酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

PENTAX Q体験イベント:開発秘話編

 PENTAX Qの体験イベントに参加してきました。と言っても、今回のは先週に新宿高島屋前で開かれた一般公開のイベントとは違って、みんぽすさん主催のモノフェローズ限定イベントです。会場は永田町の(通称)PENTAXビル。ここは現政権政党の事務所が入っているので、警備がとても厳重。その警戒網をかいくぐってPENTAXのオフィスまで潜入してきました。

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PENTAX K-5, DA70mmF2.4 Limited, F2.4AUTO (1/1250sec, ISO100, +0.3EV, AWB, 鮮やか)

 まずは涼しい会議室で、PENTAX Qの企画開発に関わった方々から開発秘話をいろいろお伺いしてきました。単に商品広報というか商品特徴説明のありきたりなプレゼンテーションとは違う、かなり生々しい裏話を聞くことができ、いろいろ面白いものを見せていただくことができました。まずはその内容を紹介します。


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構想10年

 PENTAX Qの構想が10年前から練られていた、と言うとやや大げさなのですが、Auto110をデジタル化したような、超小型レンズ交換式デジタルカメラを作ろう!という企画は、PENTAX社内にかなり昔からあったそうです。そして、まさか!というようなブツが早速目の前に現れました。それは、まさにAuto110をデジタル化してみた、という試作機です。

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 それがこれです、これ。Auto110のボディをそのまま利用し、撮像素子からのデータ読み出しとデジタル処理を行う基盤はまさに手作り状態。単品のロジックICや(多分A/Dコンバータや)FPGAをつなぎ合わせてあります。上の方には電源回路も見えますし、端っこにはSDカードスロットやUSB端子付き。

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 センサーまわりはもっとすごいことになっています。手配線ですかね、これ。Auto110のフィルムガイドレールにピッタリはめ込まれた撮像素子の基盤。画素数は分かりませんが2/3インチほどのサイズのセンサーだったそうです。いったいどんな絵が撮れたのでしょうか?

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 もちろんこのAuto110デジタル試作機は日の目を見ることなく、超小型デジタル一眼の企画は上がっては消え... また上がっては消え... というのを繰り返しつつかれこれ10年弱。会社の経営状況などいろいろなことを経て、Kマウントや中判デジタルの開発も紆余曲折する中で、Auto110デジタルは風前の灯火となっていったそうです。

開発スタート

 そんな状況の中、転機が訪れたのはK-7とK-xが成功を収めたあと。特にK-xの製品コンセプトやカラーバリエーション展開が市場で受け入れられたことが大きかったようです。一癖も二癖もある古くからのカメラオヤジばかりではなく、初めてデジタル一眼レフを手にするような若い人々からもフィードバックを得られたことは、PENTAX Qの開発スタートを後押しし、商品企画にとても役だったようです。

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 「マイクロフォーサーズではまだ大きすぎる」「ボディを小さくできてもレンズが大きいと意味がない」という基本方針の下、超小型のレンズ交換式カメラの企画が進みます。PENTAX社内でもいろいろなアイディアが出たらしく、中には「巻き上げレバーをつけよう」なんてものまで。バカらしいようですが、これ意外に良いかも(^^;

センサーサイズ

 そしてやはり企画段階でもいろいろ議論になったのがセンサーサイズ。とはいえ、上記の理由からAPS-Cやマイクロフォーサーズはもはや選択肢になく、1/1.7インチか?1/2.3インチか?という二択の問題だったそうです。が、決め手となったポイントは二つ。一つは比較の結果、1/1.7インチCCDよりも1/2.3インチ裏面照射CMOSの方が、撮像センサーとしての総合的な性能が優れていたこと。やはり最新が最善というデジタルの法則は生きているようです。

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 そしてもう一つはセンサーサイズのトレンド。上に貼った写真のスライドに描かれたグラフはなかなか目にすることのない貴重なデータです。コンパクトデジタルカメラ用のセンサーサイズ別シェアを表していて、全数量に対する割合がサイズごとに時系列で示されています。青が1/2.5インチ、白が1/2.3インチ、それ以外が、1/2〜1/1.6インチを表しています。

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 これによると1/2.5インチが主流だったものが、高画素化とともに少し大型化し、最近は圧倒的に1/2.3インチが主流になっており、それより大きなサイズは少量しか作られていないことが分かります。生産量が多いと言うことはコスト面でも有利ですし、技術革新も進んでいるということで、PENTAX Qでは1/2.3インチが採用されたとのこと。やはりこういう大人の事情もあったのですね。

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 ちなみに最近噂されているように、Qマウントはサイズ的に少し余裕があり、将来的に1/2.3インチセンサーが衰退し、少し大型(1/2インチ?)に主流が移っても対応できるようになっているそうです。手ぶれ補正の可動域も必要なので、どこまで行けるのかは分かりませんが。もちろん発表済みのレンズのイメージサークルも余裕があるので、将来センサーサイズが変わってもそのまま使えるそうです。

ボディデザイン

 PENTAX Qは超小型であることが最重要なコンセプトですから、ボディのデザインは開発の上で最も重要な検討ポイントです。もちろん、できるだけ小さく、しかし機能性は失わないようにいろいろな可能性の検討が行われたとのこと。

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 いくつか開発過程におけるボディデザイン案のモックアップを見せていただきました。主に液晶のサイズからくるバリエーションの検討用に作られたものだそうです。最終的には現在のサイズ、デザインに落ち着いたわけですが、液晶を小さくすればもっと小さくすることもできたのかも?
 ちょっと大きくなりますが、上の写真にあるペンタ部が出っ張ったやつも格好いいですね。これだとEVF内蔵のようですし、まさにAuto110風味です。

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 ボディ素材については、ステンレス、マグネシウム、アルミ、プラスチックと4通りの案があったそうです。チタンはコスト的な理由で最初から除外。いろいろな検討の結果最終的にマグネシウムとプラスチックが残ったそうですが、強度などの確保のためにはプラスチックでは大型化せざるを得ず、やはりマグネシウム合金が最適となったそうです。加工性とかコストなども同時に検討されたはずですが、K-7/K-5でマグネシウム合金の加工には手慣れてきたのでしょうか。
 ちなみにマグネシウム合金製のボディ素材も見せていただきましたが、これ、驚くくらい軽いです。金属だとは思えないくらい。

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 超小型レンズ交換式カメラに相応しく、メイン基板も超小型で2階建てになっています。チップの捺印が消されていますが、右の正方形のチップがメインのプロセッサで、左の小さい長方形のチップはDRAMでしょうか? この写真にはHDMIとUSBの端子が見えますので、ボディのどの辺に置かれているかが、大体想像つきます。

レンズ

 Qマウントのレンズは、すでに発表されているとおりまずは5本。高性能シリーズの単焦点とズーム、それにユニークシリーズのトイレンズ2種にフィッシュアイです。センサーを小型にしたおかげでレンズ設計にはかなり余裕が持てたため、高度な画像処理と合わせて、コンパクトデジタルカメラにはない高性能レンズの組み合わせで「一眼」に恥じない画質が実現できたそうです。

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 ちなみに、高性能シリーズの2本はPENTAXの工場で作られるそうですが、ユニークシリーズの3本は協力会社で製造されるとのこと。でもいずれも設計はPENTAXでやったのでしょうか? 商品企画の方は、トイレンズだと言ってるのに設計者に任せておくとなぜか収差が補正されてしまう、と仰ってました。収差が許せないのはレンズ設計者魂ですね(^^;
 この5本に続いて公式には望遠レンズの発売が予告されています。どんなスペックのものかは教えていただけませんでした。その後の展開についてもいろいろと考えられているようです。

Qギャラリー

 ということで、紆余曲折の末に完成したPENTAX Qですが、まだ開発途中の試作機ながらも、今回はゆっくりと触らせていただきました。レンズもとっかえひっかえしたりして。そんな発売前のPENTAX Qの姿をいろいろ撮ってきました。

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 いきなりスケルトンモデルです。と言いつつも、やっぱりホワイト仕様とブラック仕様があります。もちろんちゃんと動きます。マウントまわりは遮光されてるので写真も綺麗に写りますし、一眼レフじゃないから露出も問題なし? マグネシウム合金ボディではないですが、これ、欲しいですね(^^;

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 スケルトンモデルも手のひらに乗っかります。しかも2台も。モデルさんの手はやや大きめですが。

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 ホワイトボディに標準単焦点レンズ(01)にビューファインダー付き。超格好いいです。

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 ホワイトボディに標準ズーム(02)とK-rミニチュア付き。K-rミニチュアがでっかく見えます。

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 ブラックボディにトイレンズテレ(05)つき。前玉ちっちゃい!

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 (肝心のQにピントの合ってない写真ですが)キーホルダーにしてベルトループに下げている人がいました! と思ったら一応これはモックアップだそうです。

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 レンズとボディはこんな感じにごっそりと用意していただいていました。なかなか壮観です。ちなみにもちろん全て撮影可能な状態で、試し撮りを色々させていただきました。撮って出しそのままの持ち出しはできなかったのですが、縮小加工済みの写真はもらえましたので、それはまた次回エントリーします。一番上に貼ったモデルさんについても次のエントリーにて(^^;

おまけ

 PENTAX Qのイベントではありましたが、歴代のPENTAXのカメラがいくつか並んでいました。フィルム、デジタル問わずに撮像面のフォーマットサイズ別の代表機たちです。

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 右の6X7から左のQまで、大きい順に並んでいます。で、このラインナップを見て「!」と思った方は、きっとPENTAXマニアに違いありません。いえ、漆塗りの645JAPANのことではありません。左から3台目、K-5の隣にあるのは!!! 私は声にならない叫び声を上げてしまいました。

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 これは幻のフルサイズデジタル一眼レフ、K-1ではないですか! 残念ながら電池が入っておらず、稼働状態ではありませんでしたが、モックアップではなく紛れもない本物です。こんなものに触れらせてもらえるとは思ってもみませんでした。

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 興奮して、ピントもおろそかでブレていますが、背面はこんな感じ。MZ-Sのボディをベースにしているのですが、デジタルにしては意外なくらいに厚みはありません。手に持ってファインダーを覗かせていただきましたが、さすがフルサイズ。広大でクリアな視野には感動します。

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 PENTAX Qと並べてみました。Qがメインのイベントなのに、Qにはピントが合っていませんけど。うーん、K-1格好いいです。K-5の後継機はK-3だと思うのですが、その次はきっとK-1ですよね(^^;

 ということで、思った以上におもしろいお話をたくさん聞くことができました。さて、次はいよいよPENTAX Qによる実写編に続きます。