酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第11戦 ハンガリーGP

 今年の欧州は天候が悪い日が多いのでしょうか?初夏の暑いレースになることが多いこの季節、イギリスGP以来、雨模様に加えて異常に気温が低い中でのレースが続いています。特に気温が低いのは現代F1にとってはレースを大きく左右する要素になり得ます。ある意味、雨以上に。
 というのも天候によってタイヤへの熱の入り方が変わってしまうから。マクラーレンがこの点では有利なのに対し、フェラーリの今年のマシンデザインにおける一番の誤算は、摩耗の激しいピレリタイヤを意識しすぎて、低温時の性能を切り捨てたことなのではないかと思えてきます。
 ハンガロリンクで行われてきた過去のF1レースの晴天率は非常に高く、今回がハンガリーGP史上2回目のウェットレースとなりました。5年前のバトンによるホンダ第3期の最初で最後の優勝が思い出されます。
 このレースで事実上のラップリーダーを奪い合った3人に今回は注目してみました。

「200戦目を完璧な形で祝えた」 ジェンソン・バトン/マクラーレン

 このコメントを聞いて「バトンってもうそんなに長いことレースしてるんだっけ?」と思ってしまいました。2000年のデビューで今年で12シーズン目と改めて来歴を見てみればさもありなん。もう十分にF1ドライバー界の大御所です。ミハエルはともかく、アロンソよりもキャリアは長くて、もしかしたらバリチェロに次いで2番目くらいでしょうか?
 スタートでは上位に大きな波乱はなく、予選順位のまま3番手でレース開始。しかし前を行くハミルトンに次いでベッテルをパスしたものの、ハミルトンにアタックできるほどは近づけず。そんな落ち着いたレース展開はレース後半になってハミルトンのミスによって崩れます。その後しばらくハミルトンとの抜きつ抜かれつの展開はすごいバトルでした。どうして最初からこれができなかったのか?と思うくらい。その勝負も、ハミルトンのタイヤ戦略ミスとペナルティによって決着がつきました。
 5年前のバトン初優勝はここハンガリーの雨のレースでした。トップを行くアロンソがリタイアするなど、荒れたレースを確実に走りきって手にした勝利。今回もある意味同じような展開でした。ハミルトンとバトルはしましたが、結局相手が自滅していく中で残って手に入れた勝利です。そして今年の1勝目、カナダのレースも記憶に新しいところです。
 バトンは本当にこういう天候不順なレースに強いです。それが母国イギリスGPでは発揮されなかったのが不思議なくらい。次のスパは天候が悪くなることで有名なコースですが、どうなることでしょうか?

「気温が低かったのがよかったんだと思う」 ルイス・ハミルトン/マクラーレン

 レース序盤に早々にベッテルをかわしてトップに立つと、まるでこれまでのベッテルのお株を奪うかのような独走態勢を作り上げ、ピット作戦も含め優勝に向けて盤石なレースをしていました。今年のこのコースで一番レースペースがあったのは、間違いなくマクラーレンです。ウェットタイヤでもドライタイヤでも安定した速さを発揮。マクラーレンのマシンは他チームに比べ、タイヤへの熱の入りがかなり早いと言われています。こういう路面温度が低いレースではそのアドバンテージは計り知れません。
 なのに、それなのに... レース後半、濡れた路面に足をすくわれてあっという間にギャップを失い、バトンと激しくトップを争うバトルを展開。そしてこれはチームの判断ミスだと思うのですが、雨が少し強くなったところでインターミディエイトにスイッチしてしまいます。これが大失敗。それに加えてスピンしたとき進路妨害があったと判定されてペナルティ。泣きっ面に蜂状態です。いずれにしても、彼はスピンをしてしまった時点ですでにトップから大きく脱落していたことになり、タイヤ選択は試してみるべき賭に負けただけと言えそうです。
 ある意味ハミルトンらしい、出入りの激しいドタバタのレースでした。しかし精神面の弱さを露呈して自滅したのではなく、今回はレーシング・アクシデントと不運によるもの。とはいえ、勝てるはずのレースを落とした悔しさは相当なものでしょう。危なっかしいくらいアグレッシブなこういうドライバーは一人はF1に必要じゃないかと思います。

「どのピットインも、もう1周早く入りたかった」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 ポールポジションは意地で奪ったものの、ハーフウェット状態のコースでは明らかにマクラーレン勢に対してスピードがなく、テレビの画面から見ていても、ブレーキやコーナリング時にマシンのコントロールに苦労しているのが見て取れました。レッドブルのマシンもタイヤへの熱の入りが早く、だからこそ予選で強いと言われていたのですが、雨のレースが得意なはずのベッテルをしてもあの状態だったとすれば、レッドブルのマシンはライバル達に対してかなり深刻な状況にあると言えそうです。
 ハミルトンに続きバトンにもコース上で抜かれた上、レース中盤にはピット戦略によってアロンソにも抜かれてしまいます。ずるずるとポジションを下げていく何とも情けない展開。ベッテルはスランプ、マシンはアドバンテージを失った苦しい状況では、せめて作戦くらいは上手く運ばなくてはならないときに、前回のレース同様にレッドブルは相変わらずの作戦能力の低さを露呈しました。
 そんな三重苦によって、一時は4位まで下がってしまったベッテルはレース後半にポジションを回復し2位でチェッカを受けました。ハミルトンが自滅したことと、一度は抜かれたアロンソが4回ストップ作戦をとったためです。
 レースはマクラーレンに惨敗したと言えますが、チャンピオンシップ的にはそこそこ良い結果だったと言えるでしょう。ランキング2位のウェバーや、勢いのあるハミルトンやアロンソとは差を開くことができ、唯一差を詰められたバトンは、ランキング5位で100ポイント差と、事実上チャンピオン争いから脱落しています。

 ウェバーはハミルトン同様に終盤でタイヤ選択ミスをして上位から脱落、マッサも最近はそこそこ良い位置でレースをしていますが、表彰台に絡んでくるほどではありません。レッドブル、マクラーレン、フェラーリの3強に対して、そのすぐ下を争う中段チームの混戦模様も面白くなってきました。メルセデスとルノーは、3強ではなくて今やザウバー、フォースインディア、トロロッソと争う状況に。
 そんな中で小林可夢偉は頑張っているわけですが、今回のレースは完全に作戦失敗。タイヤ戦略を誤ったのか、スーパーソフトにマシンを合わせきれなかったのか、レース終盤に4つもポジションを下げてしまい、ポイント獲得ならず。途中までは良い感じだっただけに残念です。

 F1はこれから約1ヶ月弱の夏休みに入ります。次のレースは8月最後の週末、ベルギーはスパ・フランコルシャンでのレースです!

 なお、ハンガリーGPのリザルトはこちらです。