酔人日月抄

東京下町に暮らす写真とPENTAXとスキーと時代小説とお酒とプジョーを愛するある男の日常

2011年F1第3戦 中国GP

 春の東アジア連戦の後半戦として、中国は上海インターナショナル・サーキットで今シーズンの第3戦が行われました。ここ数年雨絡みのレースとなることが多かった中国GPですが、今年は全セッションを通してドライとなり、特に決勝の日曜日はかなり気温も路面温度も高くなったようです。
 温度が高いと言えば心配なのがタイヤ。このサーキットも特徴的なレイアウトでタイヤに厳しそうです。果たして今回のレースもタイヤ戦略がほぼ全てを決めたと言っても良さそうです。上位の三人はそれぞれ違う事情を持って、別々のタイヤ戦略をとりました。

「キャリアの中のベストレースのひとつ」ルイス・ハミルトン/マクラーレン

 そんな大げさな言葉を使うほどではないと思いますが、彼にとって良い思い出のないここ上海にしては、確かに全てが上手く行ったレースだったのは事実です。何しろ今シーズン圧倒的に強さを誇り、独走してしまいそうな勢いだったベッテルを3戦目にして止めたのですから。それも予選では負けていたにも関わらず。
 しかもレースでは良い意味での大暴れ。スタートでベッテルをかわし、その後チームメイトのバトンもオーバーテイク。そしてレース終盤にはいつの間にかトップに返り咲いていたベッテルを再びかわします。こうしてライバル達と正面切って戦って勝ち取った優勝ですから、ドライバー目線では本当に楽しいレースだったのではないでしょうか。
 しかし、調子に乗りすぎると、すぐにタイヤを痛めてしまいそうな、アグレッシブなドライビングスタイルは相変わらずでしたが、それは見た目だけで実は上手くタイヤをマネージメントしていたのか、今回はチェッカーまで勢いを保ち続けました。逆にタイヤを上手く使いこなせるはずのバトンが今回はバタバタのレースぶり。ピット位置を間違えたのは本当に余計でした。
 ここまで来ればマクラーレンの速さは本物でしょう。シーズンオフの不調はいったい何だったのか?と思います。しかしそれでもまだ絶対的なスピードではレッドブルに追いついていないような気がします。ベッテルを青ざめさせるまでは、もうちょっと、ですね。

「今日はたくさんのことを学んだ」 セバスチャン・ベッテル/レッドブル

 何だか余裕のコメントです。ハミルトンにとって最高のレースだとしたら、ベッテルにとって今回のレースは、かなりフラストレーションが溜まったはず。でもレース後の表情は意外にスッキリしていました。
 スタートでマクラーレンの2台に前に行かれてしまい、ポールポジションを生かせなかったのもまずいですが、今回もっと良くなかったのはなんと言ってもタイヤ戦略です。後の話を聞いていると、スタートに失敗したから2回ストップを選んだ、という話も聞こえてきますが... 本当なのでしょうか? 2回目のピットストップタイミングの早さをみても、ちょっと信じられません。
 レース終盤、ハードタイヤでタイヤを労りながら我慢の走行中、3回ストップのハミルトンに猛烈な勢いで追いつかれ、それなりに戦ったものの、結局は追い越されてしまいます。ベッテルも普通に3回ストップ作戦で、プッシュできていればどうなっていたでしょう?
 それは結果を知ってるから言えるタラレバに過ぎません。でもタイヤの摩耗によるタイムの落ち込みの大きさは、2回目のストップをする時点ですでに明らかでした。仮にピットアウト後、ラップリーダーを取れなくとも、ベッテルの腕とレッドブルのアドバンテージを持ってすれば、トップを奪い返す勝算は十分あったでしょう。特に、DRSの利きが抜群なこのコースなら。
 そして今回も不調だったレッドブルのKERS。スタートが微妙に遅いのもKERSのせいなのかも。ライバルの追い上げ、技術的な心配事、チームの作戦能力... このレースでは一転してレッドブルの危うさが露呈しました。それでも余裕の表情をみせるベッテル。チャンピオンの貫禄なのか、しっかりとした巻き返し策があるのか...?次のレースが楽しみです。

「これがベストの戦略だったのかも」 マーク・ウェバー/レッドブル

 自分とマシンのスピードを過信し、タイヤをケチったためにQ1落ちしてしまったウェバー。何もトラブルがないのに18番グリッドからのスタートとは、もうこのレースはなかったも同然と言えるような最悪のスタートです。ハード側のタイヤでスタートし、第一スティントこそ遅い車に囲まれて三つポジションを上げるのがやっとという体たらく。このままポイントも取れずに終わるかと思えたレースは、新品のソフトタイヤをつけた途端にがらりと様相が変わりました。
 予選でほとんど走らなかったおかげで、新品のソフトタイヤがたっぷり余っていたという予定外の状況は、ことピレリタイヤの現状とこのコース特性においては、思いがけないアドバンテージとなりました。3回ストップ作戦で飛ばすトップ集団と同じか、少し早いくらいペースを叩き出して快進撃を続け、レースが終わってみれば、優勝争いをしていたはずのバトンやロズベルグもかわし、3位表彰台に飛び込むという偉業を成し遂げました。だからこそベッテルの2ストップ作戦は結果論以上に、作戦ミスに思えて仕方ありません。
 ポールポジションを取るよりも、新品のタイヤを1セットでも温存しておく方が、レースでアドバンテージがあるとしたら、今後の各チームのレース戦略にとっては、それはそれで大変なことです。レースとしては不健全だと思います。ピレリタイヤはレースを面白くする一方で、わかりにくくしています。昨年のブリヂストンのように、ノンストップで走れてしまうのもどうかと思いますが。今後の開発に期待したいところです。

 小林可夢偉は予選グリッドが今ひとつでしたが、昨年のような我慢しながらもアグレッシブにせめて1ポイントを何とか勝ち取りました。難しい状況を何とかしてしまうレースの上手さは相変わらず。本当に素晴らしいドライバーだと思います。前回のレースで勢力図が見えてきたと思われた、ルノーとメルセデスの関係は、わずか一週間で逆転してしまいました。マクラーレンとレッドブル、フェラーリの関係もいつ何時どうなるか分かりません。

 次のレースは少し間が空いて3週間後、日本ではゴールデンウィーク後半の週末、トルコはイスタンブールです。

 中国GPのリザルトはこちらです。