酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

高倍率超望遠ズーム"BIGMA"の世界

 少し時間が経ってしまいましたが、8月いっぱいみんぽすさん経由でお借りしていたSIGMAのAPO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSMの試用結果のまとめ編です。50-500mmという唯一無二のスペックを持つ超望遠の高倍率ズーム。"BIGなSIGMA"を短縮して"BIGMA"とも呼ばれているレンズの代表的製品です。

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 重たくて大きなレンズですが、遠くのものを引き寄せるために、望遠レンズが必要なシーンで発揮する威力は絶大です。500mmというテレ端では明らかに300mmクラスのレンズとは違った絵が撮れますし、その一方で50mmまで引けるというこのズーム効果は、18-200mmなどの標準域の高倍率ズームよりも、ある意味大きく感じます。



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画角の変化

 レビュー記事の最後にこれをやるのもどうかと思いますが、一応その10倍のズーム効果をわかるように同一シーンで撮り比べてみました。対象物は建設中の東京スカイツリーです。撮影地は直線距離にして5kmくらい離れた地点です。フレーミングが固定されていませんが、画角の変化の大きさはよくわかると思います。

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PENTAX K-x, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F9.0Auto (1/800sec, ISO200, AWB, 50mm

 まずはワイド端の50mm。フルサイズ換算で75mm相当の中望遠です。このくらいの焦点距離なら人を撮ることもできるし、風景にも使い道はあります。

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PENTAX K-x, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/1250sec, ISO200, AWB, 93mm

 いきなり縦位置になりましたが、このポイントからだとちょうどスカイツリーの全景がすっぽり収まります。ズーム位置は93mm。まだまだこのレンズ的にはワイド端といえる長さです。

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PENTAX K-x, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/800sec, ISO200, AWB, 290mm

 さらにぐいっとズームして、これで290mmくらいです。全景はもう入り切りません。634mのスカイツリーの1/3くらいが切り取れます。このくらいは一般的な望遠ズームでもカバーされている範囲ですね。

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PENTAX K-x, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/640sec, ISO200, AWB, 500mm

 一気に望遠端へ。290mmとの差はそれほどでもないようですが、この300mmから500mmの焦点距離領域がこのレンズの一番の特徴です。それに、50mmと見比べてみれば、これがまるで同じレンズで撮ったとは思えない画角変化です。
 ズームレンズはとかく両端ばかり使いがちですが、ここまでレンジが広く、しかも望遠端が特殊な世界となると、両端だけで済むということにはなりません。ズームレンズにしては意外なくらいに中間域をよく使いました。

500mmで切り取る

 レンズ交換が自由にできる一眼レフでも、500mmともなるとかなり特殊な焦点距離となります。PENTAXに限って言えば純正には300mm以上が存在しないですし、他メーカーでも大きくて重たくて高額な単焦点レンズしかありません。実際500mmという焦点距離から得られる映像はどんなものなのでしょうか?

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PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/500sec, ISO200, -0.7EV, AWB, 500mm)

 画角的にフルサイズ換算で750mm相当という超望遠は、私にとっては初体験の世界でした。遠くのものを大きく切り取るという望遠レンズならでは効果によって、今まで見えていなかったようなものがたくさん見えてきます。肉眼でもわからないような遙か遠景はもちろんですが、それほど遠くない対象物のごく一部を切り取ってみたりするのも面白いものです。

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PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/200sec, ISO800, AWB, 500mm)

 超望遠レンズの大敵は手ぶれ。今回の試用期間中は、飛行機を撮りに行ったときも総火演を撮りに行ったときも、三脚や一脚は使いませんでした。こういう場合はやはりボディ内手ぶれ補正ではなく光学手ぶれ補正のありがたみを実感します。ファインダー像が安定することによって、フレーミングやピントに集中できるようになります。もちろん、撮影結果に対する効果も絶大です。

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PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/500sec, ISO200, -0.7EV, AWB, 500mm)

 望遠レンズで得られる大きな効果の一つが"圧縮された遠近感"です。これは200〜300mmクラスのレンズでも被写体が浮き立つような遠近感が得られますが、500mmにもなると300mmクラスとはまた一段と違う、さらに強い圧縮感があります。この効果は被写体が歪まずにフォルムが綺麗に出ると言う利点もあり、最終的には写真の迫力へとつながります。

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PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/640sec, ISO200, -0.3EV, AWB, 500mm)

 このレンズは望遠端で解放がF6.3と決して明るくはないのですが、さすがに500mmともなるとよくぼけます。近景ならもちろん、今までならほとんど無限遠と思える遠景でも、ピントあわせはシビアです。AF性能や速度はボディによるところが大きいですが、HSM内蔵のこのレンズのピント合わせはペンタックスのカメラとの組み合わせでも非常に快適でした。純正のSDMレンズに負けません。

描写性能

 高倍率ズームとなると心配なのは描写性能。しかしそれなりのサイズと重量がある一方であまり明るさなどで無理はしていません。それに比較的設計が新しいと言うこともあり、ネットの口コミで見る描写性能には一定の評価があります。BIGMAシリーズの中では一番ではないかと言われています。

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PENTAX K-x, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F8.0Auto (1/30sec, ISO100, AWB, 290mm)

 あまり多くの被写体、シーンで試すことはできなかったのですが、実際のところ描写性能としては十分だと感じました。実は昨年買ったAPO120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSMと傾向はよく似ています。全体的に撮って出しだとかなりコントラストが低く感じます。どうもシャドー側がかなり浮いてるのかのような感じ。そのせいか、そのままでは露出オーバー目で色も薄く眠い絵に感じます。
 しかし、現像ソフトによる後処理で階調を調整してやると、見違えるように締まった絵になり、色味も鮮やさで、解像感やシャープネスもきっちりと出てきます。JPEGでも十分に"調整"の範囲内で収まりますが、本当に重要な撮影はRAWでした方がいいのかな?と思います。

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PENTAX K-x, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F8.0Auto (1/100sec, ISO100, AWB, 500mm)

 APS-Cのデジタル一眼レフで使ったこともあり、周辺光量低下も歪曲もほとんど感じません。特に周辺光量の低下を心配する必要がなく、解放から安心して使えます。飛行機を撮影したときに色収差が気になった程度です。ただし、これも現像ソフトで簡単に修正することができる範囲です。

ハンドリング

 全長219mm(ワイド端時)、重さ約2kgというレンズですが、これ1本でほとんどの領域をカバーするので、あれもこれもレンズをたくさん抱えていく必要もなく、むしろ荷物が増えるという心配もありません。そういう意味では、このレンズは目的がはっきりしているときに使うべきであって、"とりあえず望遠も持って行こう"という用途には向きません。広い焦点域をカバーしてはいますが、常用のもっとコンパクトな望遠レンズは別に持っておいたほうが良いと思います。

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PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F7.1Auto (1/100sec, ISO400, AWB, 200mm)

 その他の使い勝手も悪くありません。レンズが重たく、ズームリングもそれなりに固いので、手持ちでホールディングしながらズームリングを隅から隅までぐりぐり回すのは難しいですが、ある程度狙いを定めて微調整をするという使い方ならしっくり来ます。ズームリングの回転方向がペンタックス純正と逆ですが、他のレンズとまぜこぜで使う場面は少ないので、特に問題はなさそうです。

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PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/800sec, ISO200, -0.7EV, AWB, 500mm)

 BIGMAシリーズの象徴とも言える三脚座がついており、これは手持ちで使う場合でも持ち運び用のグリップとして使いやすく出来ています。これ、些細なことのようでいて結構重要。この重量になると一瞬でもボディ側で支えることは無理ですし、かと言って外径が大きいので、レンズ側をわしづかみするのも一苦労です。グリップ用途も考慮しているらしく、内側が指掛かりが良いように整形されています。ただ、取り外し機構だけはちょっと心配。うっかりしたときに思いがけず外れてしまう、ということがありそうです。

 ボディはK-5だけでなく、K-xでも使ってみましたが、使い心地をはじめ、AFや手ブレ補正の性能、画質などどちらでも安定していて特に問題はありませんでした。ただし、やはり望遠端のF6.3ではファインダーがかなり暗く、PENTAXのカメラだとスクリーンのざらつきが目立ってきます。

総評

 さて、そもそもこのレンズを借りた目的は、来月に迫ったF1日本GPに持って行くレンズとして検討するため。一昨年は純正の60-250mmを使い、昨年はそれでは望遠側が足りないと思い、SIGMAの120-400mmを買い足しました。そして今年になってやっぱりこの50-500mmが気になり始めたのです。昨年無理してでもこっちを買っておけば良かったかな?と。

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PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/250sec, ISO400, -0.7EV, AWB, 500mm)

 このレンズがあれば撮影の自由度は大幅に広がるのは確信しました。遠くのものを引き寄せ、一部を切り取り、迫力のある写真が撮れ、いざというときには標準ズームでしかカバーできないような画角まで引くこともできます。まさにサーキットで撮影するアマチュアのために作られたようなレンズです。鈴鹿ならどこに行ってもこれ1本で済むことでしょう。

 気になるのは大きさと重さ。でもこれは強力な手ぶれ補正と併せて十分手持ちでも使えることがわかりました。それなりに腕は疲れますけど。それよりも一番問題なのは値段です。市場価格は依然として15万円前後。年に何回出番があるレンズかわかりませんが、ちょっと高いくて手が出ません。

IMGP5400.jpg
PENTAX K-5, SIGMA APO50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM, F6.3Auto (1/500sec, ISO200, -0.3EV, AWB, 銀残し, 500mm)

 結論ですが... ここまで言っておいて何ですが、とりあえず今年のF1はもう一度120-400mmで据え置きしようと思っています。役に立つことは重々わかっているのですが、お値段的に今はちょっとどうにもなりません。また来年悩みたいと思います...。
 このレンズ、清水の舞台から飛び降りたつもりで買うことにしました!買わないと後悔して、遅かれ速かれ買うことになるに決まってるので!(2011年9月20日訂正)