酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

Kenko テレプラスMC4 DG

 現在のペンタックスKマウントのレンズラインアップにはAFが使えるテレコンバーターがありません。いえ、MFレンズもAF化するという「F AFアダプター 1.7X」はあります(しかもこれは他社にはない製品です)が、いわゆる普通のテレコンバーターはMF時代のものがカタログの隅っこに残っているだけです。しかし、サードパーティ製品を探せばKAFマウント対応のテレコンバーターは存在しています。

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 ケンコーのテレプラスと言えば、コストパフォーマンスがかなり良いテレコンバーターとして、フィルム時代からお馴染みのブランドです。KAFマウント用にはデジタル対応となったDGシリーズのMC4(1.4倍)とMC7(2倍)があります。

外観と基本仕様

 ということでこれ、ちょっと衝動買いに近いのですが、大手量販店でガラスケースの奥に見つけたので、1.4倍のMC4を買ってきてしまいました。実売価格は概ね1万円を切ります。パッケージも箱入りではなくて、プラスチックパック入り。気軽に買えてしまうのです。

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 レンズ取り付け側はこんな感じ。光学系は4群4枚構成で、重量は100gと軽量。厚みは18mmでコンパクト。マウントはKAFマウントで、機械的な連動レバー類やマウント面の電気接点、ボディ側からのAF駆動カプラーがあります。ただしパワーズームもしくはレンズ内AFモーター用の電源供給接点はありません。設計上は50mmレンズを基準とした汎用コンバーターですが、前玉(って言うのかな?)は出っ張っていないので、取り付け可能レンズにも制限はないようです。そしてイメージサークル的にはフルサイズに対応しています。

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 カメラへの取り付け側です。こちらも電気接点、機械連動機構など一通り揃っています。この写真では、パワーズームもしくはレンズ内AFモーター用の電源供給接点があるように見えますが、実際にはただのダミーです。
 外装は普通にプラスチック。マウントはもちろん金属製で、レンズまわりも反射防止のためか細かい溝が掘られていたりして、作りはしっかりしているようです。

制限事項

 このテレプラスMC4を使うに当たっては、大きな制限事項というか注意点が一つあります。というのは、レンズ情報はオリジナルのレンズの情報がそのまま素通りするだけで、テレコンバーターを介したことによる補正はされない、ということです。つまりFA50mmF1.4をこのテレコンバーターを介してカメラに取り付けたとすると、実質上70mmF2というレンズになるわけですが、この換算は電気的には行われず、カメラ側は相変わらず取り付けられたレンズは50mmF1.4と認識するのです。そのため、撮影した写真のExifにはオリジナルのレンズ情報がそのまま記録されます。

 ですのでこの場合、絞りを開放に設定するとカメラ側の表示は相変わらず"F1.4"となりますし、手ブレ補正も恐らく50mmレンズと思って補正を行っているはず。絞り値のずれは表示だけの問題らしく、露出計の表示やAEなどにはあまり大きな影響はないようですが、手ブレ補正については効果が1/1.4に減ってしまうと思われます。

 いずれにしても、この点はそういうものだと思って使うしかありません。

使用できないレンズ

 で、テレコンバータといえば本当は望遠レンズで使う場合が多いかと思います。私の手持ちレンズの中ではDA★60-250mmF4EDを手っ取り早く350mmF5.6化できればなぁ、と思ったのですが、残念ながらこの組み合わせでは使えませんでした。取り付けは可能なのですがAFが動きません。
 DA★レンズはSDM内蔵ですが、実はKAF2マウントに対応していない古いボディでもAFが効くように、ボディモーター駆動用のカプラーも装備しているのです。MC4をつけることで勝手にそちらに切り替わるかと思ったのですが、無理でした。
 これは恐らく上記のレンズ情報の素通し問題と同じで、カメラ側はSDMが使えると思い込んでるのに、レンズ側では電源がきてないので動かない、という状況かと思われます。このレンズにMC4をつけた状態だと、ファインダー内にMF表示が不規則に点滅したりして、明らかにおかしな状態になります。

 さらに、私の手持ちのレンズの中ではSIGMA APO50-500mmF4.5-6.3も使えません。このレンズはAF駆動カプラーがないKAF3仕様ですので、そもそもAFを動かすことができないうえ、光学手ブレ補正ユニットにも電源が行かないので、手ぶれ補正が効かないだけではなく、補正用の光学ユニットが固定されないので、仮にAFを諦めたとしてもまともに写真は撮れないと思われます。

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 その他、私が持っているDAおよびFAシリーズのレンズとの組み合わせではAF共々使用することができます。ただし、DA L18-55mmF3.5-5.6の望遠端(F4.5以上?)では位相差AFはできないかもしれません。

簡易マクロ撮影に使う

 では何に使うのか?と言えば、最大撮影倍率を稼ぐ目的で使用することが出来ます。最短撮影距離は変わらないまま、焦点距離が1.4倍になるということは、よりマクロ効果が出るということになります。超簡易マクロとしてこれは使える場面がありそうです。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL, F5.6, 1/8sec, ISO400

 例えばDA35mmF2.4ALの最短撮影距離付近で撮るとこんな感じです。被写体はK-5の1/3ミニチュアマスコット。大きさが今ひとつつかみ辛いものでスミマセン。カタログ上の最短撮影距離は撮像面から30cmで、撮影倍率は0.17です。単焦点レンズはどれもこのくらいが精一杯ですが、もう少し寄りたい... と思うことが多いですよね?

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL + MC4, F5.6(実質F8), 0.3sec, ISO400

 これにMC4を使うと、最短撮影距離はそのままで焦点距離が35mm×1.4=49mmとなり、撮影倍率も1.4倍の0.24になります。撮影倍率0.24と言えば、"マクロ"と言うには程遠いですが、ズームレンズの簡易マクロ並のスペックにはなります。たいていのものはそれなりに大きく写すことが出来ます。ここまで来ればあとはトリミングでなんとでもなりそう。

 では、元々最大撮影倍率がそれなりに大きい、標準ズームに付けてみると、更にマクロレンズに近づくのではないか? ということでやってみました。

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PENTAX K-5, DA L18-55mm F3.5-5.6AL (55mm), F8, 1/8sec, ISO400

 私の手持ちレンズの中でもっとも撮影倍率が大きいDA L18-55mmF3.5-5.6で試してみます。まずはレンズ単体で撮るとこんな感じ。最短撮影距離はズーム全域で25cm、テレ端の最大撮影倍率は0.34です。DA35mmF2.4 + MC4よりも大きく写せるのです。特に切り替えなしでここまで行けるというのは素晴らしいです。
 が、このレンズ望遠端の最短撮影距離付近では、かなり絞らないと滲みが出てかなり解像感が失われてしまいます。ここに貼ったカットでは1段絞ったおかげでそれほどでもありませんが。

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PENTAX K-5, DA L18-55mm F3.5-5.6AL + MC4, F8(実質F11), 1/5sec, ISO400

 このDA L18-55mmにさらにMC4を挟んでみました。これで望遠端の最大撮影倍率は0.48。ほとんど1/2倍マクロです。このレンズと組み合わせるとテレ端の開放F値は事実上F8とかなり暗くなりますが、ライブビューを使えばAFも問題ありません。

ところで描写性能

 コンバーターレンズを使って心配なのは描写性能。ですが、もともとあまり期待して買ったものでもないので、子細にはチェックしていません。もちろんオリジナルレンズに比べて、それなりの劣化があるはずですが、思ったより悪くない、というのが正直なところ。向き不向きもあるかと思いますが、上に貼った作例の通り、撮影倍率を稼ぐ目的で近距離の撮影などをしている限りは、気になることはまずありません。

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PENTAX K-x, DA35mmF2.4AL + MC4, F5.6(実質F8), 1/125sec, ISO400

 一応、遠景も撮ってみました。カメラはK-x、レンズはDA35mmF2.4ALです。F値は表示で5.6に設定したので実質F8で、手持ちで撮っています。手ぶれ補正はON。APS-Cと言えども周辺部は怪しいことになっていますが、元々のレンズが優秀なこともあって、中心部はそこそこではないかと思います。期待度に寄りますが、通常の撮影用途には十分使える場合が多いのではないかと思います。

まとめ

 とはいえ、テレコンバータはやはり望遠レンズと組み合わせて焦点距離を稼ぐ、というのが王道の使い方ではないかと思います。その点このテレプラスを使っても、Kマウントの望遠系レンズでは多くの場合使えない、というのは残念なところ。望遠用途は諦めたほうが良さそうです。(幸い、最近発表されたKマウントレンズのロードマップには、"DA AF RC 1.4x"というのが載っていますので、これを当てにするしかありません)

 また、それ以外の標準系のレンズで使うのはどうかと言えば、リアコンバーターの付け外しは、レンズ交換以上に手間がかかるものですし、その利用価値は微妙なところ。35mm+MC4、あるいは50mm+MC4を使うくらいなら、色々な意味で最初から50mmかまたは70mmを持って行けば良い、という気がします。

 なので、やはり最短撮影距離付近で使用する場合に最大撮影倍率を稼ぐ目的で使うのが一番理にかなっていそう。同じ目的のためには、クロースアップレンズを使うという方法もありますが、フィルター径が違うと使い回せないのに対し、リアコンバーターならほとんどのレンズでも同じように使用できます。そこに1万円の価値があるかと言われると微妙なところですが、1個持っていても損はないかな?と個人的には思います。

 私が買った1.4倍のMC4に加えて、2倍のMC7もラインアップされています。大きさとお値段と開放F値のことを考えると、テレコンバーターとしてはMC4の方がバランス良くて汎用性が高いですが、最大撮影倍率を稼ぐことを目的に絞るならMC7のほうが得られる効果はずっと大きくて良いのかも知れません。