酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2012年F1最終戦 ブラジルGP

 ブラジルGPの1週間前に、5年ぶりとなるアメリカGPがオースチンの新しいサーキットで行われましたが、いろいろあって観戦していません。録画はしてあるのでそのうち見ようと思っています。そして1週間後のこの前の日曜日、とうとう今シーズンの最終戦となるブラジルGPが行われました。何となくやっぱり〆はブラジルっていう感じがしますよね。
 そしてそのレースは大荒れ。2008年やそれ以前に数多くあった雨のインテルラゴスを思い出すような展開となりました。降ったりやんだり、これほど天候に右往左往されるレースもまた珍しいものです。チャンピオンを賭けて一騎打ちとなった二人にとっては、失敗が絶対に許されない中で、非常に難しい判断を迫られ続けた神経戦となりました。

 昨年同様、今年注目のドライバーのブラジルGPとシーズン全体をおさらいしてみたいと思います。結構ベタな内容です。なのにえらく長文になってしまいました。なお、各写真は今年の日本GPで撮ったものの使い回しです。

セバスチャン・ベッテル/レッドブル・ルノー

 昨年にチャンピオンを決めた鈴鹿のレースもそうでしたが、最後の一戦には意外に弱いところを見せるようで、予選で4位とフロントロウに並べなかったことがミソの付き始め。決勝レースでベッテルとレッドブルはいくつかの致命的なミスを犯してしまいました。

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 まずはスタートで失敗してしまいました。その結果出遅れて、4コーナーでセナに当てられてスピンしてしまい、もはや万事休すと思われたところでしたが、奇跡的にレース続行可能なギリギリのダメージですみました。その後最下位から手負いのマシンで見事にポイント圏内に復帰し、何とかチャンピオン獲得が安泰になりそうなところまで追い上げたところで、タイヤ交換タイミングの判断を完全に誤りました。
 自分から動かずにアロンソに合わせれば良かったはずの状況で、なぜかギャンブルに出ます。不運なことにその後すぐに雨が降り始め、結局もう一度レインタイヤへの交換を余儀なくされます。しかも無線の不調のためか、タイヤの準備が出来ていないピットには混乱し、通常のタイヤ交換よりも大幅に時間がかかりました。もちろんスリックのまま1周してくるよりはダメージは少なかったのでしょう。チャンピオン圏外への脱落という重大な結果を招きかねない作戦ミスでしたが、これまた奇跡的にギリギリのところで踏みとどまりました。
 雨のブラジルGP最終戦で、ドタバタのレースを演じ、辛うじてチャンピオンをもぎ取ったという流れは、2008年のハミルトンにそっくりと思った人も多かったのではないでしょうか。

 いずれにしろこれで3年連続チャンピオン獲得です。今年の前半から中盤までを思えば、よくここまで追い上げたものだと思います。結局は今季5勝を挙げ、誰よりも勝っているわけですし、アブダビや今回のブラジルのように、最下位からでもちゃんと追い上げて必要なポイントをもぎ取る力があるわけで、この勝負強さはやはりチャンピオンに、しかも3年連続という偉業に相応しいドライバーだと思います。

 さて、4連覇はなるでしょうか? 来年の活躍も期待したいと思います。

フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 ポイント差的にも、スタート順位的にも圧倒的に不利な立場にいながら最終的に2位に入り、あともう少しベッテルに不運かミスがあれば、逆転チャンピオンを取りかけるところまで追い上げました。レッドブル勢とは対照的に素晴らしいスタートを決めて一気に上位へ飛び出すと、難しいコンディションの中でミスなくレースを進めました。

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 セーフティカーの導入も有利に働き、アロンソとフェラーリは今回も最大限のレースをしたわけですが、考えてみればそれは今回だけでなく、シーズン中盤以降は常にそうだったわけで、どう考えてもレッドブルにもマクラーレンにも後れを取るマシンで、あと一歩というところまでベッテルを追い詰めた力は素晴らしいとしか言いようがありません。そう言う意味では2010年の最終戦にレース戦略を失敗して、チャンピオンを取り損ねたときとはだいぶ違った結末と言えそうです。
 今シーズン3勝し、13回表彰台に上り18回ポイントを取り、リタイアしたのは2回だけ。それもスタート後の接触によるレーシングアクシデントです。この一貫性はまさにトップドライバー、チャンピオンを取ってもおかしくなかったと思います。もちろんそのうちの数ポイントは、マッサの献身と犠牲によるものです。いや、この言い方はフェアではないのは分かっていますが、私としてはどうにも忘れられない部分なのです。

 来年こそはチャンピオンに復帰できるでしょうか? また今年と同じような活躍を期待したいと思います。

キミ・ライコネン/ロータス・ルノー

 もともとあまりウェットが得意ではなかったという印象がありますが、今回もやはりその相性の悪さがいろいろと出てしまったようで、ドタバタのレースとなりました。スタート直後4コーナーでアウト側に行ってしまい、しかもブレーキングミス。ベッテルに当ててはまずいと思ったのか、かなり大げさなくらいにステアリングを切って、コース外に飛び出して行きました。その後結局ベッテルはそんなことお構いなしのセナにぶつけられるわけですが。

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 その後ペースはそこそこで手堅くレースを組み立てていましたが、終盤に再び雨が降り出したところで大きくコースアウト。バイザーが曇って前が見えなくなったため、だそうです。その後のサポートレース用のピットレーンに入り込み、行き止まりに唖然とする様子はなかなか面白かったです。本人曰く、昔はあそこからコースに戻れたとのこと。確かにアスファルトの上を出来るだけ行きたい気持ちは分かります。変にグラベルや芝に出たらスタックしかねないですから。

 開幕前には「すぐに表彰台争いが出来るとは思わない」とコメントしており、昨シーズンのルノーの成績などを考え合わせると誰もが納得するところでしたが、蓋を開けてみれば表彰台はおろか優勝も狙えそうな速さを見せ、結局は表彰台は7回、そして中国GPを除く19回ポイント獲得という安定感。そしてアブダビGPでは復帰後初優勝を遂げました。

 多くの人が疑っていた「ブランクのあるドライバーは勝てない...」は必ずしも正しくないということを証明したと言えます。来年もロータス残留が決定しています。今年と同じように活躍できれば、さらにトップチームへの移籍もあるかも知れません。もしかしたら彼のレースキャリアはここからが本番、てなことになるかも。

ミハエル・シューマッハ/メルセデス

 このブラジルGPは2回目の引退レースとなったわけですが、正直なところ今回のレースではほとんど目立たなかったので、どんなレースぶりだったのか実は分かっていません。序盤にパンクし最下位まで落ちてしまったところから、挽回をして7位まで上がってきたということはベッテルと似たような経緯だったということでしょうか。

 ウェットではペースが全く上がらず、オーバーテイクされるシーンをいくつか見ました。しかし終わってみれば久々のポイント獲得。有終の美を飾ったと言っておきましょう。実際本人的にも満足だったようです。

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 何度か書いてきたように、私としてはあまり好きなドライバーではありませんでした。しかしその一方で、未だ誰も破ることの出来ない数々の記録を持っており、その経歴は圧倒的です。
 復帰後3シーズンの期待外れの成績のわりに、いつもにこやかにカメラに愛想を振りまき、物わかりの良いコメントを残し「どこかレースを楽しんでいる」風な彼の姿を見ていると、その一方では「こんなはずじゃなかった」と思っているのではないか?と思えてきたりして、どこか親しみを覚えてしまいました。いえ、生粋のミハエルファンは、もっと真剣になれ!とイライラしていたかも知れません。

 年齢的にも、そしてこの第二期の成績を見ても、今度の引退はきっと本物でしょう。そのうちレーススチュワードや、表彰台のインタビュアーとして登場することはあっても、ヘルメットを被ってコクピットに収まることはないと思います。いえ、来年の日本GPでF2003のデモランをやってくれると盛り上がるかも知れません。

小林可夢偉/ザウバー・フェラーリ

 ザウバーでの最後のレース。予選では奮わず14番手スタート。しかしオープニングラップの混乱を切り抜け、ウェバーとの接触の影響もあって早めにインターミディエイトに交換したことで、順位をぐんぐん上げて、ポイント圏内でレースを進めます。
 ハイライトはセーフティーカー明けのリスタート直後。前にはチャンピオンを争っている2台がいるわけですが、タイヤの暖まり具合が良かったのか、果敢にもベッテルを攻め立てて前に出ると、なんとアロンソまでもオーバーテイクしてしまいました。これぞ正しい「チャンピオン争いなんて関係ねぇ!」という我が道を行くレースです。しかも2台まとめてなのでどちらにも味方したわけではありません。

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 その後結局この2台には抜き返され、終盤降り出した雨へのチームの対応が遅れ、最後はいつの間にか前にいた(ものすごく遅い)ミハエルのオーバーテイクに失敗し、9位まで下がってしまいました。いいチャレンジだったとは思いますが、失敗してしまったことで4ポイントを失ったことと、オーバーテイクの巧さへの評価が少しマイナスになってしまってないかが心配です。
 コンストラクターズ・ポイントでメルセデスには結局届く可能性がなかったわけですし、失ったものは何もないのですが。いずれにしてもレース全体を通して、小林可夢偉の良さが存分に出たレースだったと思います。

 さて、今シーズンは9回入賞し合計ポイントは60ポイント。最後の最後であわや優勝かという勢いのニコ・ヒュルケンベルグに抜かれ、ドライバーズランキングでは12位に終わりました。チームメイトのペレスにもポイントでは負け、成績的にはパッとしない気がしますが、しかし内容は間違いなく彼にとってのベストシーズンであり、予選での速さや、レースの巧さを見せたことが何度もありました。

 ただ、何かもう一息... というのは事実でしょう。ペレスに比べれば可夢偉の方がどう考えてもいいドライバーだと絶対に思いますが、スポンサーも含めて彼には何かがまだ足りません。バレンシアでのセナやマッサとの接触、スパのスタート、韓国のオープニングラップなどなど、大事なところでのミスも何度もありました。本当のトップドライバーと比べてここぞというところの詰めと、あと少しの運なのかな?と思います。

 来シーズンのシートは未定です。ザウバー、メルセデス、レッドブル、マクラーレン、フェラーリは埋まってしまいました。残るシートで一番いいのはロータスですが、きっとグロージャンに決まるでしょう。残るはフォースインディア、ウィリアムズあたりですが、どちらも持参金を要求するけちくさいチームです。あとはQ1落ち常連の下位チーム。一体どうなることでしょうか? テストドライバーになって2014年を狙うということもあり得るのかも。

 そこで、日本企業はどこもスポンサーにはならないけど、個人なら援助をしたい人はいっぱいいると言うことで、募金活動が始まりました。

KAMUI SUPPORT 小林可夢偉F1活動資金

 とりあえず来季に向けては時間の問題もあるので「募金」で良いと思うのですが、モータースポーツでも他でもいくつか例があるように、個人の資金を集めるスポンサー組織(サポートクラブみたいなもの)がしっかり出来て、継続的にサポートしていければ良いのにと思います。

 日本GPを見に鈴鹿に集まったファンは10万人。1万円を1万人が出したとして1億円。10万人なら10億円。もちろんそう上手くはいかないでしょうが、万が一10億の資金があるとしたら、これは立派なF1クラスのスポンサーになり得るように思えます。いえ、実際どれだけお金が動く魑魅魍魎の世界なのか分かりませんが、額としての10億円よりもそれだけのファンのサポートがあるという事実は、非常に大きいのではないかと思います。

 来年に期待しています!