酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2013年F1第14戦 韓国GP

 F1シーズン終盤のアジアラウンドは、華やかなシンガポールから一転、韓国の寂れた田舎町へ移動しました。なんだかんだ言って今年で4年目となる韓国GPですが、心配された台風直撃もなく、どんより曇ってはいたものの雨が降ることもなく、何とか無事に開催にこぎ着けました。しかし相変わらず観客は入らず、ピットアウトレーンは改修されたものの、運営は世界最高峰の国際レースを行うには心許ない状態です。
 サーキット自体は新しいだけあって、コース幅も広く、長いストレートを持つ超高速セクションから、くねくねの低速テクニカルセクションまで、これでもかと言うほどいろいろな要素が詰め込まれています。しかし結局はタイヤネックであることに変わりはなく、見ていてすごく面白いかというと、風景の単調さも合わせて今ひとつなところ。周辺の雰囲気含め盛り上がりに欠けるという点では中国GP並かもしれません。

 しかしながら今回の韓国GPは、ドライレースにもかかわらずセーフティカーが2回も入るなど、波乱に次ぐ波乱のために目が離せないレース内容となりました。それはコース幅が広くラインの自由度が高く、クロスするコーナーが多いため、時と場合によってはコーナーに向けて4つ巴で突っ込んでいくなど、まるでカートのレースのような戦い方が見られました。それは最新設計のコース特性のおかげという気もします。少なくともオールドコースでは見られない激しいバトルが繰り広げられ、そういう点では観戦していて面白いレースでした。

「ミラーにたくさんのマシンが見え鬱陶しかった」 ニコ・ヒュルケンベルグ/ザウバー

 今回の韓国GPのMVPはなんと言ってもヒュルケンベルグです。国際映像もかなり長い時間彼を映し出していました。予選からザウバーのパフォーマンスには今までと違う力強さが見え隠れしていましたが、レースではスタートから最後まで、常に上位争いに加わっていました。2回目のセーフティカー後の最終スティントでは、ハミルトンとアロンソを従えての走行。どうせ、そのうち抜かれてしまうに違いないと、誰もが... いや、私はそう思っていましたが、なんとそのまま最後まで2人の元チャンピオンを押さえきってしまいました。
 特にハミルトンの猛攻に対する防御は見事で、1コーナーでDRSを使ってインを刺された後も、冷静にクロスラインを取り、トラクションの良さと最高速の延びを生かしてDRSを使い始める前に抜き返してしまいます。ハミルトンはその後同じ手を二度と使わなくなりました。

 トラクションの重要性というのを改めて見せつけられたレースぶりでした。そしてそれをヒュルケンベルグは最大限に生かしてレースを戦い、結局フェラーリもメルセデスも完璧に押さえ込んで4位という素晴らしい成績を上げました。後半になって急に力を付けてきたザウバーですが、今週の鈴鹿ではどんなレースをするでしょうか? まさしく昨年の小林可夢偉の幻が見られるかもしれません。

「日本GPが一番好き」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 今回のレースも完璧な勝利。一度も先頭を譲ることなく完全勝利を果たしました。しかしシンガポールの時ほど後続とのギャップを稼ぐことは出来ませんでした。もちろん2回のセーフティカーが影響しているわけですが、それも難なく乗り切ったので問題はありません。彼は彼なりにタイヤと戦っていたようです。スピードはそれほどないけど、コーナリングが速くトラクションもあるレッドブルのマシンとベッテルの組み合わせは、完璧に機能しており一点のミスもありません。
 奇しくも表彰台インタビューでジョニー・ハーバートの質問に答えたベッテルは、「鈴鹿は世界最高のトラックであり、一番好きなコースで、クレイジーなファンがたくさんいて、今から楽しみで仕方がない」と嬉しそうに答えていました。それはリップサービスではありません。そこは韓国GPの表彰台なのですから。そしてもちろん、誰でもそう思っているからジョニー・ハーバートもこの質問をしたわけです。

 もちろんベッテルが鈴鹿を愛しているのは、成績を出しているからでもあります。レッドブルのマシン特性、ベッテルの絶好調ぶりと相性の良さからして、彼の勢いを止められるのは、予期せぬトラブルだけという気がします。

「次のレースまでにチェックしなければならないだろう」 マーク・ウェバー/レッドブル

 今回最も運がなかったドライバーと言えばウェバーに違いありません。シンガポールGPで受けたペナルティによる10グリッド降格は織り込み済みで、オーバーテイク重視のセッティングで果敢に攻めていた前半はまだしも、2回目のタイヤ交換を終えてマクラーレンのペレスの後に出たところから、不運の歯車は急速に回り始めます。ペレスのタイヤトレッドがはがれ、パーツを踏んでしまったのも、そのためにオプションタイヤに交換せざるを得なくなってしまったのも、その後スーティルと接触し、マシンから火が出てリタイヤしてしまったのも、レーシング・アクシデントと言える範囲ではあります。
 しかしウェバーの不運はそれでは終わらず、火が出たマシンはしばらく放置されて燃え広がってしまった末に、エンジンやギアボックスにとって大敵の粉末消火器を掛けられてしまいました。それらは不慣れでレベルの低いコース・マーシャルのせいです。おかげでウェバーのマシンはそのまま復旧できるのかどうかが分かりません。なにしろ日本GPは今週ですので時間がないのです。韓国GPの不運のツケが鈴鹿まで及んでしまうとすれば、流石に可哀想になります。あまり好きなドライバーではないですが、今シーズン限りで引退するわけですし、少しくらいベッテルにガツンと借りを返して(逆か?)欲しいものです。

「チームはフェアプレイの理念で僕らに争わせることにした」 ロマン・グロージャン/ロータス

 ここ数戦は予選のみならずレースでも良いパフォーマンスを見せていながら結果に結びついていませんでした。今回のレースは比較的上手くいった方でしょう。フェラーリもメルセデスも寄せ付けず、3位表彰台に入りました。ベッテルは異次元としても、今ひとつグロージャン的にスッキリしないのは、今回もまたチームメイトのライコネンに負けてしまったことでしょう。スターティング・グリッドは大幅に差があったにもかかわらず、1回目のセーフティカー後の1コーナーで、ズバッとインを刺されてしまいました。
 その後、最終スティントでは古いタイヤを履くライコネンに対して肉薄します。チームからも無線で「オーバーテイクしろ!」と檄が飛びます。シーズン序盤では考えられなかった無線内容です。しかしコース上のバトルではとうとうライコネンには敵いませんでした。
 すごく良いレースをして、誰もが彼の速さを認め、結果も出せることを証明して見せたのに、今ひとつスッキリしないのはどうしてもレースでチームメイトに勝てないせいではないかと思えます。グロージャンが同じマシンでライコネンと戦えるのも、残り数戦です。昨年の鈴鹿は2コーナーで終わってしまいましたが、今年はちゃんとレースをする姿を見せて欲しいところです。

 ということで、いよいよ今週末には第15戦の日本GPが鈴鹿サーキットで開催されます。既にマシンや機材、そしてドライバーはじめ関係者は日本に到着しているそうです。私も例年通り、金曜日から鈴鹿へ出かけ、生のF1の姿と音を体験してきたいと思います。台風が過ぎ去った後で気温が高いという予報が出ていますが、昨年、一昨年と同様に何とか雨が降らずに、すべてドライセッションになってくれればと思います。