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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

勝者も敗者もともに有終の美を飾る:F1 2014 最終戦 アブダビGP

 短いようで長かったF1シーズンもとうとう最終戦を迎えました。新興国サーキットの中ではひときわ豪華な設備を誇る、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットがその舞台です。日没直前にスタートし、チェッカーは日暮れ後に迎えるという、トワイライトレースもここならではの風景です。コースレイアウトは凡庸ですが、最終戦の舞台としてその雰囲気と演出は最高です。

 チャンピオンを争うのはメルセデスの二人。ハミルトンが大手をかけており、圧倒的に有利な状況ですが、まさかの大逆転が決して珍しいことではないF1においては、ロズベルグにも「数字上は」という以上に現実的なチャンスは残されていました。

 レースとしては、その結末は実にあっけないものでしたが、今シーズンの最終戦、チャンピオンの決し方としては十分にドラマチックで、しかも来シーズン以降に妙なわだかまりを残さない「有終の美」だったと言えると思います。

「最初のタイトルよりも大きな意味がある」 ルイス・ハミルトン/メルセデス

 守るものが一番多いハミルトンにとっては、ポイントランキングで見る優位さ以上に難しいレースだったと思います。予選では今回もやっぱりロズベルグに負けてしまい、2番グリッドからのスタート。しかし、それを今まで見たことがないくらい完璧に決めました。このレースは... というか、今シーズンのチャンピオンシップは、ほぼスタートの瞬間に決まったと言っても過言ではないでしょう。

 最後に猛追してきたマッサに対しても余裕を持って対応し、危なげない優勝。結局384ポイント獲得し、ロズベルグに67ポイントの差をつけて見事2回目のワールドチャンピオンを獲得しました。

 上で引用したコメントは半分はリップサービス、半分は本心ではないかと思います。2008年の最終戦は完全なアウェイのブラジルGPで、しかも酷いレース内容でやっともぎ取ったチャンピオンでした。世間的にもヒール役でしたし。

 しかし今年は圧倒的な強さを持ったマシンを駆り、チームメイトと正々堂々のクリーンな戦いの末に、勝ち取ったものであり、世間も素直に祝福しているはずです。実際の所、あまりハミルトンが好きではない私からしても、今年はハミルトンがチャンピオンを取るべくして取ったのであり、まさに王者にふさわしいと思います。

「最後まで走らせてくれ」 ニコ・ロズベルグ/メルセデス

 一方の敗者。ロズベルグは圧倒的なタイムでポールポジションを取ったものの、スタートに失敗し万事休す。それでもハミルトンに何かあれば... と後ろを猛追しますが、泣きっ面に蜂とはまさにこのこととばかりに、大事なところでマシンにトラブルが発生してしまいます。

 回生パワーを失ったマシンは、トップスピードが全く出なくなり、ハミルトンについていくどころか、どんどんとポジションを落としていきます。それでも最後まで諦めないロズベルグの姿に、ドライバーの本能を見た気がします。

 チャンピオンの可能性が潰えても、さらにはポイントすら取れなくなっても、スピードの出ないマシンをドライブし続け、最後はチームからのリタイア指令に対し、上に引用した言葉を返し、ハミルトンに周回遅れにされた後、14位でチェッカーを受けました。

 ベルギーでは接触を引き起こし、コース外では常に舌戦を仕掛けるなど、チャンピオンにかけるロズベルグの執念は、やり過ぎな面も見えましたが、最後にその執念の集大成を見せられ、ちょっとウルッと来てしまった人も多かったのではないかと思います。

 さらにレース後、緊張関係にあったわだかまりを流すかのように、ハミルトンを祝福したロズベルグは、本当に良いやつだなぁ、と見直しました。(テレビに映ることを分かってやった「ふり」かもしれませんが)

「この6年間は素晴らしい旅だった」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 4年連続王者はとうとうレッドブルを去ることになりました。あれだけ強かった王者が、今年は1勝も出来ず、チームメイトにも負けてしまったとは言え、見切りが少し早すぎるんじゃないの?と思います。

 しかし時代は流れ、物事は変わり、同じメンバーで、同じチームで栄光の時は再び来ないと言うことを一番知っていたのはベッテルなのでしょう。

 それにしてもフェラーリにはどんな魔力があるのでしょう。アロンソが上手くいかなかったフェラーリで、ベッテルは上手くやれるでしょうか? それはそれで楽しみです。

「誰もがうらやむような素晴らしい体験をした」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 彼もまた今年限りでフェラーリを去ります。最初のルノー時代以降、実力はあるのにマシンに恵まれず、フェラーリでも結局はタイトルを取ることは出来ませんでした。アロンソがただ不運なのか、あるいは彼自身に何か(ドライビング以外の点で)問題があるのか、よく分かりません。

 まだ正式発表されていませんが、恐らくマクラーレン・ホンダに乗ることになるのでしょう。キャリア最後の賭が、ホンダ共々成功すると良いのですが。

「これが最後かもしれない」 小林可夢偉/ケータハム

 チームの破産後、ゴタゴタがあって2戦欠場した後、まさかの復活で最終戦のグリッドにケータハムは2台のマシンを並べました。残念ながら小林はトラブルでリタイアしてしまいましたが、FP1から乗ってしっかりとセットアップをしてレースに臨んだのは本当に久しぶりだったと思います。

 それにしても小林可夢偉にとっては非常に難しいシーズンでした。ケータハムに初ポイントをもたらすという夢は、もしかしたら叶うかもと期待を持ってスタートしたシーズンは、途中から大きく歯車が狂いはじめ、「もうケータハムのシートなんて断ってしまえ!」と思ったこともありましたが、なんだかんだでこの最終戦でその姿を見られたことは、ファンにとっても本人にとっても、そしてケータハムにとっても良かったのだと思います。

 2年前に行われたKAMUI Supportの募金は無駄ではありませんでした。またやるなら是非協力したいと思いますが、そういうやり方ではダメなんでしょうね。ちゃんとしたマネージメントをつけ、日本企業にこだわらずスポンサーを得ることをしないと、もはや現代F1では生き残ることは出来ないでしょう。

 と言うことで、これで今シーズンも終了です。史上最大のレギュレーション変更はなんだかんだで上手くいったのではないでしょうか。ただ、開発制限がされた中で、ルノーとフェラーリのパワーユニットがどうなるのか心配です。特にルノーのダメさはどうにもなりません。ホンダには是非メルセデスの対抗勢力になって欲しいです。

 何人かのドライバーが去り、何人か新人が入ってくるかも知れません。そしてベッテルやアロンソのようにチームを移るドライバーもいます。さらに、数年前までルノーワークスだったロータスは、来年からメルセデス・パワーユニットを搭載します。それ以外にもいろんなことが新しくなり、いろんなことが起こることでしょう。政治的なごたごたも含めて、またr来シーズンも面白いレースを見せて欲しいと思います。そして、鈴鹿にも是非足を運びたいと思っています。

 また来年!