酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第10戦 ドイツGP

 今シーズンもいつの間にか第10戦までやってきました。今年は全19戦ですのでちょうど折り返し点となるレースです。今年のドイツGPは伝統のホッケンハイムではなくニュルブルクリンクで行われました。高低差が大きく、コース幅は狭く、中速のテクニカルサーキットです。
 そして特徴的なのは、ここでホームグランプリを迎えるドライバーが6人もいること。しかもうち2人はチャンピオン経験者。ついでにファクトリーはイギリスにあるとはいえメルセデスGPにとってもホームグランプリです。現在のF1の一大勢力はドイツにあり、といった所でしょうか。ドイツのF1ファンが贅沢で羨ましい限りです。
 TV放送は国際映像なので常にニュートラルな視線が基本とはいえ、少しずつ各開催国の私情が垣間見えるのが常。6人も母国ドライバーがいると撮影する側も大変だったことでしょう。しかし今回はそんな地元ドイツを意識させる隙もないくらい、手に汗握る三つ巴のトップ争いが繰り広げられました。
 今回はそのトップを争った結果表彰台に登った3人を取り上げたいと思います。ドイツ人が一人もいませんが...。

「今週こんなに速くなるとは思いもしなかった」 ルイス・ハミルトン/マクラーレン

 前半戦ではレッドブルに対抗できた唯一のチームとして奮闘したマクラーレンですが、浮き沈みが激しくここのところは特に失速気味。フェラーリにも追い抜かされてしまった感がありました。ドイツに来てもフリー走行まではイマイチだったのに、なぜか予選でハミルトンは突如スーパーラップを叩きだし、2番グリッドを獲得。
 これが単なる一発屋のラッキーなスーパーラップではなかったことは、その後のレース内容が証明しています。序盤はウェバーと、後半はアロンソと抜きつ抜かれつの際どいバトルを何とか制してトップチェッカー。フェラーリにもレッドブルにも負けない素晴らしいレースペースを安定して発揮しての優勝です。
 マクラーレンは時折こういう予想外の好調を突如見せる場合があって、それは実は陽動作戦じゃないのか?と思わせるほどです。この好不調の波はマシンセッティングのピーキーさから来るものだと思うのですが、あるいはハミルトン自身にも精神面から来ると思われる好不調の激しい波も要因としてありそうです。
 いずれにしても今回は、チームメイトのバトンにいいところが一つもない中で、マシン性能とハミルトンの良さがうまく合わさったレースだったと思います。一方で彼が苦手とするタイヤマネージメントにも大きな問題は生じませんでした。今回のレースのように、冷静さとモチベーションを持った時のハミルトンの強さと、ピタッと決まったときのマクラーレンの速さは折り紙付きであるだけに、シーズン全体で見せるムラがチャンピオンシップという点では残念な所です。

「予選ペースを改善しなければならない」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 イギリスGPで見事な優勝を果たし、いよいよ今度こそ復活を遂げたと思われる好調のフェラーリ。レースではコース上でベッテルをかわし、2回目のピット作戦でまずウェバーをかわし、そして3回目のピット作戦でぎりぎりハミルトンの前に出たところまでは大当たりの作戦だったのですが... ピット出口の独特なコースレイアウトとタイヤに対するマシン特性から、そのままポジションを守りきるには不十分なギャップでした。
 このフェラーリのピット作戦とその後の3コーナーまでのハミルトンとのバトルは、今回のレースの一つのハイライトだったと思います。辛うじてハミルトンの前で復帰したアロンソでしたが、1コーナーにフルスピードで突っ込んできたハミルトンとは勢いが違っており、易々とアウトから抜かれてしまいます。アロンソとフェラーリにしてみれば「これは仕方がない、良く頑張った」と言ったところなのでしょう。
 あとちょっとで届かなかった優勝でしたが、レース内容は非常にポジティブとあって、2位という結果にアロンソは満足しているようです。レースペースや作戦は機能するようになりましたが、もう一歩抜き出てレッドブルに本格的にチャレンジするには、コメントにあるように予選が今後の大きな課題となります。
 しかし、これこそ言うは易し。小林可夢偉のザウバーも同じ悩みを抱えているわけですが、そう簡単に解決できる問題ではなさそうです。

「優勝できなくてがっかりしているが良い結果ではある」 マーク・ウェバー/レッドブル

 ハミルトンとは対照的に、ウェバーが予選で見せた素晴らしいタイムは、単なる一発屋のスーパーラップだったのでしょうか。ポールポジションをとりながら、特にトラブルがあったわけでもないのに、2つも順位を落としてしまうとは、がっかりこそすれ決して「いい結果」だったとは思えません。
 スタートが弱いのはレッドブルの常としても、せっかく1回目のピット作戦でトップを奪い返したのに、2回目のピットインではアロンソに、3回目にはハミルトンにも前に行かれてしまいました。
 彼の勝負弱さはもちろんですが、結局今回のレッドブルの問題点は、トップ走行時に安全なリードを稼ぐだけのアドバンテージがなかった上に、タイヤマネジメント含め作戦の幅に自由度が全くなかったという点に尽きると思います。それは同じように不調でグズグズのレースをしてしまった、ベッテルの様子を見ても明らか。決勝でのペースと言う面では、マクラーレンだけでなくフェラーリにも追いつかれてしまったと言えそうです。
 それでもまだ、圧倒的な予選での速さはあるとはいえ、ポールポジション取ってもそれをレースで生かせないのであれば、意味がありません。あとはチームの作戦能力とドライバーとしてレースの上手さに頼るだけ。残念ながらそういう面でレッドブル+ウェバーは優勝するに値しないのは確かで、今回の結果は実力通りなのだと思います。

 さて、母国で勝てないベッテルのジンクスは今年も払拭されませんでした。テレビ解説では「彼は先行逃げ切りしかできない」的論調ですが、私は必ずしも彼はバトルに弱いドライバーだとは思いません。一発の速さと作戦能力の高さもあり、冷静さと安定性も身について来ました。が、ここ数戦は完全にスランプに陥ってしまったようです。しかし未だライバルたちに80ポイント近いリードを持っており、不調なら不調なりに今回のようにポイントを確実に取っていくことは、今後のチャンピオンシップにおいて重要なことです。
 そして我らが小林可夢偉は過去2戦の不調から早くも脱し、またもや予選グリッドから8つもポジションを上げての9位ポイント獲得。しかし本人もチームも、そしてファンもこの程度の結果にはもう満足できなくなってきました。やはり、前回のイギリスGPのようにいい予選ポジションから、今回のような得意なパターンのレースをして、もっと上位でのフィニッシュを期待したいところです。それはもはや絵空事ではないのですから。

 ドイツGPに続くハンガリーGPは2週連続開催です。次のレースははやくも今週末。F1カレンダー中で屈指の超低速くねくねコースのハンガロリンクです。DRSはどこで使えるのでしょうか?

 なお、ドイツGPのリザルトはこちらです。