成熟した第三世代の"M":EOS M3を先行体験する【前編】

投稿者: | 2015年2月7日

 来週開幕するK3PS5435.jpg
 そこで、今回発表された数多くの製品群の中でも、写真/カメラ好きな人々の間では二番目くらいに注目されているであろうEOS M3に早速触れてくる機会がありました。言わずと知れた、キヤノンのミラーレス機、EOSMシリーズの第三世代の製品です。

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概要

 まずは製品概要について勉強しましょう。実機に触れながら、キヤノン販売の方からどういった製品なのか、一通りのプレゼンテーションを受けました。

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 手元に用意されていたのはレンズ付きのブラックボディとEVF。なおこれはEOS M3の発売前試作デモ機です。今後発売される量産機とは仕様・性能が少し違う可能性がありますので、その点はご了承ください。

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 ずばりEOS M3がターゲットとするユーザーは「40代男性」だそうです。私はどんぴしゃですね(^^;。そもそもカメラにお金を使う層としてはこの世代が中心ということかもしれません。一眼レフは大げさだけどコンパクト機や、ましてやスマホでは飽き足らない、あるいはEOS一眼レフのサブ用途、と言った辺りでしょうか。EOS Mについては登場当初から色々な意見がありましたが、どちらかと言うとライトユーザーをターゲットにしてるのかと思ってましたので、やや意外なお話ではありました。

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 その結果出来上がったEOS M3はどんなカメラかというと、その特徴を大まかにまとめるとこんな感じです。センサーの進化とそれに伴うAF性能の向上がひとつ、チルト機構を採用した背面液晶に加え、EVFの後付けに対応したことが二つ目、そしてスライドでは「グリップ性能」と書いてありますが、グリップ含めた操作系の改善が三つめ。と、大まかにこの三点であると理解しました。

インプレッション

 では、実際の製品はどうでしょう? まずはボディを眺めてみましょう。

操作系

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 EOSシリーズの事情に比較的疎い私から見ても、EOS MやEOS M2から変わったと分かるのがこのシャッターボタンとグリップまわり。シャッターボタン部分が斜めにカットされている辺りのデザインは、EOSシリーズで一貫して継承されているそうですが、わりとハッキリしたグリップが設けられたことで、その部分がより目立つようです。また、説明を受けるまで気がつかなかったのですが、このシャッターボタン周囲はコマンドダイヤルになっています。これ、実際の所結構使いやすいです。

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 モードダイヤルの変更点。というか、ほぼ別物ですね、これは。M3のほうがカメラをよく知ってる人には分かりやすいです。ようやく当たり前になった、と言ったところでしょうか。

背面液晶

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 液晶はチルト式です。これも意外なことにEOS Mシリーズでは初だそうです。上方向は自撮り可能な180°まで、下向きは45°まで傾きます。

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 複雑なヒンジ構造になっていて、上向きチルト時はかなり手前にパネルを引き出すことが出来ます。

 実機を触ってみると、畳んだ状態ではロックがかかるような感覚があり、上向きに開こうとすると一工夫が必要です。バリアングルやチルト式液晶は不用意に動いたりするとイラッとくるので、使わないときにしっかり固定されてるのはいいのですが、この開くときの操作感はあまり良いとは思えません。

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 自撮りモードにしてみました。日本国内はともかく、海外を考えるとこの機能はもはや必須なはず。バリアングルで横に開くよりは、こうしたチルト式のほうが光軸が画面の中心線上にあって、フレーミングしやすいのではないかと思います。

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 ちなみに、製品名ロゴは液晶パネル上面の縁に小さく入ってるだけ。かなり控えめです。なお、上で操作感がイマイチと書いた液晶のチルト機構ですが、収納時のスマートさとボディとの一体感については完璧です。ボディの外形フォルムと綺麗に連続しており、変な出っ張りもなく、隙間を除けばまるでチルト機構などないかのよう。他の多くの可動液晶機構は、なぜかこのあたりの配慮が決定的に欠けてる製品が多すぎると思います。

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 ということで、液晶パネル収納時の背面はスッキリ。右手側ボタン操作にもいっさい干渉しません。「チルト機構が嫌いなら使うな」と、これなら言えるでしょう。ということで、もし開くときの多少の引っかかりが、この優れたデザインのトレードオフなのだとしたら、個人的には全然許せます。

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 UIデザイン含め一眼レフと揃えてあるよ、という図。ペンタックスでもKシリーズとQシリーズでUIは統一されていますし、当たり前のことではあります。でも、こうしてみると「なるほど!」と納得してしまう部分があります。メニュー等のUIだけでなく、例えば十字キー周辺のダイヤルはEOSユーザーにはとてもなじみ深い操作系なんだろうな、と気づきました。こういった操作系の親和性も含めて、確かにEOSのサブ機にはぴったりなのでしょう。

センサーとAF

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 マウントはもちろんEF-Mマウント。肝心のセンサーは新世代のものに変わっています。APS-C(キヤノンサイズ=約22.3×14.9mm)で24.2Mピクセル、像面位相差AFの仕組みは進化して「ハイブリッドCMOS AF III」となっているそうです。この新しいセンサーと新しい画像エンジンDIGIC 6の組み合わせによって、高速なAFを実現しているとのこと。

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 説明のなかでも分かりやすかったのがこちらのスライド。従来のハイブリッドCMOS AF IIは、大まかなピント合わせだけ行ってから、最後はコントラストAFで微調整をしていたのに対し、ハイブリッドCMOS AF IIIでは、条件が合えば位相差AFだけで一発合焦させられるそうです。そりゃ速いでしょうね。あとはレンズ駆動速度の勝負です。

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 その結果、ハイブリッドCMOS AF IIのEOS M2に対して、最大で3.8倍、コントラストAFのみのEOS Mに対しては最大で約6倍高速に御合焦する場合があるとか。なお、ライブビュー時のAFで一番速いのはEOS 70Dや 7D Mark IIが搭載するデュアルピクセルCMOSだそうです。このグラフはイメージとのことですが、概ね実力を現してるとすれば、その差はわずかなのかもしれません。

EVF

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 EOS M3で搭載された新機能のなかで、もう一つ大きなトピックと言えるのがEVFへの対応です。アクセサリシューの奥に接点が見えます。

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 EVFを取り付けるとこんな姿になります。見た目はやや頭でっかちですが、重量バランス等、手に持った感じは悪くありません。それにアイピースが光軸上にあるので、自然に覗くことが出来ます。

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 外付けEVFも背面液晶も三脚座も光軸に合わせてあるなど、さりげないようでいて、結構細部まで練られています。ファインダー位置については、一眼レフ派とレンジファインダー派によって変わってくるところで、好き嫌いの世界かもしれませんが、EOSシリーズの一機種として考えれば、当然こうなるべきなのでしょう。なお、EVF自体は従来からPowerShot G1 X MarkII用に発売されているEVF-DC1という製品がそのまま使えるそうです。

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 外付けEVFは「とりあえずできるよ」というおまけレベルではなく、意外に本格的に使えそうです。接眼部のチルトも出来るあたりはEVFの良さが生かされていますし、着脱が簡単でEVF自体も小型軽量なので、場面に合わせて付けたり外したりが簡単にできそう。何より老眼が進んできた「40代のおじさん」としては、やっぱり腕を伸ばして背面液晶を見るのはいろんな意味で辛いですから。

クリエイティブアシスト

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 40代の小うるさいおじさん達をターゲットにしている一方で、従来通り初心者向けなモードも搭載されています。シーンモードみたいなのに加えて、新たに搭載されたのが「クリエイティブアシスト」という機能。モードダイヤルに専用ポジションが割り当てられています。このモードにすると、絞りとかシャッタースピードとかホワイトバランスとか露出補正といった言葉を、すべて分かりやすい言葉に置き換えて、ユーザーと対話式で絵作りをしていくもの。

 いや、こういうの意味分かるんですけど、本当に使う人っているんだろうか?といつも疑問に思っています。これで覚えてしまうと、今度はさらに上のクラスのカメラが欲しくなったときに、ステップアップの障害となるだけじゃないかと。それでも裾野を少しでも広げる努力が必要だというのは分かります。でも、それってこういう方向なんだっけ?と思ってしまいます。

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 で、実は実機で「クリエイティブアシスト」をちょっとだけ試してみました。うん、中々良く出来てるんですよね。露出や絞りはともかく、色味や彩度なんかは、ホワイトバランスやカスタムイメージ(スミマセン、ペンタックス用語です。EOSにも相当する機能があると思います)をいじるより、直感的でしかも自然な仕上がりで圧倒的に簡単。
 用語のわかりやすさがどうということではなく、スマートフォンのカメラアプリ的な使い方との親和性という点では、この機能はアリなんだなと見直しました。

その他

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 そういえば、ストロボが内蔵されたのも旧機種からの大きな変更点です。高感度に強いデジタルになっても、内蔵ストロボのニーズは根強くあるのでしょう。ガイドナンバーはわずか5ですが、それなりに高くポップアップし、鏡胴のケラれを少しでも低減するためか、かなり前に飛び出します。

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 ボディ底面を見てみると、電池およびSDカードスロットの蓋と三脚座があるのはいいとして、NFCマークがプリントされています。そしてしつこいようですが、チルト液晶の処理の巧さがここからも見て取れます。

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 これはもちろんスマートフォンと連携するときに便利ですし、同時に発表された「K3PS5386.jpg
 ということで、従来機種のEOS M2との比較表。機能が相当に向上している分、大きさと重さも増えています。コンセプト的なものも含め、後継機と言うよりは上位機という位置づけなのでしょうか。ちなみにこの表を見ると電池が変わってしまっているようです。従来機種を持ってる人には、使い回しという点で気になる部分かと思います。

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 お約束の大きさ比較です。PENTAX Q7と並べてみるとこんな感じになります。やはり全体的に二回りは大きいです。が、センサーサイズはそれ以上に大きいわけで(^^; 従来のEOS M2と比べてもM3は大きく、重たくなっているそうですが、APS-Cのレンズ交換式カメラとして見れば、十分にコンパクトでちょっとしたカバンの隙間に入れておけそうです。

デザイン

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 製品説明に続き、デザインという観点でのお話も伺うことが出来ました。カメラの新商品に関するイベントはいくつか参加させて頂いたことがありますが、真っ正面からデザインについてお話があったのは、私が知る限りでは初めてです。内容は個人的にかなり興味深いものばかりだったのですが、ここまでの内容と重複することが多いので、超ダイジェストで少しだけ紹介します。

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 最初にも紹介したターゲットユーザー像。最初のやつよりもこちらの方が分かりやすいかもしれません。やや対象年齢層が広がっています。

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 それを具現化するためのコンセプトはこんな感じ。言葉にすると一気に分かりにくくなりました。まぁ、イメージであって理屈で理解する部分ではないのでしょう。

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 で、その抽象的なコンセプトを実物に落とし込んでいく上でのポイントです。これまで紹介したボディ各部にこれらの要素がしっかりと表れています。

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 特にホールディングを重視したと言う部分。確かに小さいながらも手にしやすいまとまったボディだと思います。

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 その結果生み出されたボディデザインは黄金比になっているそうです。と言うか、黄金比に合わせて作ったのではなく、上のような条件を合わせ込んでいくと、結果的に黄金比になるとか。鶏と卵みたいな話かもしれません。

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 ボディカラーは2色展開。アラフォー男性を対象にすると、やはり上品で上質なブラックが主流となりそうですが、使うシーンや女性へターゲットの裾野を広げると、やはり今時ホワイトボディも人気があるのでしょう。ホワイトボディの仕上げも、従来機種よりは少しアイボリー気味の落ち着いた感じになっています。

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 純正のケースとストラップもしっかり考えてデザインされているそうです。個人的にはケースってあまり好きではないのですが、純正オプションというのはここまで考えられているんだな、と少し驚きました。

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 と言うことで、製品についての理解が深まったところで、いよいよ実機で少し撮影してみたいと思います。

 長くなりましたので、それについては【後編】にて!

成熟した第三世代の"M":EOS M3を先行体験する【前編】」への2件のフィードバック

  1. kuwazii

    すごいですね記者発表会でしょうか?

  2. hisway306

    ProManiaX (id:kuwazii) さん、
    いえいえ、ブロガー向けのイベントです

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