酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2012年F1第11戦 ハンガリーGP

 全20戦の今シーズンのF1も今回のハンガリーGPで折り返し点を過ぎて11戦目。このレースが終わるとF1は1ヶ月の長い夏休みに入ります。チームもドライバーも大手スポンサーもいないはずのハンガリーですが、今回で27年目。もはやクラッシックレースの仲間入りです。
 ホッケンハイムやシルバーストーンといった伝統あるコースが、時代に合わせてそのレイアウトを少しずつ変えていく中で、このハンガロリンクはほとんど変化がありません。20年以上前からコース上でのオーバーテイクが難しい超低速のテクニカルサーキット。予選順位とピット戦略が勝負を決します。

「あとひとつ上に上がるためにこれからも努力していく」 キミ・ライコネン/ロータス

 第2スティントの猛烈なアタックで一気に2位に浮上したライコネン。一時はトップも奪えそうな勢いでしたが、残念ながら後一歩及びませんでした。すでに今シーズンは表彰台に上がること6回、中国GPを除いてすべてのレースでポイントを獲得し、ランキングは5位。2位のウェバーまでわずか8点差です。
 レース運びが非常に上手く、オーバーテイクもキレがあって危なげがありません。今回の2回目のピットアウト後に見せたグロージャンとポジション争いも、抜かりなく非常にアグレッシブでしかもクリーンです。そんな素晴らしいレース内容を見せているライコネンに足りないものは...
 そうです、優勝です。勝つ力は十分にありそうなのに、なぜか後一歩及びません。バーレーンGPもそうだし、ヨーロッパGPもそう。そして今回もポールtoウィンを決めたハミルトンにあと少しまで迫ったのに、結局前に出ることは叶いませんでした。
 それは予選が重要なこのサーキットで、セカンド・ロウも取れなかったことが響いたとも言えるし、スタート時にピットとのコミュニケーションミスで、KARSを使えずにアロンソに前に行かれてしまったことも影響しています。どちらか一方でも回避することが出来ていたら、ペース的には十分に優勝可能だったと思えます。
 以前はどんなときも「これがレースさ」的なクールなコメントを残していたものですが、今シーズンはかなり前のめりなコメントが多いように感じます。シーズン前には「表彰台争いが出来るとは思わない」と言っていたライコネンですが、今はもう何が何でも最低1勝を挙げたい様子。それはチームも同じでしょう。
 そして夏休み明けはスパ。ライコネンが特に得意としていたコースです。どうなることでしょうか?

「正直いって少しがっかりしている」 ロメイン・グロージャン/ロータス

 今シーズンの有力新人であり、予選では時折素晴らしい速さを見せているグロージャン。今回も予選ではハミルトンに続きフロント・ロウを獲得しました。あとは正しいレース戦略を正しく実行すれば、優勝するだけのチャンスはいくらでもあると思われていました。その手応えは自分でもあったのでしょう。しかし終わってみれば結果は3位。F1出走わずか20戦そこそこのほぼルーキーでありながら、表彰台だけではもはや満足できないほど自信をつけているようです。
 今シーズンの彼の活躍ぶりは2009年にルノーから出走したときの印象とは大きく異なります。アロンソの影に霞んで良いところが見られなかったデビューシーズンに対し、今シーズンはマシンの速さもあって、ライコネンと互角の勝負を見せています。しかし、やはり若いドライバーらしく、一発の速さはあるもののレース運びは荒削りで上手く結果に繋げられていません。その壁を越えるには運を味方につけるか、経験を積んでいくしかなさそうです。
 彼は久しぶりにF1に乗る唯一のフランス人ドライバーです。フランスはF1だけでなくモータースポーツに深く関わってきた歴史をもちながら、現在はフランスGPさえ開催されなくなってしまいました。強いフランス人ドライバーの再来は、フランスGPを復活させる大きな圧力になるかもしれません。まだ日本GPがあるとは言え日本もフランスに近い状況だと思います。なのでフランス人の活躍はどうにも他人事とは思えず、そう言う意味でグロージャンには是非今シーズン中に勝利を挙げて欲しいと願っています。ライコネンと同じく、ロータスチームの今シーズンの力を持ってすれば、十分に可能なはずです。

「それでもタイヤは最後まで持ってくれた。」 ルイス・ハミルトン/マクラーレン

 結果的にはポールからスタートし、事実上一度もトップを明け渡すことなくトップチェッカーを受けた見事なレースでした。しかし内容的には、今シーズンの多くのレースで多くのリーダー達が経験してきたように、タイヤ戦略に余裕がなく、思いがけずタイヤライフが終了してしまうリスクに怯えながらのレース運び。しかしここは普通では抜けないハンガロリンク。大きなミスさえしなければ、あの短いDRSゾーンでハミルトンのマクラーレンを抜き去るだけのスピードを持ったドライバーもチームもいませんでした。
 タイヤに厳しいラフなドライビングをすると言われて久しいハミルトンも、もちろん今回やカナダGPのように緻密なタイヤマネージメントをする腕はあるわけで、精神面での問題さえなければ、アロンソばりの完璧な仕事をやってのます。その能力的な面は疑いようもありません。
 これでアロンソとウェバーに続いて、今シーズン複数回優勝を遂げた3人目となったわけですが、チャンピオンシップにおけるハミルトンの先行きは不透明と言わざるを得ません。問題は精神面で、歯車が狂いはじめると徹底的なマイナス思考に陥る様子が、チーム無線からも手に取るように伝わってきます。その結果、前回(不運もあったとは言え)のように大暴れした上のノーポイントレースというのもあるわけで、この浮き沈みの激しさがチャンピオンシップを戦う上での大きな弱点です。
 彼の能力を安定して引き出すためには、安定した速さのあるマシンが必要だと思います。しかし、マクラーレンのマシンもまた、ハミルトン自身と良い勝負なほどに不安定という有り様。良くも悪くもハミルトンはマクラーレンと一心同体と言えそうです。

 小林可夢偉にはまったくいいところがなし。幸か不幸か彼自身の問題ではなく、チーム全体の問題で、マシンにまったく良いところがありませんでした。次戦での復活を期待したいところです。

 さて、8月中はF1は夏休みに入り、次のレースは約1ヶ月後、9月2日にベルギーGPが行われます。