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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

砂漠のナイトレース:F1 2015 第4戦 バーレーンGP

F1

 レースから一週間が過ぎてしまいましたが、ようやく録画観戦することができましたので、感想を書き留めておきたいと思います。バーレーンGPは政情不安から2011年は開催されなかったのですが、その後は表向き何事もなかったかのように行われています。中東のレースらしくバブリーでとても豪華な雰囲気が漂い、政情不安などはTV放送からは微塵も感じられませんが、やはりお金持ちの道楽であることに変わりはなく、F1文化、あるいはモータースポーツが根付く土壌があるようには見えません。

 サーキットもF1のためだけに造られたもので、もちろんティルケデザインです。レースは年に一度F1しか行われない上に、周囲は砂漠に囲まれ、昼間は灼熱の気候と、およそフォーミュラカーを走らせる環境ではありませんが、決勝レースは日没後に行われるため、それほど過酷な状況ではありません。ただし、路面温度もフリー走行からは大きく変化するため、タイヤ戦略などでやや不確定要素があったようです。

 今回のレースでは、鉄板でそれ以外の選択肢はないと思われていたタイヤ戦略を敢えて外し、奇襲をかけたドライバーが結果を残すこととなりました。

「やっぱり優勝したい」 キミ・ライコネン /フェラーリ

 フェラーリへの電撃復帰から3シーズン目を迎え、やっと戦えるマシンを手にしたものの、トラブルや不運に見舞われ、ここまでは満足な結果を残していませんでした。予選でも微妙にベッテルには届かず、4番グリッドをほぼ定位置としつつあるかのようです。今回のレースもその4番グリッドからスタート。前回のレースでも一気にウィリアムズをごぼう抜きしたように、今回もスタートで見事にロズベルグを仕留めます。

 しかし彼のレースのハイライトはそこではなく、第2スティントでまさかのプライムタイヤを履いたところから始まります。砂で汚れた路面はF1マシンが3日間走っても完全にはクリーンにならず、しかも決勝はナイトレースで路面温度は急激に下がります。レース中盤でプライムタイヤを履いて良いことはないと思われていたところで賭に出たのは、状況的にライコネンには失うものがあまりなかったが故でしょう。

 しかしこの戦略は見事に当たりました。それも二重の意味で。一つは予想よりも早い段階でオプションタイヤとのクロスオーバーを迎え、順当にオプションタイヤでつないだライバルたちよりも速いラップペースを刻み続け、ギャップを大きく縮めたことです。そしてそれはタイヤとコンディションのマッチングが良かった以上に、ライコネンと相性が良かったためであったことが、ライバルたちを惑わせる結果となりました。

 ライコネンの好調なペースを見て、前の3台は早めにプライムタイヤに切り替えます。しかし、ラップペースは思ったほど上がりません。そこでライコネンは満を持してオプションタイヤに履き替えます。路面もラバーが乗り、燃料も軽くなったマシンでスプリントレースを開始。ファーステストラップを連発しながら、最終ラップでとうとうロゼベルグのオーバーテイクに成功しました。

 もちろん、ベッテルにトラブルがあったこと、ロズベルグがミスしたことなどの幸運もありましたが、それにしてもレースが後もうちょっと長ければハミルトンさえ危うかったかもしれないと思わせる好調さでした。

 しかしこの奇襲作戦について、ライコネン本人は納得ずくだったわけではないようです。途中無線で「なぜ今このタイヤなのか?」とチームに疑問を投げかけています。全体の状況が見えないドライバーとして、特にライコネンはフェラーリが犯した数々の作戦ミスの犠牲になった経験があるわけで、今回も鉄板であるはずの作戦をとらなかったチームを信頼していたわけではないのでしょう。

 しかしそんな中でも最高の走りをしてしまうライコネンの精神力と腕はさすがです。ここ数年影が薄く、そろそろレースへのモチベーションを失い始めたのではないかと心配していましたが、久々にキレのある走りを見ることができました。

 そして上に引用したコメントです。「3位よりは2位でよかった」ではなく「1位の方が良かった」という後悔の言葉。これもなかなか彼としては珍しいコメントではないかと思います。それだけ今シーズンは手応えがあるのでしょう。フェラーリ内部でもベッテルと険悪になるくらいでちょうど良いのではないかと期待しています。

「全員がこのプロジェクトにコミットしている」 フェルナンド・アロンソ /マクラーレン

 さてホンダです。今回の成果は予選でQ2に進出できたこと。これは大きな前進です。そしてレースでもフォースインディアあたりとは常にバトルをしつつ、最終的には11位フィニッシュということで、ポイント獲得まで後一歩まできた点も大きな成果でしょう。

 それでも車載カメラで見ていると、ストレートでの速度差は目を覆いたくなるようなものでした、相手がDRSを使ってるとはいえ、軽々とあの速度差が付いてしまう様子を見せつけられると、ホンダパワーユニットは、他のパワーユニットに対しいまだ相当なパワー面のハンディがあることが想像できます。それが信頼性とのバランスであるとするなら、走行距離を重ね、次戦経験を積んでデータを蓄積していくことで、進歩していくことが期待できます。

 しかしそんな一方で、今回のレースではバトンの車が深刻な問題により予選中にストップしたまま、決勝のスターティンググリッドにつけない、という考えられ得る最悪のトラブルにも見舞われました。アロンソの結果がポジティブであった一方、このバトンの結果を見ると、ホンダはいまだ深刻な信頼性問題を抱えていることを伺わせ、先行きはまだ不透明と感じてしまいます。

 ホンダが悩まされているのは主に熱の問題、と噂されていますが、これからレースの舞台はヨーロッパに移りつつ、真夏を迎えます。と考えるとやはり今シーズンはすべてテストと思って、いろいろ試してみるしかないのかも。ファンとしても長い目で見ていきたいと思います。

3週間のお休み

 次はいよいよヨーロッパラウンドの初戦、スペインGPです。バーレーンGPから数えて3週間後、今日から数えると2週間後です。

 スペインは言わずと知れたアロンソの地元、会場の声援もアロンソへ、ひいてはマクラーレンホンダに向けられることでしょう。ホンダとしても無様なレースはできません。上に書いたことと早速矛盾するようですが、ホーム効果で1ポイントでも獲得できれば、と期待してしまいます。