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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

少年の夢が叶う日:F1 2015 第2戦 マレーシアGP

F1

 F1の第2戦目はこれもまた毎年恒例となっているマレーシアはクアラルンプール郊外にあるセパン・インターナショナル・サーキットで開催されました。熱帯の気候の下、高温多湿で時にスコールに見舞われるマレーシアのレースは、F1マシンにとってもドライバーにとっても、そしてチームにとっても、ここ以外のレースにはあり得ない特殊な環境下でのレースとなります。

 コースは近代的で緩急織り交ぜた絶妙なレイアウトですが、その過酷で特殊な環境であるが故に、そして開幕直後であるが故に、時に波乱が起きるレースでもあります。

 果たして今年は、すでにメルセデス絶対優勢という空気が色濃く流れる中、この特殊な環境を突いて思わぬ伏兵が現れます。それはもしかしたら、ここマレーシアだけの話なのかどうかは分かりません。

「なんと言えばいいかわからない」 セバスチャン・ベッテル/フェラーリ

 メルセデスの隙を突いて優勝をかっさらった伏兵とはベッテルのことです。いや「フェラーリが伏兵だった」と言った方が良いのかもしれません。それは予選に失敗し、スタートにも失敗し、挙げ句の果てに追突されてタイヤを切られるという不運に見舞われ続けて、レース序盤にダントツ最下位に落ちてしまったライコネンまでもが、最終的に4位でフィニッシュしたことからも、如何に今回のレースにおいてフェラーリのレースペースがずば抜けていたかが分かります。

 セカンドグリッドからスタートしたベッテルは、他のほとんどのチームが3回ストップ作戦をとる中で、2回ストップ作戦を敢行。しかも我慢のペース調整を強いられるでもなく、メルセデスと対等なタイムを刻み、接戦にすら持ち込ませませんでした。もちろん、序盤のセーフティカーの導入が有利に働いた面もあります。しかし、仮にそれがなくても、ベッテルはやはり勝っていたのではないかと言われています。

 そういうタラレバを言うなら、ライコネンに襲いかかった不運がもし一つでも回避できていたら、もしかしたらフェラーリはワンツーを決めていたかもしれません。

 要因はタイヤのデグラデーションの差と言われています。メルセデスのマシンは高音のセパンにおいてはタイヤに厳しく、すぐにダメになってしまうのに対し、フェラーリは同じタイヤで長距離をペースを保って走ることが出来ます。

 空力だけに頼るのではなく、基本的なメカニカルグリップを重視したマシン設計のおかげとも言われていますし、ドライバーとの相性もあるのでしょう。とにかくタイヤを上手く使いこなせるマシン特性が、マレーシアの高温高湿な気候とトラック特性によって増幅され、このような差を生み出したようです。

 なので、今回の結果を持って必ずしも今後もフェラーリがメルセデスと対等に戦えるとは言えません。コース特性によっては再びメルセデス独走を許すこともあるでしょう。

 しかし、テレビ中継でも言われていましたが、今回の勝利はメルセデスに何かあったとき手に入れた棚ぼたではなく、対等に戦った上での勝利、それもコース上でのオーバーテイクも含めて、チェッカライン上では10秒近い差をつけての圧勝でした。結果だけでなくレース内容の完璧さは、この優勝の価値を大いに高めています。

 ベッテルはフェラーリに移籍してわずか2戦目で優勝を手にしました。彼にとっては21戦ぶり、フェラーリにとっては実に35戦ぶりの勝利です。レース後のベッテルのはしゃぎぶりを見ていると、単に久しぶりの優勝というだけでなく、フェラーリで勝った、ということが本当に嬉しいようです。彼は本当にフェラーリが好きなんだな、ということが分かります。

 レッドブルで4年連続チャンピオンという黄金時代を築き、もはやF1で目指すものがなくなったんじゃないかと勝手に思っていましたが、彼にとってF1ドライバーとしての究極の目標はまだ達成されていないということが良く分かりました。今後にも期待です。

「レースペースは意外によかった」 フェルナンド・アロンソ/マクラーレン

 テスト中の事故で脳震盪を起こし開幕戦を休んだアロンソに関しては、その不可解な行動から色々な憶測が飛び交いましたが、今回のレースには何食わぬ顔で現れ、バトンと一緒になってマシン開発、パワーユニット開発に徹していました。予選はQ1落ちしてしまい、決勝レースでも下位争いを繰り広げる状況に変わりはありませんでしたが、オーストラリアからは大きな進歩があり、ましてやアロンソが知っているテスト期間中からは劇的な改善があったようです。

 キャリアの最後をかけてチャンピオンを再び手に収めるために、賭けのマクラーレン移籍だったはずですが、優勝争いにはまだほど遠いマシンとパワーユニットでありながら、その進歩を楽しんでいるようです。

 今回のレースは2台ともリタイヤしてしまいましたが、周回数はそれなりに多く、リタイヤ原因もパワーユニットにあったようで、そういう意味ではつまらぬ原因で走行が稼げなかったと言うこともなく、データはたっぷりと手にできたことでしょう。これをベースに上海ではさらに進歩していることを期待したいところです。もう少しでQ2には進出できそうですし、決勝でもポイント獲得はそれほど遠い目標ではなさそうです。

 次のレースは2週間後、上海で中国GPが行われます。気候はずっと温暖になり、条件はマレーシアとはガラッと変わるでしょう。伝統的にメルセデスが強いサーキットでもあり、どうなるでしょうか? フェラーリもこれでメルセデスと戦える、と思い込むほど楽観的ではないようです。