酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2013年F1第18戦 アメリカGP

 オースチンに建設された新サーキットで復活したアメリカGPは今年で2年目ですが、昨年はいろいろあって結局観戦しないままになってしまいました。なので、私個人的にはこのサーキットの景色を見る(もちろんテレビを通して)のは初めてです。これまた典型的なティルケデザインですが、1コーナーに向かって凄い勢いで駆け上っていく坂が特徴です。

 今回のレースの見所は、コンストラクターズ・チャンピオンシップ2位争いの行方と、ベッテルの連勝記録です。前者はメルセデスとフェラーリが接戦を演じ、可能性としてはロータスもまだ権利を持っています。後者については既に前回のレースで、シーズン中7連勝を達成しミハエル・シューマッハの記録に並びましたが、その記録を伸ばして前人未踏の領域に足を踏み入れるのかどうか?がかかっています。

 アメリカGPに持ち込まれたタイヤはハードとミディアムという固いコンパウンド。これは鈴鹿で使われたタイヤと同じです。新しくてスムーズな路面ですが天候に左右されやすく、気温と日照によってセッションごとにめまぐるしく状況が変わるグランプリウィークとなりました。

 曇りで気温の下がった土曜日の予選に対し、日曜日の決勝は正反対のコンディション。タイヤに熱が入りにくいフェラーリと、タイヤに厳しいメルセデスはそのコンディション変化に振り回されましたが、レッドブルだけはそんなドタバタもどこ吹く風で終始安定しており、マシンのポテンシャルに違いを見せつけます。

「今日のことを覚えておこう」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 今回も圧巻のレースでトップを守りきりました。と言っても、タイヤやマシンの調子を気遣いながら、彼は彼なりにレースを戦っていました。しかしベッテルにとって、このアメリカGPのハイライトは決勝ではなく、予選にあったと思います。誰もがウェバーのポールポジション獲得を確信したQ3の最後、0.2秒遅れでセクター2を通過したベッテルは、なんとセクター3だけで0.5秒稼ぎだし、大逆転ポールポジションを獲得しました。

 あまりにも強すぎるチャンピオン。しかしベッテルはこの好調がいつまでも続くとは思っていないようです。いつかはやってくる不調の時に備え「絶好調を味わっている今を後々まで良く覚えてこう」と、チェッカー後の無線でチームに向かって言いました。これが偽らざる今の気持ちなのだと思います。この結果を素直に喜ぶ気持ちと、登ったピークが高いだけに転落を恐れる気持ちがごちゃ混ぜになっているのではないかと思います。

 ということで、ベッテルはとうとう8連勝を達成しました。何度か言いましたがエンジンの絶対的なアドバンテージもなく、完全なNo.1待遇も受けない中でのこの記録は本当に素晴らしいものです。次のレースでは9連勝がかかっています。

「僕らが今レッドブルに次いで2番目に素晴らしいチームであることは明らかだ」ロマン・グロージャン/ロータス

 最近めきめきと頭角を現し、今や表彰台の常連となってきたグロージャンは、今回のレースで唯一レッドブルに挑戦する力があったドライバーです。そして実際にスタートでラインの優位性を生かしウェバーを抜き去ると、そのまま押さえきって2位を獲得しました。

 多くの人が繰り返し言うように、昨年のとっちらかりぶりとは雲泥の差、成長ぶりが著しいドライバーです。接近戦も安心して見ていられるようになりました。来年は恐らくロータスのエースドライバーとなるはずです。将来が楽しみな一人で、あとはいつ優勝するか?がポイント。ベッテルの歯車が狂い始めたとき、そのときも2位につけていることが出来ればひょっとするかもしれません。

 彼のコメントにあるとおり、レッドブルに次いでマシンに力があるのは、メルセデスかこのロータスか?というのが本当のところでしょう。ここ数戦では明らかにロータスに分がありそうです。ただしシーズンを通して2台揃って結果を出す一貫性がなかったため、コンストラクターズ・ランキングでは4位に沈んでしまっています。また、チームの財政基盤が弱いのも心配なポイントです。

「僕にとってはささやかな褒美だ」フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 シンガポールGP以降、表彰台に上ることもできなくなってしまったアロンソですが、今回のレースでドライバーズ・ランキングの2位を確定させました。レッドブルには遙かに及ばず、メルセデスやロータスにも後塵を拝するフェラーリのマシンで、これだけの成績を残せたのは、アロンソの実力が並大抵ではないことの証拠です。

 一発の早さを競う予選ではもはやマシンの力の差は如何ともしがたいところですが、レースの上手さは際立ちます。またトラック上での勝負強さもそう。今回もファイナルラップでのヒュルケンベルグのアタックを冷静に、巧みにかわし5位を守り切りました。

 考えてみれば、アロンソはチームとマシンに恵まれないドライバーです。チャンピオンを獲得した最初のルノー時代が最盛期で、その後は移籍にことごとく失敗しているように思えてなりません。本来ならベッテルと同じだけの結果を出せるポテンシャルのあるドライバーなのに。

 しかしフェラーリがダメならどこへ行けば良いのか? レッドブルは無理? いや、F1のことだから何があるかはわかりません。しかしベッテルが言うように、レッドブルの黄金期が来年も続くとは限らないのが難しいところです。

「週末を通してうまくいった」 バルテッリ・ボッタス/ウィリアムズ

 いったい彼に何があったのか? チームメイトのマルドナドはいつも通りの下位に沈み、あまりに好調なボッタスに嫉妬してチームに暴言を吐くほどでした。マシンの差がないとすれば、タイヤとマシンとコースの組み合わせがボッタスのドライビングにうまくはまったと言うことなのでしょう。

 予選セッションでは常に上位のタイムを叩き出し、上位陣を攪乱します。予選で8位、決勝も8位は今のウィリアムズの状況を考えれば立派です。ドライレースで尋常の勝負をしてメルセデスやマクラーレンの間に割って入ったのですから。

 これがまぐれなのかどうか、来年が楽しみです。チームメイトとしてもマルドナドよりマッサの方が良いかもしれません。ウィリアムズももう少し復調して欲しいものです。

 さて、長かった今年のF1シーズンもいよいよ今週末のブラジルGPが最終戦です。ベッテルの連勝記録がかかり、ウェバーのラストランであり、そしてコンストラクターズ・ランキング2位が決まるレースです。