酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2012年F1第10戦 ドイツGP

 80~90年代からのF1ファンにしてみれば、ドイツGPといえばホッケンハイムですが、最近はホッケンハイムとニュルブルクリンクでの隔年開催となっています。そして今年はホッケンハイムの年。折しもニュルブルクリンクの経営破綻のニュースとともに今年のF1ドイツGPは開催となりました。日本に限らずヨーロッパでもモータースポーツの世界は資金面で苦しい状況になりつつあるのでしょうか。

 さて、今年のドイツGPの一つの山場は予選。Q1はかろうじてドライ、Q2からQ3にかけてコースは次第にウェットからヘビーウェットへと変わっていきました。そんな天候の変化の中で確実にやることをやったチームが一歩抜け出していきます。

「予選をうまくやれてさえいたら今日はもっと上の結果を出せていただろう」 小林可夢偉/ザウバー

 当たり前のことを言ってるようですが、これが心底本当に本当のことだから色々と悔やまれます。いや、スターティンググリッドよりも7つもポジションを上げ、自己最高順位でレースを終えたことについては、素晴らしい結果だったのは間違いありません。でも、前々回レースの観戦記で書いたように、良い結果だったなりに別のタラレバを言いたくなるのです。もちろんそれは贅沢で幸せなことなのですが。
 今回、チームメイトのペレスも含めてレース内容はほぼ完璧でした。ピット戦略が相変わらず今ひとつ冴えない気がしますが、それも今回はライバルが不在だったために結果オーライです。それよりもマシンのペースの良さは本物で、バトンが以前に評したように「現時点で最速だ」というのは言い過ぎにしても、3強+ロータスと張り合えるだけのスピードは持っているのは確かなようです。
 でも、予選についてはこのチームのマネージメントの弱さを露呈したと言わざるを得ません。前回ドライバーの意見を無視してタイヤ選択を間違えたように、今回はQ2で1秒でも先にコースインすることが重要な状況の中で、コースオープンから1分以上マシンを出せなかったことは本当に疑問です。いかにウェット性能が悪いマシンとは言え、Q3に進むチャンスはその1分の遅れでほとんど失ったと言えるでしょう。
 小林可夢偉はトップのアロンソからはわずか22秒遅れでチェッカーを受けました。もしもう少しスタート位置が良かったら、オープニングラップで遅いマシンに囲まれて行き場を失いコースアウトすることもなく、フォースインディアやウェバーをオーバーテイクするような無駄をすることもなく、そうしたらキミとの一騎打ちになり... もしかしたら、もしかしたら...
 マシン性能とドライバーの能力なりの結果を出すための次の課題はチームに課せられています。

「僕らのマシンは最速ではなかった」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 まったくその通りです。決して楽な優勝ではなかったはず。あまりにもレースが上手すぎて、ともするとレース内容は盤石だったかのような印象がありますが、300km走りきって3位までが7秒以内の僅差でした。この小さなタイム差がいかに今回の優勝争いが接戦だったかを物語っています。
 レースの鍵は最終スティントのタイヤにかかっていたという点では前戦のイギリスGPと同じ。でもフェラーリ/アロンソは同じ失敗は犯しませんでした。イギリスGPでウェバーがアロンソに対して考えたように、すべてをコントロールして結局最後に逃げ切ったのです。
 しかしこうしたアロンソらしいレースが出来たのは、結局のところ天候が荒れた予選をしっかりとモノにし、スタートで逃げ切ったからではないかと思います。どちらかで失敗、いや完璧な結果をだせていなかったら、トップに立つだけのスピードはなかったことでしょう。
 今季3勝目を挙げ、ポイントランキングでもリードを広げ始めました。もはやアロンソはチャンピオン候補の筆頭と言えます。マシンも最速ではないけれども、序盤に言われていたような箸にも棒にもかからない駄作どころか、チャンピオン争いが出来るだけの力をつけてきたのは間違いありません。

「彼がどこにいるのか分からなかった」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 もちろんレース終盤、問題となったバトンとのバトルについてのコメントです。DRSを使ってヘアピンへ飛び込んで、サイドバイサイドになりかけたところで、広いコース幅とエスケープゾーンを生かして、コース外に逃れつつバトンをオーバーテイクしたために、レース後に20秒加算のペナルティを受け、記録上では2位から5位に転落してしまいました。
 確かに映像を見ていると、アウト側コース外に逃げたことにより、減速を十分にしなかったことでアドバンテージを得た様子からして、ペナルティを受けても仕方のないシーンだったと思えます。
 しかし実際にベッテルは一瞬バトンの位置を見失い、接触だけは避けようとした末の回避行動だった、というのは事実ではないかとも思えます。だとしたら順位を戻しておけば良かったのかも知れません。そうすれば3位は確保できた可能性が高かったわけですから。その後シラを切り通したことに対してペナルティが課されたと考えても、やはりこの結果は仕方のないところなのでしょう。
 そうでなくても周回遅れになった暴れん坊ハミルトン餌食になったりして、何とも冴えないレースでした。最後は幻となった表彰台のインタビューで、ラウダから母国レースであることには一切触れられず、問題のシーンについての質問しかされなかったり。
 彼にとって夏は毎年スランプの季節なのかもしれませんが、貯金もない今シーズン、3年連続チャンピオンはどんどんと遠のいていきます。

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 次はハンガリーGPです。カレンダー中屈指の超低速コース、コース上のオーバーテイクはほとんど叶わないと言われるハンガロリンクのレース。予選が今まで以上に重要です。夏休み前の連戦ということで早くも今週末に行われます!