酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第18戦 アブダビGP

 開幕戦に予定されていたバーレーンGPがキャンセルされ、今年唯一の中東でのレースがアブダビで行われました。いわゆる「アラブの春」はアブダビ、もしくはUAEには無関係なのでしょうか? F1マシンが走るヤスマリーナ・サーキットとその周辺地域の風景は、ちょっと前ならSFで描かれているかと思うような豪華絢爛さ。その裏側の人々の暮らしがどうなっているかは、テレビから伺い知ることは出来ません。
 前回のインドGPでも言われていましたが、新興国におけるF1はその国の富裕層の世界にのみ属しており、決して庶民の娯楽ではありません。しかし一方で、我らが日本GPにはこういう徹底的セレブリティな雰囲気は、ごく一部を除いてほとんどありません。それはむしろ日本がいかに豊かであるかを示す証拠なのだと思います。とはいえ、モナコやアブダビみたいな雰囲気の中で一度F1を観戦してみたいとも思います。
 閑話休題。アブダビGPのスタートは現地時間で午後5時。日没を挟んでレースが行われるトワイライトレースです。言うなれば、日本とシンガポールのいいとこ取り。マジックアワーの空の色が豪華なサーキットの風景と相まって、いっそう幻想的な世界を醸し出します。

連続記録途絶:レッドブル

 今回はレッドブルにとっては散々なレースとなりました。ベッテルの完走&ポイント獲得と、チームとしての連続表彰台獲得の記録が、昨年の韓国以来途切れてしまいました。ベッテルはマクラーレン有利な状況の中、予選の最後の最後でスーパーラップを叩き出してポールポジションを確保したものの、スタート直後に謎のパンク。スピンしてコースアウトした映像を見たときは、ここからの追い上げでどこまで行けるかで、またベッテルの実力が試されると別の意味で期待したのですが、結局サスペンションを壊しリタイアとなってしまいました。ちなみにパンクの原因は現時点では不明だそうです。
 一方のウェバーは... またしても3位スタート5位フィニッシュというグズグズな結果。なんだかマッサやバトンとの危なっかしいバトルのシーンが見られましたが、ポジションを挽回するには至らず。その後なぜか3ストップという奇襲作戦を敢行するも不発に終わりました。
 最終戦を残して、未だウェバーにはランキング2位を獲得する可能性は残されています。しかしチームももはやあまりそのことを言わなくなりました。だとすればレッドブルに取ってはもはや消化レースに入ったと言えるのかも。だから手を抜く...とは限らず、インドの最終ラップや今回の予選で見せたみたいに、ベッテルはリスクを承知で記録への挑戦を心置きなく敢行するのかも知れません。それこそ、彼もチームももはや失うものはありませんから。

チーム内対決:マクラーレン

 マシン的には絶好調でレッドブルに真っ向勝負できる唯一のチームがマクラーレン。その中でも最近はバトンの方が調子が良く目立っていましたが、今回は長い不調の末にハミルトンが久々の優勝を飾りました。ベッテルがあっという間に消えたところまでは運でしたが、その後は彼が力でもぎ取った勝利です。予選では敵でないながらも、決勝となると食らいついてくるフェラーリのアロンソに追い回され、ピットインやコース上でちょっとでもミスがあれば、すぐに逆転されそうでしたが、最後まで持ちこたえました。最近憮然とした表情が多かったハミルトンも、流石に勝利は嬉しいのでしょう。レース後はにこやかでした。
 一方のバトンはレースの途中からKERSが故障したらしく、今回のレースでは今ひとつ光るところがない地味な我慢のレースを展開していました。が、マッサはもちろんウェバーも寄せ付けず、ちゃっかり表彰台に乗っかっています。この"ちゃっかり"がバトンの強みなのかも。
 明確なファーストとセカンドの扱いがないマクラーレンですが、これでハミルトンとバトンのチームメイトバトルは、優勝数では3勝ずつの同点。しかしポイントではリタイアが少なく、調子が悪いときもそれなりにポイントを稼いだバトンの方が上回ることがすでに確定しました。ハミルトンはデビュー以来、チームメイトにポイントで負けたのはこれが初めてだそうです。

コンストラクターズ7位争い:ザウバー

 弱いなりに好調だった前半戦から、後半戦に入ると一気に不調に陥ったのがザウバー。小林可夢偉の浮沈はチームの浮沈そのものです。しかし可夢偉は8レースぶりにようやくポイントを獲得することができました。たったの1ポイントですが、スターティンググリッドとマシンのスピードを考えればまずまず上出来です。アグレッシブに攻めて1ストップ作戦をとらず、変則2ストップ作戦を取ったのも、結果的には当たったのだと思います。
 ザウバーの不調は、マシン開発の遅れによりスピードが相対的に足りなくなったためと言われています。しかしチームメイトのペレスがシンガポール以降、3戦でポイントを取ってるところを見ると、今回のようなレースをするチャンスは常にあったのだろうと思います。特に7番グリッドを獲得した日本GPでは。
 作戦選択の的確さと絶妙なレース運びの巧さが小林可夢偉の持ち味だったはず。そこが過去の日本人ドライバーと彼が決定的に違う部分でもあります。その勘が今回で戻ってきたなら良いのですが。あと残り1戦、頑張って欲しいものです。
 今シーズンのコンストラクターズ・ランキングは、確定してない部分もありますが、上からレッドブル、マクラーレン、フェラーリ、メルセデス、ルノーと来て、6位がフォースインディア。そこから15ポイント差で7位がザウバーで、さらに1ポイント差でトロロッソ。6位のフォースインディアには最近のスピード差を見ても、もう追いつけそうにありません。問題はトロロッソとの7位争いです。スピードではトロロッソの方が最近は上を行ってるようですので、防衛するのは実はかなり微妙なところです。さて、どうなるでしょうか。

 次は来週末にブラジルGPが行われます。東日本大震災の直後、3月下旬から始まった全19戦の長いシーズンもこれでいよいよ最終戦を迎えます。

 なおアブダビGPのリザルトはこちらです。