酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

宝引きさわぎ

宝引きさわぎ (ハルキ文庫 さ 8-37 時代小説文庫 鎌倉河岸捕物控 20の巻)

宝引きさわぎ (ハルキ文庫 さ 8-37 時代小説文庫 鎌倉河岸捕物控 20の巻)

 奉公人たちの藪入りの時期、金座裏では、亮吉の考案により大店などから頂いた品々を宝引きで分ける遊びを楽しんでいた。そんななか、魚河岸の藤吉が血相を変えて金座裏にやってきた。魚河岸仲間と料理茶屋で宴会の途中、場を盛り上げようと宝引きの景品に名乗りを上げた芸者の小夏が、何ものかによって殺されたというのだ。小夏は、隣の間に行ったわずかな時間に盆の窪をひと突きされていた。手がかりは、小夏が咥えていた手拭の切れ端。宗五郎と政次たちは、それぞれ聞き込みに走るが、思わぬ壁にぶち当たってしまい・・・。政次の機転によって窮地を脱することはできるのか? 書き下ろし大人気シリーズ、記念すべき第二十巻。

Amazon.co.jp: 宝引きさわぎ (ハルキ文庫 さ 8-37 時代小説文庫 鎌倉河岸捕物控 20の巻): 佐伯 泰英: 本

 佐伯泰英さんによる「鎌倉河岸捕物控」シリーズの第二十巻です。思えばこのシリーズも長く続いているものです。脱落することなくここまで読み進めて来られたのも、発刊ペースが早すぎず遅すぎずちょうどいいからだと思います。いえ、もちろんそれ以上に「面白いから」であるはずなのですが、以前からどうもこのシリーズの人物設定にはモヤモヤしたものを引きずっています。

 とはいえ、既成事実を重ねてきたことでその辺もだんだん気にならなくなってきました。「その辺」というのはつまり金座裏の十代目に収まろうとしている主人公、政次があまりにも完全無欠すぎて、かえってヒーローとして見られないという点です。過去感想文には必ずこのことを書いてきましたが、それも今回で最後にしたいと思います。いつまで経ってもこの点は変わらないし、今更変わられても困るので。

 今作は金座裏を取り巻く人間模様にはさしたるドラマはなく、かなり純粋な捕り物となっています。表題にある「宝引き」とはつまりくじ引きのこと。お大尽から庶民までが遊べるちょっとした賭け事。お正月のとある宴席の宝引き中に起きた殺人事件の謎の解明がこの第二十巻の主たるストーリーです。淡々と事件の謎解きが進行して最後はもちろんめでたしめでたし。事件の謎解きとしてもなかなか面白いお話しではありました。

 実はこの本を読み終わって1週間ほど経っているのですが、事件そのものについてはすでにどんな内容だったか忘れつつあります。その一方で政次や宗二郎の細かい部分での立ち回り、亮吉の相変わらずな行動や言動などは結構印象に残っていたり。私としてはやはりこのシリーズは、純粋な捕物と言うよりは、金座裏の人々の人間ドラマとして読んでいるのでしょう。そういう点ではちょっと物足りないとも言えます。

 ですが、そこはさすが佐伯さん、ただの捕り物だけでは終わりませんでした。事件が解決した後もなぜかページは1/5ほども残っていたのです。いったい何がこの後続くのだろう?と思って読み進めていくと、その最後の1/5ではまた別の事件が持ち上がります。それも私が期待するような、金座裏を取り巻く人々に関わる重大な一件。これは今後のシリーズ展開への布石とも言えるのでしょう。話の展開がやや強引と言えば強引ですが、そこは佐伯作品ですのでこれで良いのです。多分。

 二十巻を過ぎたところでやや飽きが来る時期でもあり、いつまで読み続ける気力を保てるか実はあまり自信がありません。でも、私としては亮吉の将来が一番心配なのです。彼にも大きな転機が来ることを期待したいと思います。それが分からないうちは止められないはずです。

 【お気に入り度:★★☆☆☆】