FinePix F600EXRでRAW撮影

投稿者: | 2011年12月16日

 以前、みんぽすさんよりお借りしたF550EXRでもRAW撮影をしましたが(2011年5月16日:「F550EXRのRAWファイル現像」)、自前で買ったF600EXRでも同様にRAW撮影を試してみました。気軽にいつでもどこでも使える高性能コンパクト機とはいえ、RAW撮影によっていろいろな意味で「画質」の伸び代が増えるならば、ここぞと言うときに本気撮影することも出来るわけで、よりこのカメラの使い道が広がります。

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 今回は、基本的にプレミアムEXRモードのままRAW+JPEG記録に設定。JPEGをあまり見ないまま、自分がいいと思える方向性で、敢えて少し極端に差が出るようにRAW現像してみました。RAW記録によってカメラの性能を確認するというつもりで始めたのですが、結果的には逆に自分のRAW現像の腕というかセンスを試されてしまったような感じもします。



 現像ソフトはF600EXR付属の「RAW FILE CONVERTER EX powered by SILKYPIX」ではなく、いつも使っているLightroom3を使いました。Lightroomは3.5まではDRモードのRAWファイルが激しく白飛びする問題があったのですが、つい先日アップデートされた3.6からは正しく現像できるようになりました。ただし、LightroomではF600EXRのレンズ補正データは持っておらず、歪曲や周辺光量の補正は目測でのマニュアルになります。

 なお私の場合、いつもアスペクト比は3:2で使っています。この設定でRAW+JPEG記録をした場合、JPEGは設定通り3:2で記録されますが、RAWは4:3のままとなります。しかし、以下に貼ったRAWからの現像ファイルも、JPEGに合わせて手動で3:2にトリミングしてました。最終的な出力サイズは一致しています。

 以下、JPEGはリサイズもしていない撮って出し。RAW現像も上記トリミング以外縮小はせず大体ファイルサイズが同じになるようにJPEG品質を調整して書き出したものです。オリジナルはリンク先のFlickrに置いてあります。

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RAW現像(プレミアムEXRオート, SNモード, ISO800, DR400%, 1/640sec, F5.6, 340mm相当, AUTO)

 日中だったのですが、明暗差が大きくてしかも背景に露出が引っ張られ、暗いと判断されてISO感度も高めでSNモードに設定されてしまいました。RAW現像では銀杏の葉っぱに合わせて木の幹はつぶれても構わないという勢いで、かなりアンダーで高コントラストに補正してしまいました。この仕上がりの善し悪しはともかく、やはりこれはRAW現像したほうが良くなりそうです。

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RAW現像(プレミアムEXRオート, DRモード, ISO100, DR200%, 1/210sec, F5.6, 340mm相当, 風景)

 ねこじゃらしのような、ススキののような、この背の高い植物はパンパスグラスもしくはシロガネヨシと言うそうです。今度は白くて明るいものが主要な被写体なわけですが、少し露出とコントラストが違うだけでほとんど似たような結果になりました。F550EXRもF600EXRも同じように明るめの露出になることが多く、こういう被写体は得意なのかもしれません。

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RAW現像(プレミアムEXRオート, HRモード, ISO200, DR100%, 1/210sec, F6.1, 260mm相当, マクロ)

 だからと言って真っ白な花も明るく写るかと言うとそうではなく、こういう場合は少し抑え目の露出になりました。花びらの白さよりも、黄色い部分の色味がかなり違っていますが、これはRAW現像で明るく鮮やかに振りすぎてるかも。こうやって並べるとJPEGのほうが自然ではあります。でも、好みとしてはもう少し明るくしたい所です。

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RAW現像(プレミアムEXRオート, HRモード, ISO320, DR100%, 1/60sec, F5.3, 360mm相当, マクロ)

 真っ赤に紅葉した葉っぱ。記憶色の再現と言うのでしょうか、RAW現像してるとどんどんと鮮やかに、硬調に設定したくなります。手前の葉っぱはまだ調節可能なのですが、影になった背景の葉っぱはほとんど飽和しているようです。JPEGはあっさりし過ぎに思えるのですが、やはり自然なんですよね。葉脈なんかもしっかり写っていてシャープネスやNRあたりも絶妙な加減のようです。RAW現像はちょっとやりすぎかもしれないですが、記憶色の再現という意味ではRAW現像スキルさえあれば何とでもなりそうです(って、当たり前だ!)。

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RAW現像(プレミアムEXRオート, HRモード, ISO100, DR100%, 1/850sec, F3.5, 24mm相当, 風景/空)

 お次は青空。つり橋の支柱の真下でワイド端を使ってグイッと空を煽ってみました。遠くに東京スカイツリーも映っています。カメラのシーンモードも「空」と認識しています。と青空の青ってもしかしたら人によってイメージする色が違うのかも知れませんが、明るい水色というよりは、私の場合濃くて深い濃紺色にしたくなります。そうしたくてわざわざ調節したということはないのですが、いじってるうちにこうなってしまいました。また、レンズ補正をかけていないので樽型の歪曲がかなり見られますが、被写体的にも敢えて補正しないでこのままが良いかな?と思います。、

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RAW現像(プレミアムEXRオート, DRモード, ISO250, DR100%, 1/125sec, F5.6, 128mm相当, 風景)

 夕焼けも色再現や露出の面でなかなか難しいシーンですが、F600EXRはやはりオーバー目に露出が振れるようで、オリジナルのJPEGはけっこう明るいです。DR400%に設定されていて、ハイライトも飛んでいそうで完全に階調が残っています。実際、同時記録のRAWで露出を補正すればハイライト付近の階調は何の苦もなく出てきます。しかもホワイトバランスをいじってわざと黄色く仕上げました。夕焼けシーンだったらわざとらしいくらいでちょうどいいかも。

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RAW現像(プレミアムEXRオート, HRモード, ISO100, DR100%, 1/450sec, F5.3, 360mm相当, 風景)

 東京スカイツリーのどアップ。夕方に撮ったのですが、JPEGはホワイトバランスがきっちり補正されています。これはこれで良いのですが、少し夕日らしさを出したいなぁ、と言うことでRAW現像時は少し補正を弱めて黄色味を出してみました。それは良いのですが、どうにもRAW現像ではJPEGと比べてシャッキリ感というか硬質な質感が出ないような気がします。う〜ん… 何でだろう? あと、このカットでは周辺光量低下がかなり目立ったのですが、Lightroomで手動補正してみました。

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RAW現像(オート, ISO1600, DR400%, 1/13sec, F3.5, 24mm相当, マクロ)

 良く晴れた日の日没後の西の空。地平線付近は赤味が残っていますが、空の上の方は夜が降りてきています。で、これだけプレミアムEXRオートではないのですが、恐らく勝手にモードダイヤルが回っていたのだと思います。シーンモードがマクロになってるのは謎ですが、ピントはちゃんと無限遠に合ってるはず。これも記憶色を追い求めた結果でしょうか?だいぶ青く鮮やかに仕上げてしまいました。歪み補正、周辺光量補正、ノイズリダクションをかけてあります。

 ちなみにこの画像、ISO1600で撮ってるわけですが、NRがかかっていない素のRAWファイルをそのまま現像すると↓こんな感じです。

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RAW現像/NR:OFF(オート, ISO1600, DR400%, 1/13sec, F3.5, 24mm相当, マクロ)

 これ、上に貼った二枚と全く同じもの。RAW現像時に触れる範囲のNRは全部切りました。ついでにその他のパラメータも撮影時設定のまま。これがほぼ素のセンサー出力状態かと思われます。かなり暗いですし、さすがにノイズはかなりひどいですが、そんなに見られないこともないですね。それにしてもカメラ内のNRは優秀です。

 ちなみにこのカットワイド端で取ってるわけですが、右下に「片ボケ」現象が出ています。当然ではありますがこの方ボケはRAWでも同じです。

 最後に、RAW+JPEG記録にした場合のカメラの動作についていくつか分かったことがあります。一つは最初に書いたとおり、アスペクト比はJPEGのみに適用されること。また、Advモードで「背景ぼかし」などの特殊撮影モードを選んだときはRAW記録はされません。処理前のJPEGファイルが同時保存出来るくらいだから、RAW保存もしてくれれば良いのにと思いますけど。また、デジタルズームは出来なくなり、光学ズームによる15倍まで。これも構わずにRAWは記録してくれても良いように思えますが、何か技術的な問題があるのでしょうか。
 また、EXRオートの場合JPEGファイルの解像度は、HRモードは約1600万画素記録、DRモードやSNモードでは半分の約800万画素になるわけですが、RAWファイルも同様のようです。添付のRAW FILE CONVERTER EXやFINEPIX STUDIOではRAWファイルは常に約800万画素と表示されるのですが、現像すると結果はEXRモードによって変わりますし、ファイルサイズを見てもHRモードで撮影されたカットのファイルサイズ(約25MB)はSNモードやDRモードのファイル(約12.5MB)の倍あります。

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 と言うことで、F600EXRのJPEGと私のRAW現像対決は以上です。こんなコンパクトカメラでもRAWでかなり遊べますし、技術とセンスがあればコンパクトカメラとは思えないような印象的な写真が得られるかも。少なくとも私にはまだまだその技量がないことを実感しました。せいぜい、JPEGを参照しながら「もう少しこうしたい」と言った方向性で現像するほうが良い結果が得られそうです。結論としてはあまり多用はできませんが、ここぞと言うときにはやはり役立つ機能だと思います。それだけに、もう少し簡単に切り替えができたら良いのですが、現状はRAWモード変更の手続きがちょっと複雑すぎると思います。