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酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

チャンピオン経験者が盛り返した:F1 2014 第2戦 マレーシアGP

F1

 今シーズンの第2戦マレーシアGPがセパン・インターナショナル・サーキットで開催されました。このサーキットもすっかりおなじみとなってきました。マレーシアは自動車産業がありますし、F1だけのためにサーキットが急造された最近の新興国レースとは違って、他のカテゴリのレースも年間を通じて行われているらしく、アジアの名物サーキットしての地位をすっかり確立しているようです。それはF1においても同じです。

 長い2本のストレートとそれを結ぶヘアピン、1コーナーから連続するクロスラインのコーナーなど、レースの見所はたくさんある良いレイアウトです。しかしマレーシアの一番の敵は天候です。ただでさえ高温多湿でマシンにもドライバーにも、チーム関係者にも厳しい条件な上、いつスコールが降るか分かりません。しかもヨーロッパの我が儘で、一番スコールが降りやすい時間帯に重要なセッションが設定されてしまっています。

 しかし結局の所、今年のマレーシアGPは比較的安定した天候に恵まれたと言えるでしょう。フリー走行は3回ともドライ。レースも何とか持ちこたえて終始ドライ。大雨が降ったのは予選だけとなりました。しかし荒れた天候の割に予選グリッドは順当な結果になりました。

「1-2フィニッシュはめったに起きない」 ルイス・ハミルトン/メルセデス

 開幕戦オーストラリアの雪辱を果たすとばかりに、今回は完璧なポールtoウィンを決めました。信頼性を獲得してしまえば、ハミルトンとメルセデスの組み合わせにかなう人はいないかもしれない、と思わせるに十分な強さです。
 大雨の予選もきっちりとタイムを出し、レースでも序盤から終盤まで安定した走りでギャップを稼ぎます。ハミルトンは感情と本能で走るタイプのドライバーで、タイヤや燃費の管理が不得意そうなイメージがありますが、そんなことは微塵も感じさせないレースぶりでした。もちろんチャンピオン経験者であり、トップドライバーですからいつも本能だけで走ってるわけではありません。
 そしてメルセデスの用意したマシンも、昨年までのあちらを立てればこちらが立たない、気むずかしいマシンとは別物のようで、安定した速さを持っています。
 レギュレーション変更の裏の目的は大当たりし、これからはメルセデスの時代が来るのかも。メルセデスの1-2フィニッシュは今回が初めてですが、そのうち珍しくはなくなるかも知れません。その強さがレッドブルのように数シーズン続くか、かつてのブラウンGPのように1シーズン限りで終わるのか、もう少し成り行きを見る必要がありそうです。

「マシンが速いことがわかってよかった」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 ディフェンディング・チャンピオンは最悪の開幕戦の後、なんとか立て直してきたようです。前戦ではチームメイトの奮闘とは対照的に、新しいマシンに全く適応することが出来ないかに思えたベッテルでしたが、今回はまだまだマシンも含めて本来の調子とまでは行かないものの「メルセデスを除けば最速」のポジションまでは戻ってきました。セットアップの方向性が見えてきたのか、ドライブのコツが分かってきたのか、あるいは前戦は単なる不運だっただけなのか分かりませんが、信頼性とスピードの両方がそこそこのレベルにあることは、オーストラリアでリカルドが証明して見せたわけで、それを自らの手で確認できたことは手応えになったことでしょう。同時にマシンの問題点も見えてきたかも知れません。
 レッドブルがシーズン序盤に今ひとつなのは、それほど珍しいこととは思えません。これからニューウェイとベッテルが、ルノーのパワーユニットをどれだけ使いこなすことができるのか? 今やトップチームとなったレッドブルはこのままでは終わらないでしょうが、メルセデスを捕まえられるかどうかは未だ先行き不透明です。

「今日僕はたくさんの初めての経験をした」 小林可夢偉/ケータハム

 金曜から土曜にかけて、フリー走行ではまたもやトラブルに見舞われ続け、まともなテストも、タイヤの確認も、セットアップもできないまま臨んだレース。予選は雨の中でしたが特に波乱は起きず、ケータハムにすればほぼ定位置と言えるQ1落ち。しかしレースのスタートでは前回並みの飛び出しを見せ、後もう少しでポイント圏内が見えてくる位置でレースを続けます。
 前線は一つのコーナーもクリアすることなく終わったわけで、今回はコーナーを一つクリアするたびに、すべてが新しい未知の領域となりました。セットアップされてないマシンを走らせつつ、ピットの指示に従いパワーユニットの設定を常に調整し続け、燃費とタイヤをマネージし、2回ストップ作戦を敢行します。周回ペースもそこそこで、確かに現在のケータハムにとっては、ほとんどベストと言える結果を残しました。
 マルシアに完勝したことは大きいですし、後もう少しでザウバーと戦えそうというのも、望外の結果かもしれません。今シーズンの醜いマシンの中では一際醜いケータハムですが、そこそこ素性は良いのかも?と思わせ、今後、可夢偉の働き次第でもしかして...? と淡い期待が沸いてきました。

「Valtteri is faster than you」 フェリペ・マッサ/ウィリアムズ

 いえ、この言葉はマッサが発したものではなく、チームが無線を通じてマッサに向かって言ったものです。これはどこかで聞いたことあるセリフ... そう、2010年のドイツGPでマッサはトップを走行中に同じことを言われたことがあります。ただし相手は絶対的なNo.1ドライバー、アロンソでしたが。そのときは無言でラインを開けたマッサでしたが、今回は無視を決め込みました。2年目の若造に道を譲るなんて、一時はチャンピオンを手に仕掛けたベテランとしては、プライドが許さなかったのでしょうか。
 何という皮肉... あるいは残酷とさえ言えると思います。というのは、4年前にトップの座をアロンソに明け渡したときよりも明確に、今回はボッタスには道を譲るべき状況だったのですから。マッサのプライドによって、ウィリアムズはもぎ取れたかも知れない8ポイントの可能性を失ってしまいました。低迷が続いたウィリアムズにとっては何よりも欲しい数ポイントです。チームの怒りと落胆はどれ程でしょうか。
 チームオーダー無視と言えば、昨年もここマレーシアで発生しました。チームの優先事項とドライバーの優先事項は必ずしも一致しません。昨年私はチームオーダー無視をしたベッテルを支持しましたが、今回はマッサに哀れみを感じてしまいます。幸いウィリアムズは今年そこそこ競争力がありそうなので、チームとも上手くやって良いシーズンを過ごして欲しいと思います。

 ということで、ハミルトンもベッテルも、そしてバトンもアロンソも、チャンピオン経験者が若手に対してそれなりの結果を出した、ある意味順当なレースでした。と言っても、元チャンピオンの中ではライコネンだけが、序盤の接触の影響でドタバタなレースとなってしまいましたけど。フェラーリはどうもピリッとしません。今後が心配です。

 次戦は早くも今週末、ナイトレース化されたバーレーンGPです。というか、通常のヨーロッパのレースよりも、遅い時間帯になってしまいました。迷惑なことこの上ないです。新興国に力を入れているなら、アジア時間にも配慮して欲しいものです。