酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第13戦 イタリアGP

 早いもので今シーズンもヨーロッパラウンドの最終戦になりました。舞台はイタリアのモンツァ。シルバーストーンやホッケンハイムなど、ヨーロッパ各国のオールドコースが次々にコース改修していく中で、モンツァは20年以上前からほとんどレイアウトが変わっておらず、現代F1の中では屈指の超高速サーキットとなっています。

 昨年優勝したのはフェラーリのアロンソ。そしてもちろん、ここはフェラーリのホームグランプリです。また、マクラーレンなどメルセデスエンジン勢は超高速サーキットには強いと言われています。DRSゾーンは今回始めて2つに分けられて2ヶ所に設置されました。パワー勝負かつDRS使いまくりで、抜きつ抜かれつのオーバーテイクショーが予想されたレース、しかし真夏の超高速バトルは意外な結果となりました。
 レースの序盤、トップ6台の中で5人のチャンピオン経験者が争うという、非常に贅沢なシーンが展開されました。しかもどこをとっても接近戦。これは見応えがありました。そんな中で、今回は特に目立った活躍を見せ3人を取り上げてみました。

「この2年間、力を発揮できなかったサーキットだったけど今年は最高だった」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 レッドブルのマシンは、この手の超高速コースは不得意と思われていましたし、実際過去の戦績がそれを証明しています。今年も同様に苦戦が予想され、実際にストレートエンドの最高速度は最も遅かったのですが、予選結果はダントツのトップタイムを記録しポールポジションを獲得。
 レッドブルとベッテルは敢えて不得意な最高速競争を捨て、マシンの得意な部分をより伸ばすことで、ラップタイムをまとめるという作戦に出てきました。これはバトルを避けて先行逃げ切りをするためのセッティングだとテレビでは解説されていましたが、スタートでアロンソに前に出られてしまい、早くもその作戦は根底から崩れ去ったかに思われました。
 しかしベッテルは冷静にすぐにポジションを奪い返します。オンボードカメラを見ていても、ベッテルのマシンのコーナリングスピードの速さは明らか。このシーンを見ていると、ベッテルには先行逃げきりだけではなく、ちゃんとバトルになったとき勝算もあったことが分かります。
 やはりダウンフォースの大きさは何よりも勝る、ということなのでしょう。ルノーのエンジンが決して非力なわけではないのは、決勝での最高速をルノーが記録していることからも明らかです。ベッテルはマシン特性をよく理解し勝つための作戦とセッティングを組み立て、しっかりと遂行しました。チャンピオンらしい堂々たるレース内容でした。

「今日はエンジョイできた」 ミハエル・シューマッハ/メルセデスGP

 今回のイタリアGPは、優勝したベッテルでも、ホームのフェラーリでもなく、シューマッハが一番目立ったと言われています。確かに国際映像も、20周にわたってハミルトンと激しいポジション争いをするシューマッハの様子をずっと映していました。
 マシン性能では圧倒的に勝るマクラーレンを長いこと抑え続けられたのは、ベッテルとは逆にエンジンパワーを生かして最高速を重視したセッティングのおかげ。ハミルトンがいくら接近してDRSを使おうともオーバーテイクできません。これはマクラーレンとハミルトンにとっては誤算だったはずです。
 ハミルトンを前に出さないために、右に左にマシンを振りながらブロックをするシューマッハ。時にはやりすぎと思えるシーンもありました。チームから無線でライン取りについて注意が飛ぶほど。でも、シューマッハは手を緩めることはなく、(不運にも)相手となったハミルトンも苛ついてぶちきれることもなく、レース後も「バトルを楽しんだ」とコメントしていいます。いい意味でも悪い意味でも、今回はシューマッハらしさが久しぶりに全開となったレースだったと思います。
 それでも結局シューマッハはハミルトンに抜かされて結果は5位。これが精一杯なのでしょう。トップ3チームに割り込んで表彰台を奪うには、まだマシンの性能が足りないようです。

「問題がひとつでもあれば、レッドブルとベッテルを倒すことはできなくなる」 ジェンソン・バトン/マクラーレン

 3番グリッドからスタートに失敗し順位を下げてしまったものの、その後追い上げての2位フィニッシュ。マッサ、ハミルトン、シューマッハ、アロンソを次々にオーバーテイクしていった結果です。しぶといシューマッハもあっさりとパスできたのは腕の差なのか、それともハミルトンとはマシンのセッティングが違ったのでしょうか?
 それはともかく、これまでのバトンなら「いろいろあったけれども2位になれてうれしい」くらいの生ぬる〜いコメントを残しそうな印象がありますが、今回は珍しく「悔しい」とか「苛立たしい」とか「このままではいけない」みたいな、熱い言葉をレースのインタビューで語っていました。
 ミスや不運がなく普通にスタートできていれば、ベッテルにも十分に勝てるだけの手応えがあったと言うことなのでしょう。確かに6位か7位に落ちてからの彼の追い上げは見事だっただけに、ベッテルに挑戦することすら出来なかったのは悔しくて当然かと思います。
 気がつけばポイントランキングは3位に浮上。チームメイトを逆転しています。しかし既にトップを行くベッテルとの差は117ポイントにもなってしまいました。次のレースでチャンピオンの権利を完全に失う可能性があります。ベッテルへの挑戦を口にするにはちょっと遅すぎるのではないかと思います。

 レースコンディションは安定していたのに、最終的に15台のみ完走というサバイバルレースとなりました。スタート直後の多重クラッシュもありましたし、小林可夢偉の乗るザウバーは最近では珍しくマシントラブルで2台とも止まってしまいました。ザウバーはコンストラクターズ・ランキングで、トロロッソにも追い上げられ、フォースインディアには逆転されてしまうという踏んだり蹴ったりな状況です。

 ドライバーズ・チャンピオン争いはいよいよ大詰めです。と言っても、事実上はもう誰も「争って」いないと思いますが。ベッテルのチャンピオン防衛はカウントダウンに入り、次のレースで決まる可能性も十分にあります。どこまで「チャンピオン争い」を維持しつづけられるかは、フェラーリとアロンソ、もしくはマクラーレンとバトンの頑張り次第でしょう。

 次のレースはいよいよ再びアジアラウンドへ。シンガポールのナイトレースです。

 なお、イタリアGPのリザルトはこちらです。