酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第5戦 スペインGP

 F1はいよいよ伝統のオールドコースをめぐるヨーロッパ・ラウンドの本番が始まりました。その幕開けの舞台はスペインはカタロニア・サーキットです。温暖な気候に加え、低速から高速まで様々なコーナーと長いストレートをもつバランスの良いレイアウトから、シーズンオフの間に合同テストが行われるサーキットの一つ。そして他のカテゴリのレースもよく開催されており、チームにとってもドライバーにとってもよく知り尽くされたサーキット。マシンやドライバーの本当の力が試されます。
 オールドコースの常として、現代F1マシンではオーバーテイクが難しいサーキットではありますが、今年のマシン・レギュレーションと、ピレリタイヤの特性が組み合わさり、始まりから終わりまで目が離せない、白熱したレースとなりました。
 今回のレースのハイライトは、なんと言っても後半に1秒以内のトップ争いを繰り広げたベッテルとハミルトンですが、そんな二人と対照的に残念な結果になった三人を取り上げてみようと思います。

「スタートがひどかったとは思わない」 マーク・ウェバー/レッドブル

 地上波放送ではアナウンサーが何度も繰り返していましたが、このカタロニアでは過去10年間、ポールシッターがそのまま優勝しているというジンクスというか実績があります。その記録を今回途絶えさせてしまったのが、このウェバーというのはなかなか填まり役だったと思います。
 スタートは自分が悪かったわけではなく他の二人が良かっただけ、というのは本当かも知れませんが、それだけでは最終的にさらに一つ順位を落として4位でチェッカーを受けたことの理由にはなりません。途中アロンソにしかけつつも中途半端に終わり、逆に後ろから近づいてきたバトンに前に行かれてしまう辺りは、なんともバトルの下手さ加減が良く出ていました。当たらなかっただけ成長してるとも言えますが。
 彼を擁護するとすれば、何の策も練ることなく4回にもわたりアロンソのタイヤ交換タイミングに合わせてしまったチームの戦略下手にも要因はあったかと思います。フェラーリを周回遅れにできるくらいスピードがあるマシンを持ってして、コース上で抜けないとしたら、ピットタイミングをずらすしかありません。ただし、これについてはスパイ疑惑があるそうです。うむ、F1らしくていいですね、こういうの(^^;

「何もできることはなかった」 フェルナンド・アロンソ/フェラーリ

 スペインと言えば当然アロンソの母国。予選5番手からミラクルなスタートを決め、1コーナーでトップを奪って見せた時の現地の盛り上がりは、容易に想像することができます。しかしトップに飛び出しはしたものの、その後そのポジションを最後まで守るためにできることは何もありませんでした。
 ベッテルを後ろに従えながらも、コース上でのオーバーテイクを許さず、ピットインでも1回は持ちこたえ、20周目までラップリーダーに居座り続けたのは、望外の健闘だったと思います。しかし2回目のピットストップでトップを失ってからは、ポジションをずるずると下げていくだけのレース。最後は結局ベッテルやハミルトンに周回遅れにされるに至ってしまいました。
 素晴らしいスタートを決め序盤に見せ場を作ったとはいえ、レースペースではレッドブルはおろか、マクラーレンにも全く勝負にならなかったという事実が示す問題の深刻さを思うに、実はフェラーリにとっても、アロンソにとっても、今シーズンのワーストのレースだったと言えるのではないかと思います。

「作戦が本当に見事に成功した」 ジェンソン・バトン/マクラーレン

 彼は今回のレースでは非常にがんばって素晴らしい結果を残した一人であるのは確かです。一度は10位まで落ちてしまったポジションから、ピット戦略だけでなくコース上でバトルをしつつ順調に追い上げて、結果3位表彰台に上ったのですから。
 しかも他のドライバーたちがタイヤに手こずり4回ストップを行わざるを得ない状況の中で、タイヤの使い方が人一倍上手いという腕を生かして3回ストップ作戦をとりながら、しかもタイヤをセーブするために我慢のレースをするのではなく攻め続けたのですから。バトンらしさが存分に出たレースとも言えます。
 しかし... 予選ポジションを考えれば、本来は優勝すら狙えたレースだったとも思えるのです。いや、元チャンピオンとしては貪欲にその意欲を見せて欲しいと思うのです。もしもスタートに失敗していなければ... というのは「タラレバ」と言ってしまえばそれまでですが。
 スタートの失敗は彼にミスはなく不運によるものだったにせよ、大きく下げたポジションを回復できたからと言って「良いレースだった」と喜んでて良いのか?と、疑問に思わずにはいられません。

 事実上最後尾から10位まで追い上げるというレースを2戦連続で繰り広げた小林可夢偉は、前回も今回もどこか不満そうです。自分が取り返したものよりも、失ったものに目を向けているのでしょう。成長中で上り坂のドライバーの反応として、これが正しい姿だと思うのです。

 繰り返しになりますが、トップ争いは本当に見応えがありました。マクラーレンとハミルトンは、もはやレッドブルに純粋な速さで対抗できる力があることを見せつけましたし、一方のベッテルは独走逃げ切りだけではない、駆け引きとバトルと作戦を上手く使い、トップを奪い取る腕があることを証明して見せました。今後もこの二人のチャンピオン争いが楽しみです。

 次は早くも今週末、F1カレンダーの中でも最も特別なレース、モナコGPです。

 なお、スペインGPのリザルトはこちらです。