。

 しかし、スタートさえ決めれば自分のペースで独走できるのはポールポジションの特権であり、少しの失敗が大きなトラブルを招き寄せるのは2番グリッド以下の宿命です。下位グリッドになればなるほど、不確定要素は増え、思い通りのペースが出せないのは覚悟しなくてはなりません。これまでの4戦はロズベルグがその煮え湯を飲んできました。

 レース作戦を弄したり、バトルを仕掛けるのがあまり得意そうには見えないロズベルグにとっては、ポールを取ることは今年もハミルトンとチャンピオンを争っていく上での最低条件ではないかと思います。スペインに来てそれがようやく達成できるようになった要因は分かりません。ここからは一進一退の攻防を、いやロズベルグ的には「二進一退」くらいの戦いが必要になりそうです。

「何もミスはなかった」 セバスチャン・ベッテル/フェラーリ

 マレーシアでは常勝メルセデスの隙を突いて一矢を報いたフェラーリは、その後もジワジワとメルセデスを脅かし続け、前戦バーレーンでも見事な奇襲タイヤ作戦でライコネンがメルセデスのワンツーを阻止しました。まだスピードで真っ向勝負とまでは行かないものの、タイヤとトラックの相性、天候などなどの条件によっては、今シーズンあと何勝かしてもおかしくないと思わせる活躍を見せていました。

 今回もスタートでハミルトンの前を押さえたベッテルは、冷静にマシンをドライブし続け、チームもハミルトンのピットインに素早く反応し、アンダーカットを阻止するなど、対等な勝負を仕掛けているかに見えました。

 しかしその希望はハミルトンが3ストップ作戦に切り替え、このトラックにはおよそ合ってないと誰もが思っているハードタイヤで、猛チャージをかけたところで潰えます。フェラーリには3ストップ作戦につきあう力はないし、ハードタイヤではハミルトンに2秒近いラップペースの差を見せつけられ、ピットイン1回分の20数秒のマージンはあっという間に消し飛び、最終的にチェッカーを受けた時点では40秒近い大差を開けられてしまいました。

 ベッテルが言うように今回のフェラーリにはマシンにも作戦にもドライバーにも何のミスもありませんでした。100%の力をぶつけて結局は、昨シーズンと変わらない大差をつけられ完敗。どちらかというとウィリアムズと良い勝負だったことに気づかされます。

 フェラーリのここまでの善戦は幻だったのか? あるいはこの休み中の開発で少し差をつけられただけのことなのか? 希望と絶望の一進一退は続きそうです。

「怖かった」 フェルナンド・アロンソ/マクラーレン

 ここスペインは言わずと知れたアロンソの地元レースです。昨年までは優勝、あるいは表彰台争いを期待されていたはずですが、今年はそういうわけにはいきません。未だ開発中のホンダ・パワーユニットを駆り、前向きではあるものの「1ポイントでも取れれば…」という期待に応えるためのレースとなります。

 予選でマクラーレンは2台揃ってQ2に進出できたのは良いニュースでしたが、その後は悪いことが立て続けに起き、目標の1ポイントは雨霧消散してしまいました。

 「怖かった」というコメントは、実はアロンソだけでなくチームメイトのバトンも口にしています。アロンソの場合はブレーキのトラブル、バトンはスロットルのトラブルでした。止まらないマシンに、トラクションの調節がきかないマシン。どちらも百戦錬磨のF1ドライバーをして、恐怖を感じさせるのですから、レースをしてポイントを取るどころではありません。

 結局アロンソはリタイヤ、バトンは何とか最後まで走ったものの16位という散々な結果に終わりました。

 この3週間の間にパワーユニットに関する進歩はきっとあったはず。それでもこうした基本的な部分に次から次へと問題が出てくるわけで、F1マシンの開発は一進一退の気の遠くなるような作業でしょう。いつかはきっとすべての歯車が合うときが来ることを願って、まだしばらくは見守っていくしかありません。

序盤戦のハイライトへ

 次はいよいよモナコGPです。もはやあのコースを現代F1マシンが走ってることが奇跡と思えるような、オールド市街地コース。メルセデス2台の戦いは、予選とスタートで決まることでしょう。モナコで過去2連勝しているのはロズベルグです。今年はいったいどうなるでしょうか?

カテゴリー: F1