酔人日月抄

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F1を撮って分かったPENTAX K-3の動体追従性能と最適設定

 先日エントリーしたとおり、今年も鈴鹿サーキットでF1マシンの写真を撮ってきました。モータースポーツの撮影は特にカメラの動体追従性能、特にオートフォーカスの性能が非常に重要となります。中でもF1は4輪レースの最高峰ですので、撮影の難易度も最高峰です。
 しかし、巷の評価では私が使っているペンタックス一眼レフのAF性能は、2強メーカー製品(ニコンとキヤノン)に比べて2周遅れと言われていました。ところが、昨年発売されたK-3は大幅にAF周りが刷新され、少なくともその能書きを見る限りは、0.5周遅れくらいまで追いついたと思われます。

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 このエントリーは、そのPENTAX K-3で実際にF1を撮ってみた際のAF周りの設定や、実際使ってみた上での感想などの覚え書きです。

 K-3は旧機種に比べるとAF関連の機能が大幅にアップしています。設定パラメータはたくさんあって、最適な設定を探さなくてはいけません。現地でぶっつけ本番でいろいろ試してみましたが、何とか落としどころを見つけることが出来ました。

AFエリアの設定

 まずは基本設定から。AFモードとAFエリアの設定です。
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 AFのサーボモードは当然コンティニュアス(AF.Cモード)にします。そしてAFエリアは9点のセレクトエリア拡大か、もしくは1点固定というのが結論です。

 その他にK-3にはAFエリア選択に関してAUTOというモードがありますが、これはどこにピントが合うのか分からないので使えません。


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 F1のようなフォーミュラカーの場合、ドライバーのヘルメットにピントを合わせるのが基本となります。ついでに言えば流し撮りの中心点もヘルメットに置く必要があります。

 猛スピードで駆け抜けるF1マシンを望遠レンズで完璧に安定して追いかけられる腕があれば、AFエリアも1点固定にしておけば問題ないのですが、私のようなへっぽこの場合はそうはいきません。

 安定してドライバーのヘルメットを選択したAFエリアで追い切れなくても、セレクトエリア拡大にしておけば、ある程度まではピントが抜けることなく食いついてくれるはず... というのを期待しています。ちなみにさらに広く、25点あるいは27点エリア拡大も設定可能ですが、それは広すぎて思わぬ所にピントが抜けてしまう可能性が高くなります。

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 9点セレクトエリア拡大モード時のAFエリア配置はこんな感じになります。センターの赤いポイントを主に使うのですが、その部分のピント情報が怪しくなった場合、周辺8点のピント情報も補足として使用してピント合わせをするというモードです。

 手ぶれでフラフラとカメラが揺れても、この9点のどこかがヘルメットを捕らえていれば、結果的にピントが合う可能性が高くなります。

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 セレクトエリア拡大は「セレクト」と名前が付いているとおり、主として使うAFポイントを動かすことが出来ます。F1を撮る場合、基本的には画面中央にヘルメットを捕らえておけば良いのですが、場合によってはフレーミング的に画面の少し下にマシンを置きたいと思うことがあります(あるいはその逆、もしくは左右にずらしたい場合もあるかも)。


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 例えばこういう場合とか。セレクトエリア拡大では、中心ポイントを上下左右に自由に移動させることが出来ますので、こうして意図するフレーミングによって中心をずらして使うのもアリです。

 K-3の27ポイントAFセンサーは、画面全体に対するカバー範囲が狭い代わりに、AFポイント間の密度が高いので、こうしてちょっとした微調整が出来て便利です。

 しかし、場合によっては9点セレクトエリア拡大でも、ヘルメットではなくその前後にピントが合ってしまう場合があります。

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 例えばこういう場合、フレーミングが安定せず選択したAFポイントがヘルメットを外したりすると、AFが主要被写体を見誤り、しかもその状態を周囲のAFエリアが補完して保持しようとし、結果的に奥の縁石か、あるいは手前のフロントノーズやタイヤにピントがきてしまう、ということが時々起こります。こういう場合は覚悟を決めて1点固定にするしかありません。

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 ちなみに、なぜかこのフェラーリのアロンソの場合、ヘルメットよりもフロントノーズに描かれた"14"というカーナンバーの方にピントが行きやすい傾向があるような気がしました。カラーリングやコントラストのせいでしょうか。なので1点AFエリアのほうが確実ですが、やってくるマシンによってAFエリアモードを変えるというわけにもいきません。

 さらに、このカットのようにヘアピンの進入は速度が遅い代わりに、進路が大きく変わる上、ライン取りもドライバーによってまちまちで、追いかけ続けるのは非常に難しいです。

フォーカス優先かコマ速優先か?

 K-3ではコンティニュアスAFかつ連写モードにした場合、最初の1コマ目と、それに続く2コマ目以降の撮影それぞれについて、ピントが合ってることを優先するか、とにかくシャッターを切ってしまうかを選ぶことが出来ます。

 フォーカス優先にすれば、連写中でもピントが合ってることをいちいちカメラが確認するので、連写速度は落ちます。

 一方でレリーズ優先にすると、AFはレリーズ間のわずかな時間で最大限に動作するだけで、ピンぼけのままシャッターが切れてしまう可能性が高くなります。

 いろいろ試したり考えたのですが、結局のところ以下のように設定しました。

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 はい、1コマ目も2コマ目以降も「フォーカス優先」です。ドライブモードは当然のごとく高速連写(最高8.3コマ/秒)に設定して「数打ちゃ当たる戦法」を取るわけですが、当初は1コマ目はフォーカス優先、2コマ目以降はコマ速優先に設定してみました。

 しかしどうもこの設定だと、当初の懸念通りピンぼけカットがただ大量に記録されるだけに感じました。


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 例えばこんな感じで。これ、もちろんブレもあると思うのですが、それ以前に思い切りボケています。

 コマ速優先でも、もう少しちゃんと追従してくれるかと期待していたのですが、ファインダー像を見ていても明らかにボケてるうちにバシバシとシャッターが切れていくので、撮影中からして気分が良くありません。カード容量も勿体ないし、後からまともなカットを選ぶ手間も大変です。ならばと言うことで中速連写モード(4.5コマ/秒)だと微妙に遅すぎます。

 そこで試しに2コマ目以降もピント優先にしてみたのですが、連写速度は体感で5~6コマ/秒程度まで落ちる一方、さすがに合焦率は格段に上がります。最終的に得られるピントが合ったコマ数も、フォーカス優先にした方が多く得られるように感じます。なので結局両設定ともフォーカス優先にすることで落ち着きました。

AFホールド設定

 もう一つ、動体追従に関する設定として「AFホールド設定」というものがあります。AF追従の「粘り具合」を設定するものなのですが、動体追従中に何かが前を横切ったり、あるいは撮影者のホールディングが不安定で、一瞬AFポイントが後ろに抜けてしまったりした場合にも、それまで追従してきた履歴を重視して、突発的な変化を無視するというもの。

 先のAFポイントをヘルメットに合わせる話にも絡むわけで、当然へっぽこ撮影者としては、AFエリアが時折ヘルメットどころかマシンを大きく外すこともあるので、その際いちいちピント位置が行ったり来たりしないように「これはONするでしょ」ということで、ホールド強度を変えながらいろいろ試していたのですが、結果的にOFFが一番良いような気がしてきました(A^^;

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 AFのアルゴリズムがよく分からないのですが、なぜかホールドをONにすると、逆に動体追従性能が悪化するような気がするのです。

 最初にシャッターボタンを半押ししてピントを合わせた位置ををホールドして、その後の被写体が移動してもしばらくは様子を見る... なんてバカなことはないと思うのですが、どうにもそういう動作をしているような気がして仕方がありません。

 F1マシンは不規則な動きはしませんが、カメラに対する移動速度と方向(=像面でのピントの移動速度)は時々刻々変化していくものですので、もしかしたらこの機能との相性がそもそも良くないのかもしれません。


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 AFホールド設定も本来はこういう場合のためにあるのだと思いますが、少なくとも私が鈴鹿サーキットで経験した範囲ではOFFでも特に問題ないようです。

 ところでこのカット、ポールが歪んで写ってます。なんでしょうかこれ? フォーカルプレーンシャッターによる動体歪み? あるいはCMOSセンサーのローリングシャッター歪み? でもこのカットはシャッター速度は1/125secで撮影しているので、シャッター幕は全開してるはず。それでも先膜と後膜の動き次第でこうなるんでしたっけ? ちょっと不思議です。

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 また、近寄ってくるだけでなく、遠ざかっていくマシンを追いかける、という場合もあります。意外に難しいです。

 ヘアピンの外側から撮っていると次第に減速しながら近づいてきて、クリップ付近を境に今度はどんどん加速しながら遠ざかっていく... という動きになります。とはいえブランコほど周期は短くないので、特に追従性に問題はありません。

レンズ

 AFの動体追従性能という点では、ボディだけでなくレンズも関係してきます。特にペンタックスの場合、レンズによってAF駆動がボディ内モーターの場合と、レンズ内モーターの場合がありますし、レンズ内モーターもDCモーターと超音波モーター(SDM)の2種類があります。

 今回鈴鹿サーキットで使ったレンズはDA★300mmF4ED [IF] SDMで、レンズ内超音波モーター仕様です。ただしピントリングの回転角はAF前提のレンズにしては比較的大きく、超音波モータの回転速度も他社と比べるとそれほど速くはありません。とはいえペンタックスのレンズの中では動体追従には一番向いているレンズだと思います。

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 また、同時に純正の1.4倍テレコンバーターも組み合わせて使いました。AF速度、追従性能、あるいは画質という点でも、テレコンなしの場合と比べて、ほとんど差を感じません。特にこのDA★300mmとの相性は抜群で、このレンズのために作られたテレコンというのは本当だと思います。


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 撮影データにレンズ名には反映されてないのですが、末尾の焦点距離表示が"420mm"となってるものは、すべて純正1.4倍テレコン付きで撮ったものです。厳密にはAF性能にも差があるのかもしれませんが、私には感じられませんでした。

ちなみに手ぶれ補正問題について

 ちょっとAFの話からずれますが、流し撮りをする場合に手ぶれ補正をどうするか?は大きな問題です。流し撮りに対応しているカメラやレンズなら問題はありません。しかしペンタックスのカメラに搭載されたSR機能は、どうも流し撮りに対応していないようなのです。


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 サーキットにおける流し撮りでは、望遠レンズでわりと遅めのシャッターを切るので、縦方向だけでも補正してくれると助かるのですが、横方向の補正が流し撮りに対応していない場合、カメラを振ってる動きも補正しようとして、余計にブレてしまう可能性があります。

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 しかし、流し撮りは横方向にだけカメラを振るとは限りません。コースとの位置関係によっては、斜め方向や縦方向にカメラを振る場合もあります。そうなると単純に横方向の補正だけOFFすれば良いことにはなりません。

 なので今回は思い切って手ぶれ補正はOFFで撮りました。ちゃんと比較をしていないのですが、感覚的にもOFFのほうが純粋に私の腕を反映しているような気がします。つまり、ONのままだと撮影時点で「完璧に決まった!」と思った場合でも、実際には変にぶれていることがある一方で、OFFだと撮影時の感覚と結果は概ね一致しています。

総評

 さて、色々だらだらと書いてきましたが、今回K-3でF1を撮った約6,000カットの中で、ピントに関する歩留まりはざっくりで約7割(主に撮影者要因により意図してない場所ながらピントが合ってるものも含めて)くらいでした。過去に同様にF1撮影で使ったことのある、K-7,K-5あるいはK-30に比べると、OKカットが圧倒的に増えた一方で、明らかなピンぼけカットも同時に増えたというのが実感としてあります。

 実は撮影中、コマ速優先でAFがついてこれないと分かったとき、K-3も期待ほどではなかったかな、と少し落ち込んでいました。でも、これまでのK-5やK-30ではフォーカス優先で秒間5コマもシャッターが切れなかったわけで、K-3のAF性能は従来機種に比べて大幅に進歩はしたことは認めます(もちろん当社比の話)。でも、よりいっそうの向上を期待したいところです。

 今はまだ2強のカメラのAF性能を知らないでいるので、「まぁこんなものか」と満足していますが、例えば先日ちょっとだけ体験したキヤノンのEOS 7D Mark IIとか使うとどれだけ撮れるんだろう?と思ってしまいます。それを体験したら、もしかしたらもう戻れないのかも。少なくとも動体撮影においては。

 とはいえ、約7割のピントは合っているカットの大半は、手ブレ(流し撮り失敗)によって箸にも棒にもかからない残念な写真にになってしまっているという現実があります。なので仮にAFが完璧であったとしても、きっと最終的なOKカットの歩留まりは劇的に変わらないのでしょう。

 つまり、お前にはK-3のAF動体追従性能をあれこれ言う資格はない... と。はい、精進したいと思います(A^^;;;

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