読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

トラブル勃発は強すぎるチームの宿命か?:F1 2014 第6戦 モナコGP

 F1のカレンダー中、何もかもが特別で例外だらけでありながら、一方で「伝統のレース」であり続けるモナコGP。レース内容も非常に面白かった一方で、トラック外でも色々気になる面白いことが起こり始めたようです。タイトルに「トラブルの予感」と書きましたが。ここでいう「トラブル」とはマシントラブルのことではありません。ドライバー同士、特にチャンピオンを争うトップドライバーの間に生じるトラブルのことです。元々親友であっても、あるいはお互い尊敬し合っていても、チャンピオンをかけたライバルとなった瞬間に、その関係はあっという間に(極控えめに言って)ギスギスしたものになることはF1界の常です。特にそれが同一チームで同一マシンに乗っていたりしたら、いっそうエキサイトすること間違いなしです。

 20年以上前にさかのぼれば、セナとプロストの諍いは有名ですし、その後もアロンソとハミルトン、そしてベッテルとウェバーなどなど、仲の悪いチームメイト同士というのはたくさんいました。シューマッハはチーム内外にたくさんの敵がいましたっけ。


 そして今年。開幕から圧倒的な強さを見せるメルセデスチームは、連勝を重ねるたびにこのトラブルの匂いが漂い始め、今回のモナコGPでは誰の目にも明らかなほど、二人のドライバーの間には溝が出来てしまったようです。いえ、今はまだ修復不可能とまでは言えません。次のレースでは二人はにこやかに談笑しているかも。でも、その次で何か起これば、さらにその次で...。そうなると事はより深刻なトラブルに発展して行くであろうことは明らかです。

 力が拮抗すればするほど、チャンピオン争いが白熱するほど、火種は増え、摩擦は大きくなります。何もなく終わるとは思えません。

「今夜のパーティが楽しみだ!」 ニコ・ロズベルグ/メルセデス

 さてそのパーティにはハミルトンは来たのでしょうか?そもそも呼んでないかも? 今シーズンでいえば開幕戦以来、5戦ぶりの優勝であり、ハミルトンとの直接対決では初勝利となりました。そして一方で去年もロズベルグはモナコで優勝しているので、2年連続と優勝でもあります。

 彼に絡んで物議を醸したのは予選Q3最後のオーバーラン事件です。「トラブル」はそこから始まったと言えなくもありません。他のレースなら「攻め過ぎて失敗したんだな」で片付けられるところでしたが、モナコの予選、しかも最終アタックの場面ででイエローフラッグの原因を作る行為は、徹底的怪しまれ、過去の事例に鑑み、ペナルティを食らってしまう可能性もありました。しかしテレメタリーなどに不審なデータはなく、単なるオーバーランと認められました。

 実際ロズベルグに(良くも悪くも)そういう才覚があるとは思えません。むしろ立場が逆だったなら話はもっとこじれたのではないかと想像してしまいます。そういう「いい人キャラ」がレーススチュワードの心象に影響したかどうかは知りませんが、結局の所、ポールポジションを奪った時点でレースは半分勝ったも同然となりました。そういう意味では、意図した、しないにかかわらず、あのオーバーランはロズベルグの勝利に大きく貢献したのは事実なのでしょう。

 これでポイントリーダーの座を奪い返したわけですが、この後はどうなることでしょうか? 一発の速さがあるハミルトンに勝つには、彼にとっては今後も予選が重要となるのではないかと思います。今後の奇策はあるのでしょうか?

「今回は僕の週末ではなかった」 ルイス・ハミルトン/メルセデス

 ロズベルグとは正反対に、チームメイトの後、2番グリッドからスタートした時点で、ほぼ彼の勝ちはなくなっていました。ロズベルグにトラブルが発生しない限りは。無線でグズグズ文句を言っていたようですが、同一チーム内で後を走ってる限り、ピットインの優先権が得られるはずはありません。しかも悪いことに、モナコGPではタイヤ戦略の幅も殆どなく、真っ当に行けばタイヤ交換は1回でほぼきまりです。

 これでは戦略を変える余地もなく、アンダーカットも出来ず、かといって多少の腕の差はあっても、同一マシンではコース上でオーバーテイクすることはほぼ不可能。そのイライラを声と顔に出すハミルトンの不機嫌さは、見ていて可笑しく思えてくるほどでした。

 レース後も憮然とした態度を隠すことなく顕わにしつつも、コメントはなかなか優等生で無難なところです。予選から思いもかけないことで、思い通りに何一つ行かなかったのは可哀想ですが、それはチームのせいでも、ロズベルグのせいでも、誰のせいでもありません。かといってハミルトン自身が悪かったのか?といえばそうでもないわけで、実際の所は、引用した上のコメントにあるように、単に運が巡ってこなかった、と言うだけのことだと思います。それが分かっているからこそ、いっそう不機嫌になってしまうのではないかと思います。

 ファンにはなれそうにありませんが、なんだかその子供っぽいところが憎めなくて好きになってきました。しかし彼の子供っぽさと精神的なブレの大きさは、彼にとって一番の敵となるのではないかと思います。

「ビアンキのせいでポイントを逃した」 小林可夢偉/ケータハム

 今シーズン自身最高位の13位を獲得、しかもチームメイトのエリクソンはケータハムにとって過去最高位と同じ11位を獲得。結果だけ見ればそこそこのレースをしたように見えますが、実際の所完走わずか14台の荒れたレースだったわけで、エリクソンはともかく可夢偉の結果は定位置と言っても良いのかも知れません。それだけならまだしも、とりあえず目先のライバルで打ち負かさなくてはならないはずのマルシアのビアンキが9位に入りポイントを獲得してしまったことは、ケータハムにとっては大変なショックだったことでしょう。

 客観的に見ると、ビアンキの素晴らしい成績と、マルシアの初ポイントはF1にとってとてもいいニュースなはずですが、可夢偉ファンの私にとっては妬みの対象でしかありません。しかもそのビアンキは暴れん坊ぶりを発揮し、可夢偉のマシンを壊して前へ出て行ったというのですから。実際に可夢偉はレース序盤は順調にレースを進めており、ビアンキなどは眼中になくて何もなくてもポイント圏内に入りそうな位置でレースを進めていました。「たられば」を言えば、もしあそこでセーフティカーが入らなければ... もしあそこでビアンキが無茶をしなければ... もう少し上手くライコネンを前に出していれば... と悔やまれるシーンはいくつも思い浮かびます。そうでなければ可夢偉は7位か8位に入っていてもおかしくなかったのに。

 しかし最終的にマシンが壊されたにせよ、もしくはそれは単なる言い訳だったにせよ、結果的にマルシアとケータハムは、タイム差を見ても完敗で、チャンピオンシップでは大きく水をあけられてしまいました。わずか2ポイントとは言え、0ポイントとの差は、これまでの12位争いとは全く重みが違います。

 非常に出来の悪いルノーのパワーユニットも問題ですが、それ以上にマシンの素性は如何ともしがたい様子。しかし2010年のザウバー時代だって調子を上げてきたのは後半戦に入ってからでした。なんとか持ちこたえて、マルシアを上回る成績を今シーズン中に上げて欲しいものです。それが来季にもつながるはず... と信じています。

 次回はいったんヨーロッパを離れて飛び石の単独フライアウェイ戦、カナダGPです。モナコ同様に他にはない特徴を持った半ストリートサーキットですが、モナコと正反対に超高速レイアウトでもあります。トップ争いはもちろん、下位争いもどうなることか目が離せそうにありません。