酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第17戦 インドGP

 年々新興国へとレースの舞台を拡大しているF1ですが、今年唯一の初開催レースが今回のインド。いよいよこの発展中の大国でF1が走ります。テレビに映る範囲ではスタンドは多くの人で埋まっており、8万枚のチケット完売というのは韓国と違って事実のようです。
 インド資本やインド人ドライバーは以前からちらほらF1に関わっていたので、これまでレースが開催されていなかったのが不思議なくらい。サーキット建設の遅れとか、税金問題などなど、昨年の韓国同様に直前まで開催が危ぶまれたこともありましたが、結局はなんとかなりました。
 またもやティルケによって設計されたコースですが、近代的である反面、誰も走ったことのない未知のレイアウト、埃だらけの路面と舗装。タイヤとのマッチングも分からず、何が正しい戦略で何が起こるのか分からない、緊張感溢れるレースとなりました。

7回目の優勝争い:ベッテル vs バトン

 この二人によるトップ争いは今シーズン7回目。ベッテルの4勝3敗といい勝負を繰り広げています。バトンの今季3勝は全てベッテルと争った末に勝ち取ったものとも言えます。今回のレースでは終始ベッテルがリードしていたものの、圧倒的に逃げるでもなく、DRSが使えるほど近づくこともなく、僅差の膠着状態を60周に渡って続けました。
 二人のコメントで共通しているのは、ピットインの度にギャップが詰まったという点。レースは完全にベッテルがコントロールし、ピットインタイミングもベッテルはバトンの動きを見て合わせていたほどですが、見た目ほど余裕の落ち着いたレースというわけではなかったようです。
 使うのは最後の1周だけだろうと言われていたハードタイヤは、結局のところラバーが十分乗った路面では上手く機能しました。ウェバーらのラップタイムを見てまず動いたのはバトン。残り20周でハードタイヤを投入しますが、ベッテルもすかさず作戦を合わせます。ピットアウト直後、ベッテルがまだハードタイヤを暖めている間がバトンにとっての最後のチャンスだったかも知れません。しかしやはり仕掛けるには至りませんでした。ベッテルは結局そのハードタイヤでファステストラップを叩き出すに至り、ここで勝負あり。ベッテルは今回のレースではピットアウトも含めて一度もラップリーダーを譲らない完全勝利。
 それにしてもバトンは今シーズン見違えるように強さを見せてきました。まだちょっと好不調の波が大きいようですが、それはマクラーレンのマシンのせいでしょうか。チャンピオンは決しましたが、この二人の戦いはまだあと2戦残っています。

9回目の脱落:アロンソ vs ウェバー

 昨年最終戦までチャンピオンを争っていたこの二人は、今回のレースでは表彰台をかけて争っていました。チャンピオンシップ2位に意味はないとは言え、レッドブルチームは今シーズンの勝利を完全なものに仕上げるために、ウェバーに2位の座を取らせたいと思ってるようですが、どうにも本人にはその気がなさそうです。あるいはその能力はないといった方がいいのかも?
 ウェバーはフロントロウからスタートしたのに、ずるずるとポジションを下げて4位フィニッシュ。すでにマシン開発を終えてしまったフェラーリの失敗作を駆り、マクラーレンとレッドブルの間に割って入って不利な戦いを続けるアロンソにもあっさりと負けてしまいました。ウェバーがグリッド順位よりも下位のポジションでチェッカーを受けるのはこれで9回目です。そのうち今回同様にフロントロウからスタートしたのは6回。そして未勝利。誰の目にも明らかな今シーズン一番のマシンを持ってしてこの成績はどういうことなのでしょう? 一方のアロンソは今年12回もグリッド順位よりも上位でフィニッシュしています。しかもそのうち表彰台に上ったのは9回、イギリスでは1勝しています。今年のフェラーリを持ってしてこの成績は見事としか言いようがありません。
 今回のレースもこの二人の運、速さ、レースの上手さの差がもたらした典型的なレース結果となりました。ポイント差は大きくないので、レースが荒れればどうなるか分かりませんが。レース内容を見ているとウェバーのランキング浮上は難しいと言わざるを得ません。

6回目の衝突:ハミルトン vs マッサ

 20周前後から始まったこの二人のバトルを国際映像も何かを期待するようにずっと追いかけていました。そしてフジテレビの実況&解説陣も「まさか今回は何もないだろう... いやもしかして?」的な含みを持ったコメントをしている中で、25週目の問題の接触は発生しました。この二人が接触するのは実に今シーズンこれが6回目です。幸い二人ともこの接触が原因でリタイアすることはなく、走り続けられましたが。
 映像を見ていて分かるのは、明らかにハミルトンの方が全体的なペースが速いと言うこと。もう少しじっくりと狙っていけば、十分にオーバーテイクが可能だったと(素人目には)思えます。なのにハミルトンはあまりにも楽観的にラフなオーバーテイクを仕掛け、一方のマッサもあまりにも楽観的で、もっと言えばぶつかっても仕方ないと思ってるかのような厳しいブロックラインを取っています。この二人の意地の張り合いなのでしょうか?
 スチュワードの裁定ではマッサの側に非があるとしてペナルティが出ました。これはこれで驚きでもあります。バトル相手にスペースを全く残さなかった、あるいはバトル中の不用意な進路変更をした、ということでしょうか。
 しかし、クラッシュを厭わないような過激な行動は、今後より厳罰が下るようになるかもしれません。とにかく、残り2戦もこの二人から目が離せません。

7戦連続ノーポイント:小林可夢偉

 小林可夢偉にとっては今年最低最悪のレースとなりました。酷な言い方をすればそれも予選で失敗したがために、下位集団に飲み込まれた結果と言えます。F1の世界で「不運だった」がどこまで本気で通用するかが心配です。前半に小林が稼いだポイントのおかげとはいえ、チームは今コンストラクターズランキングで危機にいるわけで、ここでの働きが肝心なところです。

 2011年のF1もいよいよ残すところ2戦です。次のレースは2週間後、アブダビGPのトワイライトレースです。

 なおインドGPのリザルトはこちらです。