酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

メルセデス激突:F1 2014 第12戦 ベルギーGP

 3週間の夏休みを経てF1シーズンが再開されました。後半戦最初のレースはベルギーGP。レイアウト的にも天候などの面でも難コースとして有名なスパ・フランコルシャン・サーキットがその舞台です。
 シケイン形状の山登り、オールージュはテレビで見るよりも実際はずっと急坂だそうですが、そこを全開で駆け抜けるF1マシンの姿は、シーズン通してF1の一つの風物詩でもあります。
 過去このサーキットではファンの記憶に残る、たくさんの名勝負、事件が起きました。それはこのコース特性が引き起こすことでもあり、そしてチャンピオンシップの方向性が見えてくる微妙な時期に行われることも関係しているでしょう。

 過去の例に倣い、ということではないと思いますが、今年のレースでも事件は起きました。

 その事件は、ある意味誰もが「起こるのは時間の問題」と思っていた、メルセデス2台の同士討ちです。

「悪い1日だった」 ニコ・ロズベルグ/メルセデス

 オープニングラップは、心配された1コーナーでの混乱こそなかったものの、激しく順位が入れ替わる展開で、早くも波乱を予感させるには十分でした。

 スタートで失敗したロズベルグは一時3位に下がりますが、ベッテルがミスをしてすぐにハミルトンの後ろにつけます。そしてDRSもまだ使えない、わずか2周目に事件は起きました。

 ケメルストレートを駆け抜け、レ・コームのシケインで、ロズベルグはハミルトンに近づきすぎ、追突します。ロズベルグのフロントウィングはエンドプレートが壊れただけで済みましたが、ハミルトンの左リアタイヤはパンクしてしまいます。二人の対決という意味では、ここで決着がついてしまいます。

 ロズベルグにとっての後のレースは、ほとんど消化試合のようなもの。優勝を逃したことを悔やんでいるようですが、あの事件の後で2位に入ったなら上出来でしょう。

 表彰台ではロズベルグにブーイングが飛び、その後もロズベルグを非難するメディアが多数あります。しかし国際映像を見ていただけの私個人の感想では「そんなにロズベルグが悪いのか?」と思います。

 レーシングアクシデントなのは間違いないとして、本当に不運な接触の域をでいていないように思え、ロズベルグの動きに何か悪意があったとも、重大な過失があったようにも思えません。

 単にハミルトンのトリッキーなブロックラインに対応できなかっただけのように思えます。いや、それがチャンピオンを争うドライバーとしては致命的な過失と言えばそうなのでしょう。

 いずれにしろ、ロズベルグは完全にハミルトンの後ろにいて、ライン取りにしろ何にしろ100%の優先権はハミルトンにあったのは確かです。なので「そんなつもりはなかった」以上の弁明は出来ないし、実際していないようです。

 レース後、表彰台に至るまでの不機嫌が、観客のブーイングによるものなのか、その後行われるハミルトンやチームとの話し合いにうんざりしているのか、優勝できなかったことにガッカリしているのか、気になりました。彼のコメントを読んでいると後者のような気がして、そうだとしたら意外に肝が据わってるな、と感じます。

 しかしそんなに勝ちたいなら、時には慎重さも必要でしょう。

「何をやってもうまくいかない日だった」 ルイス・ハミルトン/メルセデス

 そして追突された方。ハミルトンは最近のレースでこのコメントを残すことが多いような気がします。スッキリ勝ったのはいつのことだったでしょうか?

 予選で負けてもスタートで取り返し、有利な立場でロズベルグの一騎打ちに持ち込んだはずでしたが、2周目で全て露と消え去りました。

 ハミルトンの精神面を考えても、その後のレース続行のほとんどは無意味でした。セーフティカーが入ればポイントの可能性がある、というのは一理ありますが、スパはあまりそういうことが起こるコースではありません。雨が降れば何かが変わるかも? 確かにしばらく様子を見るのは当然としても、リタイアを決断するまでにあまりにも長い時間をかけすぎたように思います。ハミルトンが言うように、エンジンのライフを縮めただけです。

 アグレッシブで自己主張が強く、勝ちの味を知っていて依然として高いモチベーションを持ち、しかし感情的な浮き沈みが大きくて、服従することを知らないハミルトンは、その強さよりも危うさが全面に出てしまっているようです。

「僕はこのペースをだいたい維持できると思うと答えた」 ダニエル・リカルド/レッドブル

 このコメントには前段があって、レース終盤に無線でエンジニアから「11周残っていると思うが、タイヤは最後までもつかな?」と問われた時に彼が答えた言葉です。

 この質問は実はほとんど同じタイミングでベッテルにも投げかけられました。しかしベッテルは「そんな判断はできない」と答えています。この違いが、今シーズンのレッドブルの二人のリザルトを明確に表しているようです。

 それはつまり、リカルドは今年のマシンとタイヤをしっかりとコントロールできていますが、ベッテルは依然として出来ていないことを如実に表しているわけですから。もちろん、ベッテルは今回、またもやマシントラブルで金曜日のセットアップが全く出来ていないことを酌量する必要はあります。

 休み前のハンガリーGPから連勝で、今季3勝目。特にここベルギーはレッドブル向きではない、と言われていましたが、メルセデスの同士討ちというチャンスを確実に拾いあげる力はさすが。過去の勝利は単なる運ではなく、ましてやマシンのおかげでもなく、確実に彼の実力によるものです。

 来シーズン以降、ルノーPUがまともにメルセデスと戦える状態になったときが、今から楽しみです。

 次はヨーロッパラウンド最終戦、フェラーリのお膝元、モンツァでイタリアGPが開催されます。